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ヨウジ ヤマモト / ヨウジオム

ヨウジ ヤマモト

ヨウジオム

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2018/10/13 14:40:34

「これに匹敵するほどの男性用香水はほかに2つか3つくらいしかない。」

「匂いの帝王」と呼ばれる人がいる。「世界香水ガイド」という香水の辞典を著したルカ・トゥリンという人物だ。彼は自分が気に入らない作品はバッサリ切り捨てるが、本当にいいと思った作品はあらん限りの比喩や状況説明を用いて称賛することで有名だ。そんな彼が2000近いフレグランスの中で前述のように絶賛した作品、それがヨウジオムだ。

ヨウジ・オム・オードトワレ。日本人デザイナーでありながら世界で活躍する山本耀司氏の最初の男性用香水だ。ヨウジオムは「強さと官能美のバランス」をテーマに1996年に欧州で発売された。調香師はジャン・ミッシェル・ドュリエ。これがルカ・トゥリンを唸らせ、幻の逸品と呼ばれた香り。ヨウジオムは一度廃盤となっていたが、ルカ等の熱いリクエストに応え、2013年に再発売し、今また世界中にその名を知らしめようとしている。ルカの願いは叶ったわけだ。

ただし、現在流通しているヨウジオムは2013年に調香師オリヴィエ・ペシューがリファインした香り。オリジナルの1996年版とはかなりレシピが異なるようだ。自分の手持ちも2013年版の物。ではヨウジオム2013はどんな香りかというと。

付けたて。一瞬、透明感ある洋酒のような香りがしたかと思うと、すぐに暗くて甘苦い香りが出てくる。ジュニパーベリーのスッキリ感とリコリスだ。エンジェルのトップほどガツンとは来ないものの、似たような暗いオープニング。どちらかというとロリータレンピカのイントロに近い。ただロリータほど甘さは出なくて、リコリスの背後にわずかにお香のようなドライな香りが控えている。リコリスじたいは風邪の内服薬によく入っている甘草という成分なので、葛根湯を飲んだ時に感じる甘苦さを思い浮かべると分かりやすい。

5分ほどしてミドル。ラムの香りがしてくる。透明感ある甲高い香りと独特の渋みが広がってくる。ベルガモットやライムをもっと効かせれば、ティエリー・ワッサー氏の創ったゲランオムのミドルに似ている。このへんはルカ・トゥリンが評している点だが、確かに納得。ワッサー氏の方が後発なので、ヨウジオムを参考にはしていたかも知れないなと思う。さらにラムの下からかなりロースティーでダークな香りが漂ってくる。コーヒーリキュールの香りだ。ミドルはそんなふうに「リコリスの苦み+ラムのスッキリした辛み+コーヒーリキュールのコク」がせめぎあいながら、黒っぽい香りを展開する。

1999版のレシピでは、イントロにラベンダーやコリアンダー、ミドルにはシナモン、クミン等が配されたいたようだから、オリジナル版はもっとホット&スパイシーだったことが予想される。そうなるとリファイン版はかなりスッキリマイルドに調整された印象。どこか洋酒のようで、漢方薬のようだ。コーヒーの香りは弱め。アクは弱く、香り立ちも柔らかい。似た系統ならエンジェルの方がガツンと来てバランスがいい。

ラストも思いのほかあっさりしている。つけて1〜2時間ほどでソフトなレザー香に収束していく。レザーといってもバーチタールなどの燻ぶった香料ではなく、ソフトななめし革系の香りでフェードアウト。清潔感あるムスク系ではなく、レザーを配したあたりに山本耀司氏への忖度を感じる。彼は以前「男は何歳になっても男だ。俺が最も興味あるのは女だ。」と語っていたから、ワイルドな男性性を感じさせるための選択だろうかと推察する。

気を付けたいことは「ヨウジヤマモト」など、似たようなネーミングの香りがたくさんあることだ。2013年リリース作品は男女用全6種類あってどれも安価でいい。ただヨウジオムは、ルカが評価した1999年版とは別物と思った方がいい。全体的にあっさりして付けやすくなったであろうリファイン版。ルカはどう評価するだろう?

ヨウジヤマモトの服は何着か持っていた。どれもワイドでロング丈で、それまでの既製服の常識をくつがえすゆったりしたデザインが好きだった。彼の服を着て街を歩くと、服と体の間に風をはらむ感じがして心地よかった。かつてカラフルが当たり前だったプレタポルテに敢えて黒一色で挑み、全世界を騒然とさせた彼の服は「黒の衝撃」と呼ばれて賛否両論を巻き起こした。彼は75歳を過ぎた今も常に常識を打ち破り、前衛的ながらも着る人を魅せるデザインを創り続けている。

「魅力とは、服とそれを着る人が出会った時に生まれるものだ。俺はそれを“チャンス”または“偶然”と呼んでいる。」彼自身の言葉にあるように、このヨウジ・オムもまた男が身に付ける武器の一つになるだろう。

ヨウジオムは、そんな彼の男としての生きざまを体現した、香水版「黒の衝撃」だ。

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シャネル / レ ゼクスクルジフ シコモア オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

シャネル

レ ゼクスクルジフ シコモア オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:200ml・36,300円発売日:2009/11/2

5購入品

2015/3/12 21:55:28

心がクサクサしたときは、自然の中に身を置くことにしている。ヤワな自分、ダメな自分のうつむいた心を吹き飛ばす、圧倒的な広い世界に飛び込んでいくのだ。

16年ぶりにスノーボードを抱えて山に向かった。スキーならほとんどのバーンはこなすが、ボードは中級でやめていた。あえてボードにしたのは、自分をこてんぱんに痛めつけてやりたくなったからだ。

時折ワイヤーをきしませながら、リフトが白い頂をめざして上がってゆく。斜め前方の眼下にハーフパイプがちらりと見えた。ウエアの袖をめくり、時間を確認する。その瞬間、手首からシコモアの香りが漂う。思わず顔に近づけて、深く香りを吸いこむ。燻した木の香りが鼻を突き抜け、意識が覚醒してゆく。

シコモアは、スナフキンの香りだ。勝手にそう思っている。

落ち葉を焚き付けにして、慎重に選んだ木の枝を、焚き火で焼いている香りがする。それは硬くてよく乾いた枝だ。白い煙も出さず、焦げ臭さも少ない。雪が降り始める前にムーミン谷を出て別の地方に向かうスナフキンの、孤独な漂泊の心を支える、温かく力強い香りだ。

8本目の支柱をこえた。残り半分。そう言えば新ムーミンのスナフキンはハーモニカだったな。いかんせん昭和な俺には、スナフキンと言えば、辛子色の服に茶色いハット、寡黙な吟遊詩人といった風情の旧スナフキンの方が正統だ。彼の哀愁あるギターは、今も俺の心に流れ続けている。

12本目の支柱をこえた。ぶるっと身震いする。それは寒さのせいか、それとも久々のライディングに感じる不安のせいか。確かボードで挫折したのもこんな曇天の吹雪の日だった。カービングもグラトリもできるようになって調子に乗っていた頃だ。ふと、攻めたことのないハーフパイプに入ってみたくなったのだ。胸がチクリと痛む。

16本目の支柱を越えて、リフトの降り口が眼前に近付いてくる。思わずグラブをずらし、シコモアの香りを大きく吸い込む。つけたてのサイプレスとジュニパーベリーのミックス、ヒノキ様の酸味のあるトップのウッディ香はすでに変化し、深いブラウンの薫香、ヴェチバーの勢いが強く出てきたミドルだ。上品なスモーキーで土臭くない。これがシコモアのすごいところだ。重たくややカビ臭い、根の香りのヴェチバーが、夏の日差しに熱せられた、大木の樹脂のような狂おしい香りになって広がる。ベースのクリーミーなサンダルウッドとの相性がいいのだろうか。やや苦み、渋味をもつ他の香料が、ベチバーを大木の幹の香りに昇華させている、そんなイメージだ。

高揚していた気分がすーっと落ち着いていく。あの日、この香りをかいでいたら、あんな無謀なドロップインはしなかったかも知れない。

やれる。そう思っていた。根拠もなしに。リップの高さは3mちょっと。フロントサイドでエアターンできなければ、リップ上のプラットフォームに上がってしまえばいい、それぐらいの軽い気持ちだった。

あのとき、俺は垂直の壁をすべり降り、一気にすり鉢状のアールをかけ登った。振り子の勢いで、ボードが自分の腰よりも高い位置にかけ上がろうとする。ぐんぐん壁がせりあがり、体が空中で仰向けになるような感覚になった。ヤバっ!そう思った瞬間、俺は、ボードがリップから飛び出す前に、大きく壁を蹴飛ばしていた。まるですり鉢の底に向かって背中からダイブするかのように。

次の瞬間、3mの高さから仰向けの体勢のまま、氷の底へたたきつけられた。グフッと肺から全ての空気が漏れた。背中から腰にかけて強烈な痛みが走った。息をするのがやっとだった。そそりたった氷壁からずり落ちていく俺の目に、低い灰色の雲が映っていた。雪が斜めに吹きつけていた。

ガタン。リフトが一気にせり上がって、スピードが急に緩くなる。降り口だ。右足をボードにのせて、滑り降りる。あの背骨のケガ以来だな、そう思いながら、ゲレンデを見下ろす。ゴーグルの視界のはじに、先ほどのハーフパイプが見えた。あれから16年だ。小さくなったのはパイプの壁の高さだけではない。俺の無謀さもまた、時を経て削れたらしかった。

ヒールサイドでずり落ちながら、ラインを見極める。エッジがよく効いている。いいライドができそうだ。また根拠もなくそんなことを思う。グラブのすそをめくり、もう一度シコモアの香りに身を任せる。スモーキー・ヴェチバー&クリーミー・サンダルウッド。少し焦げた、それでも、穏やかで力強い焚き火の香りだ。心の中でスナフキンの声がこだまする。

「嵐の中にボートを出すばかりが、勇気じゃないんだよ」

OK,スナフキン。今ならそれが分かる。
軽くオーリーしてボードを空中から落とし込む。その瞬間、風景と風が、ほおを切って流れ始めた。胸に赤々とシコモアの火を揺らして。

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シャネル / レ ゼクスクルジフ ボワ デ ジル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

シャネル

レ ゼクスクルジフ ボワ デ ジル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:200ml・36,300円発売日:2009/4/1

5購入品

2015/11/27 01:00:42

1926年、シャネルはこの世に2つの重要な作品を誕生させた。1つは、モードにおけるリトルブラックドレス(LBD)の発表。そしてもう1つは、パルファム・シャネルにおけるボワデジルの発表だった。

ボワデジルは「島々の森」の意。「島」にあたる単語が複数形表記だから、ここでいう「島々」は、当時フランス領となっていた北アフリカや西アフリカの国々、レユニオン島、マダガスカル島、カリブ海の西インド諸島などを指しているようだ。

1926年のフランスには、それら植民地から連れてきた黒人などの労働者があふれていたという。その数、実に20万人。もともと人口密度が少ないフランスは、第一次世界大戦で多くの兵を失い、終戦後、労働力の確保が急務となったためだ。必然、国内に多様な文化が流入し、パリの街のそこかしこに、その影響が見られるようになった。

フランス国内に一気に増えたアフリカ系の黒人たち。そして、初めて彼らの文化に触れたパリ市民は、その民族的なファッション、ジュエリー、歌や踊りをどう感じただろう。少なくとも、ココ・シャネルは、その神秘的で、自然や大地から生命エネルギーを得ているかのような彼らの文化に、少なからぬ刺激を受けたに違いない。ボワデジルにはそんな影響が感じられる。

ボワデジルのトップは、強烈なアルデヒドの拡散で始まる。ウッドとフローラルとスパイスの香り。それらの境界を溶かし、つややかな光沢を与えたようなアルデヒドの主張。それはNo.5のきらめくようなオープニングや、キュイールドルシーのちょっと息苦しいスモーキーなトップと同系の印象。ややクラシカルで、とても強い。

ただ5分もすると色彩は変化する。そこに現れてくるのは、複雑な樹木の香りと、なまめかしいフローラルの協奏曲。

ミドルは、シャネルお得意のローズやジャスミンなどのミックスに、低音からイランイランがもの憂げに香る。そしてその下から、サンダルウッドの心地よい香ばしさと、ヴェチバーの湿った黒土っぽさが絡み合いながら表出し、硬く茶色い木を思わせる香りを紡ぎ出す。それらが、アルデヒドのベールを脱ぎ捨て、輪郭をあらわにしてくる。さながら、アフリカの大地に太陽が昇り、朝もやをかき消して、全ての自然の色や形をあばいたかのように。

やがて、柔らかなヴァニラが、ほんのりと全体を包みこみ、穏やかなラストを迎える。それは、木の器に盛ったアフリカの白い穀物粥、ウガリをイメージさせるような雰囲気だ。温かくまろやかなウッディ・ヴァニラの香りとなって、安らかに消えてゆく。

いつ纏ったらよいとか、どんなシーンに合うだろうとか、そんなTPOを考えることじたい、ナンセンスに思えるような複雑な香り。ただただ、美しいサンダルウッドとヴェチバーの和音に心を預けて、好きな時に自分の肌から立ちのぼらせて楽しめたらいい。そう思える静謐さを感じる香りだ。

アフリカ文化との邂逅。それは、フランスにとって、新たな多民族文化の始まりを意味するものであったろう。大陸や島々から取り寄せた高価な樹木、中でもアフリカン・ブラックウッド(黒檀)は、ジュエリーやインテリアに用いられ、フランスの人々に珍重された。そんな中、マドモアゼル・シャネルは、未だ足を踏み入れたことのない暗黒大陸や島々の森のインスピレーションをもとに、エルネスト・ボーにボワデジルを作らせた。

硬く乾いた木々を焚き、その燻煙を体にまとう黒人たち。暗い森に響く呪術のような歌声。鳴りやまぬ大地の太鼓のリズム…。彼女もまた、そんなイメージを思い描いたのだろうか。黒檀ならぬ、白檀が印象的なこの香りの創造において。

そして、ボワデジルを作った年に発表されたもう1つの作品、リトルブラックドレス。ここにも、どことなくアフリカ文化と出会った影響が感じられるのは気のせいだろうか。それまで貧困や喪を意味するタブー色とされていた「黒」。その概念を打ち破り、機能美と汎用性を全世界にアピールしたリトルブラックドレスの発表、それはモード界における大きな革新であったという。

1926年、それは禁じられた色を再発見した年だったのだ。ディスカバー・ブラック。アフリカの歌と踊り。黒檀の美しい光沢。ブラック・オニキスをあしらったアクセサリー。そして

ひるがえるリトルブラックドレス。心震わせるボワデジル。

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AXE(アックス) / フレグランスボディスプレー エッセンス

AXE(アックス)

フレグランスボディスプレー エッセンス

[香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)ボディローション・ミルク]

容量・税込価格:60g・625円発売日:- (2012/3/12追加発売)

ショッピングサイトへ

4購入品

2015/10/18 16:09:02

高校の長い廊下。奥の消失点に向かって、吸い込まれていくような壁や床の遠近。その緩やかなパースに従い、整然と並んでいる窓。斜めに切りこむ黄金色の日差し。濡れたようなリノリウムの床。意味もないさざめき。突然の笑い声。中空に吐き出される小さな吐息と毒。

アックス・ボディスプレーのエッセンスの香りにふれるたび、そんな高校時代のステレオタイプな情景がいくつかフラッシュバックする。若くて青くて、まだ何者でもなかった時代。そのくせ精一杯背伸びして強がって、大人たちに内面で反発しながらも、世界に向けて少しずつ作り笑いやポーズも身に付け、妥協することも必要だと気付き始めた頃。このエッセンスという香りは、そんな人たちに似合う香りだと思う。荒々しくて、けれどそれ以上に繊細な世代に。

アックスのボディスプレーは、2007年に、”The AXE Effect(アックスエフェクト)=AXEを使った男性に女性が惹きつけられる”という大胆なメッセージと共に、日本ユニリーバから発売された。缶ボトルからLPガスで噴射するタイプで、60gの物が500円程度と安価なこと、また、全国どこのスーパーやコンビニでも買えるマーケティングの広さなどから、ライトユーザー層や幅広い年齢層に人気がある。フランスでは、1983年から若い世代をターゲットに発売されており、海外展開も100ケ国を数えるというが、ヨーロッパ圏では20代以上にはあまり「香水」とは認知されていないようだ。

実際の香りはというと、合成香料をいくつか組み合わせたとてもシンプルなものだが、そのバランスは日本のライトフレグランスにはそれまでなかった発想で、興味深い。

トップ。ピーチっぽいラクトン様の香りが鼻をかすめたかと思うと、ややウォータリーなテイストを感じさせる甘いフルーツ香が広がる。どこかでかいだ香りだが、酸味がないしっとりした甘さだけが特徴なので、思い当たるフルーツが見当たらない。もちろん合成香料なので、ピーチとアップルのミックスかなとずっと思っていたが、つい最近やっと思い当たった。このフルーツ香は、アメリカなどでよくバブルガムの味付けに使われるようなウォーターメロンの香りに似ている。それは日本のスイカよりも甘ったるく、けれど、ウォータリーな透明感とほんのりとした苦みを感じさせる瓜系の香り。アックス・ボディスプレーのエッセンスは、この香りをメインにしている。

やがて、5分とせずに、ピーチっぽいふくよかさは消えて、ウォーターメロンの香りに、ややおとなしめのフローラルが混じってくる。それはローズの香りを淡く表現したフローラルノートのよう。同時に、上の方で強くスパイス香がしてくる。それはペッパー系の香りでありながら、よく香水で使われる天然のペッパーとは雰囲気が異なって、かなり鼻がムズムズするような感じだ。

正直、この鼻がムズムズするようなテイストが好きかどうかという分かれ目はあるだろうと思う。スパイスの香りはとても複雑な香気のミックスで、それゆえ鼻腔の奥に深い印象を残すものが多い。だが、このエッセンスで使われているスパイシーノートは、すぐ鼻の粘膜にツンとくるタイプの香料だからだ。安い人工香料だからと言われればそれまでだが、要は値段ではない。音楽で言えば、出力の問題だ。なかなかいいフルーティー・フローラルのメロディーを左右のスピーカーで広範囲に拡散しておきながら、どちらのスピーカーも音割れしてビビリ音を出していて騒がしい。そんな印象。

そこにのっぺりとしたクリーミーなベールがかかる。パウダリーなムスクと言うほど明確なムスクではない。ただミルキーな感じの香料がペッパーやウォーターメロンの香りの境界をあいまいにしたまま、変化もなく減衰していく。

全体に、「コショウがけウォーターメロン、クリームのせ」といった様相。どこがパウダリーフローラルかよくわからない。セクシーと言われればセクシーなのかな。もっとセクシーな香水は山ほどあるとは思う。

それでも、数あるライト・フレグランスや柔軟剤系ファブリック・ミストの中で見ると、このエッセンスの香りは好きな部類だ。値段が安くてもおもしろい香りはまだまだ作れる、というよいお手本の1つだと思う。

放課後を告げるくぐもったチャイムの音。急にはしゃいだ声が響いたかと思うと、しんとする長い廊下。斜めに長い西日の中、部活の準備が始まる音。たてつけの悪い部室のドア。湿った汗と土の匂いと、少し獣っぽい匂いが鼻をつく。ドサリとリュックを下ろすと、その中でアックスの缶が硬い金属音を鳴らした。誰かがバタンとスチールロッカーを閉める音。そして、シューズのひもを締め、もう一度夕暮れの中に出ていく。

若く、青く、ちょっと息苦しい仲間たちのいる場所へ。

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アラミス / タスカニー ペル ウオモ オーデ トワレ スプレィ

アラミス

タスカニー ペル ウオモ オーデ トワレ スプレィ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:100ml・13,200円発売日:1986年

5購入品

2017/1/13 22:37:04

フレグランスは、女性の美しいファッションに仕上げのひと色を添える。男性の過酷な生きざまに、ひとさじの自信を与える。全ての人に、鮮明な記憶と夢のような情景を思い描かせる。

そしてフレグランスは、人生を旅する者の友となる。

タスカニー・ペル・ウォモは、1984年にリリースされたメンズ・オードトワレだ。タスカニーとは、イタリアのトスカーナ地方を指す言葉で、ペル・ウォモは、英語でフォー・メン。だから「メンズ用タスカニー」という意味だ。

タスカニーのボトルは、トスカーナ地方の州都フィレンツェにあるポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)をモチーフにデザインされている。緩やかなアーチを描く3つの橋桁と2本の橋脚が形作る空間が、ちょうどこのなで肩ボトルの意匠と重なる。このポンテ・ヴェッキオは、第二次世界大戦を生き延びたフィレンツェ最古の橋として有名だ。また、橋でありながら、その上にはカラフルなアパートメントや宝飾店・貴金属店などがところ狭しと建ち並び、観光客がごった返す人気のスポットになっている。

現在、流通しているボトルは主に2種類あるようだ。1つは2011年頃にリニューアルされた、赤&黒の四角いステッカーが貼られたニューボトル。現在、アラミスを扱っている店頭に並んでいる物だ。もう1つは、それ以前のシンプルなボトルで、ステッカーがなく、ボトル前面下部に黒文字で名前だけが印字されているもの。こちらはヴィンテージボトルと呼ばれ、区別されている。(写真参照)

なぜ区別が必要かというと、香りが異なるからだ。ネットの広告では、ニューボトルについて「香りは以前と変わらない」と表記しているのを見かけるが、実際はかなり違う。ヨーロッパのマニアの間で好まれているのは、断然ヴィンテージボトルの方だ。このクチコミも、フリーマーケットで見つけたヴィンテージ版のものだ。

では、ヴィンテージ・タスカニーの香りはというと。

黒ボタンをスプレーすると、まず広がるのは、芳醇な柑橘のシャワーだ。キラキラのレモン、酸味のライム、そしてシトラスの王、ベルガモットのみずみずしい香気。眼前の空気がリフレッシュされるような、さっぱりとした心地よさが味わえるトップ。

すぐに柑橘ミックスの下から現れるのは、イタリア系コロンによくあるラベンダーの清涼感、モス系の暗い苦み。そして、やはりイタリア系を思わせるミックスハーブの香りが、ぐんぐんせり上がってくる。

アラミスの他のトワレは、ギリギリとした苦みや渋み、ウッディの重厚感がトップから出てくる印象が強いが、タスカニーはシトラス&ハーブの爽快感を打ち出していて、より快活なイメージだ。ミックスハーブの香りは、スッとしたキャラウェイ、暗い甘みのアニス、ややセロリっぽいタラゴン、そして青みを感じるバジルなど。このシトラス&ハーブがスッキリした風になってそよぐミドルが特徴。

やがて、ハーバルな香りの中にソフトレザーやシナモンの雰囲気が感じられるようになるとラスト。この頃にはシトラスは消え、ハーブとレザー、清潔感を感じさせるアラミス独特のムスクがたゆたうラスト。持続時間は4〜5時間。

全体的に、ヴィンテージ版はシトラスの拡散が強く、イタリアの陽光を浴びて育った柑橘やハーブがキラキラと明滅する印象。また、オークモスの暗い苦みがいいアクセントになっている。リフォーミュラではこの特徴が薄く、ややパンチに欠ける。柔らかなレザーノートと、シダーっぽい涼感がミドルから出てくるが、どこかソフトで物足りない。探すなら程度のいいヴィンテージボトルだ。少し熟成されたような黄金色の液体色の。それは、ミドルエイジを過ぎたストイックな男に似合う香りだ。心に優しさと厳しさを兼ね備えた男たちの矜持にふさわしい香りだ。

イタリアの日差し、地中海の青い風、なだらかな緑の丘。どこまでも連なる赤茶色のテラコッタの屋根。きらびやかなヴェッキオ橋の宝飾店。オリーブグリーンに光るアルノ川の流れ。トスカーナには、そんな美しい自然と文化が今なお息づいている。

いつか自分もタスカニーを連れてゆきたい。見果てぬ夢の街へ、まだ見ぬ空の下をともに。

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ドギマギの夏さん
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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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  • 髪質・・・柔らかい
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  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
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  • ファッション

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