- Cookieyukiさん
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2021/2/13 22:30:36
「大人のための◯◯」という表現が思い浮かぶ香水。かと言って◯◯に何が入るかは定かではない。
悪くいえば目新しさや個性はない。何処かで嗅いだことがあるような気もする。どこのブランドにもこの手の無難な香りはある。特に香水デビューする年齢をターゲットにしたものに多い。でも思春期の憧れの香りを大人向けに再現したような一味違うよくある香り。
いつも食べているお菓子が突然大人向きになって発売されることがある。商品名だと大人のためのフリカケ、大人のためのキット◯ットとか。当然、即買い。一味違う大人高級路線のいつもの物に弱いのは私だけじゃないと思う。
私の住んでいるアメリカでもそうしたネーミングの商品は結構ある。大人というとAdultという単語が思い浮かぶが、Grownupsという表現がよく使う。直訳すると育ちきってしまった人というニュアンスがある。Grownups sodaなんていう名前の飲料がある。要するに子供の頃から飲み親しんだ甘い味を大人向きに甘さを抑えて改良したものだ。そうした類にはグルメが好みそうなスパイスやフレーバーを入れた洒落た物もある。例えばソーダにラベンダーとカルダモンで仄かに風味づけなど。
トップノート: ペア、 ターキッシュローズ、ガルバナム
ミドルノート: ローズ、バイオレット、ジャスミン、カーネーション
ラストノート: ムスク、 アンバー、シベット 、サンダルウッド
クレジットを見るとよくある組み合わせ。ガルバナム、カーネーション、シベット以外は若い女性がいかにも好きそうな香料が集結している。でも乙女な香りに捻りが加わり、大人の女性が大満足できる仕上がりになっている。
トップは酸味のあるターキッシュローズの中からリアルな洋梨が飛び出してくる。甘酸っぱいコッテリした香り、ジャリジャリ感のないクリーミーな果肉、剥かなくても食べられる薄い表皮。初めて洋梨を食べた時の感動が蘇る。日本の梨しか食べたことがなく、こんな美味しいものが世の中にあるものだとびっくり。それでも日本を離れて何十年もたつと日本の梨が食べたくて仕方なくなるので勝手なものだ。アメリカ人に日本の梨をプレゼントするとエキゾチックと喜ばれる。要するにないものねだりね。
ガルバナムがごく僅かな苦味とメタリックさを添えて香りに奥行きを出している。小豆で餡子を作る時にほんの少しの塩をいれて甘味を引き立てることがよく知られている。同様にガルバナムで洋梨の瑞々しさとローズの芳しさを引き立てた職人技だ。敢えて塩羊羹にしない限り塩が目立ったら餡子として失格だが、ここでガルバナムが主張したら洗練された香りにならない。
ミドルでは洋梨と薔薇の花びらでコンポートを作ったかのような甘い香り。大人向けに甘さ控えめ。ここでバイオレットがパウダリーな優しさを添える。隠し味としてカーネーション。その僅かにピリッとしたスパイシーさが芯の強い大人らしさを醸し出している。
ラストノートはとろけそうな優しいムスク。ムスクという香りは幅がとても広くて動物的なセクシーさがあるもの、ザ・石鹸なもの、フルーティな透明感のあるものなど色々ある。これがどんなムスクか説明するのは難しいが優雅な女性美を感じさせる香りだ。
そうそう、中学生のころ私はこんな匂いがする人になりたいと思っていた。嗅いでいるうちに苦い思い出が蘇る。
15才の時ふと香水をつけたくなった。名前は忘れたが初めて買ったのはムスクのコロンだった。色違いで3種類あって黄色がレモン、ピンクがムスク、青は?。中学生には当然のごとくレモンが大人気で、天邪鬼な私はあまり興味のなかったムスクを選んだ。
今なら香水は鼻から遠いところにつけるのは常識と分かっている。しかし初めての時胸元につけて鼻が麻痺して、ガンガン吹きつけた。理想はMusc Intenseの香りがする綺麗なお姉さんだったのに結果はただのクサい人。その日の私はこれでもかってほど人々の天敵認定を受けた。
仕事で多人数の子供を相手にすることがある。彼らに「あなたのパパもママも昔はオムツしてハイハイしてたんだよ。」と言うと、「えーっ、マジ?」という反応が返ってくる。子供にとって大人の世界は高い塀で隔てられた遠い世界なのかもしれない。ある日突然バッサリと子供時代が終わって大人時代が始まる。中学時代の私はそう思っていた。
子供時代からの延長線上に大人時代はあるという当たり前に気づいたのは大人になってからだった。そう大人はみんなGrownups。育った元子供。三つ子の魂百までとも言うが、昔から相変わらず好きなものが結構ある。Musc Intenseは大人が大満足できる少女の憧れの香り。
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2021/4/17 21:22:37
「なーんだ、コロンか」
知る人ぞ知る超凄腕調香師パトリシアニコライ様に向かって生意気な私。だいたいどこのブランドでもサンプルセットの中にコロンやそれに近いものが一つは入っている。私はサッパリした柑橘系の香りに興味がないので正直ガッカリ。しかも私にとってのコロンとは、見目麗しい男女がシャワーの後にシュッと一吹きして、すれ違いざまにその爽やかな香りを漂わせ、自らの美しさを増幅させる酸っぱい液体というとんでもない偏見がある。
まあ、折角付いてきたんだし試してみるかと完全に他の香水のオマケ扱い。
プシュッ。
苅ったばかりの芝生と酸味を抑えたレモンが合わさったような香り。芝生を刈るとなんとも言えない青く清々しい香りがするが芝生の精油があるわけではない。あってもいいと思うが。これは実は芝生ではなくカシスの葉だ。「青汁みたいに青臭くてイヤ!」ではなくて青々していて芽吹いたばかりの植物の様な生命力を感じる。流石に可哀想でやらないが、春の木の若芽をブチブチちぎったらこんな匂いがしそう。草原を渡る風のような清涼感があるのはどうしてかと思いクレジットを見るとミントが入っていた。歯磨き粉感を全く感じさせずに風の冷たさとして表現できるなんて凄い。
レモンは絞ったばかりで果汁が飛んで目が痛いというより、高級レストランのシェフがあえて酸味を抑えたみたい。シェフの友人が言っていた。搾りたてのレモンの香りはキンキン尖っていて悪目立ちするのでわざと火にかけたりして酸味を飛ばしてフルーティさだけを残すと。香水作りの過程でどんなテクニックを使ったかは分からないが円やかな酸味が心地よい。
レモンとカシスに覆い被さるようにグレープフルーツの香り。ジュレとかいう名称で売っている液体と固体のスレスレで固めた柔らかいゼリーのよう。果てしなく透明感のある果実感たっぷりのグレープフルーツ。それをコテージで太陽の光を浴びながら食べるとキラキラ宝石のように光りそう。
やがてベルガモットの香りが加わる。それは多分最初からあったけれどレモン、カシスの葉、ミントが飛ぶからフォーカスがあたるだけだとは思うが。グレープフルーツだけではないほろ苦い甘さがなんともお洒落。
トップノートの瑞々しい柑橘の香りはミドルノートに持ち越されるが、ここでも酸っぱくて尖った香りが抑えられている。薄らと華やかなフローラルのイメージが湧くが一体何だろう?
薔薇?ジャスミン?
天候や体調によってこのフローラルがはっきりと現れる。花の香りには動物的な香りが含まれているというが、どちらも目立ちはしないものの意外に骨太なしっかりとした香りだ。精油を取るときに副産物としてできたローズウォーターやジャスミンウォーターみたい。薔薇やジャスミンは主役であることが多い香料なのにこれを隠し味的に使うなんて心憎い。
ほんの少しだけ加えられたスパイスが煌びやかな花の影のように使われている。 ピンクペッパー、ナツメグが全体を上手に引き締めている。ジュニパーが入ることでキレの良さを感じる。これらの隠し味の使い方が天才的に上手い。香料を感知できるかできないかのギリギリのところを攻めてくる。
ミドルノートノート終わりの方で多少の酸味を伴ったふっくらした土を思わせるベチバーが香り出す。春雨が新緑と咲き始めた花に降り注ぎ大地へと染み渡っていくよう。大地のイメージを保持しつつ水の透明感のあるベチバーなんて素敵だ。
ラストノートはムスク、ベチバー、オークモスの三重奏。どれも表立って自己主張しないのに良い香り。まるで初夏の空気を纏っているように爽やかで心地よい。香水の構造なんて言ってピラミッド型で上からトップノート、ミドルノート、ラストノートなんて図をよく見かけるが本当にそのバランスで香りが水に溶け込んでいるみたいだ。ローミクスト、すなわちミックスされた水というだけあって。
で、これってコロン?香調で私がそう思い込んでいるだけ?外国の口コミを読んでいたら2-3時間で消滅という意見多数。それなのに低体温で脈拍数が異常に少なく汗をほとんどかかない乾燥肌の私がつけると6時間はゆうに香り続ける。
よく晴れた日につけて遠出したい。自粛生活で伸びた髪を下ろして自転車に乗ってみよう。まだ少し冷たい春風を感じながら。
トップノート: カシスの葉、レモン、ベルガモット、グレープフルーツ、ミント
ミドルノート: ローズ、ジャスミン、ジュニパー、 ピンクペッパー、ナツメグ
ラストノート: ムスク、ベチバー、オークモス
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2020/12/26 04:58:00
西洋出身の男性が嗅いだらクラクラしちゃう魅力的な香り。逆に日本人男性にはピンとこないかも。
寺だ、お香だ、お婆ちゃんという評もチラホラあるタブーだが、西洋諸国でつけたらエキゾチックでセクシーと言われること間違いなし。当たり前かもしれないが、ここまで割り切ったザ・東洋な香りは西洋でウケる。
ところで自分が過去に恋人として付き合った人には何か共通点はないだろうか。色々あると思う。色黒で筋肉質な人に惹かれるとか、年下の守ってあげたくなる人に惹かれるとか人それぞれに。
私の住んでいるアメリカにはイエローフィーバーというイケナイ言葉がある。人種の坩堝ニューヨークとはいえ、一般に同じ人種同士でパートナーを探す場合がまだまだ多いが、違う人種とくっつく人も増えてきた。イエローフィーバーとは自分はアジア系でないのにイエロー(黄色人種)ばかり選んで恋人にする(お熱を上げる)人という意味だ。差別用語と受け取られることもあるので使い方は難しい。私の友人にも歴代彼女10人以上全員アジア系という筋金入りの黄熱病患者もいる。
深い彫り、二重瞼、高くそびえる鼻など顔の造作の派手な人々には、のっぺりとした平らな顔、細い一重の目、低い鼻のアジア人は爆モテする。派手な立体的顔面を保有する彼らの目には地味な平面顔がとてもエキゾチックで魅力的に映るらしい。逆に日本でチヤホヤされる白人ハーフのような顔は人気がない。要するに無いものねだりってヤツね。そこにタブーでもつけたらイチコロだ。
さて、そんなタブー はどんな香りかというと...
オレンジの皮の甘い香りとスパイスが広がるトップ。私がつけるとスパイス全開。コリアンダーの目立つスパイスミックスが香る。少し時間が経つとシナモンとクローブの匂いもハッキリする。三つとも催淫作用があり動物的なニュアンスも合わせ持つ。特に西洋諸国の出身者にとって、こうしたスパイスの匂いは官能的に感じられるようだ。
お馴染みコロンブスに代表される大航海時代のミッションのひとつは東洋からスパイスを持ち帰ることだった。そうして手に入れ普及しだしたスパイスは高価で、肉料理に使われるだけでなく高級菓子にも使われだした。その名残が今もクリスマスの時期によく食べるスパイスケーキ。洋酒に漬けたドライフルーツとスパイスをたっぷり入れた濃厚な味は大人気。「女の子はお砂糖とスパイスでできている」という言葉もその辺が由来らしい。
言葉どおりに解釈すれば女の子は可愛くて甘くて魅力的ということだが裏の意味もある。エッチな意味で「女の子は美味しくいただきましょう」ということ。というわけでタブーのスパイス、糖蜜のような甘さ、オレンジの皮の芳香は西洋に住む男性にとってはたまらないのだろう。逆にスパイスがたくさん取れるインド辺りの男性には「スパイスがセクシー??は?」かも。
ミドルノートは近くで嗅ぐとアニマリックな体臭を思わせる匂い、遠くで嗅ぐとお香といった面白い香りになる。日本でつけるなら手首や胸元ではなく、お腹や太ももなど鼻から遠いところにつけたほうが良さそう。そうすればスパイスにほんのりとしたフローラルが混ざったパウダリーなお香のような落ち着いた香りが楽しめる。ジャスミン、オレンジフラワー、ローズ、イランイランといった花の中ではイランイランとジャスミンが強い。ジャスミンはインドール臭が強目でアニマリック。ただしスパイスに押されてあからさまに花だとは主張しない。
ラストはスパイスに加え濃厚なアンバー、パチュリとしっとりした人肌を思わせるサンダルウッド。バニラによく似た香りのベンゾインがお菓子っぽい。あくまでも上品だがシベットが入ることによって、禁断の恋を連想させる危険な雰囲気が漂う。タブーのポスターには色々種類がある。その中でも女性ピアニストのつけている香水があまりにもセクシーなので、男性バイオリニストが思わず我を忘れてキスしてしまうシーンのものがイメージとして一番しっくりくる。
もし好きになった人が西洋出身だったらタブーを纏って勝負に出るのもアリだと思う。他人と被らないレトロな香水であるだけに、上手に使えば自分を強く印象づけることができそう。
アメリカのバーで時々聞く、最高の人生についてのブラックジョークに「アメリカの広い家に住み、フランス料理を食べ、日本人女性と結婚する。」というのがあるくらい、日本人女性は男性に対して従順で大人しいと思われている。
でもタブーをつけてガンガン獲物を仕留める大和撫子だっているんだよ。みんな知らないだけで。お砂糖とスパイスには時々狩りの得意な肉食のものもいるらしい。
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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)
税込価格:- (生産終了)発売日:2016/6/3
2020/5/28 11:22:08
雨雨ふれふれ
母さんが
ジャノメでお迎え嬉しいな
ピチピチ、チャプチャプ、ランランラン
嬉しくない。母さんは家にいて。風邪引くから。ジャノメ傘(死語)じゃなくて車でお迎えなら嬉しいけど、という生意気なお年頃。雨が降ると外に出るのが億劫。
今をときめく、クリスティーナ ナジェル氏がロンドンの夜の雨をイメージして調香。第一印象は、良い匂いだけれど何の匂いかよくわからない。ムスク、シベットなどの動物性のものではないし、花やハーブでもなさそう。かと言って樹木の匂いでもなさそう。でもホッとして肩の力が抜けて何度も嗅ぎたくなる。まるで少ない色数で雨降りを主題に描いた水彩画から漂ってきそうな香り。アクア系マイナス瓜系で、夜の雨のミステリアスさと水の透明感が溢れ出る。言わなければ絶対わからない程度のクミンの隠し味が、愛しい人の体温が恋しくなるような官能性を添える。
しばらくするとジュニパーが顔を出す。とは言ってもジンのようなお酒感はあまりなく、キレの良い爽やかさだけがある。それを追いかけるブラックシダーの円やかなウッディな香り。切った断面というよりは、自然の中で生えている大木の幹の香りといったところ。中性的な印象で老若男女誰でも似合うし、香りの拡散性は低めだが低体温の私で8時間の持続力。
香水の構成をみると自分の持っている材料名が。ジュニパーとシダーの精油、クミンのスパイスボトルを持っている。ブラックシダーではなく普通のシダーでもいいかな?激しい雨が降っていたので、家でひとりで調香師クリスティーナ ナジェルごっこ。
厚紙を細く切って精油とスパイスをそれぞれ別につける。その紙を扇型に広げて嗅ぐ。うん、プロフェッショナル。
うわっ!クミン強すぎ。
量を大幅に減らして再挑戦。クミンは肉、豆料理に合うスパイスで世界中で人気があり、少量で肉らしさや豆らしさを最高に引き立ててくれるニクらしい奴。ただし適量を少しでも超えると憎らしい奴に変身する。あれこれやっているうちにジュニパーとシダーの強さは同程度、クミンは極々僅かということがわかった。
オリジナルに似ていないでもないが、香りに深みが全く足りないのはレッドペッパーリーフが抜けているからか。この材料が多少のスパイシーさと、どことなくアイリスを思わせるフローラルでパウダリーさの素なのかもしれない。ピーマンや唐辛子系の謎の葉っぱを炒めて食べたことがあるが、そうした生の青っぽさではなく乾燥させてハーブにしたような乾いた感じだ。まあ他にも色々入っているだろうけど。30%くらいはクリスティーナ ナジェルになれたかも。
雨が上がったので外の空気を吸いに行く。
「!」
めちゃくちゃいい匂い!何これ?どこから来るのかわからないが、普段の雨上がりプラスアルファの香りだ。香りの元を探して庭をウロウロ。でも、どこに行っても同じいい香りがするのはどうして?
どうも香りが自分についてくるようだ。付けてから約4時間後、大地を感じさせるベチバーのような、力強く、かつ繊細な香りも出てきた。それが雨上がり独特の匂いと混ざってさらに極上の香りになった。
雨降りの時の独特の匂いには「Petrichor」ペトリコールという呼び名がちゃんとある。ギリシャ語が語源で石のエッセンスという意味らしいが、何だか素敵な響き。1960年代に学会で論文を発表する際に学者が作った言葉だそう。植物から放出された油分が地面にばら撒かれているところに雨が降ると、水滴が落下した衝撃でその油分が空中に放出され、同時に土の香りも混ざって人間に感知されるらしい。
調香師になるには、鋭い嗅覚と同時に優れた科学者であることが条件だとか。例えは悪いが、消臭剤はゴミ等の臭いと混ざっていい香りになるように調整されている。その技術は化学の知識の賜物だ。香水そのものがいい香りというだけではなく、ナジェル氏は雨降りの独特の香りと出会って更にいい香りになるように仕組んだようだ。エルメス専属の調香師に抜擢されるだけのことはあると感心する。
雨の降る前、雨の降り始め、雨上がりの匂いはそれぞれ違う。意識して嗅いだことはないが、夜の雨の匂いもまた違っているかもしれない。色々なタイミングでこの香水をつけて香り立ちがどう変わるのか試してみたい。
「雨雨ふれふれ」も悪くない。誰もお迎えに来てくれなくってもいいか。ブラックシダー&ジュニパーをつけて、雨降りの香りのハーモニーを愉しみながら歩くから。
ピチピチ、チャプチャプ、ランランラン。
トップノート: クミン、レッドペッパーリーフ
ミドルノート: ジュニパー
ラストノート: ブラックシダーウッド
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2022/2/27 13:41:55
とても素敵なアイリス香。貴婦人が纏う薄いシルクシフォンを連想させるほど柔らかい。
主役は当然パウダリーなアイリスだけと脇役のウッディな香りがとてもいい仕事をしている。まるで新人俳優が主役を務め超ベテラン俳優が脇役でがっちりサポートみたいに。年季が入った演技で主役を食おうと思えばできるのに、敢えてそれをやらずに引き立て役に徹している。
シュッと一吹きするやいなや上品なスミレとアイリスのパウダリーな香りが広がる。パウダリーと言っても白粉のようなむせそうな化粧っぽさはない。寝具や服の香り付けに使われたオリスルートに上品なフローラルを足したようだ。
トップの名脇役はローズウッド。精油持ってるけど薔薇と木が合体したような香りに加えて、スースーした樟脳に似た微かな刺激臭と酸っぱさのある柑橘系の香りが混ざっている。そんなローズウッドとスパイシーさのあるカーネーション、ほろ苦い爽やかさのベルガモットがこの香水を洗練されたものにしている。これだけだとかなりメンズ寄りな香りになるところにイランイランとオレンジが軽やかな甘さを添える。さすが名香クールウォーターを作ったピエールブルドン。上手い!
やがてミドルでフローラルが重なる。アルデハイドも入っている香水は外国製の強い香りの石鹸に例えられることが多いが、同じ石鹸でもそんなキツさも感じさせない。衣服に残ったフローラル石鹸の残り香といったところだ。特定の花が目立つことなくまとまっているが、時々一種類だけが強く感じられることがあるのが面白い。
ラストになるまでかなり長時間特に驚くほどの変化が無いミドルノートが続く。心地よいふんわりした香りなので変化のなさは安心感などの長所として働く。この香りに包まれてウトウトすると幸せだ。
というわけでつけたまま昼寝。悦びに浸ろうとつけた鼻を近づけて香水をつけた手首を嗅ぐ。
あの…..
香りが「ムフフ」って言ってるんですけど。
誰かが香水はキスしてほしいところにつけるのよって言ってたよね。これつけて男性とハグしたらキスに続くその「ムフフ」が始まりそうなんですけど。
遠いところで嗅いでみると先ほどのシルキーな貴婦人の香りにもどっている。
そういえばこれってカトリーヌドヌーブの映画、昼顔をモチーフにしていた。上品な女性の裏の官能的な顔に焦点を当てたストーリーだったっけ。香りでもそれを表現したんだ。先ほどの上品なアイリスとは対照的なダークな香り。お酒飲んだ後お持ち帰りされちゃった翌日の朝のベッドのようなにおいが微かに混ざったムスク。動物的なニュアンスはミドルからのジャスミンか。
アイリスの下で香る微かなバニラとベチバー、サンダルウッド、アンバーに加えてなんだかわからないウッディな香り。キャラメルや黒蜜を思わせる甘味とよく熟成した煙草のようなコクと微かなスモーキーさを伴ったウッディだ。調べてみるとエボニーウッドとある。
エボニーウッドとは黒檀のことらしい。黒檀自体が希少なので実際にその精油が入っているかはわからない。予算内で香水を作れとは言わないフレデリックマルだから本当に使っていても不思議はないけれど。
黒檀は読んで字の如く木目細かい美しい黒い肌が特徴で18cmの太さになるまでに20年もかかるようだ。色調も薄いものから濃いものまで色々あって一般に濃い方が価値が高い。産地は主に東南アジアで許可証付きで超高額取り引きされている。現在日本では入手困難、エボニーウッド近縁種の産地のアフリカでは資金源としてギャングに強奪される事件が相次いでいるほどだ。そんなことを言われるとますます黒檀の精油を嗅いでみたくなる。
ずっと香りを嗅いでいるとなんだか肌の中から自分でコントロールできない感情が湧いてきているみたいで変な気分。黒檀そのものは昔から高級木材として世界各地で使われていて、その香り自体が催淫作用を持つものとして知られているわけではないのだが。
このダークでエロティックな香りが上品なアイリスの香りの中から時々滲み出る。自分の中の女性性に向き合えと言われているみたいで複雑な気持ち。かといって嫌いではなくてむしろ好き。
そういうわけで別に隠す必要もないけど自分ひとりの時だけこっそりつけてる。
トップノート: イランイラン、カーネーション、ベルガモット、パリシアンローズウッド、オレンジ
ミドルノート: アルデハイド、バイオレット、ジャスミン、ローズ、リリー、マグノリア
ラストノート: アイリス、サンダルウッド、ムスク、エボニーウッド、バニラ、 ベチバー、アンバー
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