TOP > ドギマギの夏さんのLikeしたクチコミ(年代順)

66件中 1〜5件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 53歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
Kat Von D / Saint

Kat Von D

Saint

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2019/1/26 12:53:22

「タトゥーを隠せるほどのカバー力」で有名なリキッドファンデーションがある。アメリカで人気の「Kat Von D(キャット・ヴォン・ディー)」というコスメブランドの商品だ。セフォラ系なので残念ながら日本では未発売だが、メイクアップアーティスト必携とも言われる彼女のコスメも、ネットでは簡単に入手できる。本当にいい時代になったものだ。

キャットヴォンディーはアメリカの女性刺青師で、その多才さゆえに、モデル、ミュージシャン、TVパーソナリティとしても名を馳せ、2008年から自身の名を冠したコスメブランド、「キャットヴォンディー・ビューティー」を展開している人物だ。自身も身体中にタトゥーをほどこし、HR/HM系バンドとも交流が深く、コスメにもゴシックやロック系のテイストが漂っている。とはいえ、単なるキワモノではない。特に前述のリキッドファンデーション、シェード&ライト コントゥアパレット、そして食べても飲んでも落ちないといういわくつきのリキッドリップなどは、海外セレブからの賞賛の声も高いようだ。

そんなキャットヴォンディーが2本の香水をリリースしている。もちろんこちらも日本未発売だ。初めてボトルを見たとき、グッときた。古典的な百合の紋章、フルール・ド・リスを思わせる波形模様を幾重にも絡み合わせたゴシックなボトルデザイン。白いボトルのセイント(聖人)、黒いボトルのシナー(罪人)、その宗教的対比。すぐさま頭に浮かんだのは堕天使サタンと悪魔人間デビルマン(←昭和だな)。これは絶対に入手しなければならないと心がはやり、試香もせずにポチッとネット買い。(←多いよな)

というわけでボトル&ネーム買いした2017年発売のセイント・オードパルファム。その香りとは?

トップ。つけた瞬間にベリーのような激甘フルーティーな香りが漂う。あ、よくチープな香水にある香りだと残念に思うイントロ。すぐさまその下から苦い香りが広がってくる。プラスティックのようなやや硬質で苦みのある香り。構成を見ると激甘フルーティーさはミラベルのようだ。かつて香水調香を体験した際に嗅いだ、酸味がなく甘い香料の一つだと思い出す。下から広がる苦みはカラメルっぽいロースティーな香りだ。

つけて3分もすると、甘さが次第にまろやかになってきて、柔らかいジャスミンの香りが感じられるようになってくる。主張は弱い。同時に、強烈に甘いカラメルの茶色い香りも強くなってくるのを感じる。甘い、甘すぎる。いまどきこんなに甘い香りはプラダのキャンディが好きな人でもつけないだろうというほど甘い。うーん、よくあるセレブ香水の失敗作かな、とあきらめかけるが。実はセイント、ここからがなかなかいい。

30分ほどたつと、ミラベルとカラメルのダブルパンチな甘さは次第に薄れてきて、全体をクリーミーなヴァニラと透明感あるムスクが支配するようになる。まるで最初からずっとそこにいたみたいに。さながら、どんなに悪魔が甘い言葉で誘惑しても、穏やかに微笑して屈しなかったイエスのよう。支配されていたのは最初から悪魔の方だった。

ほどよい甘さが残ったヴァニラはまろやかで天使の羽根のように軽い。ジャスミンは時折ふっと顔をのぞかせる楽園の花の香りのごとく。そしてムスクは、天上の風のように優しく透明感があって心地よくたなびく。つけてから30分したセイントはとても安らかな香りに満ちている。聖人は最初からここにいたのだ。

ラストはカラメルの甘さが消え、ピーチ様のコクのあるフルーティーな甘さにスライドしてくる。ピーチがラストに出るのは珍しい感じだ。このピーチがヴァニラのクリーミーさ、スッキリしたムスクの風を連れてドライダウン。持続時間はとても長い。9〜10時間以上も香りが続く。まるで神の国の存在が永遠であることを暗示するかのように。

正直トップの苦い甘さは強烈で、そこで「無理」と思う人は多いかもしれない。特に春〜夏やビジネスシーンにはきついだろう。だが秋〜冬の乾いた空気の中では、このグルマンな甘さは需要がある。付けるなら圧倒的に下半身推薦。ウェスト、腿の内側、ひざ裏あたりから上へとのぼらせるべき香り。決して肌の露出してるところにスプレーしないでほしいタイプ。甘さが強いので、人の鼻から遠くに置くべき香り。

人はだれしも心に2つの側面をもっている。聖なる魂、罪深き魂。その両方を抱えて生きている。どこまでも聖なる美しさを求めつつ、人の身体にタトゥーを彫り続ける罪深さも背負い、キャットヴォンディーはこれからどこへ向かっていくのだろう。

聖なる者の香りを感じながら、ふとそんなことを考えた。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
イッセイ ミヤケ パルファム / ロードゥ イッセイ オードトワレ

イッセイ ミヤケ パルファム

ロードゥ イッセイ オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・3,190円 / 25ml・8,690円 / 50ml・12,540円 / 100ml・17,600円発売日:- (2022/2/1追加発売)

ショッピングサイトへ

5購入品

2018/10/27 14:47:51

「香水なんてシミを消すわけでもないし、肌にいいわけでもない。何の効果があるの?」コスメに機能を求める方は言う。そのとおりかもしれない。ざっくり言えば香水なんて香りをつけたアルコールだし。それでもあえて言う。香水はすごい。それはときに人の心や世界の流れまで大きく変えることがあるからだ。

ここに1本の有名な香水がある。細長い円錐形のすりガラスボトルに入った透明な液体。作品名はロードゥイッセイ(イッセイの水)。世界的デザイナーとして有名な三宅一生氏の最初の香水にして最大のヒット作だ。このオードトワレは、それまでの香水文化を大きく変えたといっても過言ではない。

ロードゥイッセイは、まず人の心を大きく変えた。「香水なんて派手だし、くさいし、嫌い」そう感じていた女性たちがこぞってこの香りを買うという現象を生んだ。もともとこの香水は、香水嫌いで有名だった三宅一生氏のブランド戦略として提案されたもので、当然ながら彼は最初は乗り気ではなかった。しかしどの服飾ブランドもイメージアップ戦略の一つとして香水を扱いだした流れにもまれ、遂にイッセイ・ミヤケの香水を出すことが決まったとき、彼は新人調香師に向かってこう言った。

「創るなら、ぼくを驚かせる香りであってほしい。それは例えば、自然の中で深呼吸しているような香り、水のような透明感のある香りだ。」と。

それを聞いた関係者は、みな首をすくめたという。「水の香り?そんなの作れるか。作ったとしても売れるわけがない。」だが新人調香師だけは違った。当時、カルバンクラインのエスケイプで大量に使用された新しい人工香料カロンを使えば、彼の厳しい要求に応えられるかもしれない。そう感じていた。

その調香師の名はジャック・キャバリエ。今でこそルイ・ヴィトンの香水部門の専属パフューマ―として世界的に有名な彼だが、当時はフィルメニッヒ社に入ったばかりの無名の新人だった。彼は試作に試作を重ね、1992年、今までにない新しい香りをこの世に誕生させた。それまで派手なフローラル中心だった濃厚な香水は日本のバブル崩壊と共に影を潜め、時代はこのあっさりとした優しい香りを全面的に迎えた。世界は緊縮財政に向かい、香水業界はこの香水のヒットをきっかけに、新たなトレンドである「水の香り」「オゾン系」「マリン系」「ユニセックス」へとシフトしていった。

そんな記念碑的な香りとなったロードゥイッセイ、どんな香りだろうか。

ロ―ドゥイッセイをスプレーすると、まず広がるのはユリの花のたおやかな香り。そこにシクラメンの低いしっとりした香りが混じってくる。トップからフローラルブーケ全開で、シトラスはない。水滴がしたたるような白い花の香りだけが漂う。そこにわずかにツンとした透明感ある匂いがする。うっすらと潮風のように吹き抜ける感じがあって、それでいて花の香りもするカロンという香料だ。

このカロンという香料物質こそ、このロードゥイッセイ最大の特徴。よくいう「メロンのような香り」と称される元祖「瓜系」の香り。カロンは1960年代にファイザー社で開発された人工香料で、もともとは洗濯洗剤の基材臭をマスキングする目的で研究されていたものだ。これが1980年代になって少しずつ香水に使用されるようになり、脚光を浴びた。ロードゥイッセイはこのカロンを多用したことで「みずみずしさ」や「しっとりした空気感」を表すことに成功している。そのため、オゾン様ノートの元祖とされる。

優しく穏やかな香り立ちに思えるが、実はかなり強い拡散力をもっているので、気を付けないと周りにとても迷惑をかける類だ。人工香料が多く使われているため、天然香料の多い香水に比べて香りがシンプルで透明感が感じられるというメリットがある反面、強い香りがずっと続くという特徴がある。付けた瞬間に鼻を近づけたりすると、頭痛をおこしかねないので付け方には注意が必要だ。ラストまであまり変化なくウォータリーな白い花のブーケが6〜8時間ほども続く。香水が苦手な方になぜかこの香りを好む人が多いのも特徴だ。今となってはこれに似た香りはたくさんあるが、26年前は本当に新鮮だった。まさにこの一滴がその後の世界を変えた。

大河も海も「一滴の水」の集まりでできている。三宅氏は常に「1枚の布」という素材勝負のデザインをし続けてきた。この香りから始まったオゾン系の「大河の一滴」は、今なお多くの香りを生み続けている。円錐型の美しいボトルは、エッフェル塔の上に満月が重なった姿と同時に、一滴の水がはじけた瞬間を表しているという。

ロードゥイッセイは、香水界の「大河の一滴」だ。たった一滴で混沌とした時代の空気を塗り変え、文化という水の流れを変えた美しい香りだ。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ディオール / オー ソバージュ オードゥ トワレ

ディオールディオールからのお知らせがあります

オー ソバージュ オードゥ トワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:50ml・12,650円 / 100ml・17,490円発売日:-

ショッピングサイトへ

5購入品

2018/5/5 22:50:39

ディオールのオーソバージュは、真夏のギラつく太陽をそのままボトルにとじこめたようなオード・トワレだ。肌に吹き付けると、唾液が出そうなレモンシャワーとともに、熱を帯びたリーフグリーンの香りと、灼けた肌のアーシーな香りが同時に漂う。さながら、若き日のアラン・ドロンの出世作「太陽がいっぱい」そのもの。

オーソバージュは、1966年、名調香師エドモン・ルドニツカによってリリースされたディオール初のメンズフレグランス。それは最初にして最大のヒット作となり、今日まで名香としてゆるぎない地位を築いてきた。60年代の欧米でのブレイク以降、今なお老若男女問わず多くの方に愛用され、ベストセラーを続けている。では、オーソバージュとはいったいどんな香りなのか?

トップ。つけたては一瞬、ベースとなっているモス系の湿った苦み、ベチバーの土っぽさがふわっと鼻をくすぐり、メンズ香水独特の匂いをふりまく。いわゆるトニックっぽい香り、男っぽい香りと揶揄されるようなオープニングだ。その後すぐにはじけるようなレモンの香りが広がってくる。ベルガモットとのミックスのようだが、黄色いレモンの酸味がより強く感じられる。そして、そのサワーな感じがその後も続いていく。

3分後、ミドル。レモンのジューシーな香りに、バジルの透明感、ローズマリーのグリーンさ、ラベンダーの清涼感が混じって広がってくる。シトラス&アロマティック。鶏肉のハーブ&レモン焼きの匂いにも似て、温かみが感じられておいしそうな香りになる。このトワレに初めて使われたヘディオンという香料は、単体ではジャスミンっぽいフローラルのようだが、他の香料と合わせることで、きらめきやレモン様シトラスの香りを持続させる効果があるという。確かに、グリーンでサワー感のある香りがトップからずっと続き、大体3〜5時間、つけたところで穏やかに香り続ける。

ラストはかなり低音になり、メンズな雰囲気になる。モス系の湿った苦み、ベチバーの土っぽいウッディにしっかり変化し、シプレのベースが感じられるエンディング。このへんは日本人の女性は苦手だと感じる方も多いかもしれない。もともと体臭が強い欧米の方々のマスキング・フレグランスとして用いられてきたトワレなので、ベースは強いウッディだ。欧米では重厚感があって好まれるラストだが、体臭があまりしない日本人は強い香りを使ってきた歴史もないので、感じ方や好き嫌いは人それぞれだろう。モスやベチバーのラストはクラシカルな印象も強め。ぜひ付けてみてラストまでの変化をきちんと確かめてみてほしいと思う。付けてから6時間前後で自然にフェードアウトしてゆく。トワレにしてはかなり残香性がある方だ。

欧米ではいまだにベストセラーなオーソバージュだけれど、日本では特に女性の評価で賛否両論あるようだ。苦手な方いわく「トニック臭、オヤジ臭」。いやな言葉だなと思う。それでもあえて出したのは、昭和の頃にリリースされた日本のメンズコスメのほとんどの香りが、実はこのオーソバージュに影響を受けて作られていたからだ。男性のヘアトニック、ヘアリキッド、オーデコロン、シェーブローション。それらの多くがこのオーソバージュの香りの模倣、アレンジだったと言っても過言ではない。畢竟、それらを使う男たちの、どれも似たような香りが日本中にあふれた。そして「トニック臭」などという言葉が生まれ、本家のこの香りさえそう呼ばれてしまっているという。そんな皮肉な状況に苦笑せざるを得ない。

皮肉といえば、アラン・ドロンもそうだ。甘いマスクとクールな表情で日本では女性に大人気だった彼だが、本国フランスの女性は「嫌い」と答える方が今も多いそうだ。理由はいろいろあれど、こちらも「ところ変われば好みも変わる」という典型だろう。そんなアラン・ドロンが2009年からデビュー当時の姿で、フランス女性が好きなオーソバージュのイメージキャラを務めているのだから皮肉なものだ。

彼が若き日に主演した「太陽がいっぱい」は、本当に心に残るいい映画だった。原題の“Plein soleil”には、実は2つの意味があると言われている。plein de soleilsであれば「太陽がたくさんある」だが、en plein soleilだとすれば、「太陽がギラギラ照りつける下で」の意味になる。おそらく、双方の意を汲んだ詩的なタイトルを、ということで「太陽がいっぱい」にしたのだろう。

そんな「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンは、哀しいくらいに美しく、本物の愛に飢えた表情が印象的だった。だから、今でもこのトワレを時折つけるたび、彼の切ない瞳を思い出す。

オーソバージュ。それは、ギラつく夏の太陽の下、金と権力と愛をいっぱいに求め続けた孤独な青年の野望を秘めた水。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ゲラン / ゲラン オム オーデトワレ

ゲランゲランからのお知らせがあります

ゲラン オム オーデトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:50ml・9,900円 (生産終了)発売日:2008/9/5

ショッピングサイトへ

4購入品

2018/3/31 10:13:31

夏。蒸し暑い夜、広口のタンブラーにクラッシュアイスを注ぎ、ミントの葉を10枚以上入れてペストルでガシガシ押しつぶすと、野性味あふれるスッとした青い香りが強烈に鼻に突き刺さる。そこに砂糖とライムを入れ、ラムを注いでステア―。ソーダで軽く割れば、熱帯夜をスッキリ過ごせるカクテル、モヒートのできあがりだ。

ここに、そんなモヒートの香りからイメージして作られた香りがある。「香水界の帝王」として長年君臨し続けてきたゲラン。そのゲランの5代目調香師となったティエリー・ワッサーが、就任して間もない2008年にリリースしたメンズのオード・トワレ、ゲラン・オムだ。

ゲラン・オムのリリースは華々しかった。膨大な広告費を用いて、本物の動物たちが森の泉に集う宣伝用トレーラーを制作し、ボトルデザインはイタリアの高名なデザイナ―、ピニンファリーナに委ねられた。LVMH傘下に入って、新生ゲランとしての旅立ちであったことから、業界内外を問わず、この作品には期待と注目が注がれていた。

それがゲラン・オムの出自。では、肝心の香りはどうかというと。

プラスティックの透明キャップを外してスプレーする。つけたて、爽やかな柑橘の酸味。すぐに下からわずかな甘み、涼しげなハーブの香り。そして透明感があるけれど、かすかに苦みやエグみを感じる香りが同時に広がっていることに気付く。これはホワイトラムを模したのだろうか。ベルガモットやライムの香りはわずかで、このスッキリしたアクのあるハーブの香りが強いオープニングだ。

5分後、香りに大きな変化がない。かすかな清涼感あるアニス調の感じが続いている。わずかなグリーンシトラスの割合が2だとすると、残り8割はスッキリとしてややクリーミーなアルコールっぽい香りという印象。ホワイトラムの酔わせるような、ほんのり甘い香りが一番再現されている気がする。そんな香りがずっと続く。付けてから4〜5時間は穏やかに香り続ける。

ラストも大きな変化はなく、穏やかなグリーンハーブにうっすらとウッディが重なったような香りで消失していく。このウッディはシダーやベチバーというクレジットがあるものの、香料の特徴が分かるほど強くはない。ミドルがゆるやかに減衰していくので、ラストまでクリーミーなハーブ系の香りが続く。

このトワレは一度に全ての香料が香り、そのまま続くというタイプの香り方だとされている。確かに大きな変化がないように思う。それなら柔軟剤と同じではないか?とも思うが、当たらずとも遠からず。ティエリー・ワッサーは、ファインフレグランスの未来について、そうしたトイレタリー製品(シャンプー、洗剤、ボディーソープ等の香り製品群)の充実が不可欠だと考えている一人でもある。狙うのは、柔軟剤の香り以上、香水の複雑な香り以下。そのへんのニッチではなかったろうか。香りがキツイとか、香りがどんどん変わるのがイヤ、と言って香水を敬遠する方は存外多い。自分もかつてはそうだった。だが、シンプルで美しい香りを身に付けることに対しては、敷居は低いはず。ティエリー・ワッサーはこのゲランオムで、「誰もが気軽にカジュアルに楽しめる香り」を提案したようにも思える。

「香りは時代と共に変遷する。現代は、さまざまな趣向の香りを日々楽しむ時代だ。」ティエリー・ワッサーはそうインタビューで答えている。彼は変化する時代の波にゲランを合わせる方向へ舵をきったのだろう。もっと気軽に。もっと軽やかに。ゲラン・オムにはそんなメッセージが託されているように思う。男女を問わず、春から夏にかけて気分を上げていきたいとき、オンオフどちらでも穏やかでグリーンな香りを試したいときに使っていけるフレグランスだと思う。

現在、このトワレは廃盤となっており、オード・パルファムが従来の縦長スクウェアボトルでラインナップされている。アビルージュが好きだった彼らしいボトルの揃え方だ。ロムイデアル系がメンズの中心ラインナップになった感があるが、よりくせのない汎用性を求めるならこちらを試してみるといいだろう。ネットではまだまだ普通に入手可能だ。

暮れゆく亜熱帯の強烈なオレンジの日差し。ラテンの人々の熱気と興奮は、夜になってからも冷めることを知らない。町の至るところからサルサの陽気なリズムが聞こえる。キューバの人々はそこかしこで思い思いに踊り、酒を酌み交わし、夜更けまで語り合い、ゆっくりと人生の時間を楽しむ。グラスが揺れるたび、強烈なミントの青い清涼感と唾液があふれるフレッシュなライムの香りがしている。

ゲラン・オムは、そんなモヒートからイメージした穏やかなマスキュリン。現代をクールに、颯爽と生き抜く者たちに捧げられた、アロマティックな香りのカクテル。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
イヴ・サンローラン / ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ

イヴ・サンローラン

ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:60ml・11,330円発売日:2007/2/9

ショッピングサイトへ

4購入品

2018/9/15 16:28:48

休日の朝。スケジュールは空白。何年ぶりだろう、こんな静かな朝は。コーヒーでも淹れようかと思いながら、ふと手を止める。思えばこの30年ずっと走りっぱなしだった。

20代は仕事とラジオのパーソナリティー、バンドのライブに明け暮れた。体が3つなければ足りないほど動いていた。そのくせどれも中途半端で投げやりで、命令されることを嫌い、とがりまくって毎日夜明けまで遊んでいた。つけていた香水は濃厚なものばかり。イラついていた時代。

30代は妻の出産、子育て、家の購入とイベントが目白押しで、息つくひまもなく走っていた。家事も育児も仕事も全てこなすのは本当に至難だった。妻は化粧を落とす時間すらままならなかった。自分は幼子を抱くために香水もタバコもやめ、ただひたすら働いた。疾風怒濤、疲れていた時代。

そして40代。気がつくと、子どもたちは親の手を離れ、食事の時間もバラバラになった。少しずつ読書をしたり、一人で映画を見たりする時間が生まれた。そして昔から好きだった香水についてあれこれ調べたり、再び集めたりする時間がやっと戻ってきた。

だから若い子から見たら「よくもまあいい年のジジイが香水なんか集めて」って思うだろうけど、そんなことはノットユアビジネス、大きなお世話だ。俺は30年かかってやっと手に入れた今という時間が一番楽しいんだから。

ここに1本のありふれたフゼアのメンズ香水がある。イブサンローランのロム・オードトワレだ。今日久々に何も予定がない休日だったので、朝からこの香りを分析して楽しんでいた。

トップ。華やかなバブルの頃を思わせる香り立ちがある。ほんのりスパイシーなペッパーとカルダモン、そしてシトラス。よくある出だし。20代の頃、街角の黒服の男達から香っていた派手なフゼアのイントロ。ちょうどシャネルのエゴプラのような。

5分ほどしてミドル。瓜系の透明感あるエアリーな香りが全体を柔らかくし始める。そこにスパイスの余韻とバイオレットリーフの暗いシャープさが交わる。30代の頃、ユニセックスがもてはやされた頃にかいだ香りだ。あの頃大流行したCKワンのようなシプレー系ミドル。

やがて、ジンジャーのじわりとした辛みが強くなってくるとラストに近くなる。香りはあたたかみを増してきて、ナッツのこんもり感も出てくる。トンカビーンのふくよかさだ。ムスクで終わらず、シダーやジンジャーで消えていくエンディングは、ちょうど40代の頃に多く出たものだ。あの頃よくかいだディオールオムスポーツやルタンスの「ジンジャーが香る午後5時」を思わせる。

そうか。イブサンローランのロムはこの30年間を凝縮しているのか。

トム・フォードが去ったイブサンローランを再び盛り上げるために、ブランドは有能な調香師を3人雇ってこの「ザ・男」(笑)と名付けた作品の創造を託した。サンローラン起死回生のメンズ香を創るために招集された調香師は次の3人。

アマリージュ、ピュアプワゾン、フレデリック・マルのカーナルフラワーなどを手がけたフローラルの鬼才、ドミニク・ロピオン。

メンズの名香、ギ・ラロッシュのドラッカーノワールを手がけ、スパイスやレザー香遣いに定評があるピエール・ワルニー。

ジョー・マローンのマスターパフューマーとして透明感ある優しいフローラルを数多くリリースし、シャッセ・オ・パピヨンなども手がけたアン・フリッポ。

「3人寄れば文殊の知恵」とばかりに腕利きを集めて創られたサンローランのロム・オードトワレ。この作品はいい意味で彼らの得意技が全て封印され、穏やかでどこにでもありそうな優しい香りに仕上がっている。確かにこの手の柔らかいフゼアは付けやすく汎用性も高い。そしてどうやら女性が好む男性の香りとしてかなりポイントが高いらしい。

実際、シトラスの爽やかさがあり、優しいスパイスが男らしさ、低音のフローラルが柔軟性を表し、ホットなジンジャーは情熱、ふくよかなトンカビーンは包容力、シダーやベチバーのウッディなラストは、何事にも動じない揺るぎなさを提案している。

そしてロムは、それらの特徴がマイルドに溶け合い、際だったノートをあえて見せない香りだ。そう思う。

今日は何をしようか。ここ何年もなかった休日の自由な時間。自分でコーヒーを淹れる代わりに、少し遠くのカフェまで足を伸ばしてみようか。

夫でもなく父でもない。名刺もいらない。どこにもギヤを入れてない日に、この静かで優しい香りは似合うのかもしれない。

休日の朝、高い青空。絵筆で流したようなすっきりした雲。心地よい朝の空気を胸いっぱいに吸って自転車に乗って出かけよう。

朝の光の中、こぎ出すペダル。ロムの香りが風にゆったりたなびき始めた。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

66件中 1〜5件表示

ドギマギの夏さん
ドギマギの夏さん 10人以上のメンバーにフォローされています 認証済

ドギマギの夏 さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・58歳
  • 肌質・・・混合肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・少ない
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • 料理
  • お酒
  • ファッション
  • 音楽鑑賞
  • 映画鑑賞

もっとみる

自己紹介

【警告】 *プロフィール(自己紹介文)又は 挨拶を割愛してのフォロワー 登録は、ご遠慮ください。 *猥雑なニックネームの方も同様に ご遠慮く… 続きをみる

  • メンバーメールを送る