2022/9/2 18:55:09
夕暮れ時をイメージした新しいアクアアレゴリア、「フォルテ」のローザロッサEDPと同時発売されたマンダリンバジリックのEDPバージョン。マンダリンバジリックは人気の香りだし納得のチョイスかな、という感じはある。
それにしても、なんでアクアアレゴリアのEDPバージョンとか出したんだろ、中東地域では少し早めに発売されたそうだし、やっぱりそういうことか?それとも、ライバルといえる(?)某マローンのコ◯ンインテンスへの対抗馬か?
そんなことを考えながら腕に付けてみると、キンキンに甘酸っぱいオレンジの香りが拡がる。飲んだら歯磨きしてから寝ないと虫歯になりそうだ。せっかくなので通常EDTも出してきて比べることにした。うむ、EDTはとても爽やか、アルベド部分のような軽い苦味もあってナチュラル。フォルテの方は果汁感がアップしていて濃い。EDTが果汁100%とするなら、EDPは果汁200%にしたような印象。さらに、新EDTで感じにくくなったバジルのスパイシーグリーンが少し増えているように感じる。
構成を見てみるとフローラル部分もあるようだが私にはほぼ感じ取れず、ここからサンダルウッドとバニラチンキの香りが展開していく。クリーミーさのない暗めのサンダルウッドはローザロッサフォルテで使われているものと同じだろう。それ以上に主張してくるのがバニラチンキ。バニラのおかげかオレンジの余韻がEDTよりも長く感じる。バニラチンキは昨年好評だった限定シャリマー(シャリマーミレジムバニラプラニフォリア)にも使われていたお墨付き。サンダルウッドの香りが抜けた後も肌近くに残り続ける。持続は5、6時間ほど。
ローザロッサフォルテと比べると元々のマンダリンバジリックとしての面影は残っているし、トップが流れた後も香りがしっかりしていて、急に香りが減衰していくこともない。ドライダウンのバニラの香りがかなり強いため、シトラスの爽やかさを求める方に刺さるのかはよくわからない。やっぱり別物と考えるのがよさそうだ。
トップ:ブラックカラント、バジル
ミドル:イタリア産マンダリンオレンジ、ブルガリアンローズ、オレンジブロッサム、ブルボンバニラ
ベース:サンダルウッド
調香師は、デルフィーヌ・ジェルク。
(parfumoより)
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レ ゾー ドゥ シャネル パリ エディンバラ オードゥ トワレット(ヴァポリザター)
容量・税込価格:125ml・20,900円発売日:2021/6/4
2021/6/18 13:17:33
2018年に発売したシャネルのフレグランスシリーズ「レゾードゥシャネル」。このシリーズは春夏に使いやすいシトラスコロンのような香りが特徴だ。2019年には限定品として「パリ-リヴィエラ」が発売され(今年定番品として再販された)、2021年に新しくラインナップに加わったのがこの「パリ-エディンバラ」。いったいどのような香りなのだろうか?
トップに感じるのは冷たいジュニパーベリーに、アロマティックなサイプレス。fragranticaには記載されていないが、ほんの少しシトラスの気配も。レモンだとかグレープフルーツだとかはあまりはっきりしない、輪郭の曖昧な柑橘の香りだ。レゾードゥシャネルはスッキリとしたシトラスが特徴的なシリーズだったが、ちょっと毛色が違うスタートだ。
五分ほどでミドルへ。ラベンダーのハーバルでアロマティックな香りが出てくる。シャープで男性的というより柔らかくて角がとれていて、淡い紫色を思わせる香りだ。ときおりラベンダーの他にスモーキーで薬っぽい苦味も感じられる。何かと思って調べてみるとピートと呼ばれるものの香りらしい。ピートとは、海藻や枯れた植物が堆積してできた泥炭のことで、ウイスキーに使われる大麦麦芽を乾燥させる際に使われ、その泥炭の香りがウイスキーに移って独特のピート香と呼ばれる香りを醸し出すそうだ。この香りは、ヨードっぽいとか、磯っぽいとかあまりいい香りには喩えられないことが多いらしいが、この「パリ-エディンバラ」のピート香は不快な香りではないので安心してほしい。ラベンダーの淡い紫色の香りに少し奥行きを足す程度だ。
ドライダウンは淡いウッディムスク。バニラの甘さはあまり感じない。トップからミドルまでで二時間、ドライダウンは一時間ほどで香り持ちは三時間程度。
シトラスをはっきり効かせている他のレゾードゥシャネル四種と比べて、ラベンダーやサイプレスのアロマティックな印象が強くキャラが立っているように感じる。トップのシトラスが抑えめな分、柔らかい香りだちなので少し多めに付けても大丈夫。
ただ、抜け感が強い香りなのでオンタイムよりもオフタイム向き、お出かけよりもリラックスしたいときに手が伸びる香りだと思う。ココ・シャネルにこじつけたシトラスコロンはもうお腹いっぱい…と思っていたがなかなかどうして好印象。今夏のスタメンの一本になりそうだ。
トップ:ジュニパーベリー、サイプレス
ミドル:シダー、ベチバー、ラベンダー
ベース:ムスク、バニラ
調香師は、オリヴィエ・ポルジュ。
(fragranticaより)
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2022/5/6 18:48:04
2007年の発売以来、一度もアクアアレゴリアのラインナップから外れたことのないマンダリンバジリック。シリーズのNo.1としての立場はペラグラニータに譲ってしまったようだが、その人気はいまだ顕在で、今年のリニューアルの波も当然のように乗り越えた。外観の違いやリフィラブルになっただけでなく、シリーズ全てがビーツ由来のアルコール使用になったそうだが、果たしてリニューアル以前のものと香りは同じなのだろうか?
シュッとひと吹きすると、甘酸っぱくてみずみずしいマンダリンオレンジの香りが拡がる。そうそうこれこれ、これがマンダリンバジリックだ。頬張ったら果汁が滴り落ちてしまいそうなほどジューシー、とても嗜好性が高い。奥から少しだけ香るバジルとアイヴィーのスパイシーグリーンが、よりナチュラル感を添える。
トップが続くのは5分ほど、みずみずしいマンダリンの香りは酸味がややトーンダウンして丸くなっていく。ネロリのフローラル感が出てきたせいか。原色のオレンジに、少しホワイトが混ざってまろやかなペールオレンジの色に変わるイメージ。ここの香りが2時間ほど続く。
ドライダウンになると、色褪せたオレンジの残香に、粗いサンダルウッドとアンバーが加わって半ば強引に香りをまとめていく。このあたりは香調が崩れていく印象が強いが、アクアアレゴリアはゲランとしては安価なライン、多くを求めてはいけないだろう。ドライダウンは1時間ほどであまりしつこく残らないため、付け直しをしても邪魔にはならない。甘酸っぱいシトラスを主役にしたフレグランスは、日本人なら嫌いになる人は少ないと思う。
今回リニューアル品のレビューをするにあたって旧品と比較してみたが、旧品はリニューアル品よりバジルやアイヴィーのグリーン感が強めに出ているように感じ、マンダリンのみずみずしさはリニューアル品の方がダイレクトに感じやすくなった。リニューアル品は「マンダリンバジリック」というより「マンダリンマンダリン」。このあたりは大衆の好みに迎合した結果かな。ただ、トップのオレンジの嗜好性が高い分、ドライダウンの粗さは気になる。
値上げというわかりやすい変更にばかりフォーカスされがちだが、新旧香りをよく比べてみると面白いかも。
トップ:クレメンタイン、ビターオレンジ、オレンジブロッサム、グリーンティー、アイヴィー
ミドル:マンダリンオレンジ、バジル、カモミール、ピオニー
ベース:サンダルウッド、アンバー
調香師は、マリー・サラマーニュ。
(fragranticaより)
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2021/1/15 12:31:29
シャリマーのクチコミを見ていた。
「若い子には似合いません(>_<)」
「おばさんの香りです」
そう書いてあった。それも仕方ないかと思う。もうすぐ百周年を迎えるシャリマーは、世界初のオリエンタル系フレグランス。いくら当時の万博で最高賞を受賞したとしても、現代好まれる香りの系統とは限らない。五代目調香師ティエリー・ワッサー曰く、「1925年当時のシャリマーを再現してみたが、現代人が好むかはわからない。」と。ゲランもLVMHの一員である以上、新規顧客の開拓は責務だ。そこでシャリマーを、2011年にワッサーが若向けにアレンジしたのが、シャリマーパルファンイニシアル(日本未発売)。ワッサーが十代の姪っこに「私にも使えるようなシャリマーがほしい(海外でも大人の香りという認識なんだな)」と言われたのがきっかけだそうだ。@コスメの製品情報にはイニシアルローの復刻と記載されているがそれは間違い。公式サイトのフランス語バージョンにそう明記されている。
イニシアルのトップは、元々のシャリマーと同じくシトラスから始まる。酸味の強いベルガモットに、オレンジの甘さがプラスされ、キンキンした酸っぱさがやわらげられている。そして、奥からうっすら香るぱさっとしたアイリスの粉感が元々のシャリマーを思わせる。
ミドルからじわじわと甘さが増してくるのはオリジナルと同じ。キャラメルとムスクのベースを背景に、徐々にターキッシュローズの蜜っぽい甘さがはっきりしてくる。元々のシャリマーはトップ:ミドル:ベースの割合が6:1:3、フローラル感はかなり薄いのだが、イニシアルはローズがそれなりにわかる程度には感じられる。
ベースで幅を利かせているのはキャラメルとホワイトムスク。ムスクの出すふんわり感と粉っぽさのおかげか、キャラメル風味の綿菓子のようだ。シャリマーお馴染みのバニラももちろん顕在だが、オリジナルのようなざらざらとレザリーなバニラではない、可愛い甘み。そこにアーモンドのツンとした辛さにトンカビーン、香水らしさを足す少々のパチュリといったところ。香りの持続は7〜8時間程度。ベースの甘さが主張するため、中々ロングラスティングだ。
イニシアル(シャリマーパルファンイニシアル)と、オリジナルのシャリマーとの相違点は、
・トップ→ベルガモットにオレンジを足して酸味をマイルドに
・ミドル→フローラルの甘さをよりハッキリと
・ベース→バニラに合わせるものを、スパイス&レザー&アンバーからキャラメル&ムスクに置き換えてより現代的に
といったところ。キュートなフロリエンタルの衣装を身にまとったシャリマーだ。ちなみに、パルファンイニシアルはワッサーの自信作だったそうで、シャリマーのフランカーの中ではかなり人気があった。
ところでこのイニシアル、元々のシャリマーパルファンイニシアルとそっくりさん度は80%ほどだと思う。ベゼドゥルシーとモスクワよりかは元々に近い。しかしなんだか、妙にモヤっとしたムスクが増えているように感じる。より現代的なアレンジだろうか?「未知の世界へ飛び込んでいくときの胸の高鳴りの香り」という、たいそうな売り文句が付いているが、高鳴っているのは間違いなくプライスの方だ。
最後に、Persolaiseの記事において、ワッサーはこうも言っていた。
“There is only one Shalimar. But frankly, I work for a company and we're not philanthropists, we have to make some money. The sickness of making flankers every five minutes is very upsetting, but if I don't want to get kicked out for not doing my job, I have to do it.”
トップ:ベルガモット、オレンジ、ジャスミン
ミドル:ターキュッシュローズアブソリュート、アイリスパリダ
ベース:バニラ、トンカビーン、ホワイトムスク、キャラメル、アーモンド、パチュリ
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(フレグランティカより)
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2020/11/20 11:54:12
以前のコレクション別の分類から、香りの系統別に分かれたキリアンに新しく追加されたOlfactive Family、“The Liquors”。この「エンジェルズシェア」は、コニャックが熟成する過程で自然に蒸発して減っていく分を「美味しくて天使が飲んでしまった」と例えることから生まれた香り。
トップからはっきり感じられるのはコニャック。この香りは本物からエッセンスを抽出しているらしく、「芳醇」という言葉がふさわしい。ひょっとしたら飲めるのでは?と思うほど(もちろん飲んではいけない)。オーク樽のちょっと焦げたような風味、ぎゅっと煮詰めたようなフルーティーな甘さ、そしてアルコール濃度が高い酒を口に含んだときのような熱さを感じる。キリアン・ヘネシーがプロデュースするフレグランスにぴったりのスタート。
コニャックの熱が和らぐと、甘辛いシナモンが爽やかさを添える。トップから続くフルーティーなアコードが沈まないように香りを押し上げているようだ。同時にクマリンが乾いた甘さをプラスしてより香りに奥行きを与えている。
ドライダウンはキャラメルの甘味やナッツのコクが存分に感じられるプラリネに軽めのサンダルウッド。ベースが甘いのは、ヘネシーのコニャックは甘めなことに由来すると思われる。持続はかなり長く、八時間ほど。フルーティーなリキュール、プラリネのコクのある甘さ、彩りを添えるスパイスやオーク樽の香りが詰められたこのフレグランスは、まさに「エンジェルズシェア」。あまりに美味しいから天使が少し飲んでしまった、という例えも納得だ。
エンジェルズシェアがリリースされると聞いたときは、「ストレートトゥヘブンとキャラ被りしているのでは?」と思ったが、実際に香ってみると、ストレートトゥヘブンはラム、ドライフルーツ、苦いパチュリ、ホットスパイスの入り交じった、香りの起伏が少ないフルーティーウッディスパイシー、エンジェルズシェアはコニャック、フルーティーアコード、キャラメルにウッディと香りの変化をしっかり感じられるグルマンオリエンタルウッディ。両者はしっかり住み分けができているように感じた。シドニー・ランセッサーもホッと胸を撫で下ろしていることだろう。
「リカーズ」の二種類は、ボトルが今までと違い、ロックグラスを模した意匠。外観もさることながら、スプレーの質が向上したことにも驚いた。従来の50mlボトルはべちゃっと一ヶ所に固まって付きやすく(リフィルを入れるためにボトルの根元を一度開けてしまうとさらにひどくなる)イマイチだったが、リカーズのスプレーはまんべんなく付けることができる。質の向上は大変うれしいが、できれば最初からそうしてくれよ、とも思った。
トップ:コニャック
ミドル:シナモン、トンカビーン、オーク
ベース:プラリネ、バニラ、サンダルウッド
調香師は、ブノワ・ラプーザ。
(フレグランティカより)
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