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doggyhonzawaさん
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ラルチザン パフューム / プルミエ フィグエ オードトワレ

ラルチザン パフューム

プルミエ フィグエ オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

本体価格:100mL・17,000円 / 50mL・13,500円発売日:-

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5購入品

2019/7/13 14:19:59

幼い頃、家の裏に1本のイチジクの木があった。人の手の平のように大きな葉。その間にたくさんついている緑色のたまごのような果実。その実をもぐと白い液がじわじわ出てきて、あたり一面に不思議な匂いをふりまいた。そのねばついた汁は手につくと簡単には取れず、家に帰ると強い匂いのせいで祖母にバレてよく注意されたものだ。かぶれるとか、かゆくなるとかエトセトラ。「あの木にはさわっちゃいけないよ」祖母のその言葉は幼な心にもはっきりと刻まれた。イチジクはあの頃の自分にとって禁断の木だった。

たぶん4歳くらいだったろう。当時祖母はよくイチジクの実をとってはザラメで煮詰め、甘露煮を作ってくれた。父も母も仕事で不在で、日中はいつも祖母と二人きりだった。友達もうまく作れなかった自分にとって、イチジクの甘露煮はおばあちゃんと二人で楽しむ最高のスイーツだった。さわっちゃいけない緑の木と、とろけるように甘く柔らかいイチジクが同じものだと知ったのは、ずっと後になってからだ。

「イチジクの香りの香水がある」それを知ったのはつい10年ほど前だ。世界で初めてイチジクの香りを創ったのは調香師オリヴィア・ジャコベッティ。彼女の調香の特徴は、女性らしいたおやかで繊細、知的な雰囲気が感じられるシンプルな香りが多いことだと思う。プルミエ・フィグエは彼女の経歴において、おそらく最も輝かしいステップとなった作品。ラルチザンで創ったこの作品が大ヒットとなり、同ブランドから詩的な作品を次々とリリースし、エルメスのイリス、フレデリック・マルのアンパッサンなども手掛けた。

プルミエ・フィグエ、青いイチジクの意。スプレーすると、その瞬間とても透明感のある香りに包まれて心地いい。クリーミーなヴェールがかかったみずみずしいフルーツの香りと、青さを残した木々の葉の香りが同じくらいの出力で広がってくるトップだ。ナッツのコク、ピーチのような柔らかな甘さを伴いながら、刻々と香りの微粒子が明滅する。感じられるのは真夏の太陽の熱。その下で青々と揺れる木々の葉。日光で温められたイチジクの果実の香り。

香料の構成を見るとトップにはガルバナムがあり、グリーンの青さの陰でわずかな苦みを効かせていることがわかる。そのブレンド具合がとても自然で心に残る。5分もするとグリーンノートは次第に消失し、クリーミーなココナッツの香り、わずかなジャスミン、ほんのりビターなアーモンドオイルの香りが相まって、南国風の青いフルーティーさを醸し出してくるとミドル。

このミドルもとてもスッキリしている。繊細で柔らかく、フルーティーでありながらフローラルを感じさせず、クリーミーでありながらココナッツは控えめだ。風に揺れる緑の大きな葉。その大きな葉の間からこぼれる陽射しが次々に別の葉にあたって白い汁を果実にためていく。そのあふれるようなクリーミーフルーティーな香り。これは本当にまだ青いイチジクの果実だ。

1時間ほどすると果実の香りは思った以上に早く消えてゆく、体温高めなので香りの変化も飛びも早い方だけれど、夏に向かう時期は特にそうだ。ラストはほんのり香ばしいサンダルウッドの香りに変わって、イチジクの木全体を表すようなウッディに変化して幕を閉じる。

全体的にドライダウンまで2〜3時間と短めで主張は穏やかだ。オードトワレなので仕方ないが、日本の梅雨や夏は湿度が高く香りがこもりがちになるから、このくらいの出力が丁度いいかもしれない。もっと強めの香りや果実香を探している方は、同エクストリームを試すか、オリヴィアがディプティックで作ったイチジクの香り、フィロシコスを試してみるといい。

プルミエフィグエの透明でクリーミーな香りに包まれていたら、今はもうない祖母の家を思い出した。

祖父も祖母も亡くなり、幼い頃一緒に住んだ家を取り壊すことになったある日、一人車で祖母の家に向かった。あの頃大きく感じた家はとても小さく思えた。ガランとした家の中には、じっと動かぬ思い出たちの気配がそこかしこに感じられて鼻の奥がツーンとした。家の裏に出ると、祖母に触れることを禁じられたイチジクの木がまだそこにあった。半分枯れかけたその木の葉をなでていたら、不意に祖母がいつも作ってくれたイチジクの甘露煮の味がよみがえって顔がぐしゃぐしゃになった。

「イチジクできたよ。いっぱい食べなさい。」

自分が喜んでイチジクをほおばる顔をいつも見ていた祖母。その顔はいつも優しく慈愛に満ちていた。そのせいだろう。プルミエフィグエをつけていると、時々ちょっと切ない。

久しぶりに出かけてみるか。昔住んでたあの町に。もう祖母の家もイチジクの木もないけれど。

仰ぎ見た空はどこまでも広がる夏空。青いイチジクの風が吹いている。

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トム フォード ビューティ / ロスト チェリー オード パルファム スプレィ

トム フォード ビューティ

ロスト チェリー オード パルファム スプレィ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

本体価格:50ml・35,000円発売日:2019/2/1

5購入品

2019/7/6 05:54:36

秘密。だれにも言えない秘密。大人が教えてくれなかった事実。大人になるために最も知りたかった事実。

快感。だれにも言えない快感。母のルージュをそっとひいた日の、何かいけないことをしてしているという甘美な記憶。あるいは女性の裸体に初めて硬直した少年の、絶対に親に知られてはいけないと感じた背徳の記憶。触れてはいけないところにさわったやましさ。

トム・フォードのロストチェリーは、そんな香りがする。

桜の香りがするトップは幼い日のノスタルジー。どこまでも甘美でキュートなチェリーシロップの香りが心を鷲掴みにして離さない。離れない。

次第に鼻腔の奥をツンと刺激するシニカルなアーモンドの苦みが訪れてミドル。ピュアなくせにギリギリするほど苦々しい。それは思春期の葛藤をフラッシュバックさせる香り。

ある日突然、胸をときめかせる人が現れたときの戸惑い、高揚感。鏡を見て自分の容姿に落ち込み、その顔をにらみ、変えられない顔に悲観し、せめてと思い髪をいじり、何度も髪を濡らしてはブローした日。ガラスのように壊れやすく、うすっぺらな自我に固執した思春期。青臭くて一人じゃ何もできないくせに大人にもなりきれず、不平不満を周囲にぶちまけ、毒づくことで己のレゾンデートルをわずかに保ち、自分も周囲も大嫌いで、自分の弱さを繕うために他者をあざ笑い、蹴落とし、心の中で全てを否定する。浅はかで脆弱な魂の彷徨。

けれどある日。そんな自分がなぜ生まれて来たのかを知る。どんなふうに命が紡がれてきたのかを知る。思いと肌を重ねることで言葉以上に感じ合えるものがあることを知る日が来る。信じ合えるもの、信じられないものの境界があること、快感と痛み、快楽と苦痛の狭間でスパイラルにのぼりつめる狂気があること、全ての生命の営みの輪の中に自分もいたこと、己の欲望に忠実に体が反応すること、そして心は身体の快楽に勝てないこと。それらを思い知る日が来る。人間の業。

ロストチェリーはそんな香りがする。

幼年期のチェリーの甘さ、思春期のアーモンドビター、そこに絡むシナモンの誘惑に身悶えし、ローストトンカの人肌の匂いに酔いしれてゆく。ラストに感じられるわずかなヴァニラは昨日までの自分との決別。ほろ苦く甘い、もう戻れない白い朝の追憶。

それは通過儀礼。大人になるための痛み。少年少女との決別。小さな世界の喪失。広大な世界への不安。自分の中のエロスに気付く日。異性を誘う自分の秘密の匂いを知る日。しっとりと濡れたシロップの誘惑に、あくなき生と性の悦びをかいま見る日。自分の価値が揺らぐ日。自分の武器に気付く日。

その日を夢見ていたわけではない。その日を待ち望んでいたわけではない。ただある種のノスタルジーと悲しみは、小さな頃からずっと自分の中にあった。父と結ばれたいのに、母と同化したいのに、どこか拒絶された単体として存在しているちっぽけで儚い自分。その理由を知った日。

汚れた血。純潔な血。自分の中の不道徳を知る日。自分の中の清らかさを思う日。それでも唇をきゅっと結んで髪をかき上げて、さも何事もなかったかのように風の中を歩く日。何かを捨てたようで、何かに見捨てられたようで、全てを知った気になって、この感じを知らなかった自分を深い海に沈める日。

すれ違いざま、オヤジどもがなぜ濁った眼で自分をじろじろ見るのか、なぜ電車の中で痴漢されるのか、なぜこのロストチェリーが2〜3時間しかもたないのに3.5万円もするのか、そしてなぜこれまでになく売れているのか。その秘密を知る日。それは性が媚薬だからだ。愛情同様、性に困窮している餓鬼亡者が世界中にあふれているからだ。

こうならなくてもよかった。知らなくても生きられた。けれど知ってしまった。もはや永遠に心を奪われ、性の呪縛に囚われ、甘美な悦びに身悶えし、ときに燃えさかる業火のように嫉妬で相手を焼き尽くす。それは諸悪の根源。心の足かせ。神の手から最も遠い場所にあるダーククリスタル。仮面をつけて微笑み、仮面の下で己の外道を飼いならし、雑踏の中、風を切って歩き始めるために失ったヴァージニティー。SEXは甘く、かぐわしく、どこまでも心をとらえるけれど、その快感と感動は一瞬。あとに残る寂莫とした思い、荒涼とした大地にただ一人残された孤独。それらと向き合うことをたたきつけられ、人は自分の中の獣を知る。それでもまた、自分だけのチェリーを探し求めてこの世界をさすらう。

天使のように甘く、悪魔のように苦々しい。少女のようにほほえましく、遊女のように猥雑に誘う。チェリーボムはかじられた。したたる果汁は大人味のダークブラッド。

その血を煮詰めた背徳の香り、ロストチェリー。

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ルイ・ヴィトン / カクタスガーデン

ルイ・ヴィトン

カクタスガーデン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

本体価格:-発売日:-

4購入品

2019/6/29 20:34:55

夏が来る。旅に出たい。まだ見ぬすばらしい風景がどこかで自分を待っている。そんなふうに思うと、もう松尾芭蕉なみに落ち着かない。旅行雑誌やネットで絶景の観光地や泊まってみたいホテル、ショッピング穴場情報などを探しまくる。ルイ・ヴィトンのカクタスガーデンの香りを肌にのせていたら、カリフォルニアの青い風に吹かれたくてたまらなくなってしまった。

カリフォルニア。夢のカリフォルニア。「パームツリーが揺れ、オレンジがうまい。」そう言ったのは、吉田秋生さんの名作漫画「カリフォルニア物語」に出てくるイーヴだ。そして何といっても「西の挫折と倦怠」をシニカルに歌ったイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」。南部や東部で育ったドン・ヘンリーやグレン・フライは西の空を赤々と染めて沈む夕日を見るたび、「あの空の下には何があるんだろう。いつか必ず西へ行こう」と胸をときめかせていたという。やがて彼らは夢を求めてロサンゼルスに向かい、出会った。

そしてここにも遠くフランスからカリフォルニアを夢見る一人の男がいる。ルイ・ヴィトンのハウスパフューマー、ジャック・キャバリエだ。彼は2019年、カリフォルニアをイメージした新たな「旅の香り」を3本リリースした。そこに示された新機軸は3点。

1点目はコロンのように爽やかな香り立ちでありながらオーデパルファンのように持続するパルファンデコローニュ(造語)であること。2点目はこれまで女性用、男性用と打ち出してきた対象をこのシリーズではユニセックスとしたこと。そして3点目は、黄色・緑・青のカラーボトルを採用し、ロス在住アーティストのイラスト等を用いてアメリカンポップカルチャーとのコラボを図ったことだ。カクタスガーデンはその中の1本。

カクタスガーデン、直訳すると「サボテンの庭」。緑色のカラーボトルに詰められたこの香りのメイン香料はマテ茶だ。マテ茶のややロースティーな風味に、レモングラスとベルガモットのハーバル&シトラスが効いた心地よいフレッシュグリーンな作品だ。

カクタスガーデンをつけたときの印象はとても分かりやすい。「あれ、これレモンティーじゃん」そう思う方がかなりいると思う。フレッシュなレモンとベルガモット。その下から同時にローストされたティーの香りがふくよかに漂い、アイスアールグレイを思わせる。ライトで爽やかでみずみずしい。ティーの香りは紅茶ほどコクがないものの、独特のスッキリした透明感があふれている。これが今回メイン香料にすえたマテ茶の香りの特徴だろう。

香りの変化はあまりない。これはもともとジャック・キャバリエお得意のスパイラル調香と呼ばれる特徴かもしれない。ふとしたときに各香料がふわふわと入れ代わり立ち代わり顔をのぞかせるといった類の香り方をする。マテの渋みや透明感がメインにありながらも、レモンの酸味、ベルガモットのアールグレイっぽさ、どこか青いみずみずしいグリーンノート、こうしたファセットが時と場合によってどんどん変わって感じられる。とてもシンプルな調香だ。

持続時間は3〜4時間ほど。レモングラスの香りが思いのほか持続し、ティーのスッキリした苦みと相まって心地よく爽やかな風を演出する。ただコロン系の淡い香り立ちであること、にも関わらず値段はルイ・ヴィトン価格であることを考えれば、この手のティー系香水は他にも結構あるので代用がきいてしまうのではと思う。やはりセレブ仕様のコロンであることは間違いない。似たティー系を探せば、ディオールのテカシミア、グタールのイルオテ、カルトゥージアのメディテラネオあたりで補完できるようにも思う。100mlで3.5万円というヴィトン価格、この値段に見合う価値をどこに見出すか、そこが評価の分かれ目だろう。各々の香料はたぶんいい物を使っている。なめらかで柔らかく、香り立ちがよいのは折り紙付きだ。

カリフォルニアの内陸には、荒涼とした山々を背景にサボテンやパームツリーが広がる砂漠のリゾート地、パームスプリングスがある。カクタスガーデンの香りに包まれていると、かの地の乾いた風、どこまでも青い空、そしてそれらと対照的な白亜のホテルのプールサイド、しっとりのどを潤すアフタヌーンティー、そうした風景がそこはかとなく心に広がってゆく。外敵に針を向けたサボテンは、まるで遠い先人の墓標のように太陽の下に立っている。パームツリーが静かに風に揺れている。心は香りとともに真夏のリゾートへ飛ぶ。

瀟洒なホテルの中庭、涼やかにアイスティーのグラスを傾けながら、吸い込まれそうに青いカリフォルニアの空を眺めて風に吹かれたい。心に流れてくるのはイーグルスのデスペラード。

カクタスガーデンは、そんな西への憧れをボトルに詰めた真夏のパティオの香りだ。

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ラボラトリオオルファティーボ / ヌン(Nun)

ラボラトリオオルファティーボ

ヌン(Nun)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

本体価格:-発売日:-

6購入品

2019/6/22 13:29:37

「はじめこの世界には『原初の水』ヌン(Nun)しかなかった。やがてその水面に美しい太陽のような形のハスの花が咲き、そこからラーが誕生した。ラーはヌンより出でて他の神々を生み出し、自身は太陽神として世界を支配した。」

古代エジプトにはさまざまな神話がある。中でもひときわ興味を惹くのがこの太陽神ラーの誕生に関する話だ。そこには原初の水と呼ばれるヌンが世界の最初にあったこと、そしてハスの花が咲き、世界を統べる神が誕生したことが語られている。

その世界創造の「原初の水」をモチーフにした香水がある。ラボラトリオ・オルファティーボのヌン・オードパルファムだ。

ラボラトリオ・オルファティーボは、2010年にイタリアで誕生したニッチフレグランスメゾン。かのメディチ家の時代からイタリアには星の数ほどの香水メゾンが存在しているが、この「嗅覚の研究室」と銘打った新進気鋭のブランドは、マーケティング度外視で力のある調香師に自由に作品を創ってもらおうという主旨で香水をリリースしている。ではそんなラボラトリオから2016年にリリースされたヌンとはどんな香りだろうか?

ヌンをスプレーする。その瞬間、立ちのぼってくるのは透明感のある優しいホワイトフローラルだ。水のようにスッキリした香り、柔らかな甘さを伴ったペアー、そしてクチナシ様のクリーミーな白い花の香りが豊かに広がる。

何だろう。何度かいでもこのトップには心がとろけそうになる。←お前だけな

メゾンによる香りの構成を見ると、トップの香料はベルガモット、レモン、洋ナシ、ネロリなどのよう。ただ一緒にハスの花のみずみずしい香り、ロータスノートが出てくるので、実際はかなりウォータリーに感じられる。ウォータリーといえば、これまでのキュウリやスイカ、メロンを思わせるもわっとした野菜系の香りを思い浮かべる方もいると思うが、ヌンのウォータリーは全く違う。

これまで数多くウォータリーな香りを体験してきたけれど、ヌンほどみずみずしくスッキリ感じられる水系の香りはなかった。そう思う。

ポイントはわずかに使用していると思われる洋ナシ、ペアーのジューシー感だろう。それがロータスの少し冷たい感じと相まってリラグゼーションを引き出している。この取り合わせはありそうでなかったかも知れない。

やがて5分もするとトップでわずかに感じられたシトラスは消失し、クリーミーなホワイトフローラルがふんわり広がってきてとてもフェミニンな雰囲気になる。わずかにグリーンのエッジをもっている花の香りだ。チュベローズの感じやヒヤシンスの感じもあるちょっと涼しげなアコード。トップの香りが水だとすれば、ミドルは明らかに水面に咲いた白く輝くようなスイレンの趣。

一般にロータスといえば、水面から長い茎を伸ばしてピンク色の花を咲かせるハスを思い浮かべることが多いが、古代エジプトで神々の花とされたのは水面で咲くスイレンの方だったようだ。1億4千万年も前からこの地球上にあるといわれる最古の花、ロータス。まさに原初の水から生まれた世界最初の花といっても過言ではないだろう。ヌンのミドルは水とスイレン、両方のアコードを持っている。

やがて4〜5時間すると香りは全体にうすれてくる。香りがほぼ変化せず、ミドルの白い花の香りのままドライダウン。終始ココナッツのようなクリーミーなヴェールがかかっているようにも思うが、試しに別ブランドのココナッツウォーターと同時につけ比べたら、そんなことはなかった。ココナッツにある特有の塩バター風なテイストがなく、ヌンの方が温度感も低くよりみずみずしい。

全体的な香調は、ペアーの効いたフルーティーなウォータリーと、ミドルのエキゾティックなホワイトフラワーに支えられている。それがそのままドライダウンというイメージ。原初の水から日の出とともに白い花を咲かせ、やがて静かにその花弁を閉じていくロータス。まさに盛夏にふさわしい香りだと思う。同じロータス系ならエルメスのナイルの庭より水辺の雰囲気がある。

夏。水面に広がるまるい緑の葉は、人の心にいっときの涼を与えるとともに、命についてふと考えさせる。ロータスは古代エジプトにおいても、命の再生を司る神々の花だった。やがて仏教などでも神々しい花として珍重されていったロータス。原初の水ヌンとは、人にしてみれば母の胎内で自分を包んでいた羊水といっても過言ではない。その絶対的な安らぎとぬくもりの中で命は育まれ、脈々と紡がれてゆく。人もまた水の中から生まれ、水を体内に巡らせ、水と共に生きている生き物だ。その本質はハスやスイレンと何ら変わらない。

原初の水ヌン、それは世界のはじまりの水の香り、泥中にあってなお清らかに咲く命の花の香りだ。

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FUEGUIA1833 / Muskara Pheroj

FUEGUIA1833

Muskara Pheroj

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

本体価格:-発売日:-

4購入品

2019/6/15 21:23:02

「ねえ、なんか香水つけたでしょ?」
「え?つけてないよ。今日はデートの約束だろ。君は香水いやがるじゃないか。」
「そうよ。だってああいうの、頭が痛くなるのよ。」
「うん、知ってる。あ!ちょっと!何するんだよ!?」
「じっとして。何か匂うわ。あたしわかるのよ。ちょっと動かないで!」
「そんなこと言ったって、何でシャツのボタンばずして顔をつっこむんだよ!」
「くんくん…やっぱりなんかつけてる!うっすらとだけど、ミントのようなクリームのような、土っぽいような…。この匂い、なに?」
「えっと…参ったなあ。わからないと思ったのに。」
「ちょっと!あたしの鼻は地獄鼻なのよ。さ、おっしゃい。一体何をつけてきたのよ?」
「あーもう。もういいや。わかったよ!言うよ。言いますよ。」

ぼくは頭をかきながら仕方なく話し始めた。つけてきたのはほぼ香りのしない香水、アンチパフュームとかスキンパフュームと呼ばれるフエギア1833の「ムスカラフェロジェイ」という香りだと。これはヒトフェロモンの研究から生まれた画期的な香りで、フェロモンと類似した分子構造をもつ植物から抽出した香料で作った香水であること、ただこの植物には香り分子はなく香りがしないこと。もともと南米で古くから用いられてきた催淫効果の高い植物の成分を使っていること。その分子は人の身体から出ているその人独自の匂いを吸着して引き出すという効果を持っているらしいことなどなど。

そんなことを調子に乗って話していたら、不意に彼女がぼくを冷たく見下していることに気付き、はっとして口をつぐんだ。だが、もう遅かった。

「フェロモン?催淫効果〜?へ〜、誰を誘惑したくてつけてきたわけ?ねえ?…ねえ!」
「いや、その、そんなんじゃないよ。誤解してるよ。ちょっと待って!わー、胸ぐらつかむなよ!」
「なんであたしとデートするのにフェロモンとか催淫効果高いとかそんなものつけてくるのよ!どこの女を誘惑するつもりよ!」
「違うってば!全然違うよ!これはほんとに君のためだよ、君のため!」
「はあ〜?じゃあ何?あたしを誘惑したいわけ?今さら何言ってるの?あたしたちつきあってもう2年よねー?」
「だ・か・ら!ちょっと落ち着いて聞いてよ!この香りはね、つまりね」

そこでぼくはいやな汗をかきかき説明し始めた。腰に手を置いてぷんぷん姿勢の彼女を必死で説得するように。つまりね、この「フェロモンの模倣」香水はね、女性の心を幸せにして心地よくさせるホルモン、ほらエストロゲンてあるでしょ?その女性ホルモンの分泌を促す作用があるんだって!だから女性がつければ自分のエストロゲンが分泌されてさ、多幸感ていうか、うっとりした気持ちになるみたい。でね、ぼくがつけてればそれを感じ取って自然に君がそうなるでしょ?そしたらほら、君が幸せな気分になるわけで…。

彼女は斜めにぼくを見て聞いていたが、ツンとあごをあげて言った。

「へー、そうなんだー。あたしはてっきりエストロゲンって女性を発情させるホルモンだと思ってたけど?」
「え?」
「あなたねー、女のあたしが知らないとでも?エストロゲンって言ったら女性を欲情させるホルモンじゃない!あなたやっぱり何か隠してるでしょ。今さらあたしにそんなものを使うとは思えない!」
「わー!ちょっと本当に誤解だってば!ほらそうやってさ、最近君がやたらカリカリするからさ、ちょっと効果あるかなーと思ってさ」
「何ですって!それは女の子だからいろいろあるの!いろんな周期とか!とにかく変なものつけてきた罰としてあたしにお詫びして。」
「お詫びって…。はー、なんだか変なことになっちゃったなあ。」
「自業自得でしょ。ほら、誠意ってものを見せたらどうなの?」
「誠意って…んー、ごめんよ。あやまるからさ。ね!」

そのとき、彼女がぼくをチラリと見て言った。

「んっとにもう…。ん…?あれ?なんだかあたし急に動悸が…。どうしたのかしら?」
「え?なに、具合悪いの?」
「あ、なんだか急に心臓がドキドキして…。」
「え?大丈夫?そのへん座る?」
「あ、もうだめ。ちょっと支えて!」

そう言うなり、彼女は身体をゆっくりと預けてきた。その瞬間、ぼくの口が彼女の唇でふさがれた。

「!?」
「…やられたわ。そのムスカラなんとかって香水に。変な気分になっちゃった!」

「嘘だ!」そう言おうとしたけどやめた。彼女がぼくの腰に手を回して、悪戯っぽく笑っていたから。

だからぼくもにっこり笑い返した。ムスカラフェロジェイの香りはしなかった。ただ、抱き寄せた彼女の柔らかな髪の香りが、まるで仕返しのようにぼくを誘惑していた。

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プロフィール
  • 年齢・・・53歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・普通
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
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  • 映画鑑賞
  • 読書
  • 音楽鑑賞

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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。週一ペースで香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水… 続きをみる

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