2022/11/11 18:12:32
モンパリと並んですっかりイヴサンローランのアイコンフレグランスとなったリブレシリーズ。一度流行り出すとアレコレ派生作品が発売されるのはファッションフレグランスあるあるで、リブレシリーズも例外ではない。オリジナルのEDPに続き、EDPアンタンス、EDT、そして今年四作目の「リブレ ル パルファム」。シリーズ史上最も濃厚で深く香りが続き、新時代の色気を象徴する、というキャッチコピーだ。
濃厚だというくらいだから、確かに香水自体の色は濃い。当然のように着色だけど。さっそくスプレーしてみる。トップから甘いな。リブレシリーズ共通のフルーツキャンディみたいなポップな甘さ。「ルパルファムは他のリブレと違ってトップにジンジャーとサフランが入っていて温かみがある香りなんですよー」なんて説明を受けたが、んー、正直サフランもジンジャーも存在感がなくてよくわからない。多少スパイシーなニュアンスがあるかな、という程度。
やや水っぽいオレンジも加わり、リブレの代名詞といえるラベンダーとオレンジブロッサムが展開してくる。リブレシリーズのラベンダーは清涼感はあるもののけっこうフローラル感が強いフェミニンなタイプのものが使われていて、もちろんこのルパルファムもそう。合わせられているオレンジフラワーは甘さ強め、ちょっとジャスミンっぽいニュアンスもある。ラベンダーは割と早めにフェードアウトし、オレンジフラワーとジャスミンの二重奏がだいたい二、三時間ほど続く。
最後はバニラとトンカビーン、ライトウッディがホワイトフラワーを緩やかに支えながらドライダウンしていく。香り持ちは全体で五、六時間ほど。「リブレ史上最も濃厚」というキャッチコピーではあるが、アンタンスや通常EDPとそう変わらないかな、という印象だ。香りの構成だけ見ているとニッチやメゾンフレグランスにありそうな香りだが、よくも悪くもファッションフレグランスのメインストリームといったところ。
日本語ではカッコがきでパルファンと書いてあるが、アルファベット表記シールはEDPだ。EDTやEDPといった賦香率別の名称に法的拘束力はない。賦香率1%のものをPと言ってもいいし、賦香率30%のものをEDCと言ってもいい。もう少し香り自体に他バージョンと一線を画すような濃厚さや深みがあればあえてそういう表記にしたのかなと思えるが、なんだか狡い印象で微妙にケチが付いてしまったのは残念だ。
トップ:ジンジャー、サフラン、マンダリンオレンジ、ベルガモット
ミドル:ラベンダー、オレンジブロッサム
ベース:ブルボンバニラ、ハニー、トンカビーン、ベチバー
調香師は、アン・フリッポとカルロス・ベナイム。
(fragranticaより)
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
-
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:60ml・14,080円 / 100ml・18,370円発売日:2022/2/4
2022/4/8 14:21:48
トップからガツンと甘い。芳醇でフルーティ、アルコール濃度の高い酒を思わせるような酔わせる香りで、実際のウイスキーからアブソリュートを抽出して使用しているようだ。その中にほんの少し搾られたベルガモットのアロマがアクセントになっている。
甘いウイスキーの余韻をたっぷり残しつつ、レジン系の甘さもプラスされてさらに深くなっていく。同時に輪郭のはっきりしない曖昧なフローラルノートの存在も感じられる。構成を見るとアイリスのようだが、個人的にはオーキッドのように思えた。
ドライダウンになると、甘さはやや落ちついた雰囲気になり乾いたウッディとダークなパチュリが目立ってくる。持続は甘い香りらしく長め、7、8時間ほど。
とろりと甘いウイスキーの香りに、暗めのウッディが合わさった香りはまさに大人の男性の香り。夜の外出や秋冬にはよく合うと思う。浮ついていない甘さはきっと男性の魅力を後押ししてくれるはず。この香り、本当に通常シリーズでいいのか?
以前、ジバンシイの高級シリーズ「ラ コレクシオン パルティキュリエ」のアンフラメというフレグランスの口コミをしたが、こっちの方がよっぽどアンフラメ(燃え上がるような)という名前にふさわしい。口の中が燃え上がるように熱くなる強い酒を呑んで、その甘さに酔いしれて溺れていく。ひょっとしたら中身入れ間違えたとか。酔っぱらってんじゃねーか。
なにはともあれ、最近のジバンシイのクリエイションにはあまり心惹かれなかったが、久しぶりに「これは買いだ」と思えた。香水はどんどん高騰していくが、このように高過ぎない価格で素晴らしいと感じる香りを探していきたい。
トップ:イタリア産ベルガモット、スコッチウイスキーアブソリュート
ミドル:イタリア産アイリスコンクリート、中国産アイリス、シャム産ベンゾイン
ベース:バージニア産シダー、ハイチ産ベチバー、インドネシア産パチュリ
(parfumoより)
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
2021/4/2 13:10:10
香水の評価をする上で重要なファクターのひとつは香りの持ち。どれだけいい香りでも、すぐに消えたり褪せたりするととてもコスパが悪く感じてしまう。個人的には、EDTなら三時間、EDPなら四、五時間は持ってほしい。EDCなら三十分?一時間。そういう基準で考えるなら、ゲランのオーデフルールセドラは評価が難しいフレグランスだ。
古典的シトラスコロンであるオーデフルールセドラの発売は1920年。ゲラン三代目調香師であるのジャック・ゲランの作品。百周年であった昨年、とても豪華な記念ボトルも発売された。
プッシュすると、爽快なシトラスミックス!眩しいばかりに輝く鮮烈な柑橘類の香りだ。このEDCの一番いいところは、この付けた瞬間。弾けんばかりの爽やかなシトラスの香りが一番際立っているとき。柑橘を皮ごとギュッと目の前で絞った香りだ。本当にレモンそのまんま。レモンより段違いに高いけど。
付けて2、3分もするとかなり香りが減衰してくるのがわかる。体感で付けたてから50%ほど。そして、目まぐるしい勢いでどんどん弱くなる。そのまますっきりさっぱり、残香もなく消え去る。持ちは肌に付けると5分(!)、ムエットでも10分持つか持たないか。シトラス系香料ばかりで作るとこうも持続が短いのか。EDCとは言え、こうも短命だと(5分持つだけ某ヒーローよりマシか)少々悲しい気がするが、このフレッシュさは短命さと引き換えにあるのだろう。後残りしない分、他のフレグランスを使っていても気兼ねなく使える。暑い日に服の上から満遍なくスプレーするのもいい。個人的には、起床時等リフレッシュしたいときや、他の甘い香りに重ねて使うのが好きだ。
ノート:ベルガモット、レモン、シトロン
調香師は、ジャック・ゲラン。
(フレグランティカより)
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
2020/7/18 21:01:54
最高の薔薇香水は?とゲランファンに尋ねたら、多くの人が「ナエマのパルファム!」と答えるほど、人々を魅了してやまなかったナエマ。Pは残念ながら世界的にディスコンになってしまい、現在はこのEDPのみの展開。
トップに香るのは、溶けたワックスのようなアルデヒドとグリーン。このグリーンがなかなか癖があり、すっきりした新緑系グリーンではなく、あく抜き前の山菜のような渋さと苦さがはっきりと感じられるタイプ。実はちょっと苦手。このアルデヒドと渋苦いグリーンのせいで、トップだけだとかなりツンツントゲトゲとして取っつきにくい。
ほどなくすると尖ったグリーンも緩んで、蜜っぽい甘さを持ったローズに。桃のようにフルーティで可愛らしいバラの香りだ。このバラの香りの部分、付けた腕を遠くから嗅ぐとローズ単一香のように思えるのだが、鼻を近づけると思いのほか多層的なフローラル。少なくとも、ヒヤシンスのグリーンフローラルとライラックの蜜っぽい甘さは感じる。他にもいろいろピラミッドには記載があるようだが、私にはよくわからない。
ドライダウンは、フルーティローズの残香にウッディなバニラが加わって締め。ミドル〜ラストにかけて、しっかりローズの香りは残っている。持続は6時間ほど。トップのアルデハイドグリーンさえ乗り越えれば、わりと付けやすいローズ香だと思う。ただ、日によってはトップの攻撃的なグリーンが長く続いてしまう。なかなか気難しい姫君だ。もうちょい使う人に寄り添ってくれる愛想があれば助かる。
一時期廃番の噂が流れていたが、2021年1月にボトルと容量が変わって(容量100mL→75mL、ビーボトル風スプレーボトル→逆さハートボトル)再販された。なんとか存続してくれてほっとしている。
トップ:アルデハイド、グリーンノート、ピーチ、ベルガモット、ローズ
ミドル:ライラック、ジャスミン、ヒヤシンス、イランイラン、スズラン、ブルガリアンローズ
ベース:ペルーバルサム、パッションフルーツ、サンダルウッド、バニラ、ベチバー
調香師はジャン=ポール・ゲラン。
(フレグランティカより)
- 使用した商品
- 現品
- 購入品
2021/8/27 15:38:54
ディオールの香水と言えばミスディオール(特にローズ&ローズやブルーミングブーケ)。鮮やかで華やかなピンク色の現行ミスディオールシリーズの影に隠れているのがこの「ミスディオールオリジナル」。BAさんに「オリジナルの方ありますか?」と尋ねると、棚の奥からよっこいしょと出してくれる黄色い香水だ。この「ミスディオールオリジナル」が、1947年に発売されたディオール初のフレグランス「ミスディオール」の面影を色濃く残す香り。このシリーズは現在EDTとPの二種類の展開で、このクチコミはP濃度のもの。
ミスディオールオリジナルの香りは、クラシカルなガルバナムから始まる。キンキンと甲高く、鼻を刺すほどのスパイシーグリーン。現行のミスディオールシリーズに慣れていると、「なにこれ!?おじさんのトニックじゃん!!」という感想になるだろう。ガルバナムの奥から香るセージとシトラスが、少しすっきりとした印象を添える。
体温に温められてガルバナムが落ち着くとミドルへ。目立って感じられるのはジャスミンとローズドゥメ。かなり重めで存在感のあるフローラルミックス。クラシカルなシプレフローラルらしく、どっしりと厚みがある。
公式曰く、使用されているのはサンバックジャスミンとローズドゥメのアブソリュート。15ml27,000円(いつの間に値上げしたんだ)もするのだから、ふんだんに使われているのだろう。でないと困る。トップから続くガルバナムの尖ったグリーンの余韻が、フローラルにみずみずしさをプラスしている。時おり、ふっとナルシスのようなスモーキーな香りやクローヴ調のスパイシーさも感じられるときもある。ここの香りが5〜6時間ほど続く。
ドライダウンになると乾いたパチュリとオークモスの存在感が増してくる。どちらもしっかり効いているので、かなりクラシカルなシプレの印象だ。全体的な香り持ちは7〜8時間程度。
ピンクのミスディオールシリーズのフルーティーフローラル〜フロリエンタルとは違って当然、現行のミスディオールシリーズは、2005年にクリスティーヌ・ナジェルによってムッシュー・ディオール生誕百年を記念して作られた「ミスディオールシェリー(ストロベリーやポップコーンを足した甘いシプレ〜フロリエンタル)」から派生したシリーズ。スタートから違うのだ。
率直な感想を述べると、この「ミスディオールオリジナル」は現代受けする系統の香りではないし、流行りのシンプル&ライトな香調でもない。ガルバナムやモスは古臭い、おばさん臭いとしか受け取られないと思う。そもそも売れていたらもっと大きく店頭に飾られて、派手なプロモーションをするだろう。もしこのミスディオールオリジナルがバカ売れしている世界線があるなら、きっとゲランの夜間飛行をはじめクラシカルな香調のフレグランスが堂々たる佇まいで飾られていたんだろうな、と思う。
ノート:ガルバナム、ローズドゥメ、モス、パチュリ、ジャスミンサンバック
調香師は、フランソワ・ドゥマシー。
(fragranticaより)
- 使用した商品
- 現品
- 購入品