- Cookieyukiさん
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2021/8/5 22:28:33
「やっぱり夏は柑橘系のコロンよね」という会話が聞こえてきそうなので、柑橘系コロンは絶対夏につけない天邪鬼な私。コロンとはシャワーを浴びたばかりの綺麗なお姉さんお兄さん達が、すれ違いざまに自分の美しさ麗しさを誇示するためにつける香りというとんでもない偏見もあるし。でも時間潰しに入った化粧品専門店で見つけて気まぐれにシュッとひと吹き。女性香水セクションのど真ん中に陳列されているけど男性に大人気なんだとか。
アメリカに住んでいるので香水のカテゴリー分けは日本とは違うこともある。例えばイブサンローランのリブレはこちらでは女性用だが日本ではユニセックスみたいに。アトリエコロンは日本から撤退したそうで、日本ではどういう位置付けになっていたか分からないが、こちらでは女性用香水セクションの中心に堂々と置かれている。
香水そのものはほぼ無色だが、つけたイメージはオレンジ色。オレンジ色自体はパッと人目を引き鮮やかだが、そのイメージ同様にに世界中を明るくしてくれるような新鮮な香り。クレメンタインはオレンジの一種で甘い香りが大人気だ。日本ではアメリカ産の握り拳よりも大きいオレンジの方が贈り物としての特別感がある。小さい蜜柑イコールコタツで食べるありふれた温州みかんだし。一方アメリカ人にあげるなら(ミカンの産地以外の場所に住んでる人ね)、クレメンタインとマンダリンはオリエンタルでエキゾチックで小さくてキュートだと喜ばれる。
手についたら果汁でベタベタしそうなほど甘いオレンジの香りを、ジュニパーベリーがジンのはいったカクテルのようにピリッと引き締めてキレのある香りに変化させる。その後ハーバルさを伴ったウッディな香りに導かれる。
バジルとサイプレスの青々とした組み合わせとハイチアンベチバーとサンダルウッドの樹木っぽさが木立の中を歩いているような気分にさせてくれる。なびいた髪の間をすり抜けていくような微風が心地いい。
ミドルのスターアニスの香りはハッキリとは分からないが、その清涼感は感じられる。スターアニスすなわち中華料理でよく使われる八角だが、コッテリした香りと思いきや口に入れてみると意外な清涼感がある。
知的な大人の色っぽさが演出しやすくて湿気の多い日本の夏にぴったり。ユニセックスだけど男性に特にお勧めしたい。日本ではつけている人があまりいないので、被ってしまって困ることもない。
そんなことを思いながらウッディさを楽しんでいると、とっくの昔に飛んでしまっているはずのオレンジノートが蘇ってきた。
え?つけてからもう3時間も経ってる。トップノートって一番初めに飛ぶ香料で作られているんじゃなかったっけ?
最近精油を揃えて自分好みの香水を作って楽しんでいるのだが、本には確かそう書いてあった。試したところそれは事実だし。
カラクリはこうらしい。
香りというものは化学式で表せる香り分子で出来ており、それを組み合わせることで様々な香りが合成できる。成分が変化してしまうため香料が抽出できないもの、例えば鈴蘭などの場合には他の香料を色々組み合わせて再現することになる。
それがいわゆる再現香。柑橘類は揮発速度が速い典型的なトップノートだが、再現香の技術を使えばラストノートとしてだって甦らせることができるというわけか。蘇るというよりも錯覚させるという方が正しいかな。
このオレンジの再現香は湿度が高い方が上手く香ることに気づいた。つけた場所に汗をかいたり水がかかったりするとオレンジの皮を剥いている時のような香りが立ち上ってくる。水分と一緒に蒸発しているのかもしれない。
一方湿度が低くカラッとよく晴れた日にはドライでウッディな香りにスパイシーさが少し混ざった感じになる。それでも時々思い出したようにクレメンタインとマンダリンの甘い香りが漂う。湿度が高くても低くても楽しめるが、オレンジ系の香りは湿度が高い方がしっかり出る。
ということはクレメンティンカリフォルニアってジメジメした日本の夏にピッタリなんじゃないか?梅雨時に似合う香水はあまりないと思う。これなら自他共に爽やかな気分になれるかも。
トップノート: クレメンタイン、マンダリン、ジュニパーベリー
ミドルノート: バジル、スターアニス、ブラックペッパー
ラストノート: サイプレス 、ハイチアンベチバー、サンダルウッド
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2021/7/25 00:06:51
やられた。完全に。
トップのパチュリとアルデハイドを嗅いだあたりで「パチュリ=よくあるセクシー系香水でしょ」なんてタカをくくっていた。どうせパチュリは官能的なオリエンタル香料って言うんでしょ。はいはい、わかってますよ。それに花とかムスクが加わってるだけなんだろうと。要するに西洋人にとって魅力的なだけって。
確かにトップのグリーンな香りはとびっきりイイ女を連想させる。イメージで言えば仕事ができてキャリアがあり、服装もカッコいい年上の女性上司。一見とっつきにくいけど私のしたミスをサラッとかばってくれて、「今度はこういう風にしてね」と責めることもなくあっさり指示を出せるタイプ。
ちょっと気が強そうなシャネルN19を連想したこともある。ディオレッセンスみたいな歴史ある香水をナメくさっていて、途中で匂いを嗅ぐ気でさえなかった。ところがふと気付くとパチュリの香りの中からフワリと花の香りが立ち上ってくる。何の花だかよくわからない。単独で香っているというよりは花束から香ってくる複雑で深みのある匂いだ。イランイラン、ローズ、ジャスミンなと王道の香料が境目がなくなるほどブレンドされているが、不思議と花束として触れそうな存在感は残っている。
ミドルからの香りは第一印象を見事に覆してくれる。仕事帰りに恋人とバーに立ち寄る女性に似合いそう。化粧を夜向きに華やかにして香水を付け直しアクセサリーも変えて。トップではクラシックでダンディな印象さえあり、このままココ・シャネルのようなカッコいい孤高の女性系の香水を貫くと思ったのに少し路線が違う。こちらの方がグッと男好きのする匂いだ。虎視眈々と好きな男性に狙いをつけ落とすしたたかさがある。
ラストノートのその他の香料に対するオークモスとパチュリのバランスは絶妙。最近オークモス精油を取り寄せたので手持ちのパチュリとブランドして色々楽しんでいる。他の精油も足してバスソルトにすることが多いが、この2つはバランスによって大きく表情が変わる。ちょっと間違えると土臭くて耐えられない悪臭に転んでしまうから。
もともとディオレッセンスはディオールが毛皮コレクションを発表する時に、「野生の香り」と難しい挑戦を叩きつけたところから始まる。「野生的なだけじゃなくて当然魅力的な香りにしてね」という無言の圧力があったのは言うまでもない。調香師、ギ・ロベールは散々試行錯誤を重ねたのにも関わらず思ったようなものが出来ずに悩んでいた。
そんなある日、彼はアンバーグリスの買い付けに行った際、手に強く匂いが残っているのに気付き空港のトイレで手を洗う羽目に。ミスディオールの香りを安っぽくコピーしたその石鹸とアンバーグリスの匂いが混ざったものこそ彼が目指していた香りだった。そこでその石鹸を取り寄せてそれを元に完成させたのがディオレッセンスだとか。
残り香の色っぽさが凄い。香水と体臭の境目のギリギリのところを攻めてくる。昔フランス人の知り合いが「体臭は最高の香水」なんて言っていて、その頃は「はーあ?」なんて思っていた。でも自分は恋人を選ぶ時、性格が好きなことは勿論だが確実に触り心地と匂いで最終決定を下している。何もつけていない時に体臭を嗅いでいい匂いだと思える人がいる。多分遺伝子レベルで相性がいいのだと思う。
このラストノートにはダーティーという言葉がよく似合う。日本語に直訳するのは難しい英語の表現だ。男性の心にわざと火をつけて、彼の出方を見てからゲームをするかのように誘き寄せる。周到に準備をしているくせに、自分の手の内は全く見せないで何食わぬ顔をして近づいていく。
これを纏ったら完全に恋のアクシデントを仕掛けられそう。但し、引っかかってくれるのは引っかかったふりをしてくれる自分よりも一段上手の人だったりして。
そんな大人の恋を思わせるちょっぴり危険な香り。
トップノート: アルデハイド、パチュリ、ベルガモット、フルーツノート、グリーンノート、オレンジ
ミドルノート: ゼラニウム、シナモン、カーネーション、オリスルート、ローズ、イランイラン、チュベローズ 、バイオレット、ジャスミン
ラストノート: オークモス、パチュリ、ムスク、サンダルウッド、スチラックス、ベチバー、ベンゾイン、バニラ
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2021/7/10 12:19:11
サヨナラは別れの言葉じゃなくて
また会える日までの遠い約束
とは80年代初めのヒット曲の歌詞。そんな思いを込めて、第二次世界大戦中に出兵する兵士たちが愛する恋人にジュルビアンの青いボトルを贈って旅立っていった。
実はこれは五本のシリーズになっていて全部の香水のタイトルを結びつけると一つのストーリーが出来上がる。ダン・ラ・ニュイ「夜更けに」、ヴェール・ル・ジュール「夜明けに」、サン・アデュー「さよならは言わないで」、ジュ・ルビアン「私は帰ってくる」、ヴェール・トワ「あなたのもとに」。
そんなロマンチックなジュ・ルビアンのトップはアルデハイドが効いていてクラシカルな印象。本来ならフローラルが強いはずなのだが私の肌の上では寧ろウッディグリーンで多少ハーバルに感じられる。かと言って男性的にはならずあくまでも女性的で柔らかな香りだ。穏やかな微笑みを浮かべて恋人を愛おしそうに見つめる女性のイメージ。
トップのレモンとベルガモットの酸味が抜ける頃、ミドルで多少のパウダリーさが加わる。どこか土っぽく暖かいスパイシーさはクローブ。イランイラン、ローズ、ジャスミンなど香水に使われる典型的な花の香料が多種使われているのに、あくまでも表に出てくる印象は限りなく柔らかなウッディスパイシー。普段は主役として扱われる花が完全に脇役として使われているところが渋い。
ラストノートはアンティーク家具の沢山ある誰か大切な人の部屋に足を踏み入れたような錯覚をおぼえる匂い。決してカビ臭いというのではなくウッディさと僅かなフローラルと、その人がずっと寝ていたベッドの残り香が混ざったような、何とも懐かしくなるような香り。愛用していた古い服、端が茶色っぽく変色したセピア色の写真、何処となくドライなバニラに似たような匂いのする愛読書。そんな思い出の品々に囲まれた部屋の中で恋人のことをぼんやりと考えているような不思議な感覚。
そういった風情を醸し出しているのは主にアンバー、ベチバー、サンダルウッド、オリスルートだろう。そこに何時間も思い出を噛み締めながら佇んでいられるような安心感をくれる。それがこの香水が長い間に渡って愛されてきた所以だと思う。
香水としては正直あまり好みではないし、自分には似合わない。でも仲の良い友人のことを思いだすと無性につけたくなる。
彼女はアメリカの大学留学をしている時にある男性クラスメートと恋に落ちた。彼はヨーロッパ出身で二人はインターナショナルスチューデント同士だった。卒業直前に彼は彼女にプロポーズしたが、彼女は病気の母親の面倒を見るからとそれを断り、お互いに自分の国に帰っていった。
やがて彼は仕事の間をぬって、一年に一回彼女を訪ねるようになった。その度プロポーズ。でも彼女は病気の母親の看病を理由に断っていた。「サヨナラ、マタクルヨ」毎年彼は発音とイントネーションが少しおかしな日本語を残して去っていく。
それを延々と続けること十年、成人した彼女の弟がついに一言。「僕がお母さんの面倒をみるから、お姉さんは彼と一緒に幸せになって」
結果、彼女はヨーロッパに渡り彼と結婚、二人の子供にも恵まれた。毎年クリスマスの時期になると幸せそうな家族の写真が送られてくる。
時々、本当に
サヨナラは別れの言葉じゃなくて
再び会うまでの遠い約束
トップノート: アルデハイド、ジャスミン、レモン、ベルガモット、イランイラン、オレンジフラワー
ミドルノート: イランイラン、オリスルート、ヒヤシンス、ライラック、ローズ、クローブ、水仙
ラストノート: ベチバー、 ムスク、アンバー、サンダルウッド、トンカビーン
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2021/7/1 04:48:19
薔薇の香りは好きだけど嫌い。良家のお嬢様のどこか気取った雰囲気があるから。淑女のイメージが強すぎてつまらない。自他ともに認めるフリーダムな雰囲気の自分には似合わないと思っていた。
でもナエマは特別。サンプルを試した後で100mlのボトルを衝動買い。身も心も焦がすような情熱的な恋の香りがするから。
トップは切ったばかりの薔薇の茎を思い起こさせるグリーンな香り。シャネル19のトップのグリーンを柔らかくしたよう。この苦い香りは比較的早く消える。ベルガモットとアルデハイドがうまく華やかさを醸し出している。
私の肌の上だとこの後ピーチが強く香る。熟しきって今まさに食べごろのジューシーな桃。白桃と外国のピーチの丁度間くらいの、成熟した女性を思わせる甘い香り。香水をつけ始めたばかりの若い女の子のモテ香水によくある可愛いピーチとは全く違う上品なセンシュアルさがある。
そしてややパウダリーな薔薇の香りが少しずつ現れる。薄い花びらのビロードのようなしっとりした肉感、触った時のヒヤッとした感触まで表現されている。その薔薇の花弁が一枚一枚開くのを撮影して高速で再現したかのよう。色で言うと赤というよりオレンジがかったピンクかな。いかにも口紅にありそうなモテを狙ったような色の。薔薇から蜂蜜が取れるかどうかは知らないが、花の中心にこっそりと甘味な蜜を蓄えているのではと錯覚する。
イランイラン、ジャスミン、ライラックなど輝くばかりのフェミニンさ。それでも色気止まりで安っぽいセクシーさにならないところは鈴蘭の清潔感のある香りが効いているからだろう。手を伸ばせばすぐ届きそうではなくて、男性の狩猟本能を掻き立てるようなちょっとした距離を感じる。明らかに自分に興味を持って近づいて来ているのだが、手を伸ばして抱き寄せようとするとその腕からするりとすり抜けていきそうな。
ラストにはパッションフルーツが使われているが、これは割合早くから香り始め、ミドルとラストの橋渡しをスムーズにしている。サンダルウッドは人肌に似たニュアンスがあって男性的にも女性的にも転ぶ香料だが、ここでは明らかに女性度マックスだ。バニラが使われているが食べられそうというより、明らかにインセンスに使われていそうな少し乾いたバニラ。
ナエマをつけていると自分の女性性を素直に受け止めようという気持ちになる。普段だと小っ恥ずかしくなるほどフェミニンなシルエットのドレスを纏い、いつもはピッタリと束ねている長い髪を下ろして、ヒールを履いて歩いてみる。風になびく髪に長いドレス、そしてナエマの香り。こんな一面がわたしにもあったなんてと正直驚く。感情と官能が自由になった感覚は慣れると心地よい。
日本では想像できないかもしれないが、私の住んでいるアメリカでは女性はいくつになっても恋愛を楽しむ。そもそも「おばさん」「おじさん」にあたる言葉がなく、女性は死ぬまで女性で男性は死ぬまで男性という認識だ。歳の差カップルも当たり前だし、日本では老人のカテゴリーに入れられる人もパートナーを探している。どんな年代でも男女問わずセクシーであるために努力をする。まあ、これは人にもよるが。
誰にも言わないけれど女の胸には時々花火が上がっている。長持ちする愛ではなくて、夜空に一瞬だけ大輪の花を咲かせ、儚く消えていく打ち上げ花火は恋のよう。男性の心に鮮やかな印象を残して潔く消えていく。
ナエマはそんな熱い恋の香り。
トップノート: 薔薇、ピーチ、アルデハイド、グリーンノート、ベルガモット
ミドルノート: 薔薇、イランイラン、ヒヤシンス、ジャスミン、ライラック、鈴蘭
ラストノート: サンダルウッド、バニラ、トゥルーバルサム、ベチバー、パッションフルーツ
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2021/6/18 23:14:13
何てカッコいい女性の香り!
トップで目立つのは目が覚めるように鮮やかで高貴なブラジリアンローズウッド。乱伐されて貴重品となってしまい、欲しくてもなかなか手に入らない香料だ。花でありながら木、木でありながら花という考えれば考えるほど訳がわからなくなる神秘的な香り。
暫く嗅いでいるとベルガモット、マンダリンオレンジ、ピオニーがローズウッドを陰で支えているのがよく分かる。光が当たると控えめにキラキラする、洗練されたデザイナーブランドのドレスの生地のラメみたい。それにアルデハイドが加わって更に華やかなイメージになる。
私の肌の上ではミドルで百合がかなり強めに出る。それがウッディさと相まって研ぎ澄まされた感性の女性を連想させる。本来はディオール一族の避暑地の情景を元に作られている筈なのに、何故か大都会を闊歩する時につけたい。殺伐とした都会のグレーの風景に突然パッと薄ピンクの花が咲いているような気がして。
そして不思議なくらいの透明感。外国製のウィンドウチャイムで金属のパイプで作られたものがあるが、その高く澄み切った音色を香りに閉じ込めたような。かなりキンキンした高音なのだが不思議と安らぎを感じる。擬人化すると自分をしっかり持った美女といったところか。
これのイメージにピッタリの女性を知っている。確かデューンを愛用していたと思う。その女性、同僚のMはモデル並みのルックスで、タクシーに乗ったところあまりの美しさに誘拐されそうになったという逸話を持つ。陶器のようなきめ細かい白い肌、何もつけなくても赤い唇、風になびく長いブルネットのストレートの髪。道を歩いていて振り向かない男がいないほどの美しさ。彼女の周りだけ凛とした煌びやかな空気が漂う。それはデューンの香りのように。
ある時Mは当時付き合っていた彼氏にこっ酷く振られて感傷旅行に出た。その帰りに乗ったバスの隣の席の男性と意気投合し楽しい時間を過ごした。彼は超絶イケメン、長身で俳優をしている。まだ売れていないがそれはそれでそこそこそれで収入があるらしい。実際、彼女の知っているドラマにもチョイ役で出演していたようだ。結構いいムードになってその男性が彼女の肩に手を回してきた。その途端、
たやすく触るんじゃねえ!
バシーン!
彼女は彼にビンタを喰らわした。
凍る彼と周りの乗客。
バスの乗り換えの時間だ。Mは今度はあの馴れ馴れしい男から離れたところに座った。何事もなく無事時間が過ぎた。
バスを降りると地下鉄に乗り換える。後をつけられたらやだなと一瞬頭をよぎる。少し離れたところを歩いているソイツより早くスーツケースを掴んで足早に地下鉄に乗り込んだ。よかった、奴は乗ってこない。
後にMは肩を抱いてきたキモい超絶イケメンが自分の友人の友人であることを知った。
何がどうなったのかさっぱりわからないが、それから暫くしてMは彼と付き合いだした。その彼との出会いのエピソードに、みんな口々に「思いっきり引っ叩いて欲しかった場所を直撃してやったから惚れたんだよ、アイツ絶対マゾ」とからかっていた。
Mとは休憩時間が同じだったので彼との間に起こったことであれこれ相談に乗ってやった。Mは気が強そうだけど意外にも繊細で気を許した人には色々な表情を見せてくれた。デューンは芯が通っているけれど柔らかな花、フルーツ、樹木、樹脂の香りが突然浮き上がってきてドキッとする。そんな気まぐれなところもMに似てる。
Mはついに彼と結婚して遠いところに引っ越した。それ以来私はMとコンタクトはほとんど取らなくなり、Mと彼とのことも忘れかけていた。
クリスマスの少し前に一枚のカードが職場に送られてきた。グレイヘアの優しそうな母親がとろけそうなほど幸せな笑顔で、2人の男の子供と幸せ太りで顔の輪郭が丸くなった旦那さんと写っている。
え、マジ?これMとビンタ喰らわされた彼氏じゃん。
まるでデューンのラストノートの大自然に抱きしめられているような甘味な世界がそこにあった。全ての大切なものが彼女の周りに初めからあったかのような優しい安心感と一緒に。
トップノート: ブラジリアンローズウッド、アルデハイド、マンダリンオレンジ、ベルガモット、ピオニー
ミドルノート: リリー、イランイラン、ウォールフラワー、ジャスミン、ローズ
ラストノート: サンダルウッド、 アンバー、ベンゾイン、オークモス、バニラ、パチュリ、ムスク
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