























2015/4/20 00:29:08
Gone with the Wind.風と共に去りぬ。
クリニークのアロマティック・エリクシールをつけるたび、映画「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレットを思い浮かべてしまう。それは、なぜなんだろう。
トップ。強烈なアルデヒド・シャワー。思わず往年の名香の数々を想起する。アルコールのようで、それでもかぐわしく、他の香料にテリを与えるようなアルデヒドの拡散。それから、すっと色を変えて出てくるのは、上でカモミールの白いパウダリーな香り。下でやや弱めだけれど特徴的な重たいジャスミン・イランイランの香り。カモミールっぽさをのぞけば、圧倒的にクラシカルな出だしだなと思う。それもそのはず。この香りは、1971年にベルナール・シャンによって作られたもの。今から40年以上前の作品だ。
そして、この香りのトップのおもしろさは、意外にもパチュリだ。
カモミールや他のフローラルが広がろうとするトップの終わり、土っぽくアーシーな強い香りが全体を包み込む。おお、パチュリ!と感じられるほど。そしてほどなく強烈な苦み。いわゆるオークモス系では?と思う香り。香りなのにビターと感じるのはとても不思議。そしてこれらが、高音のカモミール。中音のゼラニウム、ローズ、低音のイランイランといったフローラル和音全体をくるんで、シプレ・ウッディの重厚なミドルに展開していく。
そう、かなり正統なシプレー。強くて、凛としていて、どこまでも自分を譲らない芯のある頑固さ。そんなふうに感じる。あえて言うなら、ミツコやNo.5などの往年のフランス香水にひけをとるまいと、本気で作ったアメリカ式の返答か。映画で言うなら、カンヌに対するアカデミーのように。
ミドルからラストにかけては、このウッディ系の土っぽさ&苦みに、ベチバーの重たさも混じってきて、そうそうたる「森の湿った苔&地衣類&掘り返した土と根の香り」に展開。とはいえ、ハーブのスパイスとフローラルのシンフォニーとのバランスがよく、土臭く感じないところがいい。全体に、重たく高貴なフローラルっぽく感じられるのだ。カモミールのさっぱりした香りとローズの華やかさ、ゼラニウムの涼しい感じを支えるように、ウッディの濃さを整えているからだろう。
そして、ラストは、アメリカン感覚なソーピー・ムスクに変化。それらをオークモスやベチバーの苦みがキリッとエッジを作っているような印象。ジョーバンあたりののムスク系石鹸の香りを高級っぽく仕上げたという感じ。泡立つシャボンで体のすみずみまでキシキシに磨き上げたような、強くて清潔感あふれるオトナ石鹸の香り。ただ、このラストも残香性は強い。つけるときは下半身で十分。量にも注意が必要だと思う。
そんなアロマティック・エリクシール。それがなぜスカーレット・オハラ?
「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレット・オハラは、アメリカ南北戦争当時のヒロインには珍しい、強烈な「お嬢様的エゴイスト」だ。気が強く、機敏で計算高く、貪欲だ。一度見たら忘れない強烈な美貌の持ち主で、周りの男性からちやほやされて育った。自分の目的のために男性の心をつかんで利用する技術に長けており、商才がある。実家の農園タラを心から愛しているが、結婚して直ぐに夫が死に、更に南北戦争の敗戦後、広大な土地と財産を全て失い、波乱の人生を送る。
そんなスカーレットとこの香りは共通点が多い。クラシカルで、でも展開が派手で、押し出し感が強い。多層的フローラルの、濃厚で完璧な美しさをたたえながら、近寄る相手を一蹴してしまうほどのギリギリとした苦みでツンデレのバリアを張っている。まさに翻弄されてしまうほどの強さ。計算高さ。土を思う心。
全体にクラシカルな印象なので、誰にでもおすすめできる部類ではない。カチっとしたビジネススーツの女性、あるいはゴージャスな装いに似合うだろう。そして何より、知的で傲慢で、美しく自己愛が激しい、そして、思うままに人生を苛酷に生きようとする、自分のスタイルを譲らない女性に似合うと思う。または、そんなふうに強くありたいと思う女性に。
スカーレットは、最後まで素直になれず、本当の愛情に気付けないまま、レット・バトラーという自身の生き写しとも言える伴侶を失った。彼は風と共に去ったのだ。けれど、彼女は、何度も絶望の淵からはいあがってきたように、それでも顔を上げ、負けまいと空に誓った。この香りにも、そんな強さが表現されている。俺はきっとそこにとらわれたのだろう。
「彼は風と共に去った。タラに帰り、彼を取り戻す方法を考えましょう。そうよ。明日に望みを託して。」
Gone with the Wind . Tomorrow is another day !
2014/6/28 07:24:53
この世から消えたいような不安感に陥るときは季節を問わず身につけています。この不安は生理的なものなので、香りひとつで治まることも無いけれど(アロマテラピーや音楽も必要)ココも無くてはならない存在です。私は大抵ウエストに、夜寝る頃つける場合が多いです。柑橘と花とスパイシーが一緒に立ち上がったあと香りは丸みを帯び、翌日までひっそりとしたたかに甘く残っていきます。残り香は上等なブランデーのよう。渋みとスモーキーさが自分の体臭と重なって、ぐにゃぐにゃな背筋を強くしてくれる、優しくて包容力のある香りです。
2015/7/10 23:17:29
ニナはニナでも、赤リンゴのニナではなくて、1987年のいわゆるオリジナルあるいはクラシックニナはこちらでいいのでしょうか?
口コミが錯綜しているようで。
ボトルはルネ・ラリック調の磨りガラスとドレープのクラシックな円形。今現在のリンゴ型やちょっとお口に出来ない渦巻き型とは一線を画します。
香りはクラシックなパウダリーウッディ調のグリーンフローラル。トップには紛れもなくアルデヒドが香ります。そして何となくスパイスとしてクミンが入っているのか?と思わせる腋臭と言うか、鉛筆の芯のような特徴的な香りも。
パウダリーで体臭を思わせるアニマリックなところがあるので、体調が悪いと、胸につかえそうになります。何となく口の中が粉々してくるような、でも好き。
ニナリッチお得意のスパイシーフローラル。
購入サイトでは1987年発売。
トップ アルデヒド、ミモザ、オレンジブロッサム、スグリの葉、グリーンノート、ピーチ、バジル、マリーゴールド、ベルガモット、レモンなど。
ミドル ミモザ、スミレ、オリスルート(匂い菖蒲の根)、ジャスミン、イランイラン、西インド産月桂樹の葉、ローズなど。
ラスト アヤメ、サンダルウッド(白檀)、パチョリ(インドハッカ)、ムスク(麝香)、シベット(霊猫香)、オークモス、ブラックカラント(黒スグリの実)、ベチバーなど。
なぜニナ・リッチがラリックボトルのクラシカル路線を外れたのか?
調べてみると、ニナリッチの香水部門を統括していたロベール・リッチ(ニナ・リッチの息子)が1988年に亡くなったからだった!
これってゲランの香水部門からゲラン一族が手を引いたのと同じ事ね。
今のニナとは全く別の匂いなので、名前をなんとかしてくれないと、コメント見た人が勘違いしそう。
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[ヘアパック・トリートメント・白髪染め・ヘアカラー・ブリーチ]
容量・税込価格:80g・110円発売日:-
2011/11/22 12:22:47
私がヘナ染め(インディゴ入り)を利用するのは、おしゃれ染めでも、髪色戻しでも、ましてやトリートメントではなく、ズバリ白髪染めです。テーマはいかにヘナ独特の真オレンジではなく、ダークに染めるかです。
・ダイソーヘナ ナチュラルブラウン・・・半箱
・ぬるま湯・・・適当
紅茶やコーヒーで溶いたり、色々加えることも多いようですが、私の髪質はヘナが入りやすいのか、違いが出ません。ブラウンに入っているインディゴは、むしろオイル、レモン、ヨーグルト等との相性が悪いそうです。実際、色々と試してみましたが、労力ほどの違いは感じなかったこともあり、ただのお湯だけでといています。
インディゴは溶いてすぐ発色し始め、30分ぐらいでピークに達すると聞きました。ですので寝かさずに髪に塗ります。へナは寝かせた方がいいといいますが、塗布後の放置時間を長めにとって、そこで兼ねてしまえと若干強引に解釈しつつ…。かくして髪を洗ってヘナを溶いてすぐ塗布。ラップで頭を巻いて数時間。ラップをはずして30分たったらすすぎ。
洗い流しですが、当初はインディゴは酸に弱いというので、流水のみで洗い流していましたが、色止めをすると、すすぎの手間や全体としては色の定着が全然違うことに気づきました。私はヘナをざっと流した段階で、用意しておいた台所の酢をお湯に溶いたものを髪になじませ、引き続きお湯が透明になるまでシャワーですすぎます。これをしないと、いつまでも洗い流しの水が茶色いですし、しばらくは洗髪のたびにタオルが茶色くなるので、明らかな違いを感じます。また酢リンス効果で、ヘナでゴワついた髪をが柔らかく扱いやすくなります。ヘナ使用後のゴワゴワ感はここでリセットできます。ヘナは汚れを吸着する機能があるので、シャンプーはしません。染髪した日はいかに色を流出させずに定着させるかを意識しています。
さらに、インディゴの成分は染色して濡れた状態で空気にさらすことで発色がさらに進むというので、洗髪後はすぐに乾かさずしばらく放置しています。生乾きになったぐらいでドライヤーで乾かしておしまい。3日以内ぐらいは発色が進むというので、次回に洗髪した際にも、同様に空気にさらす時間をとります。
インディゴはヘナですでに染色された部分に反応して色が入るそうですね。ですので新たに染めた白髪部分には、実はヘナしか入っていないのだと思われます。確かに根本は染まりがオレンジ味が強いかもしれません。それでもそんなに色むらを感じませんし、白髪がキラ〜ンということはなくなります。毎回全体染めをしているのですが、回を重ねる毎に、既に色を入れているところはしっかりした色になっていきます。ですので白髪が筋になって見えるようなことはありません。
「インディゴは」「インディゴは」としつこいですが、白髪染めに結構せっぱつまっているので(笑)、インディゴの発色を引き出すことを意識しています。
ヘナ染めは通常の染髪より面倒な印象がありますが、『ぬるま湯でで溶いてそのまま塗るだけ』の私には、むしろ楽です。ケミカル成分が入っていないので、素手にたっぷりとって、大雑把に束で分けて塗りたくっています。慣れたもので5分とかからないので、すぐ手を洗えばちょっと爪先が茶色っぽいかな?ぐらいです。
2011/11/6 20:38:39
私が5歳まで住んでいた家の二軒先に、ポメラニアンと一緒に暮らしている50代後半の女性がいらして、幼い私は時々その家に遊びに行っていました。小さな部屋が二間だけのその借家の真ん中には不相応な位の大きな仏壇があり、そこを中心にその部屋には、何とも言えず独特で神秘的で魅力的なお線香の香りが漂っていました。彼女はいわゆる“二号さん”で、その仏壇に飾られた写真は大分前に亡くなったという彼女のその“ご主人”でした。
それから20年以上も経ったある日、この香りのコロンを入手して、私は生まれて初めてめくるめくような強烈なプルースト効果というものを体験しました。吹き付けた瞬間、急激に、私はあの女性の部屋にちょこんとお邪魔している4歳の自分の状態に引き戻されたのです。普段ほとんど思い出すこともないあの場所に私はいました。それは思いも寄らないことで、こんなことがあるのかと本当に驚かされました。この香水はまさにあの家の香りだったのです。
どうだったのでしょうか。世代的にも自然ですし、彼女がタブーを愛用していたことがまず当然の如く考えられます。でもどうも私は、あの家の香りが奇跡的にタブーに酷似したのではないかと思っているのです。仏壇の周辺から特に強く香っていたからです。あくまで推測ではありますが、彼女が常用していた線香とあの、花の名前を持った愛らしい室内犬の匂いが絶妙に混じりあい、あの香りが出来上がったのではないか、と。
タブーには猫の尿にも通じるシベットが含まれています。だからお香の神聖な雰囲気の中にもどこか不浄が潜んでいるような、どこかに罠があるような、あの独特の香りが出来上がるのですね。セクシャルで危険な感じを醸し出していて、どこか日陰的で、とても背徳的な香りです。
とにかくそれ以来私は、この香りに触れる度に絶対的に彼女を思い出さずにはいられなくなりました。思うに、“タブーを犯す”という言葉はまるで恋愛ゲームだとか、悪さをしたという勲章のような感覚を以って用いられることが多々ありますが、私はこの香り(と酷似した香り)を漂わせた彼女のあのどこか寂しげな暮らしぶりを思う度、何か声を上げて泣きたくなるような思いに囚われます。タブーを犯すということは、それなりの代償を伴うということ、覚悟を引き受けなければならないということ。
試香したその夜、私は古い電話帳を引っ張り出し、彼女に電話を掛けました。彼女は昔と同じ家に今もいらして、変わらない懐かしい大阪弁と、変わってしまった80を越えた老いた声で私にこう仰いました。「こんなに生きるとは思わんかったわ」
タブーを使っていたか、とは、なぜだかどうしても聞けませんでした。
思うに、このような話はこの場に相応しくないのかも知れないので、投稿には幾分悩みました。でも私がこのタブーの香りを表現するに際して、このことをどうしても書かずにはおれませんでした。私にとってはこの香水は、その名に申し分ないほど相応した、“禁忌”の香りです。
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