2021/12/25 12:28:32
トップはシャネルらしいクラシカルなアルデヒド。5番や22番を思わせるスタート。そこにみずみずしいベルガモットと、軽く弾けるピンクペッパー、そして少しパウダリーなホワイトムスク。うーん、あまり面白みはないかも。
すぐにミドルへ移行し、クリーンなホワイトムスクを中心に、うっすらとホワイトフラワーを重ねた清潔な香りになる。ここのホワイトムスクがソーピーな印象が強いため、いわゆる石鹸風の香りに落ち着く。
ドライダウンになると、乾いた印象のシダーウッドに、ソーピーなホワイトムスクが少し暖かさを帯びてくる。おそらくカシュメランだろう。そこにほんのりバニラの白い甘さが出てくるともう終わり。ミドルまででニ、三時間、ドライダウンは四時間ほど。
トップからラストまで複数のムスク(8種類らしい)を効かせたこの1957、香り全体の印象は、徹底的に「清潔、クリーン」。トップのクラシカルなアルデヒドさえ消えれば、割と万人に好かれやすい香りだと思う。
しかし、どうにもこうにもお行儀が良すぎる。今のシャネルの香水のイメージを作り上げた三代目専属調香師ジャック・ポルジュのクリエイションとどうしても比べてしまう。こんな当たり障りない香りは、ココ・シャネルのイメージには合わないのだ。
かつてココ・シャネルは「センスのいい香りをほんの少し身につけろ」とは言ったけれど、そのセンスのいい香りはおそらくこんな香りではない。
トップ:ホワイトムスク、アルデヒド、ピンクペッパー、ベルガモット、コリアンダー
ミドル:ホワイトムスク、オレンジブロッサム、ジャスミン
ベース:ホワイトムスク、オリス、シダー、カシュメラン、ハニー、バニラ
調香師は、オリヴィエ・ポルジュ。
(fragranticaより)
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2021/12/17 13:04:39
「私の人生の最も美しい日」という名前のこのフレグランスは、ブーケドゥラマリエというかなり高価な限定香水のEDPバージョン。そのブーケドゥラマリエのテーマは結婚式、花嫁に捧げる香りだったそうだ。
一瞬弾けるピンクペッパーに、甘いシトラスフルーツ。オレンジの甘さがメインだと思う。さこにアンジェリカのハーバルな苦味が加わることで、フルーティな印象を引き締めていく。
オレンジの後ろから、マルトール的な甘さが強くなっていく。うん、けっこう甘い。parfumoや公式サイトによるとドラジェのアコードが入っているらしい。ドラジェは婚礼、洗礼等の慶事で配られる祝い菓子。花嫁イメージの香りにはぴったりだ。花嫁といえばもちろん、手にはブーケを持っている。彼女の持つブーケは、ローズとワサお得意のオレンジブロッサムだ。オレンジブロッサムの香りが優勢だが、ローズの甘さももちろん感じられる。
ドライダウンは真っ白に広がるムスクに、フランキンセンスの酸味、そして隠し味のパチュリの苦味。かなり甘いがグルマンというよりフロリエンタル系統、持ちも8、9時間とかなりいい。
甘いシトラスフルーツに、多幸感溢れるオレンジブロッサムと薔薇のブーケ、そしてドラジェアコードでボジュールドゥマヴィ(人生で最も美しい日)のイメージにぴったりの香りだ。しかし、気温や湿度によるのかたまにパチュリの苦味が妙に出てきやすいときがある。結婚式で終わりじゃない、人生はまだまだこれからだ、ということなのだろうか。
現在、公式サイトには記載がないがカラービーボトルにフィリングサービスを行なっている店舗で125mL44,400円+税でオーダーできる。元々の価格(60mL35,000円+税)を考えるとかなりお得だ。
トップ:アンゼリカシード、ピンクペッパー、シトラスフルーツ
ミドル:ドラジェ、ローズ、オレンジブロッサム
ベース:パチュリ、バニラ、ホワイトムスク、フランキンセンス
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(parfumoより)
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2021/12/18 12:54:49
「ボンジュール、マドモアゼル!」かつてフランス映画でよく耳にした言葉。カフェのギャルソンあたりがニッコリ笑顔とともに若い女性に声を掛けるシーン。ところがこの言葉、最近ではあまり聞くことが少ないという。それはなぜか?
「マドモアゼル」の意味は「お嬢さん」。フランスでは独身女性に対して使う言葉として知られるが、今や誰が未婚か既婚か言い切れない時代。そこで、若そうだからと前述の挨拶をするとフランス女性は憤慨することが多いそう。それは「半人前」扱いで侮蔑されているといった捉え方からくるようだ。そうした経緯もあってフランスでは、2012年に「マドモアゼル表記は性差別にあたる」として行政文書に書くことを禁止した。つまり、性別欄の記入は「マダム」で統一されたということだ。
そんな中、2014年にあえて「マドモアゼル」をネーミングに用いたのが、マドモアゼル・ゲランという香水。もちろん日常的には使ってよい言葉だが、これは「対ココマド戦」も表明した、ある意味強気なネーミングだ。実際は、ゲラン5代目調香師ティエリー・ワッサーが作ったラプティットローブノワール2(以下LPRN2、2012年)と香りがほぼ同じようで、ボトルと名前を変えて復刻したという位置づけの作品。125mlで3万7千円ほど。流石に店舗限定名香シリーズ、価格はお嬢さんならぬ「お冗談?」というくらいまあ高額。
では「ゲランのお嬢さん」、香りの方はいったいどんな感じなのか?
マドモアゼルゲランをスプレーすると、まず飛んでくるのは、レモンの酸味と青くて苦いグリーンな草の香り、ガルバナムだ。ここはシャネル19番の向こうを張ったようだ。グリーンでビターな香りは、どんどん強くなる。ヴァイオレットリーフの土っぽいシャープさも絡んでいるようだ。つけて5分はこの2つ、爽やかさと辛辣な苦味が強く主張する。さながら上目遣いで大人達に一瞥をくれるハイティーンの女の子のように批判的な開幕。それは初対面の者に対する容赦ない警戒。
少しすると、そのシトラス&ガルバナムの影に、甘く暗いチェリーやレッドベリーの香りがうずうずしている気配が感じられてくる。相手の出方と隙をうかがう混沌とした雰囲気。牽制のジャブを放つような鋭さがある。けれど、ジャブを出せば出すほど、自身の警戒がほどけてゆく。次第に少女らしい優しさや可愛らしさが時折そっと顔をのぞかせる。それはマシュマロのような甘さ、ふわふわとした柔らかいパウダリーな香り。それらが硬く閉ざしたガードの奥から静かに香り出してくる。
そして肌にのせて30分後、鋭いグリーンと苦味は風と共に去り、そこにはうつむいたシャイな少女が出現する。真っ赤なストロベリーキャンディとピンクマシュマロの香り。毒々しい色をつけた甘い甘い砂糖菓子の匂いが立ちこめる。それはフリルのついたスカートと赤い靴をはいた、わがままいっぱいのリトルガールの香り。
この甘くキャンディチックなミドルが割と長く続く。
付けて1時間ほどすると、いちごキャンディ&マシュマロな香りに、クリームシフォン様の香りが重なってくる。ほんのりヴァニラクリームの香りが、全体の甘さをまろやかに包み込んでくる。そこに粉雪のようなパウダーシュガーが、これでもかとたっぷりのせられている。まるで身体をすりつけて甘えてくる猫の柔らかな毛並のように、なめらかで温かい香りになる。このあたりのラストは目を見張るスイートパウダリーだ。
最後はふくよかで美しいパウダリー香のまま、甘く狂おしく、付けてから6〜8時間で終息する。
まとめると。
マドモアゼルゲランは、トップの爽やかさと強烈なグリーンの苦味で思春期の鋭さや辛辣さを表し、ミドルのベリー&マシュマロのグルマンタッチで、揺れ動きながらも笑顔と女性らしい甘さを獲得したかのようなイメージ展開をする。そこからラストに向けてアイリスのパウダリーとマシュマロの甘さが広がり、完成された女性の美しさや柔らかさを見せる。
この香水は名前とは裏腹に、とても変化に富んだ中上級者向けのフレグランスだと思う。特にトップの多層的な複雑さは、香水初心者の方やマドモアゼル世代が苦手と感じる部類な気がする。これは、口をとがらせた少女から目力の強い女性へ、そして微笑の似合う優しい淑女へと美しく変身し続けてきたマダムにこそ似合う香りだ。
かつてLPRN2と呼ばれた香りは、時を経て真にふさわしい名を携えて帰ってきた。ゲランマドモアゼル。それはきっとマドモアゼルに向けた香りではない。実際は言えなくても、つい「ボンジュール・マドモアゼル!」と声を掛けたくなるような
颯爽として美しく、いつまでも可愛らしい、大人マダムのための香りだ。
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2021/12/4 13:49:43
女性におすすめしたいヴァニラ香水は?と聞かれたらこう答える。まずはゲランのスピリチューズ・ドゥーブル・ヴァニーユ(以下SDV)を試してみては?と。ただし賛否両論の多い香水ではある。好きな方は「最高のヴァニラ」と評するが、そうでない方はこんな風に言う。「木の香りしかしない」「ヴァニラが薄い」「値段が高い」(←それな)。
ドゥーブル・ヴァニーユ。「2倍のヴァニラ」という名の香り。ゲラン最高峰シリーズの香水で、価格も高いが人気もダントツの香り。ではなぜ評価が分かれるのか?
実は、SDVをつけた瞬間に立ちのぼる香りは2パターンある。ダークラムの洋酒っぽい香りが強く出るときと、鉛筆を削ったときの香りのようなシダーのウッディが主張してくるときだ。その混合比も日によって変わる。これは天然香料がふんだんに使われている証拠。だが、ここでウッディを感じる方には割と評価が低いようだ。
温かく酔わせるようなダークラムの香りと、冷たく内省的なシダーウッドの香りは、対比関係にある。それでもこの2つは、ほぼ同じ高さで香る印象だ。互いに拮抗しながら、絡み合うよう交互に現れる。さながらダブル香料トップといった感じ。
この2つの茶色い香料のせめぎあいは、静かながら顕著だ。日によってどちらが優位に出るかが異なる。その日の気温、体温、湿度、肌の状態等で、シダー優位orラム優位にふわふわ変わる。
まずここで「ヴァニラは?ヴァニラはいつくるの?」と思っている方は、肩すかしをくうだろう。実はこの香水、揮発の遅い天然ヴァニラを使用しているため、つけてしばらくしないと出ないからだ。
30分ほどすると、わずかにローズの片鱗が感じられるようになる。そこからはラムとシダーにとって変わるように、やっとヴァニラ香が立ちのぼってくる。
そしてこのヴァニラの香りは、確かにただものではない。
つけてしばらくして現れるヴァニラ。それはほんのりカラメル香が効いていて、クリーミーで、ラムのコクをまとった最上級のヴァニラだ。ただし、香り立ちは弱め。ふとしたときに鼻をくすぐる程度のまろやかさだ。合成ヴァニラの強さが好きな人は、ここでまたがっかりするかもしれない。だが、柔らかいベンゾインの甘さも伴ったヴァニラは、この作品でしか味わえないのでは?というくらい繊細できれいだ。そしてつける人の肌で香り立ちが変わる。だから、肌にのせたとき初めてその人のヴァニラ香になる。
ラストはラムとシダーの残香を残しながら優しくフェミニンなヴァニラで終息。時間は人にもよるが、6〜8時間ほどでドライダウン。
まとめると
SDVは、ラムとシダーのスパイラルトップから始まり、ゆっくりゆっくりヴァニラ香に変わってゆく熟成された香水だ。そのヴァニラは高級なれど、強くはない。バニリンを加えたとしても、とても2倍に増やした感じではない。一体どういうことなのか?そのヒントはこの作品名に隠されているように思う。
この香水の正式名称は「スピリチューズ・ドゥーブル・ヴァニーユ」だ。これを英訳すると次のようになる。
「Double Vanilla Spirit(ダブル・ヴァニラ・スピリット)」
英語の「スピリット」には、「アルコール(酒)」という意味と「魂・精神」といった複数の意味がある。だとするとこれは、一般的な「ヴァニラ2倍」という意味だけでなく、「ヴァニラの酒」という意味と「ヴァニラの精神」という意味、「2つ」をもたせた掛け言葉、ともとれる。
そうした視点から、ジャン=ポール・ゲラン、最後の作品となったSDVに込めた思いを想像してみる。
1つ。極上の天然ヴァニラには、ラム酒(スピリット)に似たファセットがある。それは合成香料のバニリン等で自然に出せるものではない。ゲランが独自に仕入れた最高級の天然ヴァニラにしか出せないものだというプライド。
1つ。ゲランにとってのヴァニラは、ゲルリナーデの根幹を成す重要な素材。その精神(スピリット)を忘れるな、という後進へのメッセージ。
この2つの「ヴァニラのスピリット」を込めた作品、という意味ではないだろうか。
別にそれが事実でなくてもいい。自分はそう受け取めた。4代にわたって香水帝国を築いてきたゲラン家の最後の調香師ジャン=ポール。彼がブランドの経営から退く際、言葉には言い表せぬ思いが多々あったことは推測に難くない。それらの思いが、この最後の作品の1つに注がれていたことは間違いないだろう。
スピリチューズ・ドゥーブル・ヴァニーユ。それは
あなたの肌にのせたとき、初めて完成する美しいヴァニラのお酒。いつまでもあなたの感性を刺激し続ける、ゲランのヴァニラの魂。
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2023/1/28 02:52:04
【口コミ追記】
スマホの写真を整理していたら写真が出てきたのでUPします。
そういえば写真とってたわ。
写真はちょっと使っちゃってから撮ったので、中身減ってます。
あと、内容量は20mlではなく17mlでした。
すっくな!コスパわっる!
以下口コミ↓
最初はテンション上がってましたが、やはり、ワンプッシュで出る量が多くて、私には香りがキツくて…香りの濃度を調節できず困っていたところ、「寝室の空間に吹きかける」ということを試してみたら解決しました。
幸せなナイトタイムが過ごせるようになりました。
寝室に行く5分前くらいにベッドより上の空間にワンプッシュ吹きかけて準備しておくと、ちょうど良く仕上がってくれます。
香りがキツくて悩んでる方は、ルームフラグランスやファブリックミストのように使うことをオススメします。
【以前の口コミ(2021/12/18)】
元々アユーラの入浴剤メディテーションバスの大ファンで、その香りの香水とのことで発売前から気になっていて、今回やっと買いました。自分へのご褒美です。
いや、ちっさ!えっ、いや、ちっさ!
思ったより小さくて…20mlです。
4400円と香水にしてはかなりリーズナブルな価格なのでそりゃそうか。
ならもし100mlサイズなら22000円か。うん。別にリーズナブルってわけでも…妥当だな。
いきなり2万円ではなく、試しやすい量と価格設定にしてくれているところに好感度大です。
手のひらに収まるフォルムが愛らしくてずっと眺めたくなっちゃいます。
可愛い。海に生息してそうなタケノコ?ミョウガ?です。
センターオブジアースとかに発臭&発光しながら生えてそう。発臭て…
香りは本当だ、すんごいメディテーションバスです。本当に入浴剤の香り。
あ”ぁ”〜いい香りデズ…。ズギダ…ゴノガオリ”…
海外にはない香り、日本だからこその香りです。
有名な香水をバスエッセンスにするのは良くある話ですが、入浴剤を香水にするのはこれ以外知らないです。
1プッシュでボシュッと結構量出てきて強く香るので、私は1プッシュで十分リラックスできます。
推奨の3プッシュは私には多すぎです。3プッシュだとナイトトワレなのに濃すぎて嬉しくて開眼しました。
香害がでにくい万人ウケする香りなので、寝る時だけでなくて普通に使ってます。
トップノートは香り強めなのに持続力は2〜3時間くらい。まぁトワレらしい持続力。
ナイトテーブルに置いてあるだけで、もうそれだけで毎晩癒されています。
楽しいお買い物をしました。
香水さん好きには是非1本持っていただきたい、コレクションに入れて欲しい、そんなポジションの香水です♪
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