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doggyhonzawaさん
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FUEGUIA1833 / フンボルト

FUEGUIA1833

フンボルト

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2022/5/7 14:25:22

「自然はさながら一個の巨大な生き物だ。そこにある命は全てつながっている。」世界が生物を細かく分類することに力を入れていた頃、全く真逆の思考を唱えた偉大な探検家アレクサンダー・フォン・フンボルト。彼は全ての生物が「生命の網(ウェブ・オブ・ライフ)」としてつながり、互いに影響し合っていると説いた。ときに今から200年以上前。

「世界の成り立ちを知りたい!」とプロイセン(旧ドイツ)を飛び出し、南米やアジアを旅し続けたフンボルト。アンデス山脈を越え、オリノコ川とアマゾン川の源流がつながっていることを発見し、チンボラソ火山に登ったかと思うと、アマゾン川でデンキウナギの力を試すために馬を感電させてみたり。フンボルトはまさに好奇心の塊だった。ダーウィンの「進化論」の礎を作り、詩人ゲーテに慕われた、近代地理学の祖にして「知の巨人」。

フエギア1833のフンボルトは、その偉大な冒険家の名を冠した香水だ。

フンボルトには、彼が南米のジャングルを訪れた際、地元のインディオたちがパッションフルーツの実を割って食べたときに香ったであろう、爽やかでフルーティーな香りが真空パックされている。

ブランドによると、フンボルトのキー香料には、ベルガモット、パッションフルーツ、タンジェリンの3つが紹介されている。作品系統ではフルーティーに位置する作品。ここから、かなりシトラス系の香水かなと想像しつつフンボルトをスプレーすると、見事に肩すかしをくう。

フンボルトをつけて最初に感じられるのは、かなりスパイシーでグリーンな苦味だ。そして自分の肌では明らかにスパイシーセロリな風合いに出る。

まず何がしかの鼻をくすぐるスパイスがある。ペッパー風のキリッとした香料だ。その背後で塩みの効いたセロリライクな苦味が強く出てくる。総体として自分には「セロリっぽ!」と感じるが、よく嗅ぐと分厚いセドラやオレンジの内側の白い綿の部分、あのアルベドっぽい感じの酸味に、何か別の植物系グリーンな苦味が効いて、それにペッパー風味がのっている印象だ。正直、自分にはシトラス寄りではない。ジャングルの入口。さまざまな亜熱帯植物が太陽に温められた生っぽい匂い、土の匂いがする広大な川、それらを思わせる複雑で不思議なトップ。

5分ほどすると、ギリギリとしたグリーンな苦味の下からふんわりフルーティーな果実の香りがしてくる。酸味とふくよかなジューシー、これはパッションフルーツの果実香だ。ただ、かなりスパイシーグリーンな影をもったフルーツ香。そしてこのかぐわしい香りがどんどん強くなってくる。

船が静かにアマゾンの水面を滑っていく。インディオがジャングルのあちらこちらから船の様子をうかがっている緊張感が漂ってくる。そのスパイシーな気分とは裏腹に、酸味のある熟した果実香もまたどんどん強くなってくるイメージ。

このパッションフルーツの香りがしてくると展開はミドル。そしてフンボルトは、このミドルからがとても穏やかで美しい。ペッパーライクな辛みとグリーン系のビターノートは和らぎ、柔らかくみずみずしいパッションフルーツの甘酸っぱい果肉の匂いが立ちこめてくる。

船は未開の部族の村についた。フンボルトらは敵意がないことを知らせるために両手を挙げて、ゆっくり村に近付く。通訳者が村長に必死の説明をする。目の奥に厳しい光をたたえたインディオの長は、フンボルトの目の奥をのぞきこむ。フンボルトもまた友好的だが力強い視線を返す。

そのとき、酋長は大きく手を振って弓や槍を構えていた戦士たちの武器を下ろさせる。同時に、物陰に隠れていた女達が出てきて歓迎の宴の準備を始める。たくさんのフルーツや獣の肉が運ばれてくる。子どもたちがわらわら出てきてもの珍しげに探検隊の周りをとり囲む。

付けてから6〜8時間、ビターグリーンな植物の影に縁取られながら、フンボルトは穏やかなパッションフルーツの香りを漂わせてドライダウン。それは大自然の中を冒険しながら、植物と動物の繋がり、さらに人との繋がりも確認していったフンボルトの足跡。彼自身のシヤージュ。

全体的に見ると。同じパッションフルーツをフィーチャーした同ブランドのンブクルジャーがミルキー&フルーティーな果実香だとすれば、こちらは森のビターグリーンな香りの中にパッションフルーツを置いたようなイメージ。慣れるとこちらが好き、という方も多い人気の香りだ。30ml新キャップボトルで17600円。

褐色のインディオの手から円くてつるっとした果実が手渡される。それは親愛の印。果実を割ると、黄色のキラキラしたつぶつぶの果肉が出てきた。

森の中で共に食べる。笑顔が世界をつなぐ。パッションフルーツの爽やかな香りがしている。

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ギ・ラロッシュ(海外) / フィジー

ギ・ラロッシュ(海外)

フィジー

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2022/5/14 06:11:43

「フィジーっていう香水をつけるとモテるんだって。」

今も忘れない。今から40年前。俺は16才だった。何にも増して「モテ」という言葉に敏感な青いガキだった。ちまたでは「青い珊瑚礁」で大ブレイクした松田聖子さんのクルクル巻髪をした女性たちがそこら中にあふれかえり「このブリッ子が!」と野次られながらも、その実したたかに生きていた。

おう、昭和だよ。そらもう、めっちゃ濃い昭和だったよ。

髪を赤くして、ツンツンおっ立てて、野良犬パンクスのくせにちょっとチェッカーズのフミヤ君の前髪意識して垂らして、バンドやってライブハウスに出入りして、喫茶店で仲間と落ち合って悪いことばっかやって。そらもう全部「モテ」たかったからだろうよ。認めるよ。

そんなとき、女子高生の会話を聞いたんだ。「フィジーって香水つけるとモテる」って。そら気になるさ。モテたかったもん。失恋して1年グダグダ荒れてたもん。気になるさ。あの娘を振り向かせられる?そんなこと毎日考えて、勉強もしねえで窓の外ばかり見てたもん。

フィジー。名前もグッときたよ。南太平洋の諸島。青い空、どこまでも続くエメラルドグリーンの海、白い砂浜。揺れるパームツリーの木陰で、優雅に過ごすひととき…。そんなステレオタイプな「南海の楽園」ムードにみんな憧れてたから、どストライクな名前だった。ちょうど大滝詠一さんの「君は天然色」とか「カナリア諸島にて」とかが大ヒットしてて、どこか遠くの南太平洋の島とか高跳びしてさ、優雅に過ごす。そういうバカンスってのがブームだったんだよ。ハワイとかグアムとかめっちゃ人気で、日本人が海外に出かけ始めてた。そんな時期だったから。

で。フィジー買ったよ。買うさ。青くさい飢えた野良犬だから。車も金も地位も、何一つ男の武器をもっちゃいない青くさいガキなんか、そんな万能薬みたいな魔法のアイテムがあると聞いたらイチコロなんだよ。イチコロ。

初めてつけたフィジーの香り。今もはっきり覚えてる。

トップ。パーンと広がる青い草の香り、でもそこにしっとりした低い花の香りが寄り添ってた。今嗅ぐとはっきり分かる。ヒヤシンスノート。強くてしっかりしたブルーな開幕。それがシャネルN°5っぽい透明なアルデヒドで思いきり拡散される。なんていうか、アルデヒドって油絵の絵の具を溶かす「溶き油」みたいな感じ。香料どうしを上手くミックスさせて香りを拡散するような。そんな脂っぽい香りのアルデヒドの下から、ヒヤシンスともう少しグリーンなガルバナムが出てくる。アルデハイディックで、グリーンで、冷たく青いローラル。

だけど

すぐさま、香りの奥からパワフルなムスクの香りが押してくるんだな。パウダリーが7、ソーピーが3くらいの割合で。アルデハイドの効果でムスクも浮き上がってくる。なんか女性の色香を感じる複雑なトップ。派生としてはN°5系統とすぐわかる。

5分もするとアルデハイドは消えて、わずかなグリーンの影から花々が咲き乱れてくる。ヒヤシンス、イランイラン、ジャスミン、そしてほんのりローズ。ジャスミンとイランイランの妖艶さが強く出てくる印象。下からはパウダリーでほんのり蜜の香りも漂ってきて、もう昭和用語で言ったらこの一言に尽きる。

色気ムンムン! ←死語な

このグリーンフローラル&エキゾティックなミドルが3時間ほど続く。意外にスッキリ消えていくのはクラシカルなオードトワレの特徴。トップからガツンとフローラルをアピールするけど、ラストは意外に清潔感あるパウダリー&クリーミーなムスクで終息。

久しぶり。ほんと久しぶりにフィジーをつけたら、40年前の自分が蘇ってしまって、やたら堕ちた。あの頃の空気感、日本という国がどんどん経済成長して、日々ビルが建ち並び、人と街が流行を追いかけて活気づいていた頃を思い出した。そして

結論。フィジーをつけても自分はモテなかったな。がっかりだよ。(←女性用香水だぞ)

コンテンツの少ない時代に生まれた。テレビで情報が伝わると、一夜にして大流行し、みんなが真似する昭和に育った。みんな同じ歌を口ずさみ、髪型も同じ、そして「この香水が人気!」と聞けば、みんながそれに飛びついた。フィジーはそんな昭和に爆発的に売れた香水。誕生は1966年。奇しくも自分と同い年だ。そして今なお世界中で愛されている香り。50mlで3500円ほど。安いよね。でも昔はこれが当たり前だった。クラシカルだけど、とてもバランスがよくて、気分をあげてくれる香り。これをつけて、いつか南海の楽園とやらに行ってみたいと、憧れを募らせた思い出の香り。

「フィジーをつけるとモテるんだって。」

あの声、今も覚えてる。そりゃもう、見事に昭和だったよ。

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メゾン フランシス クルジャン / Le Beau Parfum

メゾン フランシス クルジャン

Le Beau Parfum

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2022/5/28 08:53:57

400本めの香水レビュー。ここまでちょうど9年間、書き続けてきた。週一度1本ペースだから、レビュー数じたいは多くはない。それでもその1本を書くために、香料分析、背景リサーチ、比較検討、推敲編集やらで、1本につき平均6時間はかかってるから、9年で400×6=2400時間は香水の勉強をしてきたことになる。←そのわりにわかってないけどな

珍しい機会なので、その400本の中から心に残っている香水をほんの少しまとめてみる。

◎最もリスペクトしたクラシック香水3本
・シャリマー(ゲラン) ・ルールブルーEDP(ゲラン) ・N°9(シャネル)

◎最も心に突き刺さった香水2本
・ラペルトワ(ラルチザンパフューム) ・フェミニテ・ドゥ・ボワ(セルジュ・ルタンス)

◎最も偏愛して日常使用してきた香水
・エンジェルEDP&EDT(ミュグレー) ・コローニュロワイヤル(ディオール)

◎出す作品どれも恐ろしくできがいいと思う香水ブランド
・ピュアディスタンス ・フラッサイ

◎400書いた中で心に焼きついているレビュー3つ
・ラペルトワ(ラルチザン・パフュ―ム) ・エンジェル(ミュグレー) ・ロストチェリー(トム・フォード)

世界中で年間何万本も新作が生まれる香水業界。その中にあって、これまで出会えた香水はまさに「ご縁」。そんな中、紹介する400番目の香水は、初めからちょっと「ごめんなさい」しておきたい作品。なぜなら日本未発売かつ限定品という超入手難しい系。たぶん自分も、この先もう1本ストックを入手することはできない。そういう意味では本来紹介するつもりはなかった香水。ただあまりにも香水としてできがよく、個人的にもラペルトワに匹敵するほど美しく、自分の性癖にぐっさり刺さった香りなので、このまま誰にも知られず消えていくのは悲しいと思ったから、そっとここに置いていく。

それは、フランシス・クルジャンが2015年にパリの百貨店プランタンの150周年記念のためだけに製作したル・ボー・パルファム。この香水は自分の中で特別すばらしい作品、極上品。星をつけるなら☆7満点のところ、☆70はつけたい香水。ただそれはもちろん自分にとっての超どストライクであって、貴方にとって好きな香り、またはベストマッチとは限らない。香水に「万人に好かれる香り」なんて存在しないからだ。

ルボーの香料イメージはシンプルだ。クレジットによると以下のとおり。

インドのチュベローズ&ジャスミン、チュニジアのオレンジブロッサム、マダガスカルのイランイラン。いわゆる濃厚なホワイトフローラルブーケ系統の香り。

ただ使用している花の香料はどれも高品質ですばらしく、同時にそれらを際立たせるための「つなぎ香料」が超絶いい。しかもナイスバランス。はっきり申し上げる。さすが天下のプランタン。これを作らせるために、クルジャンにどんだけ対価を支払ったのだろうというくらい、スペシャリティ香料をふんだんに使用しているように思う。つまり「売っても赤字」なくらいゴージャス&センシュアルな出来。だから周年記念の限定香水なのだろう。

ルボーを肌にのせる。その瞬間、あまりに甘くかぐわしい花の蜜の香に脳がよろめく。体がふらつく。矢吹ジョー渾身のクロスカウンター一発もらった気分。腰からくだけ落ちる。花園に倒れこむようにマットに沈む。お花畑で好きな女の子を追いかけるスローな白日夢を見る→人間終了。な開幕。それほど左脳崩壊で言葉にならない美しいフローラル爆弾なトップ。

それでも、カウント9でギリギリ立ち上がって香りを分析するなら

ルボーは偏愛するラルチザンのラペルトワにインスパイアされて創ったのでは?と思うくらい雰囲気が酷似している。クリーミーガーデニア&山椒という「花の優しさ&スパイスの棘」の取り合わせで、内面の感情を激しく揺さぶるラペルトワ。その山椒部分をごく微量のキャラメルノート&シナモンが代替するような形で、白い花束に甘いグルマンを補完している。これがたまらない。クルジャン、あなたさてはラペルトワのベースをヒントに、同ラルチザンのアムールノクターンを組み込みましたね?と言いたくなるくらい。わからない方はわからなくていい。これはほぼ自分にあてた周年記念レビューだ。

サイレージは5時間程度。ジャスミンの残香強めでルボーは消えてゆく。ルボーは「プランタンおめでとう!」で作られたけれど、その甘くてノーブルで、どこかノスタルジックなクリーミーな花束は、プランタンとクルジャンがあなたに贈る感謝の花束の香りだ。

いつもありがとう
あなたのおかげで 今があります
あなたの一日が 美しい香りに包まれますように

おめでとう あなたへ

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アクア ディ パルマ / ブルー メディテラネオ ミルト オーデトワレ

アクア ディ パルマ

ブルー メディテラネオ ミルト オーデトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:75ml・13,750円 / 150ml・21,450円発売日:-

4購入品

2022/6/4 00:19:14

アクアディパルマのミルトは、シトラスシャワーの爽快感とほんのり清涼感のあるハーブ香のミックスが楽しめるオードトワレだ。価格は30mlボトル9900円。

◎どんなときにおすすめ?
・何といっても夏。盛夏もいいが、夏に向かって気温と心の高揚が高くなってくる時期にとてもいい。「もうすぐ夏!」気分を積乱雲のように上げてくれる。
・スーツからシャツに衣替えする時期によく合う。サッパリした柑橘&アロマティックな香りは天然香料多めで、香り立ちが柔らかい。オンでもオフでも、しっかり清潔感をアップさせてくれる。
・どちらかというと男性におすすめ。単なるシトラスではない、少しひねりの効いた香りが欲しい方に試してみてほしい香り。

◎このの香水のよさを3つあげるとしたら?
・「碧い地中海シリーズ」と謳うだけある美しいブルーのボトル。この色だけで本当にそそられる。観葉植物の脇にそっと置いてあるだけで部屋のインテリアとしても映えるボトル。
・イタリアのシトラスをふんだんに使ったトップの爽快感が超絶いい。ナチュラルな香りで気分をリフレッシュするのにぴったり。トップのシトラスだけでイタリアに行きたくなる。
・ミドルで出てくるハーブが割と珍しい香り。ミルトとはマートルのこと。和名ギンバイカ。この葉と枝から抽出した精油は、ほんのりシャープで甘さもあって心を沈静させてくれる。また、免疫力の向上、抗菌・抗ウィルス作用も高く、アロマテラピーの効能的にもかなり優れている。

▲逆に自分的に「うーん」な点
・トップのシトラスミックスがかなり天然香料多めなので、あっという間に消失してしまう点。多分2分ももたない。この変化は昔ながらの香水では常識だけれど、昨今の合成香料オンリーのワンノート(最初から最後まで同じ香りが続く)に慣れた人には、不向きかもしれない。ミルトのシトラストップは女性にも結構好まれるが、ミドルになるとかなりメンズ寄りになるので、購入を考えるなら、必ず自身の肌にのせて香りの変化を見るべき。トップの爽やかさだけでこのトワレを語ると失敗する。天然香料多めの香水は、人によって香り立ちがかなり変わるからだ。

○香りの展開
トップ。レモンの酸味とマンダリンのジューシーなオレンジ果汁み、ライムの苦味、ベルガモットの豊かなコクが一気にスプラッシュする爽快なシトラスシャワー。とても快活で爽やか、気分がリフレッシュする。

ほどなくレモンの酸味は飛び、わずかに甘いオレンジの香りが際だってくる。同時に、その底からほんのり温かみのあるグリーンなハーブ香が立ちのぼってくる。これがミルト、つまりマートルの香りだ。

マートルは、ユーカリやティートゥリーなどと系統が似ている常緑低木で、シャープな香りが際だつユーカリの香りを甘くしてライトにしたような芳香をもつ。香料抽出部位は枝と葉だ。このほんのり清涼感あるグリーンハーバルな香りが主張してくると、香りはミドルになる。マンダリンのジューシーな残香に、甘さを伴ったマートルのハーバルがしっとり寄り添ってきて気持ちが安らぐ。そこにジャスミンのふくよかさが華を添えてくるミドル。

つけて30分くらいすると、ジャスミンのふんわりした残香にマートルのグリーンな清涼感が効いたまま、次第にウッディノートが強くなってくる。シトラスの酸味と乾いた木の香りをベースに、シャープなハーブとまろやかジャスミンが主旋律を奏でるアコードとなり、時折日本の菊の香りを思わせる風合いにも感じられる。強い海風に負けず、硬い大地にしっかり根を生やして地中海の丘に立つ木、そんな強さとしなやかさを感じるマリン&ウッディベースが感じられたらラスト。ハーブのスッキリした香りを残しつつ、3時間ほどでドライダウン。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

イタリア。シチリアの東北部にあるパナレア島。ミルトはこの島に育つマートルの木にインスパイアされて作られた香りだ。そこは、ゴツゴツした茶色の岩肌と透明感あふれる碧い海が美しいコントラストを見せるセレブ御用達の小島。火山の斜面に立ち並ぶ瀟洒な白壁の別荘。その間を縫う迷路のような石畳の小径。海に向かって続く白塀の上にはピンクのブーゲンビリアが咲き乱れ、その向こうに紺碧の海が見渡せる。岩だらけの崖の間には、マートルの緑の葉が強い日射しを浴びて風に揺れている。

ここは、火を噴き続ける島ストロンボリを見張る、風の神アイオロスの治める地。
この地を彩るのは、太陽のシトラスと、碧い海風のマリンと、茶色い岩肌の間で緑の葉を揺らすシャープなミルトの香り。

ミルト・イン・パナレア。この香りに目を閉じれば、そこはいつも紺碧の地中海だ。

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ルイ・ヴィトン / IMAGINATION

ルイ・ヴィトン

IMAGINATION

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2022/6/11 02:03:07

”遥か遠くへ まだ遠くへ 僕らは身体も脱ぎ去って 
まだ遠くへ 雲も越えて まだ向こうへ”

ルイ・ヴィトンのイマジナシオンを初めて肌にのせたとき、心に美しいメロディーが流れた。澄んだ声が空や海の無限の広がりを感じさせるヨルシカの「老人と海」。その名のとおり、ヘミングウェイの小説をモチーフに作られた歌。

”靴紐がほどけてる 木漏れ日は足を舐む 息を吸う音だけ聞こえてる”

靴紐がほどけている人は、満足に漁ができなくなってきた老漁師サンチアゴの姿に重なる。あるいは「靴紐」じたい、彼が壮絶な死闘の末に仕留めた巨大なカジキを小舟にくくりつけたロープなのかも知れない。その先にあったはずの希望が、サメの襲撃によってほどけて絶望になった瞬間…。

香水の香りは、こんなふうにさまざまな映像や記憶、風景を心に映し、音楽を喚起し、イマジネーションを広げてくれる力をもっている。イマジナシオンと名付けられたこの香水には、そんな思いがこめられているのだろう。

ルイ・ヴィトン香水のメンズライン、7番目の作品イマジナシオン。イマジナシオンは2021年の発売以来、メンズ香水のシリーズながら、SNSの投稿などを見てもかなり女性ファンも多い香りだと感じている。では一体、どんな香りなのか?

イマジナシオンを肌にのせる。その瞬間、最初に感じられるのは、爽やかなベルガモット、ジューシーなシトロン、ほんのり甘いマンダリンのきれいなシトラスミックスだ。いつもながらヴィトン香水のトップは、高品質でまろやかな天然柑橘スプラッシュで感動すら覚える。

ほどなくシトラスの下から甘くふくよかなネロリの香りが広がってくる。ここまでがとてもシームレスで美しく、ジェンダーレスな展開。ネロリのふんわりフローラルが5分ほどで安定してくると、その下から2つの香りがしっかり主張してくるようになる。

1つは、わずかにスモーキーで渋味のあるスッキリしたティーノート。スモーキーなティーと言えばブルガリブラックなどで使われたラプサンスーチョンティーが有名だが、こちらはいわゆる正露丸っぽさはなく、かなりおさえている印象。そしてもう1つは、海や潮風を思わせるアンブロックスの香り。アンブロックスはアンバーグリス系香料の1つで、同系統のアンブロキサンよりも「海っぽいダシ」がひかえめで、スッキリ上品な潮風系。この2つが二重らせんのようにスパイラルに感じられてくる。

「スモーキーなブラックティー」×「クラウディーなアンブロックス」。この2つの取り合わせは、ジャックが名声を手にした記念碑的作品であるブルガリ・プールオムに対する自身のオマージュになっているかのようだ。ブルガリ〜では、透明感あるダージリンティーの高音の下でソーピーなムスクを取り合わせ、2つをペッパー等のスパイスがつないでいた。イマジナシオンではこの位置関係が逆転している。つまり、本来重たくなりがちなアンブロックスを澄んだ高音で鳴らして、低音部でスモーキーなティーを響かせているイメージ。この2つをつなぐスパイスは、温かみあるジンジャー&シナモンのミックスだ。

そして

イマジナシオンは、パルファン・デ・コローニュ最初の3作品「黄色のサンソング」「緑のカクタスガーデン」「青のアフタヌーンスイム」を合わせたスペシャルコラボな香料構成になっていることにも気付く。この3作品のキー素材は、サンソングがネロリ、カクタス〜はティー(マテ)、アフタヌーン〜はアンブロックス。3作品に割り振られたレモン、ベルガモット、マンダリンの柑橘も全てミックスされている。これは「夢のカリフォルニア全部のせ」香水に他ならない。

さらに

各ノートの心に対する作用を見ても興味深い。一般にシトラスにはRefresh作用、ティーノートにはRelax作用がある。そして母なる海の匂いアンブロックスにReborn作用があると捉えるならば、イマジナシオンは心を回復し、落ち着かせ、そして再生させる香水だと言える。この3つの”Re"が効くから、心は再び大空や大海原へ、無限の想像力の翼を得て飛び立つのだろう。持続時間は6〜7時間。香り立ちは柔らかく主張は弱めだが、穏やかなティー&アンブロックスの香りをかなり長く楽しめる作品になっている。


”風に乗って 僕の想像力という重力の向こうへ まだ遠くへ まだ遠くへ 海の方へ”

ヨルシカの澄んだ声が水色の空と海の間へ吸い込まれていく。

どこまでもいこう。まだ見ぬ世界を求めて。大好きな音楽と古びた文庫本を持って。

7つの海を想像力の翼で越えていけ。ルイ・ヴィトン、イマジナシオン。

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Cookieyukiさん
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プロフィール
  • 年齢・・・54歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・硬い
  • 髪量・・・多い
  • 星座・・・牡牛座
  • 血液型・・・B型
趣味
  • 音楽鑑賞
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自己紹介

アロマセラピーの勉強をしているうちに香水の魅力にはまりました。皆さんの口コミをいつも楽しみにしています。外国在住のため日本で手に入りにくい香水の口コミ… 続きをみる

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