2021/8/13 17:52:47
今のミスディオールシリーズの売れ筋と言えば、まずはブルーミングブーケ。次点でローズ&ローズ。どちらもライトなフローラルにクリーンなホワイトムスクを合わせた軽やかな香りだ。コスメカウンターに誇らしげに飾られているそれらに比べ、この「ミスディオール EDP (2017)」は、今では棚の下にひっそりとしまわれてしまって、日の目を見ることは少ない。人気者よりも、ちょっと影がありそうな人に惹かれる人は多いもの。いったいどんな香りなのだろうか?
ピリッと爽やかなピンクペッパーを皮切りに、甘いキャンディのようなオレンジが香る。酸味よりも甘さに重きが置かれており、とてもフェミニンな印象。奥からうっすら香るブラッドオレンジのえぐみが、ファインフレグランスらしさを沿える。
ミスディオールシリーズのミドルと言えばローズがメインなのはこのEDPも一緒。EDPなだけあって、ブルーミングブーケやローズ&ローズのフローラルと比べればだいぶ骨太。しかし、ローズの華やかなフローラルよりも、ベースのパチュリやドライアンバーがグイグイと主張するため、フローラル感は薄い。
ドライダウンになると、甘いアンバーの存在感がパチュリでブーストされ、ていく。いわゆる甘いパチュリ系の香水。トップからミドルまでで一、二時間程度、ドライダウンは四、五時間ほど。パチュリが効いているせいか、拡散力はある方だ。
現行のミスディオールシリーズは、クリスティーヌ・ナジェル作の「ミスディオール シェリー」の系統を継ぐラインだが、シェリーの面影を残しているのはこのEDPとごく一部の店舗限定のエクストレドゥパルファンのみ。EDPは今年リニューアルされるらしい(エクストレはどうなるか未定)。ミスディオールは、オリジナルを別ラインで残しつつ、時代に合わせて香りを刷新してきたシリーズ。2017年からバトンを受け取る次のEDPはどんな香りなのだろうか。ナタリー・ポートマンは相変わらずミスディオールの顔なのだろうけど。
トップ:ピンクペッパー、ブラッドオレンジ、スイートオレンジ、ベルガモット、レモン
ミドル:グラースローズ、ダマスクローズ、ジャスミンリーフ
ベース:パチュリ、ローズウッド
調香師は、フランソワ・ドゥマシー。
(fragranticaより)
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2021/8/6 20:15:22
2011年発表の「フローラルロマンティック」は、ゲランの高級フレグランスライン、エリクシールシャルネルからの一品。このシリーズは現行品は四種で、初期作品であるシプレーファタルとグルマンコキャンはクリスティーヌ・ナジェル作だが、フレンチキスとこれは五代目調香師ティエリー・ワッサーによるもの。ホワイトフラワーとティーノートを主役に据えたフレグランスだ。
トップで特徴的なのは、マンダリンオレンジの甘さと独特の香ばしい苦味のあるグリーン。この苦味の正体はマテ茶だ。このオレンジとグリーンを、アンブレットの淡いムスク調の香りがひとつにまとめあげている。
マテの苦味が一歩引くと主役のホワイトフローラルが顔を出す。構成を調べてみるとアレコレたくさん入っているようだが、意識しないで嗅いだときに顕著に感じられるのは花粉っぽいユリの花の香り、ついでジャスミン、イランイラン、ティアレフラワーの順に強く感じる。濃厚な甘さはなく、さっぱり軽やか。服で例えるならシフォン生地のワンピース。
上層にフローラルの余韻を残しつつドライダウンへ。ティーの渋みにベンゾインの甘さ、それに淡いウッディムスクが加わる。香り持ちは三、四時間ほどでシリーズ内では一番軽い香りだ。季節的には春夏、特にフローラルの軽やかさが映える春にもっともよく似合うと思う。
控えめな印象のホワイトフローラルをメインに、二種のティーノートとムスクで仕上げたこのフローラルロマンティックは、いわゆる「普通にいい香り」。ニッチフレグランスや高級シリーズに慣れ親しんでいる人には若干(いや、かなり?)物足りなく感じるかもしれない。ホワイトフローラルは甘さ控えめだし、ティーフレグランスとしてはそのティーもあまり主張しない。私も買ったのは実はかなり最近だ。実際に付けてみて感じたことは、フローラルロマンティックは、ゲランの材料で作った「普通の香り」なのだ。たしかに似たような香りはどこかでいくつも嗅いだ気がする。しかし、それらよりも「まぁフローラルロマンティックの方がいい香りかな」と思える。あまりに普通すぎてありがたみがわかりにくい。ありふれた香りの最上級バージョン。そんな香りだと思う。
トップ:マンダリンオレンジ、アンブレット、マテ、プチグレン
ミドル:ユリ、ジャスミン、ティアレフラワー、イランイラン、カーネーション
ベース:ティー、マロングラッセ、ベンゾイン、バージニア産シダーウッド
調香師は、ティエリー・ワッサー。
(fragranticaより)
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2021/7/30 12:46:31
トップに拡がるのはホワイトピーチ。ピーチという可愛らしい印象のある香りだけれど、このシプレーファタルの白桃の香りはひんやりと冷たく、少し突き放した感じがする。あまり本物っぽくないからだろうか。いや、香水のゴールは本物の模倣ではないのだから、シンセティックだからといって何も問題ではない。
白桃の余韻を上層に残しつつ、パチュリとローズが展開してくる。このローズはコショウのようなぴりっとしたニュアンスが効いているタイプだ。パチュリの暗いウッディと合わさってモダンシプレを形作っているが、この香りはそう長く続かない。
ドライダウンになるとパチュリの存在感がグッと増し、それを甘いバニラムスクがまとめ上げて終了。持続はトップからミドルまでが1、2時間ほどでドライダウンは5時間程度。
このシプレーファタルは、ゲランのフレグランスディレクターであったシルヴェーヌ・ドゥラクルトがクリスティーヌ・ナジェルと制作したシリーズ、「エリクシールシャルネル」の初期作品のひとつであった。シプレーファタルとは運命のシプレの意だが、シプレ感は薄く(どちらかというと甘いパチュリ、フルーチュリ系)、シプレだと思って試すと拍子抜けかもしれない。
買っておいて言うのもどうかと思うが、正直私にはあまりこの香りは似合わない。そもそも女性向けラインだろ、ということを差しひいてもドライダウンまでが非常に駆け足で展開していき、ひたすらに甘いパチュリバニラムスクになってしまう。トップの少し冷たいホワイトピーチは、「あなたの香りじゃないわね」と忠告してくれていたのかもしれない。
トップ:ホワイトピーチ
ミドル:ローズ
ベース:パチュリ、バニラ
調香師は、クリスティーヌ・ナジェル(とシルヴェーヌ・ドゥラクルト)。
(fragranticaより)
※世界香水ガイドによると、オーレリアン・ギシャールもシプレーファタルの調香に関わっていたようだが、そういった資料は見つけられなかった。
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2021/7/23 20:01:07
ウードローズウッドのトップは、湿ったレザー調の香りから始まる。しっかりアニマリックな印象が感じられるレザー。おそらくこれがfragranticaに記載されているアニマルノート。日本でも売っているメゾンクリスチャンディオールのラインナップに慣れていると面食らう。そこに合わせられているのは暗めのサンダルウッドだ。ライトめのフルーティフローラルが主流のこのシリーズの中で、一際異彩を放つスタートだ。
続いて香り立ってくるのはアガーウッド(ウード)とラベンダーにも似たアロマティックなフローラル。そしてちょっぴりベリーっぽい甘酸っぱさも存在する。ここの香りが出てくると、トップで感じていたアニマリックさはだいぶ落ちついて肌に馴染んでいる。フローラル感はローズウッドのせいだろう。ローズウッド精油の成分は八割近くリナロールだそうだから納得。アガーウッドの重さ、暗さをラズベリーやクインスのフルーティなアコードと共に上手にいなしている。
リナロールを表面に残しつつドライダウンへ。アガーウッドの残香に、インセンスのようなスモーキーさが加わる。ここの香りがかなり長く続き、持続は全体で八時間ほど。メゾンクリスチャンディオールのシリーズの中では非常に長続きする部類だ。
ウード系フレグランスというと、どのブランドも軒並み高価だが、このウードローズウッドはシリーズ内の他作品と同じ価格。おそらく、高価なウードはあまり(もしくは完全に)使われていないのだろう。
それでも、高すぎない価格でウード系フレグランスっぽさを楽しめるという点ではよい香水だと思う。難点を言うなら、このウードローズウッドは国内ではレギュラー販売しておらず、一部ポップアップや公式オンラインでの期間限定販売であるところかな。
トップ:ラズベリー、クインス
ミドル:アニマルノート、サンダルウッド
ベース:アガーウッド、ローズウッド
調香師は、フランソワ・ドゥマシー。
(fragranticaより)
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2021/7/16 19:29:40
トムフォードの夏の香りと言えば、やはりソレイユブランだと思う。南国のスパを思わせるような、ホワイトフラワーとココナッツを主軸にした甘く、どことなく扇情的でセクシーな香りだ。このオールオーバーボディスプレィは、通常EDPよりもライトに、全身にまとえるように調整されたもの。価格は一万円を切っており、PBシリーズが税込約三万(最近の新作は四万オーバーのものばかりだけど)のため、非常にお手頃価格に感じる。
トップに感じられるのは、ピンクペッパーやカルダモンのような爽やかなスパイスとベルガモット。シトラスとスパイスの合わせ技はそこまで珍しいものではないが、爽快感があって心地いい。
付けてニ、三分もするとミドルへ。現れるのは甘く濃厚、エキゾチックなホワイトフラワーとイランイランのコクのあるフローラルだ。こちらはオールオーバーボディスプレィのため、通常EDPよりもフローラルのリッチさは控えめだと思う。それでもしっかりとチュベローズやジャスミン、フランジパニ調の甘さは充分に楽しめる。
ドライダウンになると、ホワイトフラワーの白い甘さはココナッツのコクのあるミルキーなテイストとすり替わっている。その白さに、ベンゾインとアンバーがほんのり茶色い深みを足して終了。持続は三、四時間ほど。
EDPと比べるともちろん香りはライトになっているものの、それでもソレイユブランらしさはしっかり楽しめる香りだと思う。
トップ:ベルガモット
ミドル:ジャスミン、チュべローズ、イランイラン
ベース:トンカビーン、ベンゾイン、ココナッツ
(parfumoより)
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