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ゲラン / シャリマー 香水

ゲランゲランからのお知らせがあります

シャリマー 香水

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・48,400円発売日:2002/1/2

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7購入品リピート

2016/7/2 01:18:34

シャリマー、それは女性用香水の至高の逸品。あらゆる年代の女性の魅力を底上げする香り。
女性の美しさ、高貴さ、甘美さをひきだす琥珀色のヴェール。男性の本能を無意識下で揺さぶり続け、心に刻みつける香り。恍惚の媚薬。

この世には、本当に出会った瞬間、衝撃でのけぞるような香りがある。自分にとって、シャリマーはその1つだった。本当にときどきしかないが、初対面で心を奪われる人がいるように、香りにも心をわしづかみにされる物がある。「何を大げさな」と感じる方は、まだ出会っていないだけかも知れない。かけがえのない人にも、心震わせる香りにも。

だが「彼」は出会った。その人生において、何者にも代えられない運命の女性と。

ムガール帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーン。彼と彼の愛妃、ムムターズ・マハルの物語。シャーはハーレムにいた他の女性には目もくれず、ただひたすらにタージ(ムムターズの愛称)だけを愛し、その間に13人の子をもうけたという。14人目を身ごもったタージが亡くなったとき、シャーの悲しみは天空を裂き、全ての権力と財を注いで、総大理石造りの彼女の霊廟、タージ・マハルを何十年もかけて建設させた。この愛の逸話はつとに有名だ。

もしもこの逸話に感銘を受けたジャック・ゲランが、「タージ・マハル」という名の香水を作っていたなら、それはおそらく、彼の叔父であるエメ・ゲランが作ったジッキーのように、愛する者との別離や深い喪失の色を呈した、もの哀しげなフレグランスになったことだろう。だが、彼はちがった。

ジャック・ゲランは、一途にタージを求め続けたシャーの偏愛とも言うべき姿を、2人が愛を睦み合った庭園の名である「シャリマー(愛の殿堂)」というイメージに凝集した。それは、愛する者を失った悲しみ以上に、深く強く心に刻まれていたであろう2人の歓喜の日々。そんな美しく官能的な日々を彷彿させるあたたかい香りだ。センシュアルではあれど、エロティックにはあらず。

そんなシャリマーのトップは、強烈なハーブと樹脂の辛みとベルガモットが、噴水のように空気中に霧散して開く。まるで、チェリーコークに花々やハーブを入れて煮詰めたような雰囲気だ。そして、確かにジッキーのオープニングを思わせる。シャリマーは、ジッキーのノートにさらに香料を加え、重層的にリファインしていく中で作られたようなので、なるほどと思う。心をわしづかみにする強烈なベルガモットの拡散と、その下から同じ熱量で鼻を刺激してくる薬草や樟脳っぽいスパイシーなオープニング。好き嫌いはあるにしても、ひとかぎで他の香水と全く違う繊細な複雑さ、高級さが感じ取れると思う。けれど、高慢ではない。絶え間なく鼻と脳を刺激し続け、あっという間にとりこにされる。まるで、シャーとタージの衝撃的な出会いのように。

そしてすぐにミドル。炭酸のように拡散していたベルガモットが落ち着いてくると、シャリマーのミドルは、驚くべきことに温度が上昇する。ここがジッキーとの大きな違いだ。もっと甘くかぐわしく昇りつめていく。暗くパウダリーなアイリスと樹脂の甘み、パチュリの苦みが入り混じり、重奏を奏でる。低い太鼓が鳴り、シタールの調べが聞こえる中、松明のオレンジ色の灯りに照らされて、2人の体温がどんどん上昇してゆくイメージ。それは、燃えさかる愛の調べ。誰にも邪魔されない2人の時間。

やがて気がつくと、穏やかなヴァニラとトンカビーンの香りに変わっていることに驚きを覚える。そんなクリーミーな甘さが感じられたらラスト。パルファムなので拡散力は弱めだが、点でつけたときのかぐわしさ、自分の体温や気温、湿度に応じて、さながらオーロラのようにさまざまに変化する香りの揺らぎは、トワレやオード・パルファムの比ではない。そのわずかな変化を楽しむだけで深い安息を得ることができる。それは、オポポナクスの甘い樹脂香と、白っぽくパウダリーに落ち着いたアイリスと、柔らかなヴァニラ。至福のラスト。恋人たちの体温であたたかみを増したシルクを思わせる香り。このラストに包まれて眠りにいざなわれたなら、どんなにか安らぎ、よい夢が見られるだろう、そう思えるようなドライダウン。シャリマーを特別な夜の寝香水にしている方が多いという話も頷ける。それは、2人の穏やかな寝息。白亜のパレスの蒼い夜。

シャリマー、それはゆるぎない愛と官能の泉。こんこんと湧き出る琥珀色の陶酔。一途な愛を現世にとどめつつ、時空を超え、天上での再会を誓って焚きしめられた聖なるバルサムの香り。思い出の庭園の上に広がるインディゴ・ブルーの夜空。星々のまたたきに吸いこまれ、消えていく白い燻煙のドレープ。とろけるような天使のヴァニリック・ゲルリナーデ。

その香り、別格。

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CamelliaSinensisさん
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ル ラボ / GAIAC 10

ル ラボ

GAIAC 10

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:1.5ml・1,650円 / 15ml・18,480円 / 50ml・40,920円 / 100ml・66,000円発売日:2008年

7購入品

2023/8/1 18:32:57

【追記:2023/08/29から値上げ】

◆新価格→100ml 69,850円/50ml 45,100円/15ml 20,900円

ルラボ公式オンラインでは既に値上げ後の価格で予約を取っているので
店舗に行ける方は8/28までに店舗で買った方が良いです。

100mlはこの1年で8,000円くらい値上がりしました。
ルラボもだいぶ前にELCに買収されたのでしょうがないのかなあと。

こういうことは書かない方が良いとは思うのですが、
私が買っていた頃は、GAIAC10は100ml/44,000円くらいでした。

元々5〜6万だったものが当時の円高で大幅値下げした経緯があるので、
今月末の値上げ価格でもリピーター割引が使える前提であれば許容範囲だと思います。


今年は9/1〜9/30までシティ エクスクルーシブシリーズのボトル販売をするようです。
サンプル(ディスカバリーサイズ)のみ8/1から販売。


__________



結論を言うと、
このGAIAC10はガイアックウッドがメインの香りではないと思う。

この商品はどちらかと言えば合成ムスクが主体であり、
激しく乱暴な言い方をするなら「最高級の柔軟剤のような香り」と言えば理解しやすい。
普段香水を買わない人が好む香りと言っている人も居るがとても納得出来る。


以前のレビューにも書きましが、
ルラボの開発者が来日した時のセミナーは本当にためになりました。

当時「天然香料だけを使っています」と言って
無知な客を騙して香水を売り付ける商売が流行していた。


そんな時代に、
香水は天然香料と合成香料を掛け合わせることで良い物が出来る。
合香なしの香水はありえないし、だからこそ合香は良い物を使うべき。
うちの合成香料(主にムスク)は天然香料より遙かに高価な最高グレード品を使っている。
だからファッションブランドが出している香水とウチの商品は原価も素材のレベルも全く違う。

と言い切った彼は凄いと思う。
単一香料を色々試させて貰えたのも有難かった。


GAIAC10がバカ高い理由は、
賦香率がルラボの他のフレグランスの2倍で、分類的にエクストレなので納得ではあります。

柔らかな香りが静かに寄り添うように長く長く続きます。
付けると自分では香りがしないと感じる方が多いようなのですが、
実際はきちんと香っています。


ブランド側は1年で使い切ることを推奨していますが、
きちんと低温暗室で管理すれば素人が分かるレベルの劣化はないので100mlを購入しても良いと思います。


注意点としては、
このブランドの特性として、Made to Orderというシステムを採用しており、
注文後に香料とアルコールを合わせているため香りが安定するのに1ヶ月ほどかかります。
最近は店員さんからこの説明がないようですので一応記載しておきます。


ルラボのフレグランスの空き瓶を持ってくればその日に買う香水がどれでも10%OFFになる、
「リサイクル週間」というキャンペーンが以前はありましたが、
現在は割引が適用されるのは「同じ香りのリピート購入のみ」だそう。
ただし割引率は昔より良いのでリピーターに優しくなったと思います。



【以前のクチコミ・2013/10/10購入】


GAIAC10-100mlをルラボ代官山本店で現品購入。

東京限定の香りなのですが、
「北海道の温泉の湯煙を連想するような香り」
というニュアンスで公式サイトで紹介されています。

ガイアックウッド、ムスク4種、シダー、乳香などの香料が合計10種類入っています。

どんな香りかを文章で説明するのは本当に難しい。
ひとつ言えることは、ルラボで香水を買うならまずGAIAC10を買うべきかなと。
何故なら値段に妥協して他の香りを買ってもいずれ必ずGAIAC10が欲しくなるから。


知的で、寡黙で、穏やかで、静寂。


価格は正直高いと思いますが、
以前新宿伊勢丹でセミナーがあってルラボの経営者が来日したので参加しましたが、
かなり楽しかったことや、国内にちゃんと路面店が存在することを考慮すると
それに対して評価すべきと思いますし、今の価格も納得ではあります。

ムスクが好きな人には向いているフレグランスメゾンだとは思います。


ラベルに文字が入れられますが、
私は過剰なサービスを求めていないので完全ブランクでお願いしました。
余計なものは何も要らないし、この香りがそこにあるだけでとても美しいから。
 
 

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doggyhonzawaさん
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ゲラン / シャリマー フィルトル ドゥ パルファン

ゲランゲランからのお知らせがあります

シャリマー フィルトル ドゥ パルファン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:50ml・13,860円 (生産終了)発売日:2020/12/1

7購入品

2021/1/30 13:36:53

参りました。素直に。これはすばらしい香り。誰もが是非一度は肌にのせてみてほしい香水。超お薦め。

ゲランのシャリマー・フィルトル・ドゥ・パルファン。この見事なバランス感覚に脱帽。ゲラン5代目調香師ティエリー・ワッサーと彼の調香チームの真の実力を見た。もうワサ夫とか言わない。(←最初から言わないように)

世界初のオリエンタル香水として今なお燦然と輝くゲランのシャリマー。フィルトルはその亜種で、星の数ほども出されてきたフランカーの1本。2020年12月発売の数量限定品。50mlで税込13800円。初めてだ。1本使い切らないうちにもう1本キープかなと思った香水は。

シャリマーは、香りも含めてコーラと共通点が多い。オリジナルのコーラは百年以上前に発明され、今なお世界中で愛飲されている。シャリマーも同様だ。そしてどちらもシトラス、スパイス、ヴァニラなど、多くの共通香料が使われていて香り的にも近い。さらに、チェリーやレモンやシナモンなど、構成フレーバーの一部をあえて過剰投与した限定品を次々に出している点もだ。シャリマーはいわば、薬草と樹脂と花の香りを添えたコーラのような香水だ。

ただし、シャリマーは香水の名作だけあって、亜種作品に対する愛香家の気持ちと鼻は、コーラの味以上に手厳しい。「また亜種か」という冷笑と一瞥が必ずあり、新作の度に「これはシャリマーじゃない」「オリジナルよりピンとこない」など、猛烈な批判に晒される。そして「ワサ夫、何でもオレンジフラワーとホワイトムスク入れてごまかすなよ?」などと言われる始末。(←それは貴方の意見では?)

ともあれシャリマーフィルトル、この作品はどこか超えた。少なくとも自分はそう感じた。では一体、どんな香りなのか?

フィルトルをスプレーする。その瞬間、わきあがる金色の雲。爽やかなレモンの香りに包まれる。同時にほんのりハーバルな清涼感も寄り添っている。フローラル調のラベンダーの香りだ。レモン&ラベンダーは香料的にとても相性がいい。まばゆい春の陽射し。レモン色の雲。吹き抜ける青い風。それらが世界に色彩を与えてゆく季節、春を思わせる明るいイントロ。

5分後、レモンの高い酸味の下からベルガモットのシトラスが広がってくる。ベルガモットは豊かな酸味と苦みを加えつつレモンの黄色い香りを引き継いでいる。さらに、ラベンダーとカルダモンのスッキリ感、甘辛いクローブのほのかにスパイシーな風をはらみながら、春の庭園の様相を呈してくる。光。春の光。植物のシャープな葉の香り、風に揺れる野の花の香り、そして傷ついた樹木が出すツンと甘い樹脂の香り。そんな広大な野に出でて、少女が一人、若菜を摘んでいるようなイメージ。

このトップ〜ミドルは、シャリマーシリーズでいうとパルファム(P)の雰囲気に近い。ベルガモットを過剰投与したPに対して、フィルトルはコーラで言うなら、グラスコーラにレモンを丸ごと一個しぼって入れた超生絞りレモンコークな香りだ。フィルトルは、かなりPのイントロのシトラスの爽やかさにこだわって創っている。そしてこのシトラスが想像以上に長く続いてとても驚く。ミドルは、レモン&ベルガモットが5、ラベンダー1、スパイス1、フローラル1、トルーバルサム1、パチュリ1、的な構成で展開する。この比率が凄まじくいい。PとEDPは、次第にアニマリックとアンバー&ウッディが強く出てきて温度を下げ、艶っぽい夜の密会的雰囲気になるけれど、実際そこが濃厚で苦手という方も多かった。フィルトルは、P前半の爽やかさとスッキリ感をずっと保ち続けている印象。光に満ちた庭園の香り。これはデイタイムシャリマーだ。

やがて30分ほどすると、香りはさらに変化する。このままシングルノートで終焉かと思いきや、まさかのヴァニラアイス大量投入。さらにアイリスの甘いベビーパウダー香添え。レモン色の爽やかさを落とすことなく、白いヴァニラのわた雲な香りが広がってくる。そこにほんのり香るシナモン様トルーバルサムが超絶アクセント。これは悶絶級のクリーミー&パウダリー。そのまま、まろやかクリーミーな香りでドライダウン。付けてから5〜6時間。香り立ちは柔らかく使いやすい。これはPのシトラスとヴァニラを強調して重さを除いた、いいとこ取りの香水だ。

灰色の空の切れ間。突然現れた太陽の光が、雲のエッジを金色に染めてゆく。庭園の緑が鮮やかに色を取り戻す。あたりは瞬く間に光が満ち満ちてゆく。鳥が歌い、花々が揺れ、流れる水音が聞こえる。レモンとハーブと甘いバルサムの香りがしている。少女の白い服がホリゾントの光にまばゆく浮かび上がる。そして移ろうヴァニラホワイトの夢。

それは、太陽も恋する香水。光の庭園の媚薬、シャリマーフィルトル。

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イヴ・サンローラン / オピウム オーデトワレ

イヴ・サンローラン

オピウム オーデトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・13,750円発売日:- (2010/9/23追加発売)

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7購入品

2019/9/15 00:01:54

香水の歴史上、最も危険な作品といえばイヴサンローランのオピウムがまず挙げられるだろう。「阿片(アヘン)」というネーミングに絶対的にこだわったサンローラン。しかしその名前ゆえに各地でパニックや暴動に近い事件が多発したのも事実。それでも全世界で爆発的ヒットを記録し、1977年の発売以来、50年近くたってもいまだに売れ続けている伝説の名香オピウム。その官能的かつ退廃的なオリエンタルスパイシーな香りの中毒となった人は発売以来数知れない。

オピウムは、印籠型とされる特徴的な丸窓ボトルのパルファムと、縦長のシンプルなボトルのオードトワレが1977年に同時リリースされた。現在パルファムは作られておらず、オードトワレのみとなっている。このレビューもオードトワレの方だ。調香師は、後にディオールのプワゾンなどもブレイクさせた凄腕調香師ジャン・ルイ・シュザック。彼は、サンローランに中国王朝時代のオートクチュールコレクションに見合った皇后の香りの創造を託され、その危険で中毒性を感じさせるネーミングに負けない、強くて蠱惑的なオリエンタル系の香りを創り上げることに心血を注いだという。

では、この香水に一体どんな魔力が秘められているのだろうか?

オピウムを身に纏う。軽くスプレーしたとたん、レモン増し増しのコーラのようなスパイシーでフルーティーな香りがガツンと広がる。オピウムのトップは本当にコーラのようだ。慣れ親しんでいる香りだからだろうか。薬草っぽい樹脂の感じも、ベルガモットやマンダリンのシトラスに包まれて爽やかにはじける炭酸のようでとても心地よい。印象としてはかなりクラシカルで濃厚な部類。ゲランのシャリマーやエスティローダーのユースデューに近い系統。

5分後、さまざまなスパイスとフローラルのミックスが鼻を麻痺させるかのように広がってくる。まず感じられるのはカーネーションの香り、甘辛いクローブの匂いだ。そしてたおやかなローズ、誘うような白いジャスミンのふくよかさ。中でもスパイシーなカーネーションの香りがフローラルの中心となって広がってくる。なんという馥郁たるミドル。カーネーションとローズとジャスミンは、ベースにある樹液のくぐもった香りのようなバルサミックなノートの上に開いている。このバランスがとてもすばらしい。似たタイプで言うと名香シャリマーが挙げられるが、あちらはもっとべルガモットやヴァニラ、アンバーが強く、しっとりとしているけれど、オピウムはギリギリと乾いている。スッキリシャープなキレのあるオリエンタル、そんなイメージだ。

このバランスはすごい。昨今のシングルノートだのシンクロノートだの「あまり変化のない香料少なめ値段高めのニッチ香水」に慣れた方は顔をしかめるほどの出力の強さだが、この作品のミドルだけは何度もつけてじっくりと味わってもらいたい。オピウムの香料バランスは本当にすごい。薬草のようなくぐもった樹脂のノート、コーラのような甘辛い香り、キッチン香辛料のドライなノート、そして美しい花々とのコントラスト。人を酔わせ、快楽に誘い、そして、心地よい眠りへと誘う魔法の香り、そう、これは確かに麻薬の類だ。一度味わったらここから抜け出せないかもしれない。これぞ香水オブ香水。何年もかけて本物の調香師が何度も何度もバランスを調整して仕上げた最高水準の香りの十二単。音楽でいえば何だろう。弾き語り?バンド?いや、オーケストラフルボリュームの香りだ。

持続時間はなんと10時間をゆうにこえる。たったひとしずく、その手首の内側につけるだけでも、スパイシードライなコーラのようなフローラルが思いのほか優しくたゆたい続ける。もちろん香りじたいに好き嫌いはあるだろう。けれど、シャリマーやこの香りを知らずしてオリエンタル系香水は語るべきではない。そう思う。

ラストは美しい煙のような樹液のこんもりした香りとアンバーの甘さの引き波を引いて静かに消えてゆく。衝撃的な名前よりなお、あらがいきれぬ愛の経験のアフタープレイのように、静かに狂おしく心に爪痕を残す香り。

忘れたいことも、悲しすぎる記憶も、ただいっときの夢に身を任せて、波間をただよう一輪の花のように、ゆらゆらと揺れてたゆたう時間があっていい。生きてる時間は何かと辛いことが多いもの。せめて一人、煙のような美しい香りに身をまかせて、泣きたいだけ泣ける夜があっていい。二胡の調べ。胡蝶の舞。

サンローランがその人生を賭してなお「この名前でなければノーネームでいい」とさえ言い切ったほど惚れ込んで、どうしても出したかった香水。知らないなら覚えておいた方がいい。

それはイヴサンローランの魂。オピウム。

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キリアン / グッド ガール ゴーン バッド オード パルファム

キリアン

グッド ガール ゴーン バッド オード パルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・37,400円発売日:2019/3/15

7購入品

2019/8/24 19:22:40

香水界のロールスロイス、キリアン。その最高に贅沢な香水たちの中にあって、最も罪つくりな香りだと感じているのが、グッドガールゴーンバッド(「よい娘が悪くなった」以下略GGGB)だ。こちらは数あるキリアンの香水の中でも、世界中でベストセラーになっているといういわくつきの作品。

白地に金色の蛇をあしらったドキリとするようなクラッチケース。その中に納まった白いボトルは、まるで宝石のようにキラキラと輝いて美しい。クラシカルな香水のもつボトルやケースの豪華さを現代に蘇らせたいと願うキリアン・ヘネシーの美学そのものを象徴したこのラグジュアリー感こそブランドの矜持だ。GGGBは、“In the Garden of Good and Evil”「エデンの園で紡がれるアダムとイブの物語」シリーズの1つ。禁断の果実を食べたイブを良家の子女になぞらえ、少女が家族に内緒で羽目を外して一晩中夜遊びするイメージを香水で表現している。調香師はアルベルト・モリヤス。リリースは2012年。50mlボトル36720円。

GGGBをプッシュする。その瞬間、空気が変わり、甘くまろやかなフルーティー香に包まれる。それはわずかな酸味を伴った水蜜桃のようにジューシーな香りだ。この自然な甘さを伴ったトップのフルーティーな香りには本当に驚く。どうやったらこんなみずみずしい桃のような香りが作れるんだろうと思うトップだ。

ブランドのクレジットを見ると、このトップの香りはオスマンサス(キンモクセイ)の香料のようだ。といっても、かなりアプリコットの香りが強いフルーティーな物を使用しているのだろう。アプリコットの香りは桃の香りに少し酸味を伴ったようなとても芳醇な香りがする。

5分後、完熟した桃のようなしっとりした香りに、わずかにクリーミーな白い花のヴェールがかかってくる。これはチュベローズのふんわりしたファセットだろう。このクリーミーチュベローズの香料もいい。おそらくトップのフルーティーなラクトン系の香りに上質なチュベローズを合わせたことで、自分には桃のような香りに感じられるのだろうと思う。トップで感じた果実香にチュベローズのふくよかさが重なり、ジャスミンの華やかさ、軽やかなローズ香などもシンクロしながら出てきて、美しいフローラルミックスのミドルとなる。重たさがほとんど感じられず、とてもライトで繊細なフルーティーフローラルな中盤。

ラストはシダーとアンバーがクレジットされているが、自分にはほぼ感じられない。トップから香り全体の印象がほぼ変わることなく減衰してフェードアウト。付けて3時間ほどでフルーティーな甘さはなくなり、淡いフローラルミックスになって薄らいでいく。香りは真夏でも大体4〜5時間ほど持続する。

全体で見ると、トップの桃のようなあんずのような豊かな香り立ちがこの香水の最大の特徴で、フローラルよりもフルーティーをメインにした香水であることに間違いはない。この手の自然な香り立ちこそ「香水なんてきつくて複雑な香りがするから苦手」という方にぜひ試してみてほしいと思う。きっと今までの香水に対する固定概念がひっくり返るはずだ。(←値段も目ん玉ひっくり返るけどな)

もしこんなとろけそうな香りの果実が目の前にあったら、女性のみならず誰もがときめいて、思わず手に取ってかじりついてしまうかもしれない。GGGBはそんな香りがする香水だ。そしてそれがもし禁断の果実だったとしたら…?

旧約聖書によると、イブは蛇にそそのかされ、エデンの園で絶対に食べてはいけないとされた「善悪の知識の木の実」を食べてしまった。そしてアダムにもそれを勧め、食べた2人は共に罰を受け、楽園を追放されたという。アダムより造られしイブはその瞬間、「悪い女」の烙印を押されてしまったのだろうか?それ以前に、誘惑した蛇こそが悪かったのではないのか?

GGGBはとても罪な香りだ。なぜなら、そのネーミングとは裏腹に、まるでエデンの園にたゆたう調べのごとく、甘美で優雅で人の心をうっとりさせる美しい香りがするからだ。だから、この香りをつけた女性が近くにいたらと思うと、実はちょっと気が気じゃない。なぜなら男どもはおそらくとろけてしまい、悪魔の化身である蛇のように誘惑したり毒牙をむいたりするかもしれないし、女は嫉妬の炎を燃やしてその女性を地獄に突き落とす算段をしないとも限らないからだ。だとすると…。

GGGBはたぶん少女を悪女にする香りじゃない。逆に、周囲の者を誘惑して悪の道に落としかねない危険な香りなのだろう。この美しく可憐な楽園の果実は。

グッドガールゴーンバッド。少女も香りも、美しいほど罪つくりだ。キリアンの金色の蛇は、この香りをまとったあなた自身なのかもしれない。

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Cookieyukiさん
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プロフィール
  • 年齢・・・54歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・硬い
  • 髪量・・・多い
  • 星座・・・牡牛座
  • 血液型・・・B型
趣味
  • 音楽鑑賞
  • 料理
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  • お酒

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自己紹介

アロマセラピーの勉強をしているうちに香水の魅力にはまりました。皆さんの口コミをいつも楽しみにしています。外国在住のため日本で手に入りにくい香水の口コミ… 続きをみる

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