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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) / インセンス & セドラ コロン インテンス

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

インセンス & セドラ コロン インテンス

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・15,950円 / 100ml・23,650円発売日:2015/12/26 (2017/2/3追加発売)

4購入品

2015/12/30 14:03:23

香りの印象は一瞬で決まる。「あ、いい香り」「うわ、何、この匂い?」人の嗅覚は、通常その程度の判別だろう。好きか嫌いか。そして、悲しいことに、後者の感覚の方が人は鋭敏なものだ。

よい香りかどうか。その判断は、実はとても曖昧な感覚でもあり、場所・状況・対象によってもかなり異なると言われる。同じ香りでも、満員電車の中よりは、ゆったりしたスペースでかいだ方がよい印象をもたらすし、好きなタイプの異性が放つ香りは、無条件で好まれやすい。もちろん逆のことも多いが。

そういった意味で言うと、ジョー・マローンがこの2015年12月26日に出したばかりの「コロンインテンス」シリーズの新作「インセンス&セドラ」は、一瞬で好き嫌いがはっきり分かれる香りの部類だと思う。

もっとありていに言うと、「わあ、お香の香りだ。落ち着く」と感じる人と、「なーんか、お線香の香りするんだけど」と感じる人に分かれるような気がする香りだ。

トップは、いきなり鼻にくるペッパーのスパイシーさ。そして、抹香のようなスモーキーな香りが広がる。正直、このトップだけの印象だと、お寺や仏壇といったイメージをぬぐえない。つまり、この一瞬がこの香りの一番の勝負どころ。気に入るか気に入らないか、トップで明確に決まってしまうことが多いかも知れない。セドラというクレジットはあるものの、シトラスの香りは明瞭ではなく、スパイシーな香料とスモーキーなお香のイメージに完全に負けている。

やがて5分もすると、ペッパー風のスパイシーさは薄れ、暗く穏やかでソリッドなお香の香りに鎮静していく。個人的には好きな香りだが、まるで、暗くて冷たい本堂で、妙に金光りしたご本尊を見上げて、心にやや引け目を感じているような気分になる香りだ。そして、ジョー・マローンにはよくあることだが、この香りのまま、ゆっくりと薄れていく。香り立ちは穏やかだが、4時間くらいでドライダウン。

キーとなる素材は、オマーン産の希少なフランキンセンス(乳香)の香り。ただし、ネイチャープリント技術を使用と謳っていることから、その最高級のエッセンシャルオイルや抽出液をガスクロマトグラフィーによって成分分析し、そこからより自然に近い香りの再現を試みたということだろう。

例えば同じインテンスシリーズでも、ウード&ベルガモットはもっとジューシーで、明るく華やかなお香といった感があるが、付け比べても、それより遥かに低く、暗く、静かに時をたゆたうような香りといった風情だ。これまで以上にインセンスの香りを際立たせてきたなあという印象。

と、好き勝手な印象で書いてきたけれど、ジョー・マローンは、コンバイニング(重ね付け)してこそ本領発揮。ということで、この「ほとんどベース香料だけで作った香り」には、やはりセドラのようなさっぱりと明るいシトラス系の強い香りをコンバイニングした方がよいと判断。いろいろ試してみた。

同じジョー・マローンなら、定番のライム・バジル&マンダリンの重ね付けがとても好印象。ライム〜は単品だと、ほとんどトップ系香料で作ったあっさりシトラス&ハーブで、気の抜けたお風呂上がりの湯気みたいな印象が強いが、こうしたオリエンタル・ウッディと合わせると、俄然、全体に透明感や輝きを与えてくれて、バランスのよいシトラス・ウッディとなって楽しめる。やはり合わせてなんぼのジョー・マローンの面目躍如といった感じ。

他には、アトリエコロンのセドラ・エニブロン、オレンジ・サングインなどが、コンバイニングしておもしろかった素材。アトリエコロンのシトラス系は、長時間香るうえにベースが淡いので、インセンス&セドラの落ち着いたお香の香りが、シトラスに適度な苦みと陰影をつけて、より爽やかさをひきたてるようだ。他にも、シトラス系のままドライダウンするような香りや、ローズ一色で減衰するような香りなども、重ね付けを試してみるとおもしろいと思う。

香りの印象は、本当に一瞬だ。誰かに判定してもらうために付けるのではないけれど、できるなら自分がつけて心地よく、周りの人も気持ちよく感じてもらえる香りを身に付けたいなあと思う。

遠い異国の地、オマーンの白いモスクでは、きっとこんなお香の香りが、そこかしこに立ちこめているんだろうな。そう思いながらインセンス&セドラの静謐な香りに心を任せる。それでも、心によぎるのは、なぜか真夜中の日本のお寺の鐘楼だ。身が引き締まるような冷たい夜気の中、白い吐息だけが漆黒の闇に溶けゆく瞬間、荘厳に響く、時を告げる鐘の音だ。

見上げた虚空、無数の冬枯れた木の枝が、魔女の手のように夜空を覆い隠している。その合間にまたたく星々のはかない光。年をまたいで、心にしみこんでいくインセンス&セドラの香り。

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イヴ・サンローラン / ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ

イヴ・サンローラン

ロム イヴ・サンローラン オーデトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:60ml・11,330円発売日:2007/2/9

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4購入品

2018/9/15 16:28:48

休日の朝。スケジュールは空白。何年ぶりだろう、こんな静かな朝は。コーヒーでも淹れようかと思いながら、ふと手を止める。思えばこの30年ずっと走りっぱなしだった。

20代は仕事とラジオのパーソナリティー、バンドのライブに明け暮れた。体が3つなければ足りないほど動いていた。そのくせどれも中途半端で投げやりで、命令されることを嫌い、とがりまくって毎日夜明けまで遊んでいた。つけていた香水は濃厚なものばかり。イラついていた時代。

30代は妻の出産、子育て、家の購入とイベントが目白押しで、息つくひまもなく走っていた。家事も育児も仕事も全てこなすのは本当に至難だった。妻は化粧を落とす時間すらままならなかった。自分は幼子を抱くために香水もタバコもやめ、ただひたすら働いた。疾風怒濤、疲れていた時代。

そして40代。気がつくと、子どもたちは親の手を離れ、食事の時間もバラバラになった。少しずつ読書をしたり、一人で映画を見たりする時間が生まれた。そして昔から好きだった香水についてあれこれ調べたり、再び集めたりする時間がやっと戻ってきた。

だから若い子から見たら「よくもまあいい年のジジイが香水なんか集めて」って思うだろうけど、そんなことはノットユアビジネス、大きなお世話だ。俺は30年かかってやっと手に入れた今という時間が一番楽しいんだから。

ここに1本のありふれたフゼアのメンズ香水がある。イブサンローランのロム・オードトワレだ。今日久々に何も予定がない休日だったので、朝からこの香りを分析して楽しんでいた。

トップ。華やかなバブルの頃を思わせる香り立ちがある。ほんのりスパイシーなペッパーとカルダモン、そしてシトラス。よくある出だし。20代の頃、街角の黒服の男達から香っていた派手なフゼアのイントロ。ちょうどシャネルのエゴプラのような。

5分ほどしてミドル。瓜系の透明感あるエアリーな香りが全体を柔らかくし始める。そこにスパイスの余韻とバイオレットリーフの暗いシャープさが交わる。30代の頃、ユニセックスがもてはやされた頃にかいだ香りだ。あの頃大流行したCKワンのようなシプレー系ミドル。

やがて、ジンジャーのじわりとした辛みが強くなってくるとラストに近くなる。香りはあたたかみを増してきて、ナッツのこんもり感も出てくる。トンカビーンのふくよかさだ。ムスクで終わらず、シダーやジンジャーで消えていくエンディングは、ちょうど40代の頃に多く出たものだ。あの頃よくかいだディオールオムスポーツやルタンスの「ジンジャーが香る午後5時」を思わせる。

そうか。イブサンローランのロムはこの30年間を凝縮しているのか。

トム・フォードが去ったイブサンローランを再び盛り上げるために、ブランドは有能な調香師を3人雇ってこの「ザ・男」(笑)と名付けた作品の創造を託した。サンローラン起死回生のメンズ香を創るために招集された調香師は次の3人。

アマリージュ、ピュアプワゾン、フレデリック・マルのカーナルフラワーなどを手がけたフローラルの鬼才、ドミニク・ロピオン。

メンズの名香、ギ・ラロッシュのドラッカーノワールを手がけ、スパイスやレザー香遣いに定評があるピエール・ワルニー。

ジョー・マローンのマスターパフューマーとして透明感ある優しいフローラルを数多くリリースし、シャッセ・オ・パピヨンなども手がけたアン・フリッポ。

「3人寄れば文殊の知恵」とばかりに腕利きを集めて創られたサンローランのロム・オードトワレ。この作品はいい意味で彼らの得意技が全て封印され、穏やかでどこにでもありそうな優しい香りに仕上がっている。確かにこの手の柔らかいフゼアは付けやすく汎用性も高い。そしてどうやら女性が好む男性の香りとしてかなりポイントが高いらしい。

実際、シトラスの爽やかさがあり、優しいスパイスが男らしさ、低音のフローラルが柔軟性を表し、ホットなジンジャーは情熱、ふくよかなトンカビーンは包容力、シダーやベチバーのウッディなラストは、何事にも動じない揺るぎなさを提案している。

そしてロムは、それらの特徴がマイルドに溶け合い、際だったノートをあえて見せない香りだ。そう思う。

今日は何をしようか。ここ何年もなかった休日の自由な時間。自分でコーヒーを淹れる代わりに、少し遠くのカフェまで足を伸ばしてみようか。

夫でもなく父でもない。名刺もいらない。どこにもギヤを入れてない日に、この静かで優しい香りは似合うのかもしれない。

休日の朝、高い青空。絵筆で流したようなすっきりした雲。心地よい朝の空気を胸いっぱいに吸って自転車に乗って出かけよう。

朝の光の中、こぎ出すペダル。ロムの香りが風にゆったりたなびき始めた。

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ペンハリガン / ハマンブーケ オードトワレ

ペンハリガン

ハマンブーケ オードトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:100ml・22,550円発売日:-

5購入品

2015/6/3 21:38:35

ブーケという言葉には、2つの意味がある。1つは「特別な匂い」。そしてもう1つは「花束」という意味。このハマンブーケのハマンとは、かつてイギリスにあったターキッシュバス(トルコスタイルの蒸し風呂)の店名ハマムからきているという。だとすると、このネーミングは「ハマムの特別な匂い」という意味だろうか?それとも「ハマムの花束」?

ハマンブーケは、1872年に創業者であるウィリアム・ペンハリガンが作った初のメンズフレグランスだ。今から数えること140年以上前の作品。彼がこの香りを作るにあたってインスパイアされたのは、ハマムの蒸し風呂から噴き上がるスチーム、そして硫黄の香りだという。ハマムという店名もまた、もともとは、トルコ語の「ハンマーム(公衆浴場)」から来ているようだ。

ハンマームは、まず浴槽からのぼった蒸気で汗を出す蒸し風呂でくつろぐ。その後、温まった石の台の上に寝そべり、身体中に泡をかけられ、あかすり師によるあかすりやマッサージなどのサービスを受ける。あかすり師は、男性客に対しては男性、女性客に対しては女性があてられる。となると、やはり「公衆浴場の特別な匂い」という意味の方だろうか?

では肝心の香りはどうかというと。

トップ。荒々しいベルガモット&紫色のラベンダーの香り。一瞬のシャープな苦み。表記にもあるが、ラベンダーのカンファーっぽいスッキリした苦みや清涼感が出てきて、すぐに消えていく感じ。

ミドル。一気に青臭いバラの香り。ダマスクローズの原産地トルコ。そのターキッシュローズから蒸留したローズオットーの、冷たくツンとした、けれどバラ特有の高貴な香りがふわりと広がる。さらに、オリスルートの暗いヴァイオレット様の香りが下支えし、ジャスミンのインドールっぽさも鼻につき、フローラル&ウッディ&アニマリックのすごい饗宴。正直、ビター・フローラルで、きつめには感じる。3時間以上華やかに香る。

そしてラストは、パウダリックに変調。ベビーパウダーを大量に鼻の前ではたいたような息苦しいほどのパウダー香。これは汗っぽさすら感じる強いムスクの香りだと思う。そしてその上でほんのり甘く香ばしいのが、サンダルウッドの香りかなというイメージ。濃厚な雰囲気のムスクにほんのりバラ香をまじえたままフェードアウト。

全体の印象は、ローズオットーのツンデレな冴えた香りをメインにきかせて、ラベンダーやオリスルートでシャープかつ暗めにし、ジャスミンやムスクで動物的な官能をプラス。そしてドライダウンはお風呂上がりの白い天瓜粉(てんかふん)に変わる。そんなイメージ。

香りじたいはクラシカルだが、全体に重苦しくは感じない。ムスクをはじめ、官能を刺激する香料が多めだと思う。濃さからいうと、付け方としては、ウェストや下半身に1〜2プッシュでいいと思う。場所にもよるが、4時間程度は香るだろう。

自分を高めたいとき、何かに挑戦したいとき、そんなある種ピンと張った糸を心にもちたいとき、この香りは力を与えてくれるように思う。フォーマルな場にももちろんいい。また、辛口のローズ系を探している方にもおすすめだ。メンズだけれど、是非女性にも試してみてほしい香りの1つ。素材のよさは、英国王室御用達の折り紙付きだ。

実際香りを味わうと、何となく「公衆浴場の蒸気や硫黄の香り」といった雰囲気とはかけ離れている感がある。むしろ、ブーケのもつもう1つの意味「花束」のイメージに近い。シャープな味付けをした花束。ただそうなると「ハンマーム(公衆浴場)の花束」って・・・?何かの暗号だろうか?

調べてみると、この時代のターキッシュバスは、表向きは公衆浴場でも、影では性的なサービスをオプションで行っていた店もあったようだ。そう考えると、この香りがもつ華やかなフローラル・ブーケは、何となくそうした女性たちを連想させなくもない。「花束」とは「女性たち」の意味の暗喩では?とは考えすぎだろうか。

英国のヴィクトリア期は、広い層で威厳や節度が洗練されていった反面、そうした性の問題や植民地からの搾取といった嘆かわしい現象も拡大した「矛盾の時代」だったという。

そんなことを知って、改めてこの140年前に作られたハマンブーケに思いをはせる。この香りは、高価で厳選された香料を用い、レシピも厳しく守られており、尊大にして厳格だ。同時にこの香りは、気持ちを高ぶらせる香料を多く使っていて、誘惑的で俗っぽい。まさに、表の顔と裏の顔、両方を併せもつかのようだ。

つまり、ハマン・ブーケは、ヴィクトリア朝的な香りなのだ。それは、繁栄の中に見る退廃的な美しさ。在りし日の大英帝国の光と影の象徴。

そんな時代の妙なるブーケ。それは、ハマムの花束(女性達)の特別な匂い。

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ジャンヌ・アルテス / セクシーボーイ オードトワレ

ジャンヌ・アルテス

セクシーボーイ オードトワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:100ml・4,290円発売日:-

4購入品

2018/5/26 15:22:05

少年はその手に何も持っていなかった。金も、バイクも、女の子を喜ばせる話術も。ただ、あの子を思う気持ちだけは誰にも負けない、そう思っていた。

毎日部活を終えて、夕暮れのテニスコート脇を通る一瞬、その瞬間だけが彼にとって全てだった。いつも金網越しに、あの子がラケットを振る姿や、友達と楽しそうに笑っている顔を見ることができたし、運がよければコート脇の通路ですれ違うことがあったからだ。

もしも自分にあの子を喜ばせる武器があったなら。少年は一人の部屋で何度も夢想した。

ある日、クラスの女子の何気ない会話から、あの子が好きなタレントを知った。自分とは比べ物にならないほどのイケメンアイドル。それでもその日から少年は研究しまくった。その人の髪型、眉の形、そしてふだんの私服。そしてそのアイドルがつけている香水を知ったとき、少年の心が一瞬止まった。

彼女はこの香りを知っているだろうか?もし自分がこの香りをつけて彼女とすれ違ったら…。

ジャンヌ・アルテスのセクシーボーイ。少年はその香水を夢中になって調べた。

「ジャンヌ・アルテスは、1978年フランスのグラースで創設され、世界各国で主にティーン向けの安価なフレグランスを販売している巨大企業だ。日本でも多くのコスメショップでさまざまな種類の香水を販売していることで有名。

中でもブルーのボトルが目を引くセクシーボーイは、日本でも若者を中心に人気の香りだ。理由は、まず実売価格が500円〜1000円と安いことと、そして、安いながらも香料の聖地グラースの企業ならではの独創的な香りに仕上がっているからだろう。

では、どんな香りかというと。

トップ。雑味の強いアルコールが鼻を刺激してとてもキツい出だし。香料の特徴がよく分からないまま、苦みと薬っぽさの強いオープニング。クレジットには、アルテミジア、ミント、カルダモンとあってハーバル&スパイシー。柑橘の爽やかさはない。

5分すると香りはミドルになって安定してくる。まだハーバルな苦みはあるものの、次第に合成ラベンダーのクールさ、そしてそれを包むようなパウダリーなベールが感じられてくる。やがてアルテミジアの苦みが薄れてくるにつれ、少しメランコリックなラベンダーと、ミルキーなヴァニラがさらに主張してきて、内省的でクリーミーな香りになってくる。付けてから30分ほどした頃が一番いい。

香料は全て安価な合成香料を使っているようで、ミドルの香りが変化なく減衰していく。つけてから1時間ほどで消えるラスト。

セクシーボーイというネーミングと安価な値段に象徴されるように、はっきりティーンの男子向けな香り。それでも香水文化が浅い日本では、年代問わず似合う男性はいるだろう。ただし40歳以上は付け過ぎと「セクシーボーイつけてます!」とか自分で言うの禁止。イタすぎるから。

ラベンダーとヴァニラと来れば、往年の名香ゲランのジッキーで有名な香料の取り合わせだ。こちらはジッキーよりも荒く、暗く、そして仕方がないけれど、柔軟剤のようにずっと同じ香りが続く廉価版。それでもこの香りは悪くないなと思う。1年に1度くらい、強烈にこの香りをかぎたくなるときがあるのだから。似た物が少ない個性的な調香だと思う。それは時々行きたくなるラーメン屋の味にも似ている。そんなに美味しいわけでもないのに、つい食べたくなるラーメンというのがあるものだ。セクシーボーイはそんなふうに心に爪痕を残す香りだ。」

少年はその日、金網ごしにテニスコートを見ながら、やがて彼女がこの小道を歩いてくるのを待っていた。正確には、友達に電話するふりをしてずっとその場にたたずんでいた。買ったばかりのセクシーボーイの香りが、自分の胸元や首筋からこれでもかと漂っている。きっと彼女は気付くはずだ。そう思いながら。

はたして彼女が友達2人と小道の向こうに現れた。心臓が早鐘のように鳴り始める。つい背中を向けてしまう。不意に背中越し、女の子たちが「バイバイ」と言い合う声を聴く。

え?一人になった!?振り向く。彼女がこちらに歩いてくる。そのとき、彼女の横に男が駆け寄り、並んで歩いてくる姿が目に飛び込んだ。1つ年上の男子テニス部のキャプテン。あわてて彼らに背中を向ける。

あっと言う間に二人が自分の脇をすり抜ける。その瞬間、男が「う、くせぇ!」とつぶやく。少年はスマホに向かって一人しゃべりを続ける。「そうそう、いやあ、参ったわ、マジで。ははは…。」一瞬、彼女が振り向いた気がしたけれど、もうその顔を見る勇気は少年にはなかった。

彼女は本物のセクシーボーイと一緒に遠ざかっていった。夕暮れの空に、失恋ブルーのセクシーボーイの香りが、まだうっすらとたなびいていた。

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ラルチザン パフューム / EXPLOSIONS OF EMOTIONS DELIRIA

ラルチザン パフューム

EXPLOSIONS OF EMOTIONS DELIRIA

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2016/2/6 09:23:48

心は気まぐれ。ふとした折に、たわいない妄想の泡をふくらませる。(←大丈夫か?)
ラルチザン・パフュームのデリリアは、そんな妄想を刺激するフレグランスだ。

デリリアのオープニングは、ガムシロップをこぼしたような濃密な甘さで始まる。そこに、リンゴ風のフルーティーな酸っぱさがシンクロし、何か冷たくてキンとした酸味と苦みが、全体を包んでくるような不可思議な印象。メタリックアルデハイドのヴェール。

やがて、ウォーターメロンなどの瓜系ウォータリーな雰囲気になり、アップルの香りはバター風味を得て、パイナップルのようなファッティーな香りになる。そしてミドル〜ラストは、この印象のままドライダウン。シングルノート寄りの系列。

かつて公式サイトには、調香師ベルトラン・ドゥショフールが、この作品に寄せた香りのモチーフが、次のように紹介されていた。

「始まったばかりの恋愛はローラーコースターのようにスリリング。刺激的なラム酒と、甘くフルーティーなトフィーアップルとキャンディフロスの鮮やかなコントラスト。」

過去形なのは、すでにこのデリリアが、その前衛的なネーミング(和訳「せん妄」認知症の症状の1つ)にヨーロッパでクレームがつき、販売中止になってしまったから。現在、在庫品の販売は認めているようだが、Explosons d'emotionsのディスカバリーセットには、名前をソート・ダ・ユムール(ムードの急転)と変えて入れている。今後、市場から静かに消えてゆく香りの1つかも知れない。

デリリア、スキンオンスキン、アムールノクターンは、2013年に発表されたExplosons d'emotionsの最初の3本だ。自分と相手の関係性について、「感情の爆発」をテーマに、洋酒、デザート、硬質な物などをミックスして、「男と女の出会いの衝撃」「高まっていく欲望」そして「穏やかに満ちたりた愛」そうした恋愛の情景を織り込んでいるようで興味深い。

特にデリリアはそうだ。想像の翼に風をあたえ、ふくらませてくれる。

・・・・・・

海辺の小さな遊園地。光る風。潮の香り。初めてのデート。柔らかくなびく君の髪。そっとおさえる白い指。見つめていたいのに照れくさくて、ぼくは観覧車を見上げてガムをかむ。

いつもとちがって見える世界。デリリア。

手をつなぎたいくせに、その手にふれたいくせに、妙に意識するから、かえってぎこちない二人の距離。ポケットに入れたままの手は、汗ばんでいるのを知られたくないから。

「どれに乗ろうか?」ほんとは何でもいいのに、君だけを見ていたいのに、アトラクションを選んでるふりで。

現実と妄想の二重らせん。デリリア。

わたあめの甘い香り。バブルガムの甘苦い味。君の白いセーターのふわふわ。そっと盗み見た長いまつ毛。テンションの高いBGM。ジェットコースターの鈍い銀色。せまい階段を上るときにふれた君の肩。ふわりと漂うシャンプーの香り。空高く湾曲した、巨大な龍の背骨のようなレール。カタンカタン。目の前でコースターが上っていくたび、心のドキドキも加速する。

「次だね。どこに乗ろうか?」君の隣ならどこでもいいのに、そんなことを聞いたり。苦手なはずなのに、ガムをふくらませて何でもないふうを装ったり。

カタン、カタン、上がっていく心の傾斜。デリリア。

安全バーを肩からかけて、前の銀色のバーをつかんで、ガチガチなのに「大丈夫?」なんて聞いてみたり。背中を揺らしながら天空へと運ばれていく間、「けっこうだめかも」と告白してみたり。「好きだ」って言う告白はできないくせに。

不意に開けた空。消えたレール。眼下に広がる海。明滅する太陽の破片。ストップモーション。刹那。うなりを立てて落下するコースター。強烈な風。自分の叫び声。君の笑う声。

ムードの急転換。ソート・ダ・ユムール。

「大丈夫?」背中を丸めて息をする情けないぼく。その顔を、ちょっとかがんでのぞきこむ君。その瞬間、抱きしめてしまいたくて。でもできなくて。

「ふわー、死ぬかと思った!」初めて2人で見つめ合って笑った。こぼれるような君の笑顔。汗ばんだ手の平から、冷たい金属の香り。あー・・・好きだ。

ベンチに座って飲んだパイナップルのジュース。きらめく太陽。心地よく吹き抜ける潮風。たわいない話。君の笑顔。ぼくの照れ顔。ゆったり日時計のような観覧車。メリーゴーランドからこっちを見て笑ってる白い馬。

心はまるでジェットコースター。急上昇と急下降を繰り返しながら、君の隣で笑ったり落ち込んだり。甘く騒がしく、クールぶっているのに、どこか汗ばんで、心は君に加速する。

それは、恋の始まり。デリリア。

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ドギマギの夏さん
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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
  • 肌質・・・混合肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・少ない
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • 映画鑑賞
  • インターネット
  • お酒
  • 料理
  • 音楽鑑賞

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【警告】 *プロフィール(自己紹介文)又は 挨拶を割愛してのフォロワー 登録は、ご遠慮ください。 *猥雑なニックネームの方も同様に ご遠慮く… 続きをみる

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