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doggyhonzawaさん
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イッセイ ミヤケ パルファム / ロードゥ イッセイ オードトワレ

イッセイ ミヤケ パルファム

ロードゥ イッセイ オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・3,190円 / 25ml・8,690円 / 50ml・12,540円 / 100ml・17,600円発売日:- (2022/2/1追加発売)

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5購入品

2018/10/27 14:47:51

「香水なんてシミを消すわけでもないし、肌にいいわけでもない。何の効果があるの?」コスメに機能を求める方は言う。そのとおりかもしれない。ざっくり言えば香水なんて香りをつけたアルコールだし。それでもあえて言う。香水はすごい。それはときに人の心や世界の流れまで大きく変えることがあるからだ。

ここに1本の有名な香水がある。細長い円錐形のすりガラスボトルに入った透明な液体。作品名はロードゥイッセイ(イッセイの水)。世界的デザイナーとして有名な三宅一生氏の最初の香水にして最大のヒット作だ。このオードトワレは、それまでの香水文化を大きく変えたといっても過言ではない。

ロードゥイッセイは、まず人の心を大きく変えた。「香水なんて派手だし、くさいし、嫌い」そう感じていた女性たちがこぞってこの香りを買うという現象を生んだ。もともとこの香水は、香水嫌いで有名だった三宅一生氏のブランド戦略として提案されたもので、当然ながら彼は最初は乗り気ではなかった。しかしどの服飾ブランドもイメージアップ戦略の一つとして香水を扱いだした流れにもまれ、遂にイッセイ・ミヤケの香水を出すことが決まったとき、彼は新人調香師に向かってこう言った。

「創るなら、ぼくを驚かせる香りであってほしい。それは例えば、自然の中で深呼吸しているような香り、水のような透明感のある香りだ。」と。

それを聞いた関係者は、みな首をすくめたという。「水の香り?そんなの作れるか。作ったとしても売れるわけがない。」だが新人調香師だけは違った。当時、カルバンクラインのエスケイプで大量に使用された新しい人工香料カロンを使えば、彼の厳しい要求に応えられるかもしれない。そう感じていた。

その調香師の名はジャック・キャバリエ。今でこそルイ・ヴィトンの香水部門の専属パフューマ―として世界的に有名な彼だが、当時はフィルメニッヒ社に入ったばかりの無名の新人だった。彼は試作に試作を重ね、1992年、今までにない新しい香りをこの世に誕生させた。それまで派手なフローラル中心だった濃厚な香水は日本のバブル崩壊と共に影を潜め、時代はこのあっさりとした優しい香りを全面的に迎えた。世界は緊縮財政に向かい、香水業界はこの香水のヒットをきっかけに、新たなトレンドである「水の香り」「オゾン系」「マリン系」「ユニセックス」へとシフトしていった。

そんな記念碑的な香りとなったロードゥイッセイ、どんな香りだろうか。

ロ―ドゥイッセイをスプレーすると、まず広がるのはユリの花のたおやかな香り。そこにシクラメンの低いしっとりした香りが混じってくる。トップからフローラルブーケ全開で、シトラスはない。水滴がしたたるような白い花の香りだけが漂う。そこにわずかにツンとした透明感ある匂いがする。うっすらと潮風のように吹き抜ける感じがあって、それでいて花の香りもするカロンという香料だ。

このカロンという香料物質こそ、このロードゥイッセイ最大の特徴。よくいう「メロンのような香り」と称される元祖「瓜系」の香り。カロンは1960年代にファイザー社で開発された人工香料で、もともとは洗濯洗剤の基材臭をマスキングする目的で研究されていたものだ。これが1980年代になって少しずつ香水に使用されるようになり、脚光を浴びた。ロードゥイッセイはこのカロンを多用したことで「みずみずしさ」や「しっとりした空気感」を表すことに成功している。そのため、オゾン様ノートの元祖とされる。

優しく穏やかな香り立ちに思えるが、実はかなり強い拡散力をもっているので、気を付けないと周りにとても迷惑をかける類だ。人工香料が多く使われているため、天然香料の多い香水に比べて香りがシンプルで透明感が感じられるというメリットがある反面、強い香りがずっと続くという特徴がある。付けた瞬間に鼻を近づけたりすると、頭痛をおこしかねないので付け方には注意が必要だ。ラストまであまり変化なくウォータリーな白い花のブーケが6〜8時間ほども続く。香水が苦手な方になぜかこの香りを好む人が多いのも特徴だ。今となってはこれに似た香りはたくさんあるが、26年前は本当に新鮮だった。まさにこの一滴がその後の世界を変えた。

大河も海も「一滴の水」の集まりでできている。三宅氏は常に「1枚の布」という素材勝負のデザインをし続けてきた。この香りから始まったオゾン系の「大河の一滴」は、今なお多くの香りを生み続けている。円錐型の美しいボトルは、エッフェル塔の上に満月が重なった姿と同時に、一滴の水がはじけた瞬間を表しているという。

ロードゥイッセイは、香水界の「大河の一滴」だ。たった一滴で混沌とした時代の空気を塗り変え、文化という水の流れを変えた美しい香りだ。

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zepp☆さん
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アザロ / クローム オーデトワレ

アザロ

クローム オーデトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2018/9/29 21:18:58

柑橘系が爽快で、その裏でエレガントなサンダルウッド(白檀)がずっと香ります。
香りがあまり変化しないワンノートの香水として有名です。

サンダルウッドは人によってはムワッとしたお香や仏壇の香りに感じてしまう方もいるので、好き嫌い別れると思うのですが
こちらは他とはひと味違うすっきりしたサンダルウッドの香りが続くようになってます。


清涼感ある香りなので年齢や場所も関係なく使える万能香水です。
購入を考えられている方は是非!

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ヨウジ ヤマモト / ヨウジオム

ヨウジ ヤマモト

ヨウジオム

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2018/10/13 14:40:34

「これに匹敵するほどの男性用香水はほかに2つか3つくらいしかない。」

「匂いの帝王」と呼ばれる人がいる。「世界香水ガイド」という香水の辞典を著したルカ・トゥリンという人物だ。彼は自分が気に入らない作品はバッサリ切り捨てるが、本当にいいと思った作品はあらん限りの比喩や状況説明を用いて称賛することで有名だ。そんな彼が2000近いフレグランスの中で前述のように絶賛した作品、それがヨウジオムだ。

ヨウジ・オム・オードトワレ。日本人デザイナーでありながら世界で活躍する山本耀司氏の最初の男性用香水だ。ヨウジオムは「強さと官能美のバランス」をテーマに1996年に欧州で発売された。調香師はジャン・ミッシェル・ドュリエ。これがルカ・トゥリンを唸らせ、幻の逸品と呼ばれた香り。ヨウジオムは一度廃盤となっていたが、ルカ等の熱いリクエストに応え、2013年に再発売し、今また世界中にその名を知らしめようとしている。ルカの願いは叶ったわけだ。

ただし、現在流通しているヨウジオムは2013年に調香師オリヴィエ・ペシューがリファインした香り。オリジナルの1996年版とはかなりレシピが異なるようだ。自分の手持ちも2013年版の物。ではヨウジオム2013はどんな香りかというと。

付けたて。一瞬、透明感ある洋酒のような香りがしたかと思うと、すぐに暗くて甘苦い香りが出てくる。ジュニパーベリーのスッキリ感とリコリスだ。エンジェルのトップほどガツンとは来ないものの、似たような暗いオープニング。どちらかというとロリータレンピカのイントロに近い。ただロリータほど甘さは出なくて、リコリスの背後にわずかにお香のようなドライな香りが控えている。リコリスじたいは風邪の内服薬によく入っている甘草という成分なので、葛根湯を飲んだ時に感じる甘苦さを思い浮かべると分かりやすい。

5分ほどしてミドル。ラムの香りがしてくる。透明感ある甲高い香りと独特の渋みが広がってくる。ベルガモットやライムをもっと効かせれば、ティエリー・ワッサー氏の創ったゲランオムのミドルに似ている。このへんはルカ・トゥリンが評している点だが、確かに納得。ワッサー氏の方が後発なので、ヨウジオムを参考にはしていたかも知れないなと思う。さらにラムの下からかなりロースティーでダークな香りが漂ってくる。コーヒーリキュールの香りだ。ミドルはそんなふうに「リコリスの苦み+ラムのスッキリした辛み+コーヒーリキュールのコク」がせめぎあいながら、黒っぽい香りを展開する。

1999版のレシピでは、イントロにラベンダーやコリアンダー、ミドルにはシナモン、クミン等が配されたいたようだから、オリジナル版はもっとホット&スパイシーだったことが予想される。そうなるとリファイン版はかなりスッキリマイルドに調整された印象。どこか洋酒のようで、漢方薬のようだ。コーヒーの香りは弱め。アクは弱く、香り立ちも柔らかい。似た系統ならエンジェルの方がガツンと来てバランスがいい。

ラストも思いのほかあっさりしている。つけて1〜2時間ほどでソフトなレザー香に収束していく。レザーといってもバーチタールなどの燻ぶった香料ではなく、ソフトななめし革系の香りでフェードアウト。清潔感あるムスク系ではなく、レザーを配したあたりに山本耀司氏への忖度を感じる。彼は以前「男は何歳になっても男だ。俺が最も興味あるのは女だ。」と語っていたから、ワイルドな男性性を感じさせるための選択だろうかと推察する。

気を付けたいことは「ヨウジヤマモト」など、似たようなネーミングの香りがたくさんあることだ。2013年リリース作品は男女用全6種類あってどれも安価でいい。ただヨウジオムは、ルカが評価した1999年版とは別物と思った方がいい。全体的にあっさりして付けやすくなったであろうリファイン版。ルカはどう評価するだろう?

ヨウジヤマモトの服は何着か持っていた。どれもワイドでロング丈で、それまでの既製服の常識をくつがえすゆったりしたデザインが好きだった。彼の服を着て街を歩くと、服と体の間に風をはらむ感じがして心地よかった。かつてカラフルが当たり前だったプレタポルテに敢えて黒一色で挑み、全世界を騒然とさせた彼の服は「黒の衝撃」と呼ばれて賛否両論を巻き起こした。彼は75歳を過ぎた今も常に常識を打ち破り、前衛的ながらも着る人を魅せるデザインを創り続けている。

「魅力とは、服とそれを着る人が出会った時に生まれるものだ。俺はそれを“チャンス”または“偶然”と呼んでいる。」彼自身の言葉にあるように、このヨウジ・オムもまた男が身に付ける武器の一つになるだろう。

ヨウジオムは、そんな彼の男としての生きざまを体現した、香水版「黒の衝撃」だ。

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イヴ・サンローラン / ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ

イヴ・サンローラン

ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:60ml・11,330円発売日:2007/2/9

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4購入品

2018/9/15 16:28:48

休日の朝。スケジュールは空白。何年ぶりだろう、こんな静かな朝は。コーヒーでも淹れようかと思いながら、ふと手を止める。思えばこの30年ずっと走りっぱなしだった。

20代は仕事とラジオのパーソナリティー、バンドのライブに明け暮れた。体が3つなければ足りないほど動いていた。そのくせどれも中途半端で投げやりで、命令されることを嫌い、とがりまくって毎日夜明けまで遊んでいた。つけていた香水は濃厚なものばかり。イラついていた時代。

30代は妻の出産、子育て、家の購入とイベントが目白押しで、息つくひまもなく走っていた。家事も育児も仕事も全てこなすのは本当に至難だった。妻は化粧を落とす時間すらままならなかった。自分は幼子を抱くために香水もタバコもやめ、ただひたすら働いた。疾風怒濤、疲れていた時代。

そして40代。気がつくと、子どもたちは親の手を離れ、食事の時間もバラバラになった。少しずつ読書をしたり、一人で映画を見たりする時間が生まれた。そして昔から好きだった香水についてあれこれ調べたり、再び集めたりする時間がやっと戻ってきた。

だから若い子から見たら「よくもまあいい年のジジイが香水なんか集めて」って思うだろうけど、そんなことはノットユアビジネス、大きなお世話だ。俺は30年かかってやっと手に入れた今という時間が一番楽しいんだから。

ここに1本のありふれたフゼアのメンズ香水がある。イブサンローランのロム・オードトワレだ。今日久々に何も予定がない休日だったので、朝からこの香りを分析して楽しんでいた。

トップ。華やかなバブルの頃を思わせる香り立ちがある。ほんのりスパイシーなペッパーとカルダモン、そしてシトラス。よくある出だし。20代の頃、街角の黒服の男達から香っていた派手なフゼアのイントロ。ちょうどシャネルのエゴプラのような。

5分ほどしてミドル。瓜系の透明感あるエアリーな香りが全体を柔らかくし始める。そこにスパイスの余韻とバイオレットリーフの暗いシャープさが交わる。30代の頃、ユニセックスがもてはやされた頃にかいだ香りだ。あの頃大流行したCKワンのようなシプレー系ミドル。

やがて、ジンジャーのじわりとした辛みが強くなってくるとラストに近くなる。香りはあたたかみを増してきて、ナッツのこんもり感も出てくる。トンカビーンのふくよかさだ。ムスクで終わらず、シダーやジンジャーで消えていくエンディングは、ちょうど40代の頃に多く出たものだ。あの頃よくかいだディオールオムスポーツやルタンスの「ジンジャーが香る午後5時」を思わせる。

そうか。イブサンローランのロムはこの30年間を凝縮しているのか。

トム・フォードが去ったイブサンローランを再び盛り上げるために、ブランドは有能な調香師を3人雇ってこの「ザ・男」(笑)と名付けた作品の創造を託した。サンローラン起死回生のメンズ香を創るために招集された調香師は次の3人。

アマリージュ、ピュアプワゾン、フレデリック・マルのカーナルフラワーなどを手がけたフローラルの鬼才、ドミニク・ロピオン。

メンズの名香、ギ・ラロッシュのドラッカーノワールを手がけ、スパイスやレザー香遣いに定評があるピエール・ワルニー。

ジョー・マローンのマスターパフューマーとして透明感ある優しいフローラルを数多くリリースし、シャッセ・オ・パピヨンなども手がけたアン・フリッポ。

「3人寄れば文殊の知恵」とばかりに腕利きを集めて創られたサンローランのロム・オードトワレ。この作品はいい意味で彼らの得意技が全て封印され、穏やかでどこにでもありそうな優しい香りに仕上がっている。確かにこの手の柔らかいフゼアは付けやすく汎用性も高い。そしてどうやら女性が好む男性の香りとしてかなりポイントが高いらしい。

実際、シトラスの爽やかさがあり、優しいスパイスが男らしさ、低音のフローラルが柔軟性を表し、ホットなジンジャーは情熱、ふくよかなトンカビーンは包容力、シダーやベチバーのウッディなラストは、何事にも動じない揺るぎなさを提案している。

そしてロムは、それらの特徴がマイルドに溶け合い、際だったノートをあえて見せない香りだ。そう思う。

今日は何をしようか。ここ何年もなかった休日の自由な時間。自分でコーヒーを淹れる代わりに、少し遠くのカフェまで足を伸ばしてみようか。

夫でもなく父でもない。名刺もいらない。どこにもギヤを入れてない日に、この静かで優しい香りは似合うのかもしれない。

休日の朝、高い青空。絵筆で流したようなすっきりした雲。心地よい朝の空気を胸いっぱいに吸って自転車に乗って出かけよう。

朝の光の中、こぎ出すペダル。ロムの香りが風にゆったりたなびき始めた。

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ジャンヌ・アルテス / セクシーボーイ オードトワレ

ジャンヌ・アルテス

セクシーボーイ オードトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:100ml・4,290円発売日:-

4購入品

2018/5/26 15:22:05

少年はその手に何も持っていなかった。金も、バイクも、女の子を喜ばせる話術も。ただ、あの子を思う気持ちだけは誰にも負けない、そう思っていた。

毎日部活を終えて、夕暮れのテニスコート脇を通る一瞬、その瞬間だけが彼にとって全てだった。いつも金網越しに、あの子がラケットを振る姿や、友達と楽しそうに笑っている顔を見ることができたし、運がよければコート脇の通路ですれ違うことがあったからだ。

もしも自分にあの子を喜ばせる武器があったなら。少年は一人の部屋で何度も夢想した。

ある日、クラスの女子の何気ない会話から、あの子が好きなタレントを知った。自分とは比べ物にならないほどのイケメンアイドル。それでもその日から少年は研究しまくった。その人の髪型、眉の形、そしてふだんの私服。そしてそのアイドルがつけている香水を知ったとき、少年の心が一瞬止まった。

彼女はこの香りを知っているだろうか?もし自分がこの香りをつけて彼女とすれ違ったら…。

ジャンヌ・アルテスのセクシーボーイ。少年はその香水を夢中になって調べた。

「ジャンヌ・アルテスは、1978年フランスのグラースで創設され、世界各国で主にティーン向けの安価なフレグランスを販売している巨大企業だ。日本でも多くのコスメショップでさまざまな種類の香水を販売していることで有名。

中でもブルーのボトルが目を引くセクシーボーイは、日本でも若者を中心に人気の香りだ。理由は、まず実売価格が500円〜1000円と安いことと、そして、安いながらも香料の聖地グラースの企業ならではの独創的な香りに仕上がっているからだろう。

では、どんな香りかというと。

トップ。雑味の強いアルコールが鼻を刺激してとてもキツい出だし。香料の特徴がよく分からないまま、苦みと薬っぽさの強いオープニング。クレジットには、アルテミジア、ミント、カルダモンとあってハーバル&スパイシー。柑橘の爽やかさはない。

5分すると香りはミドルになって安定してくる。まだハーバルな苦みはあるものの、次第に合成ラベンダーのクールさ、そしてそれを包むようなパウダリーなベールが感じられてくる。やがてアルテミジアの苦みが薄れてくるにつれ、少しメランコリックなラベンダーと、ミルキーなヴァニラがさらに主張してきて、内省的でクリーミーな香りになってくる。付けてから30分ほどした頃が一番いい。

香料は全て安価な合成香料を使っているようで、ミドルの香りが変化なく減衰していく。つけてから1時間ほどで消えるラスト。

セクシーボーイというネーミングと安価な値段に象徴されるように、はっきりティーンの男子向けな香り。それでも香水文化が浅い日本では、年代問わず似合う男性はいるだろう。ただし40歳以上は付け過ぎと「セクシーボーイつけてます!」とか自分で言うの禁止。イタすぎるから。

ラベンダーとヴァニラと来れば、往年の名香ゲランのジッキーで有名な香料の取り合わせだ。こちらはジッキーよりも荒く、暗く、そして仕方がないけれど、柔軟剤のようにずっと同じ香りが続く廉価版。それでもこの香りは悪くないなと思う。1年に1度くらい、強烈にこの香りをかぎたくなるときがあるのだから。似た物が少ない個性的な調香だと思う。それは時々行きたくなるラーメン屋の味にも似ている。そんなに美味しいわけでもないのに、つい食べたくなるラーメンというのがあるものだ。セクシーボーイはそんなふうに心に爪痕を残す香りだ。」

少年はその日、金網ごしにテニスコートを見ながら、やがて彼女がこの小道を歩いてくるのを待っていた。正確には、友達に電話するふりをしてずっとその場にたたずんでいた。買ったばかりのセクシーボーイの香りが、自分の胸元や首筋からこれでもかと漂っている。きっと彼女は気付くはずだ。そう思いながら。

はたして彼女が友達2人と小道の向こうに現れた。心臓が早鐘のように鳴り始める。つい背中を向けてしまう。不意に背中越し、女の子たちが「バイバイ」と言い合う声を聴く。

え?一人になった!?振り向く。彼女がこちらに歩いてくる。そのとき、彼女の横に男が駆け寄り、並んで歩いてくる姿が目に飛び込んだ。1つ年上の男子テニス部のキャプテン。あわてて彼らに背中を向ける。

あっと言う間に二人が自分の脇をすり抜ける。その瞬間、男が「う、くせぇ!」とつぶやく。少年はスマホに向かって一人しゃべりを続ける。「そうそう、いやあ、参ったわ、マジで。ははは…。」一瞬、彼女が振り向いた気がしたけれど、もうその顔を見る勇気は少年にはなかった。

彼女は本物のセクシーボーイと一緒に遠ざかっていった。夕暮れの空に、失恋ブルーのセクシーボーイの香りが、まだうっすらとたなびいていた。

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ドギマギの夏さん
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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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  • 血液型・・・O型
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