2022/6/24 17:43:38
日本における外資系メンズフレグランス二大巨頭と言えばシャネルの「ブルードゥシャネル」とディオールの「ソヴァージュ」だと思う(エゴプラやディオールオム派は許してね)。どちらも街中で付けている人をよく見るし、実際に店頭に行った際もよく薦められる。もちろんゲランにもそういったものがあって、それが「ロムイデアル」。「女性から見た理想の男性像」を香りに落とし込んだシリーズで、廃番品も含めると全7種、現行のラインナップは全4種。ゲランらしく(?)派生作品が多いが、ラプティットローブノワールやモンゲラン程ではない。このロムイデアルエクストレムのコンセプトは、仕事もプライベートも軽やかにこなす天才肌の男性。中々ハードルの高そうなイメージだが、どんな香りなのだろう?
トップはツンとしたベンズアルデヒド、アーモンドの香りだ。ロムイデアルシリーズはディスコン品も含め全てにアーモンドの香りが使われている。ゲランの考える理想の男性の香り=アーモンドの香り、というわけだ。合わせられている素材はもちろん作品によって違うが、エクストレムの場合は華やかなピンクペッパー。
ミドルのメインはヘリオトロープ。他ブランドのメンズフレグランスとの違いはここ、主役にフローラルを採用していることだ。ヘリオトロープの香り(ヘリオトロピン)はパウダリーで甘く香水以外の化粧品にも使用され、いわゆる「メイクアップ製品で嗅いだことがありそうな香り」だ。ヘリオトロープがしっかり香るゲランのフレグランスといえばラールエラマティエールのキュイルベルーガがあるが、そちらはバニラとの組み合わせがフェミニンに傾きやすい。しかし、この香水のヘリオトロープはその脇をシナモンの清涼感とアーモンドの苦味で支えられていて、とてもクールでユニセックスというより男らしくなりすぎないようにしつつ、スマートなメンズ感を上手く演出している印象だ。
ドライダウンではフローラルの甘さにアロマティックなタバコにほんの少しウッディが加わってキチンとメンズフレグランスらしい着地をする。持続は5時間ほど。ベースが控えめなせいか極端に甘くなく香りの消え方もキレイだ。デキる男は去り際も美しいということか。
多くのメンズフレグランスがシトラスやスパイス、マリン、ウッディといった力技でゴリ押ししていくムキムキのマッチョタイプであるのに比べ、これは女性的になりやすい甘さを上手く制御しスマートにメンズフレグランスとして成立させた長身で細身の男性といったところ。このシリーズは女性にも愛用者が多いというが(インテンスは男性っぽすぎるかな)、それも納得。なにしろ「女性から見た理想の香り」なのだから。
高額な限定品や高級シリーズばかりに力を入れているゲランにも通常ラインナップにもこんなにもよい香りがあることに少しホッとした。
トップ:アーモンド、ピンクペッパー、ベルガモット
ミドル:プラム、シナモン、ヘリオトロープ
ベース:タバコ、パチュリ、レザー、シダー
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(fragranticaより)
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-
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:40ml・14,850円 / 125ml・31,680円 / 250ml・45,100円発売日:-
2020/7/11 11:33:34
グランバル無き今、メゾンクリスチャンディオールでジャスミンがメインの香水はこの「ジャスミンデザンジュ(天使のジャスミン)」。晩夏〜初秋にかけて一年で最後の収穫が行われるジャスミンの畑からインスパイアされている。公式曰く、“砂糖漬けアプリコットのようなアロマを放つフローラルフルーティーの招待状”らしい。
一瞬香るベルガモットのすぐ後に、すぐに主役のジャスミンが香る。この豊かなホワイトフラワーの香りはグランバルゆずり、血を分けた妹、という感じだ。そして透明感があるけれど、少し生っぽいえぐみも感じられるフルーティーな甘い風味。まだまだ残暑が厳しい初秋の畑、ジャスミンで香り付けしたアプリコットのジェラートで喉の渇きを癒す、といったところか。グランバルで感じられたアニマリックさや湿ったような艶のある濃厚なジャスミンを少し抑え、もっと嗜好性が高いフルーティフローラルに仕立て直したような印象だ。
ただ、やはり問題なのはこのいいところの香りが長続きしないこと。一時間持たない。ジャスミンはすぐに減衰し、アプリコットとピーチがメインのフルーティーフローラルになる。オスマンサスはよくわからない。簡単にいうと、シャンプーやトリートメントといったヘアケアによくありそうな香りだ。このヘアケア調の香りはわりかし持ちがいいと思う。
ドライダウンは柔らかいバニラムスクに。ジャスミンが抜け落ちるのが早いものの、全体としては持ちは五時間ほど。ジャスミンの濃厚なホワイトフローラルを丸く整え、ウケのいいシャンプー調のフルーティーフローラルを合わせて嗜好性を高めた香りという印象だ。せっかくの高級ラインなんだから、なにもわざわざこういうありきたりな香りにしなくても…ボディクリームにはちょうどいいと思う。若受けはするだろうが、本当に高級路線を捨ててしまったかのように思えて少し寂しい。
メゾンクリスチャンディオールは公式オンラインでいつでも買えるだけでなく、取扱店も以前より増え実際に香りを試せる機会にも恵まれるようになった。しかし、どうにもこうにも某マローンの二番煎じ感は否めない。香水ブランドとしての歴史はディオールの方が断然深いのだから、メゾンクリスチャンディオールにはもっと高級ラインとしての矜持を持ってほしい。
トップ:ベルガモット
ミドル:ジャスミン、オスマンサス、ピーチ、アプリコット
ベース:バニラ、ホワイトムスク
調香師はフランソワ・ドゥマシー。
(フレグランティカより)
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- モニター・プレゼント (提供元:未記入)
2021/11/20 12:53:31
ムッシュー・ディオールが愛したと言われるディオラマグルマン。バニラ、オレンジ、ビターチョコが使われていたこと以外は写真もレシピも残っていない謎に包まれたデザート。そんなディオラマグルマンにオマージュを捧げたバニラディオラマは延期に延期を重ねようやく発売された。幻のスイーツに思いを馳せた香りは、いったいどのようなものだろうか?
ピリッと華やかなピンクペッパーに甘いオレンジ。このオレンジはジューシーというより、甘さが凝縮されたオレンジピールやマーマレードに近い。
続いてほろ苦いカルダモン、粉感のあるココアに白っぽいバニラの甘さが重なってくる。香りの上の層では華やかなスパイスがキープされているため、甘さ一辺倒にはならずさらりと軽やか。
ドライダウンになると、バニラの甘さがさらに立ってくる。ムエットだとそこまで感じられないが、肌に付けるとパチュリやサンダルウッドの暗いウッディが主張し、インセンスのような雰囲気がある。トップからミドルまでで約二時間、ドライダウンは四、五時間程度。
幻のデザートにインスパイアされたという触れ込みのフレグランスだが、思いの外グルマンな香り立ちにはならず、オリエンタル寄り。おそらくサンダルウッドのせいだろう。段々とわかりやすい「美味しそうな香り」にそこまで食指が動かなくなってきた自分としては構わないのだが、デザートの香り=グルマン系を求めると少し違うのかな、という印象。
トップ:オレンジ、ピンクペッパー、レモン
ミドル:ラム、カカオ、カルダモン
ベース:ブルボンバニラ、サンダルウッド、パチュリ
調香師は、フランソワ・ドゥマシー。
(fragranticaより)
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2021/9/17 02:43:24
ボトルデザインがダセェだの値上げしすぎだのワサ夫が五代目のうちはもう買わないだのさんざんな言われようの新生「ラールエラマティエール」の新作、サンタルパオロッサ。パオロッサという名前は、エメ・ゲランの時代の“Pao Rosa“というフレグランスから借りていて、パオロッサそのものはローズウッドのような香りのする木のことだそうだ。
キレイなボルドーの香水をスプレーすると、まず感じるのはカルダモンの清涼感と苦味。香水の色からはいかにも燃え上がるようなスタートを想像していたが、意外にも静か。しかし、そのすぐ下にはダークなウッディが待ち構えている気配がする。
カルダモンの余韻を残しながら、重く暗いウードと湿ったパチュリの香りが強くなる。それらに対比してローズも感じられるようになるがあくまで脇役で、基本的に暗いウッディが香りの中心にある。
ドライダウンに向かうにつれ、サンダルウッドとミルラの甘さ、ナッツのようなクリーミーさに香り全体が包みこまれていく。トップからミドルまでで二時間程度、ドライダウンは六時間は香る。いわゆるローズウードなので、香り持ちとしては平均だと思う。ゲランでこういった系統のフレグランスには中東向けシリーズ(旧デゼールドリオンとアブソリュドリオン)があるが、それらよりかはおとなしい香りで使いやすい。
同時発売された「ローズシェリー」と比べると、あちらは薄いピンク色がよく似合う香り高いローズのフローラル感が強く、こちらももちろんローズは入っているものの、香りの軸はウード+サンダルウッド+ミルラのウッディオリエンタル。パオロッサの名前の通りなのだろう、例えるなら木の彫刻のバラだ。
ゲランでローズウードというと、廃番になったローズナクレデュデゼールが思い浮かぶ。同系統ではあるが、私は別物だと感じた(ローズナクレの方がもっとローズが力強く香る)。もちろん、ローズナクレが好きなひとはサンタルパオロッサも好きだと思う。
ノート:カルダモン、サンダルウッド、フィグ、ヘーゼルナッツ、ローズ、ウード、ミルラ
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(parfumoより)
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2020/10/9 18:19:27
まずはムエットでお試し(どうでもいいけど、ワッサーってゲランの先細りムエット持ってドヤ!としてる印象がある)。
あ〜、カルダモンわかる。アイリスとアンブレットも。ジェルクさんはホワイトムスクじゃなくてアンブレットだよねー、コーヒーはそこまで、かなぁ。確かに存在するけど、アイリスの後ろに隠れてる感じ。ちょっと淡いかな?
次は肌で。
甘苦いカルダモンのスパイシーさをまとった、「トレフィエ」の名の通り、しっかり焙煎されたコーヒーが香る。ムエットだとあまり主張を感じなかったが、肌だと存在感増し増し。コーヒーにカルダモンを入れて飲むのは中近東ではとてもポピュラーで、しかも、来客時に出すときはカルダモンを入れることが正式な作法だそう。奥から少しだけ感じるベルガモットの風味が、より爽やかさを添える。
コーヒーが落ち着くと、主役のアイリス。ふんわりと柔らかくて、パウダリーだけど粉粉しくない、とても滑らかなオリスバター。まるで灰色のベールをコーヒーに被せたようだ。少し浮遊感があるのはアンブレットのせいだろうか。「アイリスの天然香料はとても貴重で〜」と販売員さんはおっしゃっていた。香水好きならかなりの人が知っていると思うが、天然のアイリス香料を採取するには6年はかかる。現在では合成香料もあるが、やはり天然にはかなわないという。この「イリストレフィエ」に含まれるアイリスが、全部が全部天然だとは思わないけど、それでもとても魅力的な香りだ。ただ、このアイリスの香りは、コーヒーやベースの甘みに押され気味なのか、持ちが悪く行方不明になりやすい。
ドライダウンはレジン系の甘味やレザーの苦味が加わって、まるでビターチョコやココアを思わせる風味になる。そして、乾いたウッディバニラに変化して消えていく。アイリスの香りを楽しめるのはトップからミドルまでの一時間くらい、後は甘いアンバー+レザーの香りが四時間ほどで持ちは全体で約5時間ほど。
大人気だった「アイリスガナッシュ」以来のアイリスが主役のラールエラマティエールだが、正直判断が難しい香りだ。
ムエットだとアイリスのパウダリーな側面が楽しめて「名前の通りの香りだな」と思えるが、肌に付けるとアイリスよりもアンバーやコーヒーの香りが強く出やすい。パウダリーさを期待して付けると、その香りがすぐに色褪せ、ありきたりなドライダウンになりがち。単純にいい香りではあるし、いい材料も使っているのだけれど、それだけ。キレイにまとまりすぎているように感じる。もちろんそういった香りは使いやすくはあるが、最上級シリーズとしてのキャラクターに欠ける。せっかくの高級ライン、アレゴリアやモンゲランシリーズでは使えないようなクラスの香料も使っているはずなのにそれが買い手に伝わらないのは少々もったいない。
このイリストレフィエのメインの調香はワッサーではなくデルフィーヌ・ジェルクのようだ。彼女は今年これ以外にも、限定品「ルールブランシュ」も主導権を握って創作している。女性調香師が公に出ることのなかった昔のゲランとは時代が変わったんだな、としみじみ思う。マチルド・ローランとか、いまだにパンフレットに名前すら載ってないしね。
トップ:カルダモン、ベルガモット、コーヒー
ミドル:アイリス、アンブレット
ベース:バニラ、アンバー、ティー、レザー
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(フレグランティカより)
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