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doggyhonzawaさん
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メゾン フランシス クルジャン / Le Beau Parfum

メゾン フランシス クルジャン

Le Beau Parfum

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2022/5/28 08:53:57

400本めの香水レビュー。ここまでちょうど9年間、書き続けてきた。週一度1本ペースだから、レビュー数じたいは多くはない。それでもその1本を書くために、香料分析、背景リサーチ、比較検討、推敲編集やらで、1本につき平均6時間はかかってるから、9年で400×6=2400時間は香水の勉強をしてきたことになる。←そのわりにわかってないけどな

珍しい機会なので、その400本の中から心に残っている香水をほんの少しまとめてみる。

◎最もリスペクトしたクラシック香水3本
・シャリマー(ゲラン) ・ルールブルーEDP(ゲラン) ・N°9(シャネル)

◎最も心に突き刺さった香水2本
・ラペルトワ(ラルチザンパフューム) ・フェミニテ・ドゥ・ボワ(セルジュ・ルタンス)

◎最も偏愛して日常使用してきた香水
・エンジェルEDP&EDT(ミュグレー) ・コローニュロワイヤル(ディオール)

◎出す作品どれも恐ろしくできがいいと思う香水ブランド
・ピュアディスタンス ・フラッサイ

◎400書いた中で心に焼きついているレビュー3つ
・ラペルトワ(ラルチザン・パフュ―ム) ・エンジェル(ミュグレー) ・ロストチェリー(トム・フォード)

世界中で年間何万本も新作が生まれる香水業界。その中にあって、これまで出会えた香水はまさに「ご縁」。そんな中、紹介する400番目の香水は、初めからちょっと「ごめんなさい」しておきたい作品。なぜなら日本未発売かつ限定品という超入手難しい系。たぶん自分も、この先もう1本ストックを入手することはできない。そういう意味では本来紹介するつもりはなかった香水。ただあまりにも香水としてできがよく、個人的にもラペルトワに匹敵するほど美しく、自分の性癖にぐっさり刺さった香りなので、このまま誰にも知られず消えていくのは悲しいと思ったから、そっとここに置いていく。

それは、フランシス・クルジャンが2015年にパリの百貨店プランタンの150周年記念のためだけに製作したル・ボー・パルファム。この香水は自分の中で特別すばらしい作品、極上品。星をつけるなら☆7満点のところ、☆70はつけたい香水。ただそれはもちろん自分にとっての超どストライクであって、貴方にとって好きな香り、またはベストマッチとは限らない。香水に「万人に好かれる香り」なんて存在しないからだ。

ルボーの香料イメージはシンプルだ。クレジットによると以下のとおり。

インドのチュベローズ&ジャスミン、チュニジアのオレンジブロッサム、マダガスカルのイランイラン。いわゆる濃厚なホワイトフローラルブーケ系統の香り。

ただ使用している花の香料はどれも高品質ですばらしく、同時にそれらを際立たせるための「つなぎ香料」が超絶いい。しかもナイスバランス。はっきり申し上げる。さすが天下のプランタン。これを作らせるために、クルジャンにどんだけ対価を支払ったのだろうというくらい、スペシャリティ香料をふんだんに使用しているように思う。つまり「売っても赤字」なくらいゴージャス&センシュアルな出来。だから周年記念の限定香水なのだろう。

ルボーを肌にのせる。その瞬間、あまりに甘くかぐわしい花の蜜の香に脳がよろめく。体がふらつく。矢吹ジョー渾身のクロスカウンター一発もらった気分。腰からくだけ落ちる。花園に倒れこむようにマットに沈む。お花畑で好きな女の子を追いかけるスローな白日夢を見る→人間終了。な開幕。それほど左脳崩壊で言葉にならない美しいフローラル爆弾なトップ。

それでも、カウント9でギリギリ立ち上がって香りを分析するなら

ルボーは偏愛するラルチザンのラペルトワにインスパイアされて創ったのでは?と思うくらい雰囲気が酷似している。クリーミーガーデニア&山椒という「花の優しさ&スパイスの棘」の取り合わせで、内面の感情を激しく揺さぶるラペルトワ。その山椒部分をごく微量のキャラメルノート&シナモンが代替するような形で、白い花束に甘いグルマンを補完している。これがたまらない。クルジャン、あなたさてはラペルトワのベースをヒントに、同ラルチザンのアムールノクターンを組み込みましたね?と言いたくなるくらい。わからない方はわからなくていい。これはほぼ自分にあてた周年記念レビューだ。

サイレージは5時間程度。ジャスミンの残香強めでルボーは消えてゆく。ルボーは「プランタンおめでとう!」で作られたけれど、その甘くてノーブルで、どこかノスタルジックなクリーミーな花束は、プランタンとクルジャンがあなたに贈る感謝の花束の香りだ。

いつもありがとう
あなたのおかげで 今があります
あなたの一日が 美しい香りに包まれますように

おめでとう あなたへ

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Maison Margiela Fragrances(メゾン マルジェラ フレグランス) / レプリカ オードトワレ レイジーサンデー モーニング

Maison Margiela Fragrances(メゾン マルジェラ フレグランス)

レプリカ オードトワレ レイジーサンデー モーニング

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:10ml・5,280円 / 30ml・11,880円 / 100ml(リフィル)・19,800円 / 100ml・23,540円発売日:2013年12月 (2023/4/13追加発売)

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4購入品

2022/4/23 09:56:07

レイジーサンデーモーニングは、メゾン・マルジェラの香水の中でも、特に日本人女性に人気の高い「石けん系」の香りがする香水だ。サイズは10ml、30ml、100ml展開。最近はお試しサイズ的な10mlの人気が高い。価格は税込4180円。

◎どんなとき、どんな方ににおすすめ?
文字どおり、休日の午前中。まだベッドの中でシーツとブランケットにくるまったまま、ゆっくりしていたいときに。素肌や下着にプッシュするのもいいし、枕カバーやシーツに吹いてリネンウォーターっぽく使うのもいい。さっぱりとした清潔感ある香りを探している方に。特に女性向け。

◎この香水のよさを4つあげるとしたら?
・「素肌とベッドリネン」を表現した香りだけに、自分につけることで、リネンや下着、白のシャツやブラウスなどに、洗い立ての清潔な柔軟剤っぽい香りをプラスできそうな点
・ほのかな洋ナシの香り&スズラン様のホワイトフローラル&サボンな香り。みずみずしくスッキリした「白」のイメージを香りで表現できそうな点。
・「ザ・香水」的なアプローチでなく、シャンプーや石けんの残り香的にさりげない「身だしなみ」的な印象を作ることができそうな点。
・10mlサイズがあること。価格的にはやや高くなるものの、トラベルサイズはバッグにそのまま入れてアトマイザーになるし、お試しで使う量としては必要かつ十分。

▲逆にちょっと「うーん」な点
・「清潔感」ある香りだが、かなり洗剤や柔軟剤、漂白剤や石けんといったトイレタリー商品(トイレじゃないよ)の匂いに傾いている。つまりケミカルさが強い香り。そうした洗浄系製品の匂いを再現したであろうメタリックなアルデハイドや、石けん系ムスクの香りが、ときにきつく感じられるときがある。ともすると頭痛がして受け付けない方も多そうな人工的な香り。
・リネン系統の清潔&フローラルがお好きな方には、すでにエスティー・ローダーのホワイトリネンという名作があるのでそちらがおすすめ。また、この香水以上に安価で強い石けん香が売りのCLEANの香水群やサボン系香水が星の数ほど出回っているので、安価な代用品がいくらでもあること。
・よく似た香りでジョー・マローンのイングリッシュペアー&フリージアやバイレードのブランシュがある。オリジナリティが低め。

◎背景(ブランド 調香師)
・メゾン・マルジェラの香水は「レプリカ」と名付けられ、思い出の時間、場所、香りの記憶を「複製・再現」するようなアプローチで作られている。レイジーサンデーモーニングが映し出すのは、2003年イタリアのフローレンスで迎えたすがすがしい朝の空気感。調香師は、キャロライナ・ヘレナのグッドガールやトム・フォードのドル箱香水、ロストチェリーで一躍名を挙げた女性調香師ルイーズ・ターナー。

◎展開
トップ。つけた瞬間、スッとアルコールの香りが抜ける。オードトワレ濃度なので、透明な風が一瞬吹き抜けるようなオープニング。そこからすぐに出てくるのは穏やかでウォータリーな洋ナシの香り。このトップはとても柔らかくみずみずしい印象。

少しすると、ほんのりグリーンが効いたスズランの香りが感じられる。と同時に、キンキンしたメタリックな酸味がその上をオーバーラップしてくる。シトラスのようで、ラムネのようで、あるいはカーフレグランスによくあるスカッシュ系のような香り、これが強く出てくる。これはアルデハイドの一種だ。ここで使われているのはアイロンをかけたような金属っぽさを感じるタイプ。「酸味が出たな」と感じたら、これが出てきたミドル。クレジットにはローズやオレンジフラワーなども書かれているが、このアルデハイドの主張が強め。

やがて清潔なランドリーノートに、ツンとした苦味をもった石けん様のホワイトムスクが重なってくるとラスト。温度が上昇し、人肌の温かみを感じさせる。硬く冷たかった昨夜のシーツが体温で温められ、寝返りを打つ度に柔らかくなって、心地よく自分を包んでいる。そんなぬくもりの朝。次第にカーテンの向こうが明るくなっていくように、サボン香が高くなっていき、3〜5時間でクロージング。

・・・・・

目覚めたら休日の朝。今日は鳴らない目覚ましの音。安堵。もう起きようか。寝返り。まだいい。もう少し布団の中でうだうだしていよう。布団もシーツも枕も、体温と同じ感じに温まって、もう一人の自分に包まれているような感覚。

久々の休日。一番わがままでいたい時間。

あと少し。少しだけ。そしたらゆっくりこの優しい繭の中からはい出していこう。枕に顔をうずめる。柔らかなサボンの香りがしている。このままずっと。こうしていたい。まどろみのひととき。

レイジーサンデーモーニング

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FUEGUIA1833 / Muskara Neroli

FUEGUIA1833

Muskara Neroli

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2022/4/9 15:36:56

フエギア1833のムスカラネロリは、グリーンなファセットが爽やかな、淡いネロリのシングルノート香水だ。50mlで33000円。

◎どんなときにおすすめか?
春先。季節の変わりめ。気分が堕ちているとき。疲れているとき。強い香りではなく、飾らない自分に寄り添った、安らげる香りがほしいとき。また、グリーンな葉のトップから柔らかなオレンジフラワーの香りに変化するナチュラルな香りが好きな方にもおすすめだ。

◎この香水のよさを3つあげるとしたら?
・香りがシンプルでさっぱりしたグリーンフローラルなこと。「香水つけてます感」が少ないから、オンオフ問わず使用でき、汎用性が高いこと
・自然な葉と花の香りなので、女性ならうなじやデコルテなど、肌が露出しているところに1プッシュでもさりげなく香り、ふとした瞬間に感じられて付けすぎがない。
・ネロリやプチグレン(オレンジの葉)の香りが柔らかく香るので、アロマテラピー的に気持ちが安らぐ。

●この香水の短所は?
・良くも悪くも、立ち上がりから香り立ちがうすいこと。同じムスカラシングルノートでも、カカオあたりだと濃厚なビターチョコ香が6〜8時間も続くが、こちらはトップ〜ミドルの柔らかい香り。ずっと香らせたいなら日に何度もタッチアップが必要。
・ムスカラのフェロモン的な効果は疑問。もともとヒトフェロモンの研究分野はまだ未開拓。したがって「フェロモン=媚薬」的なイメージはいったん捨てた方がいい。調香師ジュリアン・ベデルが影響を受けたアクセル博士とバック博士の「香りの受容体タンパク質に関する研究」やブテナム博士の「エストロゲンや男性ホルモンに関する研究」の論文概要を読んだが、ムスコンと分子構造が似ている南米産植物の根茎(ここも定かでない。マカかムイラプアマかウアナルポマチョあたりか。是非公開してほしい)を使ったからといって、男女が惹かれ合う効果を有するとは言えない。←ここ重要。ブランドが公開しているのは「自身の香りを吸着してそれを浮かび上がらせる」効果。
・香水として値段が高い。フエギアはどの国でも一等地に店舗を構えている。それもあるかもしれないが、全体的に香水じたいの価格に上乗せされている部分がかなりあると思う。自分は庶民なので全般的にフエギア価格はきつい。
・調香がシンプル。これも好きずきではある。ただ調香体験した方なら、2〜3種の香料があれば、ある程度模倣できそうな作品のように思う。

◎ブランドとその特徴について
・南米の自然・文化・歴史・哲学を色濃く香水づくりに反映してきた稀有なブランド、フエギア1833。香りじたいは他に似た物が少なく、さらに作品数が膨大であるため、人とかぶりにくいよさがある。100本以上の作品がフラスコの帽子をかぶって店舗に並ぶさまは圧巻!たとえ香水好きでなくても、あれこれ試したくなる楽しさがある。そういった意味で、誰ともかぶらない自分だけのシグネイチャーを探すことが可能。反面、作品数が多いということは人気のない作品は廃盤にもなりやすい。また、どれも400本ずつ作るロット生産であり、原料からの香料抽出具合が毎回異なるらしく、香りがロットごとに変化するという面をもつ。

◎香りの展開
トップ。アルコールの揮発とともに強いグリーンな葉の香り。一瞬、注射するためのアルコールを塗ったかなと思う。結構エッジが鋭いオレンジの葉の香り、プチグレンの香りがする。すぐさま、柔らかく甘いネロリがグリーンなプチグレンの下から出てくる。ほんのりアールグレイを思わせるベルガモットも感じられる。このうち、葉の香りが3、花の香りが7くらいの割合で柔らかく2〜3時間ほど香る。

ムスカラは基本匂いがしない。通常、ムスク系の香りは、小さい環は樟脳の香り、炭素数10〜13ではウッディな香り、炭素数14個あたりからムスク香が現われ,20個になると無臭になるという。ということは、調香師ジュリアンが見つけたムスクと分子構造が似ている植物は無臭だそうだから、大環状ケトン構造をもつ物質と推察する。そのうち特定してみたい。

春。南欧。ビターオレンジの木に日が差し、濃い緑の大きな葉が風に揺れる。そこに咲き乱れる5弁の白い花。柔らかな甘さと芳醇な香りがあたりに降りそそぐ。しどけなくオレンジの樹の下で昼寝をしたくなるような春の午後。あたたかな日射しを感じるオレンジの花の香り。その奥からムスカラでライトアップされた自分の匂いがしてくる。葉のプチグレンと、ネロリの白い花、そして自分の肌のムスキー。日がオレンジ色に傾くまで、そっと大樹の下でもたれかかって、シエスタでまどろみたい春のひととき。

オレンジの樹の下、あなたの肌とオレンジフラワーの匂いが風にそよぐ。ムスカラネロリ。

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ディオール / ボア ダルジャン

ディオールディオールからのお知らせがあります

ボア ダルジャン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

6購入品

2015/7/29 16:13:16

「125mlで3万円の香水、あなたはどう思いますか?」そう聞かれたら、どう答えるだろう。「高い」「買えない」「いらない」の3拍子に始まり、「スキンケアみたいに肌に効果のあるものならまだしも」「600mlで800円の高級柔軟剤使ってるから必要ない」などなど、いろんな声が聞こえてきそう。わかる。自分もそう思っていた。ボア・ダルジャンのような香りに出会うまでは。

この香りに出会ったとき、またしても撃沈した。「またそんな高い香りか。購入はないな」って思ってたのに、出会ったとたん、「あ、欲しい・・・」と、ひと嗅ぎ惚れしてしまった。人って不思議な生き物だ。嫌いな香りだと、たとえ100円でも買わないのに、本当に欲しいと思うと、たとえ3万円以上の香水でも、そのお金をどう工面しようかと考えてしまうのだから。頼むから25mlで6000円にしてくれ、ディオール。←切実だな

ボア・ダルジャンは、2004年にディオールから発売された3種類のユニセックス・フレグランスのうちの1つだ。これらは、コロン・ブランシュ(白のコロン)、オー・ノワール(黒の水)、そして、ボア・ダルジャン(銀の木)というラインナップで、3つの色をキーワードにして創造されたオー・デ・パルファン。中でもボア・ダルジャンは、高価なアイリスをふんだんに使った香りとして、発売当時からヨーロッパで一番人気だったという。現在の物は、ラ・コレクシオン・プリヴェに選ばれた際、ウッディを抑えてリファインされたものだ。

そんな高級な香りの展開を詳しく見ると。

トップから土っぽさのあるパチュリが鼻をくすぐる。その下でほの暗いアイリスの香り。だが、これまで味わったアイリスとはどこか違う。ほこりっぽさというか、くすんだ感じというか、通常アイリス(イリス・オリス)の根茎から感じられるそういった雰囲気が少ない。スミレの香気でもなく、白い穏やかな花の印象。そして同時に、高いところで香木を炊いたような香りがじんわりと鳴り響く。これがイエメン産のインセンスだろうか。そんなオリエンタル風も感じられる温かみのあるトップ。ほんのりスパイシー。

5分とせず、ミルラの酸っぱさが感じられてくる。鼻の奥に軽く刺激を残すような、発酵した樹脂のような香り。そして、気がつくと、アイリスの香りが美しいパウダリーなテイストに変わってくるのを感じる。あー、なにこれ。これが噂の「フィレンツェから送られてくるディオール秘蔵のアイリス」の香りだろうか?それは、これまでの「暗いくぐもった香り」というアイリスのイメージを大きくくつがえした。

これは粉だ。美しく柔らかい銀色の粉。白粉ほど石けんぽい香りでなく、小麦粉ほど生っぽくもない。例えるならそれは、月光に照らされた夜の海の波光。静かで,キラキラと明滅するかのような、妙なるパウダーの香り。

やがて、3〜4時間もすると、微細なパウダーのきらめきがフェードアウトし、洋酒っぽい柔らかいレザーテイスト、ほんのり甘いハニー、そして、ムスクのソーピーな雰囲気に落ち着き、ドライダウン。ムスクは苦手という方も、この不思議な透明感あるラストなら、あまり気にならないかもしれない。

全体の印象としては、まろやかなお香とアイリス。そのエッジを際立たせるミルラとパチュリ。しめくくりは、甘くおだやかなハニー&レザー、ムスクで消えていくイメージ。香りのピラミッドでいうと、おだやかな変化だし、終始アイリスのノスタルジックで安らぎに満ちた香りが持続する印象。

1日の時間帯で言うなら、トワイライトからナイトタイムがおすすめ。厳しい季節である夏であっても、気温が落ち着く夕暮れ以降の時間なら、この香りはとても心地よいリラグゼーションを与えてくれると思う。1日の終わり、好きな音楽や美味しいお酒、世界の扉を開いてくれる小説や映画、そうしたものに心を寄せてまどろむひととき。そんなクロージング・タイムに、この香りは似つかわしい。誰にも邪魔されない自分だけの時間を楽しみたいとき、この銀色のパウダー香は、ゆったりくつろぐ心に寄り添いながら、時の澱を静かに積もらせていくだろう。

夏の夜半。開けた窓の外、ぬるびた風が運んでくるのは、木々の葉をあたためた生っぽさ。日中、蒸散した森の水分が、未だムンとした気配を漂わせている。星々のまたたき。宝石箱を散らかしたような遠くの街の灯り。かすかに響いてくる電車の音。汗をかいたグラスの中で、氷がカランと揺れる音。部屋の明かりを少しトーンダウンして、月明かりのベランダに出てみる。

月はレモンの形。煌々と下界を銀色に照らし出している。そのほの明るい水底のような世界に、一人でいる切なさと恍惚。少しべたつく夜気に立ちのぼる、ボワ・ダルジャンの香り。それは天上のアイリス。

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Sylvaine Delacourte(シルヴェーヌ・ドゥラクルト) / Dovana

Sylvaine Delacourte(シルヴェーヌ・ドゥラクルト)

Dovana

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2022/1/21 22:18:45

「香水沼をのぞいてみたら『寝香水』という概念が当たり前のように飛び交っていて驚いた」

少し前、SNSでそんなつぶやきを目にした。あー、そう言えばそうかもなと思う。ちょっと香水関連をのぞくと

「今夜はドゥーブルヴァニーユを寝香水に」とか「寝る前にミルクムスクをつけてオフトゥンへ」みたいなつぶやきが確かにある。どれくらい浸透しているかは定かではないが、確かに香水好きな方には当たり前に通じる気がする。

「寝香水」と聞くといくつか思い浮かぶ作品がある。特におすすめは?と聞かれたら、まずはシルヴェーヌ・ドゥラクルトのドヴァナを挙げる。

「ドヴァナ」とは、バルト海沿岸の国々で「プレゼント」を意味する言葉、と公式サイトにあった。シルヴェーヌ女史は動画でこう紹介している。

「ドヴァナは、夜ベッドに入る前にスプレーする香水。そうすれば絹の繭のようなコクーンムスクが、あなたをパシュミナのように柔らかく包みます。」

思いきり「寝香水推薦」している!

かつて香水帝国ゲランのクリエイティブ・ディレクターを務め、数々の試みで屋台骨を支えてきたシルヴェーヌ・ドゥラクルト。ドヴァナは、独立後に自身のブランドからリリースした「ムスクコレクション」の中の1本。ではいったいどんな香りなのか?

コロンとしたなで型の可愛らしいボトルからスプレーする。するとまず最初に感じられるのは、思いきりパウダリーでほんのり甘いアンブレットシードの香り。ちょっとクールなフローラルの風合いもあって、とてもスッキリしたイントロ。真っ白なベビーパウダーにほんのり花の蜜をくぐらせたかのよう。むせかえるほどのパウダリー。そして甘い。力が抜ける甘さ。

つけて5分ほどすると、甘さと白いパウダリーは、これでもかとふくらんでくる。まるでふわふわの水鳥のダウンに包まれているかのよう。軽くて、ほんのりくすんだ紫色のヘリオトロープの花の香りと、スミレの暗さを感じさせるアイリスの粉感が、どこまでもコナコナ攻めてくる。そこにほんの少しクマリンやココナッツも入っている。紫の花のわずかな影と真っ白な粉の匂いがオーバードーズしてくるミドル。思いっきりタルカム。悶絶級パウダリー。

これはもうなんというか、大きな愛情で全てを包み込むようなママの香りといってもいいくらいの包容力。柔らかな女性の肌に超絶合う香りだと思う。こんな香りの女性がそばにいたら、一流企業の社長でさえ「ばぶばぶ〜♪」と赤ちゃんプレイして甘えていってしまうのでは?(←やめなさい)

そして同時に、布団や毛布、シーツや枕などからこの香りがしても、全く問題ないのではと感じる清潔感あふれるソーピーパウダリーでもある。心が優しく、とても穏やかになる系統の香りだ。聞くところによると、新型なんちゃらが始まってメンタルがかんちゃらしてしまったシルヴェーヌ女史が、マスク生活の中で一番つけていた香りがこのドヴァナだったという。

狂おしいほどのふんわりパウダリー、それが6〜8時間ほど続くと、ラストはカシミアムスクの甘くソーピーな感じで終息する。このへんはムスクコレクションの他の香りとも共通しているように思う。思えばシルヴェーヌがゲラン在籍時にリリースしたランスタンやランスタンマジーも濃厚パウダリーだったから、彼女は本当にこうした系統が好きなんだろう。自分の中ではシルヴェーヌ・ドゥラクルトは「最強パウダリー党党首」に君臨している。

人は心に不安が続くと、穏やかで優しいものを無意識に求めようとする。香りにも、そんなふうに自分を包み込んでくれるものを求めるのかもしれない。ドヴァナを購入した際についてきた小さなブックレットの方には「ドヴァナとは、リトアニア語で『贈り物』を意味する」と明確に書いていた。リトアニア?そうか。ネットの方ではいろいろ配慮して「バルト海沿岸の国々」とぼかしたんだなと気付く。

リトアニアはナチスドイツやソ連の侵攻を受け、そこから独立して立ち上がった共和政の国だ。そして、杉原千畝の偉業が残る地。ドイツ軍侵攻が迫る中、彼はユダヤ人を助けるため、自身の判断で寝る間も惜しんで日本経由のビザを発給し続けた。そして6000人ものユダヤ人の命を救ったという。

リトアニアの「贈り物」。そう聞けば、真っ先に思い浮かぶのは、杉原千畝の「命のビザ」だ。だが、誰もが彼みたいに多くの人を救えるわけではない。それでも、少なくとも自分の機嫌くらいは自分で救ってやりたいものだ。

ドヴァナはそんな人への贈り物だ。羽のように軽く、赤ちゃんの匂いのように甘く、そして女性本来の肌の匂いのようにどこまでもミルキー。

今宵シルクの繭のパウダリーに包まれて 
天使のように心安らかに いい夢が見られますように

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tofuchikuwaさん
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プロフィール
  • 年齢・・・54歳
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  • 血液型・・・B型
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  • ファッション

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自己紹介

香りの良いものが好きですが、柔軟剤のような人工的なのは苦手です。 特に好きなのは薔薇、そして針葉樹の香り。 my favorite parfumは… 続きをみる

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