2021/12/17 13:04:39
「私の人生の最も美しい日」という名前のこのフレグランスは、ブーケドゥラマリエというかなり高価な限定香水のEDPバージョン。そのブーケドゥラマリエのテーマは結婚式、花嫁に捧げる香りだったそうだ。
一瞬弾けるピンクペッパーに、甘いシトラスフルーツ。オレンジの甘さがメインだと思う。さこにアンジェリカのハーバルな苦味が加わることで、フルーティな印象を引き締めていく。
オレンジの後ろから、マルトール的な甘さが強くなっていく。うん、けっこう甘い。parfumoや公式サイトによるとドラジェのアコードが入っているらしい。ドラジェは婚礼、洗礼等の慶事で配られる祝い菓子。花嫁イメージの香りにはぴったりだ。花嫁といえばもちろん、手にはブーケを持っている。彼女の持つブーケは、ローズとワサお得意のオレンジブロッサムだ。オレンジブロッサムの香りが優勢だが、ローズの甘さももちろん感じられる。
ドライダウンは真っ白に広がるムスクに、フランキンセンスの酸味、そして隠し味のパチュリの苦味。かなり甘いがグルマンというよりフロリエンタル系統、持ちも8、9時間とかなりいい。
甘いシトラスフルーツに、多幸感溢れるオレンジブロッサムと薔薇のブーケ、そしてドラジェアコードでボジュールドゥマヴィ(人生で最も美しい日)のイメージにぴったりの香りだ。しかし、気温や湿度によるのかたまにパチュリの苦味が妙に出てきやすいときがある。結婚式で終わりじゃない、人生はまだまだこれからだ、ということなのだろうか。
現在、公式サイトには記載がないがカラービーボトルにフィリングサービスを行なっている店舗で125mL44,400円+税でオーダーできる。元々の価格(60mL35,000円+税)を考えるとかなりお得だ。
トップ:アンゼリカシード、ピンクペッパー、シトラスフルーツ
ミドル:ドラジェ、ローズ、オレンジブロッサム
ベース:パチュリ、バニラ、ホワイトムスク、フランキンセンス
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(parfumoより)
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2020/12/18 19:56:36
三大フローラルに数えられるミュゲ。香水好きならご存知の通り、ミュゲからは香料を採取することはできない。そこで各ブランドは様々な素材を使い、その香りを表現する。マチルド・ローランはこの「レゼピュールドゥパルファン ピュールミュゲ」でどのようにスズランの香りを表現したのだろうか?
ピュールミュゲは若干のアクアとグリーンの香りから始まる。アクアはほんの一瞬、スズラン葉の上についた朝露のような淡さで、すぐに引っ込む。よくある瓜っぽさや潮っぽさとは無縁な繊細なアクアだ。そしてその後を追いかけてくるすっきりしたグリーン。手でスズランを葉っぱごと摘んだかのようにリアルでフレッシュ。これ、本当に香水だよな?
そのフレッシュなグリーンが落ち着くと、メインのミュゲの香りのお出ましだ。あんまりこういう言い方は好きではないのだが、この「ピュールミュゲ」のフローラルは、その名の通りピュアなスズラン香、限りなく生花に近いと思う。スズランの天然香料は採取できないから合成香料や他の素材を使って再現している、ということは頭ではわかっている。その自覚があっても錯覚してしまう。素材同士の継ぎ目がわからないくらいだ。それほどにリアル。「まるで生花のような香り!」という触れ込みのフレグランスは安価なものにも高級品にも腐るほどあるが、ピュールミュゲの香りは別格だ。ファンタジーなミュゲでも、生花に寄せようと無理に頑張った香りでもない。レゼピュールドゥパルファン(香りのスケッチ)というシリーズ名に恥じない、すっと伸びた葉を持ち、キラキラと朝露に濡れたスズランをそのまま写し取ってボトルに詰めたかのよう。凄すぎる。
香りの展開は以上で、このリアルなミュゲの香りがそのまま減衰していく。難点を挙げるとすれば、香り持ちはあまり良くない。同シリーズのキンカンやマニョリアに比べると格段に淡く、持ちは二時間ほど。非常に繊細で、ひょっとしたら肌に付けるよりスカーフや服の裾に付けた方がいいかもしれない。
それにしても、マチルド・ローランはやはり凄腕だ。伊達や酔狂でゲランのパンフレットから名前が消されているわけではない。ゲランの来年のミュゲはこれに負けないくらい良いものを作ってくれることをワッサーに期待する。
ノート:ベルガモット、スズラン、ジャスミン、ローズ、ムスク
調香師は、マチルド・ローラン。
(Basenotesより)
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2021/8/20 12:24:52
ラールエラマティエール最初期の三作品のひとつ、ローズバルバル。この頃のゲランは専属調香師が不在で(四代目は2002年頃に専属からは退いて不定期に作品をだすものの、基本的にはアドバイザー的な立ち位置になる)、外部調香師に委託したものが多く、これもその流れのもの。調香師は自身のメゾンで有名なフランシス・クルジャン。「ローズバルバル」とは、「野蛮なバラ」や「荒地に咲くバラ」という意味だ。
トップはクラシカルなアルデヒドを起爆剤に、少しペッパーのような辛さとオリバナムのような酸味の強いローズが香る。アルデヒドのせいかクラシカルな要素を感じられるスタート。
ミドルになると、トップの酸味の強いローズがだんだんと甘さと華やかさをともなってくる。ローズといえば女性向け香水のメインノートだが、上層ではペッパーの余韻や酸味が残っているため、フェミニンな印象にはなりにくい。ふわふわ愛され系ピンクローズではなく、キリッと自立したレッドローズだ。
ドライダウンに向かうにつれ、ミドルのローズの香りを支えていたのがパチュリや暗いサンダルウッドの存在感が増していく。そこに若干のムスクが加わって締め。持続は全体で四、五時間ほど。
ローズをメインにしたモダンシプレーの香調だが、スパイシーなファセットやキンと強い酸味、ベースのウッディノートのおかげで女性的な香りには傾きにくく、男性でも充分に使える香りだ。
ただ、「ローズバルバル」という名前から連想するには、香りが小綺麗にまとまりすぎていると思う(クルジャンらしいといえばそうかもしれないが)。それはそれで使いやすくはあるのだが、もう少しバルバルっぽさを感じられる香りであればなおよかった。
ここからはあくまで個人的見解だが、ローズバルバルは処方がどこかで大きく変わったと思う。以前のバルバルはもう少し「野蛮だった」。今となっては確かめようもないけれど。
トップ:ローズ、アルデハイド
ミドル:ローズ、フェヌグリーク
ベース:ハニー、パチュリ、ウッディノート
調香師は、フランシス・クルジャン。
(fragranticaより)
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2021/5/7 17:56:30
文字通りすっかり高嶺の花になってしまったゲランのミュゲ。今年はペーパー&テキスタイルアーティストのルーシー・トゥーレとのコラボデザインで登場。昨年よりオマケスプレーの容量が10mL増えて微妙にお得になっている(?)。毎年限定発売するくらいだから、きっとワッサー渾身の作のはず。今年のできはどうだろうか?
なんてカッコ付けて言ってみたところで、ゲランのミュゲは毎年香りはほぼ一緒。違いはボトルの装飾で、基本的にゲランが好きな人向けのコレクターズアイテムだ。そのことを念頭においた上でよく香りを確かめてみると…
トップはシトラスグリーン。ゲランらしいベルガモットの酸味に、刈り込んだばかりの青草を思わせるようなみずみずしくフレッシュなグリーンが香る。香水だから当たり前なのだけれど、今年のミュゲのトップはちょっとエタノールが強い。
二、三分ですぐにミドル。シトラスは飛んで、ミュゲの淡く繊細なフローラルグリーンの香りへ。ほんの少し合わせらているライラック調の蜜っぽい甘さのおかげで、ミュゲの香りの輪郭がはっきりとしているように感じる。
少しずつ、酸味の強いローズやジャスミンの影も見え隠れしていくような気がするけれど、香りはミドルから大きく変わらずこのまま減衰していく。持続はニ、三時間ほど。ムスキーでもウッディでもないので、こんなものだろう。
昨年のボトルを取り出してきて、よくよく嗅ぎ比べてみるとなんとなく違いはわかる。昨年のミュゲはベルガモットの酸味とライラックの甘さが強くでていて、今年のミュゲはそのふたつの要素が控えめになっている。飛び出していた部分を引っ込めて、他の要素と均等にしたような印象。
それでも、昨年のものと比べて明確に香りが違うわけではない。98%くらいは一緒。その残り2%に、いくら容量が増えたとはいえ税込八万オーバーを払う価値があるかはわからない。いっそのこと、毎年調香をガラッと変えてくれたら集め甲斐もあるのだけれど。
トップ:グリーンノート
ミドル:スズラン
ベース:ジャスミン、ローズ
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(fragranticaより)
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2021/4/16 13:09:43
「ローダルモアーズ」、その名もヨモギ水。セロファンの夜がオスマンサスの香りだったりするポエム上等のルタンスにしてはド直球ネーミングのこのフレグランスは、2019年発売のコレクションポリテスからの一品。
まず感じられるのはスーッとした、ミントやユーカリのような清涼感。軽い香りのシリーズなので、エタノール濃度が高いせいもあるかもしれない。続いてやってくるのは、青青としたグリーン。きっと名前の通りヨモギだ。小さいころによく母と一緒に摘んでヨモギ団子にしていたアレ。気取った都会的なグリーンでもワイルドで勇ましい青さでもない。河原の雑草の素朴さだ。
ヨモギの香りを表層にとどめながら、じんわりとカレー粉のようなスパイシーさとほの甘いアンバーが拡がってくる。この香辛料のような香りの正体はイモーテル。私はイモーテルをディオールのオーノワールで初体験したが、その時はあまりの衝撃に「人類には早すぎる香りだ」と感じた(要は好みじゃなかった、カレーの香り付けたい人いるの?って感じだった)。
付けたての清涼感がおさまった後は、ヨモギの素朴なグリーンにスパイシーなイモーテル、若干のアンバーがミックスされた香りが細く続く。持続は三時間くらい。どちらかというとアロマティックでリラックス調の香りのため、これを付けて「さあ出掛けよう!」という気分よりも、「今日はもう休むか」という気持ちの方が強くなる。
子どもの頃、母が作ってくれたヨモギ団子はわりと好きだった。ヨモギ摘みについて行ったりもした。今思うと、摘んでいた草は本当にヨモギだったんだろうか?ちょくちょく形の違う葉っぱが混じっていたような。
ま、いいか。
ノート:ヨモギ、ベルガモット、イモーテル
調香師は、クリストファー・シェルドレイク。
(basenotesより)
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