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doggyhonzawaさん
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ラルチザン パフューム / EXPLOSIONS OF EMOTIONS DELIRIA

ラルチザン パフューム

EXPLOSIONS OF EMOTIONS DELIRIA

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2016/2/6 09:23:48

心は気まぐれ。ふとした折に、たわいない妄想の泡をふくらませる。(←大丈夫か?)
ラルチザン・パフュームのデリリアは、そんな妄想を刺激するフレグランスだ。

デリリアのオープニングは、ガムシロップをこぼしたような濃密な甘さで始まる。そこに、リンゴ風のフルーティーな酸っぱさがシンクロし、何か冷たくてキンとした酸味と苦みが、全体を包んでくるような不可思議な印象。メタリックアルデハイドのヴェール。

やがて、ウォーターメロンなどの瓜系ウォータリーな雰囲気になり、アップルの香りはバター風味を得て、パイナップルのようなファッティーな香りになる。そしてミドル〜ラストは、この印象のままドライダウン。シングルノート寄りの系列。

かつて公式サイトには、調香師ベルトラン・ドゥショフールが、この作品に寄せた香りのモチーフが、次のように紹介されていた。

「始まったばかりの恋愛はローラーコースターのようにスリリング。刺激的なラム酒と、甘くフルーティーなトフィーアップルとキャンディフロスの鮮やかなコントラスト。」

過去形なのは、すでにこのデリリアが、その前衛的なネーミング(和訳「せん妄」認知症の症状の1つ)にヨーロッパでクレームがつき、販売中止になってしまったから。現在、在庫品の販売は認めているようだが、Explosons d'emotionsのディスカバリーセットには、名前をソート・ダ・ユムール(ムードの急転)と変えて入れている。今後、市場から静かに消えてゆく香りの1つかも知れない。

デリリア、スキンオンスキン、アムールノクターンは、2013年に発表されたExplosons d'emotionsの最初の3本だ。自分と相手の関係性について、「感情の爆発」をテーマに、洋酒、デザート、硬質な物などをミックスして、「男と女の出会いの衝撃」「高まっていく欲望」そして「穏やかに満ちたりた愛」そうした恋愛の情景を織り込んでいるようで興味深い。

特にデリリアはそうだ。想像の翼に風をあたえ、ふくらませてくれる。

・・・・・・

海辺の小さな遊園地。光る風。潮の香り。初めてのデート。柔らかくなびく君の髪。そっとおさえる白い指。見つめていたいのに照れくさくて、ぼくは観覧車を見上げてガムをかむ。

いつもとちがって見える世界。デリリア。

手をつなぎたいくせに、その手にふれたいくせに、妙に意識するから、かえってぎこちない二人の距離。ポケットに入れたままの手は、汗ばんでいるのを知られたくないから。

「どれに乗ろうか?」ほんとは何でもいいのに、君だけを見ていたいのに、アトラクションを選んでるふりで。

現実と妄想の二重らせん。デリリア。

わたあめの甘い香り。バブルガムの甘苦い味。君の白いセーターのふわふわ。そっと盗み見た長いまつ毛。テンションの高いBGM。ジェットコースターの鈍い銀色。せまい階段を上るときにふれた君の肩。ふわりと漂うシャンプーの香り。空高く湾曲した、巨大な龍の背骨のようなレール。カタンカタン。目の前でコースターが上っていくたび、心のドキドキも加速する。

「次だね。どこに乗ろうか?」君の隣ならどこでもいいのに、そんなことを聞いたり。苦手なはずなのに、ガムをふくらませて何でもないふうを装ったり。

カタン、カタン、上がっていく心の傾斜。デリリア。

安全バーを肩からかけて、前の銀色のバーをつかんで、ガチガチなのに「大丈夫?」なんて聞いてみたり。背中を揺らしながら天空へと運ばれていく間、「けっこうだめかも」と告白してみたり。「好きだ」って言う告白はできないくせに。

不意に開けた空。消えたレール。眼下に広がる海。明滅する太陽の破片。ストップモーション。刹那。うなりを立てて落下するコースター。強烈な風。自分の叫び声。君の笑う声。

ムードの急転換。ソート・ダ・ユムール。

「大丈夫?」背中を丸めて息をする情けないぼく。その顔を、ちょっとかがんでのぞきこむ君。その瞬間、抱きしめてしまいたくて。でもできなくて。

「ふわー、死ぬかと思った!」初めて2人で見つめ合って笑った。こぼれるような君の笑顔。汗ばんだ手の平から、冷たい金属の香り。あー・・・好きだ。

ベンチに座って飲んだパイナップルのジュース。きらめく太陽。心地よく吹き抜ける潮風。たわいない話。君の笑顔。ぼくの照れ顔。ゆったり日時計のような観覧車。メリーゴーランドからこっちを見て笑ってる白い馬。

心はまるでジェットコースター。急上昇と急下降を繰り返しながら、君の隣で笑ったり落ち込んだり。甘く騒がしく、クールぶっているのに、どこか汗ばんで、心は君に加速する。

それは、恋の始まり。デリリア。

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エルメス / エキパージュ

エルメス

エキパージュ

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2016/1/19 00:31:10

実は「男性用香水」と声高に主張している作品が、案外苦手だ。特にクラシカルな香り。理由はシンプル。あまりにハーバルで、スパイシーで、そしてウッディが強くて、「全身毛むくじゃら、筋骨隆々のたくましい男」というイメージを、香りが醸し出していることが多いからだ。(←自分がそうじゃないからだろ)

そうした香りは、アラミス、ダンヒルなどのイメージとリンクする。例えば、名優マルチェロ・マストロヤンニから漂うような雰囲気の香り、今風に言えば、ジョージ・クルーニーや、ラグビーで有名になったリーチマイケルのようなイメージ。彼らはがっしりとしていて、彫りが深く、男らしい。それでいてとてもセクシーだ。

エルメスのエキパージュは、そんな、自分に厳しい強い男を彷彿させる香りだ。この男性用香水は、1970年、ギ・ロベールによって調香され、エルメス初の男性用香水としてデビューした。

エキパージュのトップは、スパイシーな雰囲気で、いわゆるメンズのトニックっぽい香りで始まる。そのアルデヒドの強い風が過ぎると、高いところでツンとしたスパイス、そして、シトラス系のキリッとした酸味が同時に香ってくる。甘さはなく、爽やかだが渋いオープニング。

やがて5分もすると、痺れるようなスパイス感が和らぎ、奥から乾いた草の香りが漂い始める。いわゆる干し草ノート。そして同時に、暗く、くぐもった茶色のスモーキーな香りが下から広がってくる。それは、熟成された葉の香り、タバコノートだ。火をつけていないときの、深く洋酒のようなコクがある葉の香り。紙巻きタバコではなく、パイプに詰める刻みタバコのような湿ったウッディだ。これらがミックスされて漂い始めると、さながら、薄暗い書斎にたたずんでいるような雰囲気になってくる。

このミドルは、苦くて乾いていて、ややアニマリックな感じもする干し草様の香りに、じっくりローストされた湿ったタバコの香りが同時にしてくる点で、とても興味深い。温かみを感じる香料と冷たさを感じる香料のミックスはよくあるが、「乾いた干し草&湿ったタバコの葉」のミックスは、昨今の香水のブレンドにはあまりないコントラストだと思う。

そんな、屈強で包容力のある男がたくさんいた時代を回顧させるようなミドルは、大体1時間ぐらい香り続ける。次第にスモーキーなテイストに土っぽいベチバーの香りも混じり、もはやどこからどう見ても、男性の体臭をマスキングするための強いウッディ・フレグランスといった雰囲気になってくる。そして、穏やかに減衰していく様子。実際、ミドルからラストは変化があまりなく、スモーキーなウッディとベチバーのアーシーな香りのままドライダウン。

全体的に見ると、トップは、ゲランのミツコを男性用にアレンジしたような苦みの強いシプレー系の拡散。実際、モスのギリギリした苦みばしった香りがずっと漂っている。そこから、枯れた草のドライな香りとウッディの落ち着いた香りが広がり、途中で、ゴムを焦がした匂いのようなスモーキーさも見せ、同時に、低いところで穏やかなフローラルも感じられるといった展開。構成を見ると、カーネーションの香りがアクセントになっているようだ。

さすがに、今から46年前に作られた作品だけあって、当時流行の香料やブレンドで作られた、かなり古典的な構成だなあと感じる逸品。年代的に言うと、50代より上の、ステータスある男性に似つかわしい感じ。オフの日でも、ツイードのジャケットをさりげなく着こなす銀髪の紳士といった風情の。もちろん、この香りが好きな人は年齢や性別に関係なくいるだろうけれど、きちんとした年輪を刻んだ男にこそふさわしい、シプレー・ウッディ系の渋い香りだ。

そんなエキパージュの香りは、子どもの頃ドアの向こうにかいま見た、大人の男の書斎をフラッシュバックさせる。そこには、触れてはいけない物がたくさんあって、触ってみたくてドキドキしながら足を踏み入れた記憶がよみがえる。

ダークブラウンの床。ジャガード織りのカーテンからこぼれる窓外の光。壁一面の高い書棚。革の背表紙に金の装飾が施された文学全集。瀟洒なペルシアの絨毯。アンティークな猫足のテーブル。読みかけの小説。黒檀で作られたシガーケース。使いこんだブライアのパイプ。現実と夢の境界をにじませるかのような煙の余韻。

エキパージュは、そんな情景に似つかわしいメンズの香り。乾いた苦い葉と、湿った煙たげな葉のブレンド。渋く、深く、琥珀色に降りつもる刻(とき)を楽しむ香り。

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アトリエ・コロン / Vanille Insensee

アトリエ・コロン

Vanille Insensee

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2016/1/11 16:48:10

ヴァニラ・アンサンセ。それは、ミステリアスなヴァニラ。自分がどこから来たのか、どこへ向かっているのか、そして、何のために生かされているのか。そんな灰色の霧の中をさまよっているかのような気分にさせるヴァニラ。

ヴァニラ・アンサンセのトップは、スッと柑橘の苦みが通り抜けて始まる。クレジットにはライムとあるようだが、つけていて「あ、ライムだな」とは感じない。鼻を一瞬通り抜ける苦みだけだ。

3分もせずミドル。キリッとした別の苦みが前面に出てきて、透明感のある香りになってくる。さらに、奥からほの暗い陰影が染み出してくる。この影の部分は、おそらくクレジットにあるベチバーのウッディっぽさ、土っぽさだろう。ただし、主張は柔らかい。ほんのり漂う木や土の香りといった風情。抑制のきいた、甘苦いような香りが静かに漂う。

トップからミドルに変わっても、主張は絶えず穏やかで、ときどき「本当に香っているのかな?」と鼻を疑うこともあるほど。そしてなぜか心がそわそわする。もちろん個人的な感覚だが、何となくヴァニラのイメージとは遠くかけ離れた、不安な気持ちにさせられるミドルだ。下から出ているわずかな甘さが、グルマン系のキャラメリゼされたようなそれではなく、漢方薬の成分が発するようなじわりとした甘さで、そこにくっきりとした苦みが寄り添っているせいかもしれない。そんなミドルが1時間ほど続く。

やがて、そのほの暗いストイックな香りが、落ち着いた、品のいい甘さをもったヴァニラの香りに変化してくることに気付く。そんなラスト。それは、ちょっと人見知りな感じの、ひかえめなヴァニラ。甘くなく、クリーミーすぎず、けれど、芯はふくよかで温かみを感じさせる大人ヴァニラ。

全体的に見ると、トップに得られたライムの苦みとスッキリ感が、そのままミドルでモス系の苦さにつながり、ベチバーの湿った暗さと相まって展開しながら、そのまま揮発してラストにまろやかなヴァニラに変わった感じ。ミドルにはジャスミンのクレジットもあるが、自分にはあまり感じ取れない。そして終始「なぜこんなに抑圧的なんだろう」「なぜ、何かが足りないような気になるんだろう」といった思いが心によぎる香りだ。

控えめでクールな香り立ちを考えれば、付けるシーンはあまり選ばない汎用性の高い香りと言えるかも知れない。特にラストのヴァニラがきれいめで、主張し過ぎないことから、ヴァニラが苦手な人でも、試してみるとよいと思う。人の多い場所でも周囲にわずらわしさを与えず、ほんのりと漂い続ける点は、日本人にとってもつけやすい部類の香りだろう。コロン・アブソリュの底力で、2日くらいヴァニラがほのかに残るから、服などについた残り香を楽しむことも一興だ。

ありそうでないこの香りを何かに例えるなら、さながら「小麦粉を散らかしてしまったキッチンの香り」、あるいは、図書館の片隅で、しばらく誰にも手に取ってもらえなかった本を開いたときに漂う、ほこりっぽい紙の香り、といった雰囲気。ほんのりとしたヴァニリンの甘さから、そんなイメージが思い浮かぶ。

うす曇りの冬の図書館。通る人を威圧するかのように、行儀よく向かい合って並んだ書架の黒いシルエット。その向こう、大きく切り取られた窓から、低く斜めに切りこんでいる冷たい冬の光。窓外に広がる枯れた芝生の稜線。彼方に小さく見える森の木立。灰色にくすんだ空。

ヴァニラ・アンサンセは、何かとても大事なものを失いそうな冬の午後に似つかわしい香りだ。淡くて冷たくて、どこか内省的に思える雪のひとひらのようなヴァニラ。何かが自分に欠けているようで、そしていつもそれを追い求めているかのような切なさも感じられる。ジョー・マローンでもないのに、なぜか他の香りとレイヤーしたくなるのも、そんな印象のせいかもしれない。

曇天の空の下、どこまでも枯れ野を歩いて、そぞろ歩きをしてみたい。そんな気分になる不思議な香り。たとえ何一つ大事な答えなど出ないにしても。

ヴァニラ・アンサンセの香りと思い出を抱えて、風に舞い始めた小雪の中を。

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ディオール / ファーレンハイト オードゥ トワレ

ディオールディオールからのお知らせがあります

ファーレンハイト オードゥ トワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:50ml・12,650円 / 100ml・17,490円発売日:- (2008/11/1追加発売)

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5購入品

2016/1/4 17:08:45

青い夜明け、吐息の白い朝、ガレージのシャッターを開けて、バイクのイグニッションにキーを差しこむ。チョークレバーを少し引き、FUELコックをONにする。「かかってくれよ」そう願いながら、セルを回す。

キュキュキュ、ドルン! ドゥルドゥル、ドゥルドゥル、ドゥルドゥル・・・

かかった。鉄の馬に命が宿る。冬のバイクはエンジンがかかりにくい。冷たいガスタンクに手をあてながら、シートをまたいで腰を下ろす。その重みでゆったり沈みこむボディー。チャプン!とガソリンの揺れる音。その瞬間、俺の心も揺れる。

ディオールのファーレンハイトをつけるたび、バイクでどこか遠くへ行きたくなる。だが、それは明確な場所ではない。例えるなら、地平線へ向かう一本道の彼方、オレンジの夕焼けと黒い山々のシルエットの境界、ピリオドの向こう(←それはやめろ)

ファーレンハイトは、1988年、ジャン・ルイ・シュザック、モーリス・ロジェらによって作られたウッディ系のメンズ・フレグランスだ。現在流通しているのは、EUの香料規制問題に対応すべく、フランソワ・ドゥマシーによってリファインされた物で、オリジナルと比べると、重厚さとアクの強さは薄れたが、唯一無二とも言える香りの骨格じたいは継承しているように思う。

ファーレンハイトのトップは、複雑で驚きに満ちている。それは、暗く青いガスの香りがする。あるいは、揮発するガソリンやオイルの匂い、ウィスキーをこぼした革ジャンのような匂い。そこに青臭いグリーンな香りと、けぶった木の香りが入り混じり、クラクラしそうなほど強く主張する。

やがてミドルになると、バイオレットリーフの冷たく青いガスの香りが消え、温かみのあるスモーキーなウッディが強くなってくる。アルコールが染みわたったオーク樽のように、人を酔わせるような芳醇なウッディ。青かった炎がオレンジになったような雰囲気。高いところで、なめした革のようなくすんだ香りもしてくる。

そして、長いミドルから、あまり変化のないラストへ。ほんのり甘いアンバーやムスクが感じられつつも、バイオレットリーフの暗い清涼感、スモーキーなバーチタール様の香り、レザーの埃っぽさを残しながらドライダウン。ミドルの雰囲気そのままにフェードアウトしていく印象。

付けてから8時間以上も香り、持続性は長め。トップの香り立ちが強烈かつ複雑なので、付けたてで「あ!無理!」と言う人も少なくないと聞く。同じシュザック調香のデューン同様、トップで好きか嫌いかはっきり分かれることが多い香りだと思う。

全体で見ると、トップの冷たい青臭いグリーン香が、どんどん温かくスモーキーなウッディ&レザーに変化していくが、終始ベースのベチバーやパチョリの香りが感じられるので、アーシーさを保ったまま温度が高くなっていくイメージだ。まさに、氷点から沸点へ。青から赤へと燃えさかる心の炎のよう。

ファーレンハイトの名の由来は、温度単位の「華氏」であることは有名だ。華氏(ファーレンハイト度)は、摂氏(セルシウス度)と異なり、人間の通常の体温を約100度ととらえ、そこから身の回りの温度を規定する考え方だ。こうすることで、摂氏のようにマイナス表示はなくなり、どんなに低い体感温度でも、必ず0度以上のプラス表示になるというメリットがある。

つまり、「自分中心に世界の温度を規定する」という考え方だ。

そんな「自分中心の温度感覚でいい」という孤高な意識が、この香りにも込められているように思う。ディオールによると、この香りは、庭に放置されていた香水樽が発酵し、漂い始めた芳香を再現すべく生まれたという。いわば、ウィスキーなどの熟成香の一種だろう。その類まれな揮発ガスの危険な香り、それは、本物のよさを知る者たちにだけ理解してもらえればそれでいい、そうした作り手の自分感覚の潔さが感じられる作品だ。

強さと激しさ、大人の懐の広さを感じさせると同時に、どこか寂しさや暗さ、怜悧さをも感じさせる、かなりメンズ寄りの香りだ。この香りをつけこなしていて似合う男は、日本にはなかなかいないかもしれない。なぜなら、香りがつける者を選ぶタイプの気難しい荒馬だから。

朝焼けの赤光。機嫌よく吹け上がった鉄馬のいななき。メットの中の孤独な息遣い。革ジャンの胸元から立ちのぼる、すみれ色のファーレンハイトの香り。さあ、行こうか。

「ガソリンの香りがしてる その中に落ちていた人形が マッチ売りの少女に見える
 淋しさだとか優しさだとか ぬくもりだとか言うけれど そんな言葉に興味はないぜ 
 ただ鉄の塊にまたがって 揺らしてるだけ 自分の命揺らしてるだけ」
 (THE BLANKEY JET CITY「ガソリンの揺れかた」)

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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) / インセンス & セドラ コロン インテンス

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

インセンス & セドラ コロン インテンス

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・15,950円 / 100ml・23,650円発売日:2015/12/26 (2017/2/3追加発売)

4購入品

2015/12/30 14:03:23

香りの印象は一瞬で決まる。「あ、いい香り」「うわ、何、この匂い?」人の嗅覚は、通常その程度の判別だろう。好きか嫌いか。そして、悲しいことに、後者の感覚の方が人は鋭敏なものだ。

よい香りかどうか。その判断は、実はとても曖昧な感覚でもあり、場所・状況・対象によってもかなり異なると言われる。同じ香りでも、満員電車の中よりは、ゆったりしたスペースでかいだ方がよい印象をもたらすし、好きなタイプの異性が放つ香りは、無条件で好まれやすい。もちろん逆のことも多いが。

そういった意味で言うと、ジョー・マローンがこの2015年12月26日に出したばかりの「コロンインテンス」シリーズの新作「インセンス&セドラ」は、一瞬で好き嫌いがはっきり分かれる香りの部類だと思う。

もっとありていに言うと、「わあ、お香の香りだ。落ち着く」と感じる人と、「なーんか、お線香の香りするんだけど」と感じる人に分かれるような気がする香りだ。

トップは、いきなり鼻にくるペッパーのスパイシーさ。そして、抹香のようなスモーキーな香りが広がる。正直、このトップだけの印象だと、お寺や仏壇といったイメージをぬぐえない。つまり、この一瞬がこの香りの一番の勝負どころ。気に入るか気に入らないか、トップで明確に決まってしまうことが多いかも知れない。セドラというクレジットはあるものの、シトラスの香りは明瞭ではなく、スパイシーな香料とスモーキーなお香のイメージに完全に負けている。

やがて5分もすると、ペッパー風のスパイシーさは薄れ、暗く穏やかでソリッドなお香の香りに鎮静していく。個人的には好きな香りだが、まるで、暗くて冷たい本堂で、妙に金光りしたご本尊を見上げて、心にやや引け目を感じているような気分になる香りだ。そして、ジョー・マローンにはよくあることだが、この香りのまま、ゆっくりと薄れていく。香り立ちは穏やかだが、4時間くらいでドライダウン。

キーとなる素材は、オマーン産の希少なフランキンセンス(乳香)の香り。ただし、ネイチャープリント技術を使用と謳っていることから、その最高級のエッセンシャルオイルや抽出液をガスクロマトグラフィーによって成分分析し、そこからより自然に近い香りの再現を試みたということだろう。

例えば同じインテンスシリーズでも、ウード&ベルガモットはもっとジューシーで、明るく華やかなお香といった感があるが、付け比べても、それより遥かに低く、暗く、静かに時をたゆたうような香りといった風情だ。これまで以上にインセンスの香りを際立たせてきたなあという印象。

と、好き勝手な印象で書いてきたけれど、ジョー・マローンは、コンバイニング(重ね付け)してこそ本領発揮。ということで、この「ほとんどベース香料だけで作った香り」には、やはりセドラのようなさっぱりと明るいシトラス系の強い香りをコンバイニングした方がよいと判断。いろいろ試してみた。

同じジョー・マローンなら、定番のライム・バジル&マンダリンの重ね付けがとても好印象。ライム〜は単品だと、ほとんどトップ系香料で作ったあっさりシトラス&ハーブで、気の抜けたお風呂上がりの湯気みたいな印象が強いが、こうしたオリエンタル・ウッディと合わせると、俄然、全体に透明感や輝きを与えてくれて、バランスのよいシトラス・ウッディとなって楽しめる。やはり合わせてなんぼのジョー・マローンの面目躍如といった感じ。

他には、アトリエコロンのセドラ・エニブロン、オレンジ・サングインなどが、コンバイニングしておもしろかった素材。アトリエコロンのシトラス系は、長時間香るうえにベースが淡いので、インセンス&セドラの落ち着いたお香の香りが、シトラスに適度な苦みと陰影をつけて、より爽やかさをひきたてるようだ。他にも、シトラス系のままドライダウンするような香りや、ローズ一色で減衰するような香りなども、重ね付けを試してみるとおもしろいと思う。

香りの印象は、本当に一瞬だ。誰かに判定してもらうために付けるのではないけれど、できるなら自分がつけて心地よく、周りの人も気持ちよく感じてもらえる香りを身に付けたいなあと思う。

遠い異国の地、オマーンの白いモスクでは、きっとこんなお香の香りが、そこかしこに立ちこめているんだろうな。そう思いながらインセンス&セドラの静謐な香りに心を任せる。それでも、心によぎるのは、なぜか真夜中の日本のお寺の鐘楼だ。身が引き締まるような冷たい夜気の中、白い吐息だけが漆黒の闇に溶けゆく瞬間、荘厳に響く、時を告げる鐘の音だ。

見上げた虚空、無数の冬枯れた木の枝が、魔女の手のように夜空を覆い隠している。その合間にまたたく星々のはかない光。年をまたいで、心にしみこんでいくインセンス&セドラの香り。

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ドギマギの夏さん
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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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  • 髪量・・・少ない
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • お酒
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  • 食べ歩き
  • 音楽鑑賞
  • ファッション

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【警告】 *プロフィール(自己紹介文)又は 挨拶を割愛してのフォロワー 登録は、ご遠慮ください。 *猥雑なニックネームの方も同様に ご遠慮く… 続きをみる

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