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セルジュ・ルタンス / アイリス シルバーミスト

セルジュ・ルタンス

アイリス シルバーミスト

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

6購入品

2022/10/15 13:22:32

「うわ、めんどくせえ…」そう思う瞬間は誰しもあるだろう。自分なんか毎日だ。口にしたら終わりだと思うから言葉にこそ出さないけれど、しょっちゅういろんな「めんどくせー」が心をよぎる。

意図せず振られた仕事、偏屈な上司の果てしない説教、ママ友たちの終わらない愚痴…。「ああもう!そんなんどうでもいいわ、時間のムダ!」ついそう叫びたくなるような面倒くさいことや人が、世間にははびこっている。しかもそのほとんどにこちらは「笑顔で応対」しなければならない。そりゃストレスもたまるわけだ。

そんな「にこにこぷん!」なあなたに超絶おすすめの香水がある。セルジュ・ルタンスのアイリス・シルバーミストだ。この香水は、自称(笑)「香水の帝王」ことルカ・トゥリンが「想像を絶する不吉なアイリス」と珍しくイカしたキャッチコピーを捧げたうえ、最高評価を下していることで一躍話題となった香水。ではなぜこの香水が「めんどくせー」と思ったときにおすすめなのか?そこには3つの理由がある。

1つめ。この香水は「とてつもなく面倒な手間と膨大な時間を費やして、ほんのわずかしかとれない香料アイリス」の香りをどストライクで嗅げる香水であること。これがアイリス香。

2つめ。この香水は「他のアイリス香水がかすむような究極のアイリス香水を創ってくれ」というルタンスの超絶面倒くさい要望で生まれた香水であること。調香師、涙目。

3つめ。このアイリス・シルバーミスト。手に入れたいと思っても、そう簡単に手に入らないこと。なぜならパリのルタンス本店にしかないから。ルタンスの釣り鐘ボトル75ml。個人輸入で購入可能。面倒だけど。

つまり、アイリスシルバーミストこそ「面倒づくし」「面倒三昧」の香水だからだ。

香料を採取できるまで6年以上かかって大変!しかも収量は原料100sからわずか2gしか取れない!なのにそんな高価な香料をかき集めて試作したのにルタンスは「だめだ!まだだ!もっとだ!」と言って調香師に面倒な注文をつけ続け、最後は調香師も半分「あーもうあいつ面倒くせー!」とヤケ気味になってあれもこれもとぶちこんだらOKが出る始末。しかも日本で売ってないだと?「ケッ!また買えない香水の紹介かよ!ヴォケ」という生ぬるい叫びが聞こえてきそう。はいそのとおり。でも全く買えないわけじゃない。現に自分もずっと探して探してタイミングよく30mlボトル2本入りセットをネットで購入できた経験あり。そりゃ確かにこの香水は面倒くさいよ、香りも購入も。

でも面倒くさいからこそ それを乗り越えたときの気分て 格別なんじゃないか?

アイリスシルバーミストを肌にのせる。その瞬間、まず立ち上るのはうす紫のスミレ色の煙と白い粉。土くさくて根菜っぽい匂い。けれど乾いていて小麦粉を盛大に取っ散らかしたような感じも強い。とっつきにくいコナコナ地獄。ところが

2分後にはキリキリホットスパイシーな辛みがブワー広がってくる。これはクローブだ!とすぐわかる香り。クローブを感じる度に自分が思い出すのは、若い頃に吸っていたインドネシアのクローブ入りタバコ「ガラム」。このクローブのスパイシー甘シビレな香りが、もったり小麦粉ライクなアイリス香をグッとひきしめて展開するようになるとミドル。だんだんスパイシーは強くなり、分単位で白いアイリス香とせめぎ合うようになる。

つけて20分。クローブのスパイシーがうすれてくると、極上のパウダリーがなめらかに降り注いでくる。キラキラと明滅する銀のパウダリー。ほんのり甘味とキレのある酸味があってメタリックなアイリスに感じられる。幾重にも重なったアイリスのハーモニーが天上の音楽のように降り注いでくる。この瞬間、心にくぐもっていたスパイシーな怒りやわだかまりが、スッと空へ吸い込まれていく。

めんどくせーな めんどくせーよ あーでも この香りスッとする なんかスッキリする

気付くと、柔らかな白い香りに包まれている。そのほの甘パウダリーがふわふわ空へと舞い上がっていく。ほんのわずかアニマリックも。きっと天使の羽根に匂いがあるなら、こんな白いパウダリーだろうなと思う。

この極上の白い香りは、真っ暗な地中から生まれた。土の匂いと草の根の青臭さとをはらんで、6年以上もの歳月を費やし、ふわりと宙を舞う白い羽になった。ギリシャ神話で、ゼウスに愛されたアイリスは、天と地の間に虹の橋をかけた神の使い。そして彼女に振りかけられた神の酒は地上に落ち、アイリスの花を咲かせたという。

天空から白いミストが降り注ぐ。どこからか天使たちのざわめきが聞こえる。やがてこの霧の彼方に、天地を結ぶ虹の橋がかかるだろう。アイリス・シルバーミストの空の向こうに。

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FUEGUIA1833 / ムスカラ カカオ

FUEGUIA1833

ムスカラ カカオ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2021/9/4 02:06:22

「チョコレートの匂いがする香水」というカテゴリがある。そんなキーワードで検索すると、まず必ずと言っていいほど出てくるのが、モンタルのチョコレートグリーディー。こちらはミルクチョコウェハースみたいな香りとも言われるが、それ以上にガツンとビターなチョコレートの香りを感じたい場合は、フエギア1833のムスカラカカオがおすすめだ。

フエギア1833は、もともと南米パタゴニアの自然や歴史、文化へのリスペクトから生まれた香水ブランド。瞬く間に100種類を超える香水作品をリリースし、人気を博している。

中でもフェロモンと類似した分子構造をもつ「香りのない分子」を採用したというムスカラシリーズは、一人一人の肌本来の匂い分子を吸着することで揮発を促し、その人の肌の香りを引き立てるというアナウンスで注目されている。ほんのりウッディに香る人もいれば、柔らかなフローラル系の香りを醸し出す方もいるという。ちなみに自分の場合ムスカラはややくすんだウッディになる←昭和枯れすすき

そのムスカラに選りすぐりのカカオ香料をプラスした作品、それがムスカラカカオだ。かつては限定品であり、一部のフエギア沼な方がこぞって購入したレアな一品だったが、現在は通常ラインとして販売されている。人気があると見るやどんどん売り方を変えていくテンポの速さも、このブランドの特徴といっていいだろう。基本、攻めは強めだ。

2019年2月にリリースされた当時は、800sのカカオ豆からわずか1sしか採取できない貴重なカカオ香料を用いたこと、エクアドル産とメキシコ産のカカオにこだわってブレンドしたことなどで話題を呼んだ。

では、巷でビターチョコレートの香りと言われるムスカラカカオ、一体どんな香りなのか?

ムスカラカカオをプッシュする。ジュース色がロットを経るごとに濃くなっているように思うのは気のせいか。肌にのせるとその瞬間、ダークラムの冷たく芳醇な洋酒香が立ち上る。このへんショコアトルを思わせるイントロ。すぐさま、鼻にキュンとくるほどロースティーでドライなカカオの香りが立ち上がってくる。これは思いきり天然のカカオの香りだ。チョコレートというよりビターカカオ。ミルクのまろやかさも砂糖のカラメル香もない。ギリギリ苦い。発酵させ、丁寧にローストし続けたカカオ豆の黒く焦げた香り。

このカカオブレンドの香りには、幾つか特徴がある。まずは苦みの中にもフローラルなふくよかさが感じられる点だ。これは明治製菓の「産地別カカオで作ったチョコレートの風味」分析データによると、エクアドル産のカカオの特徴だ。また、高音部でコーヒーにも似た酸味と強い苦みが出ている。このあたりは、同ブランドの「チョコレート効果cacao 86%」のようなカカオ成分が高いチョコレートの香りに近いものがある。むろん本物のチョコやココアと比べると、ギリギリとビターで、大人向けなカカオ。これは本当にパワフルな苦みと渋みをもった黒いカカオの香水だ。

賦香率は高めで、付けてからゆうに7〜8時間は香りが続く。ムスカラシリーズは厳選した単一香料をムスカラと合わせるので、展開はシングルノートだ。したがって調香じたいはシンプル。だから次々に作品を出せるのだろう。調香技術よりも素材じたいのよさで勝負。フエギアの作品には全体的にそんな印象がある。

ただ

それにしても値段は高すぎないか?

このムスカラカカオ、100mlボトルを買うには68200円必要だ。なぜ50mlをやめたのだろう?むしろ10mlを出してほしいくらいなのに、と庶民はカカオ高配合のチョコをかじりながら思う。さすがに86%は苦い。ムスカラカカオの価格を思うと、つい心も苦みばしる。

口直しとばかりに少し甘いチョコレートも口に放り込んだ。お、エクアドル産のカカオ豆を使ってる明治の「ALMOND 香るカカオ」は酸味の感じがムスカラカカオに近いな。甘いし、アーモンドも香ばしい。対して「チョコレート効果72%」の方は、苦みは強いもののミルクの香りが少しあって、これはムスカラカカオにキロンボをのせた感じだな、などなど…。

いろいろなチョコレートの味と香りを比べながら、紀元前から人々の食を支えてきたカカオ豆に思いをはせる。「テオブロマ(神の食物)」と呼ばれ、珍重されてきたカカオ。その豊かな香りと味は、いつの時代も人々を魅了してきた。

気温が下がってくると、不意に思いっきりチョコレートの香りが恋しくなることがある。そんなときはカロリーを気にしながら我慢するよりも、ムスカラカカオを身体中にプッシュしてみるのも一興かもしれない。

黒くて 苦くて 心地いい。 神のカカオの香りに包まれて。

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ゲラン / イニシアル

ゲランゲランからのお知らせがあります

イニシアル

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:125ml・36,960円 (生産終了)発売日:2020/11/4

5購入品

2021/5/29 09:42:57

「お姉ちゃん、香水変えた?」

そう喉元まで出かかった。ふと、口に出してはいけない気がして、私は上目遣いにチラリと叔母の顔をうかがい、紅茶を飲んでまたマスクをした。「お姉ちゃん」と呼んではいるものの、実際は母の妹。30代半ばにしてはとても若く見える。

久しぶりに会った叔母は、落ち着いた雰囲気に見えた。長かった髪もショートボブにして、ベージュのトップスにデニムスカート。ナチュラルで大人フェミニンな感じ。ついこの間までは原色多め、派手なコーデ大好きな感じだった。ネイルだってラメやグラデ入れてたのに。

だからこそ。気になって仕方なかった。マスクを外すまで気付かなかったけれど、お姉ちゃんが、ずっと愛用してたシャリマー以外の香水をつけるなんて。この香り、絶対違う。

もしかして 結婚でもするのかな

何となくそんな気がした。お姉ちゃんは独身で、今までいろんな男の人と付き合ってきたけど、髪も洋服の好みも全然変わらなかった。なのに、こんなにスッキリサッパリ変身しちゃって、おまけに別の香水つけてる。これはきっと…。そう思っていたときだ。叔母が私に向かって言った。

「そうそう。今日はさ、ユミにこれ持ってきたんだ。はい、これ。」
「え?…アトマイザー?これ香水?」
「そ。あんた香水好きだったじゃない。これ、あたしが今使ってるゲランのイニシアルっていう香水。ユミももう大学生でしょ。そのうちこういうのも使うかもしれないなって。だからあげる。」
「あ、ありがとう。」

手渡されたアトマイザーのスプレー口。おそるおそる嗅いでみた。何となくシャリマーのような薬っぽい感じもあるけど、全然違った。どこかパウダリーで、落ち着いた香りがした。

「それでね、今日姉さん家に来たのはさ、実は報告があってさ…」

予感は的中した。お姉ちゃんは母に向かって、近々結婚することになると思う、と切り出した。ドキドキした。私はしどけなく動くお姉ちゃんの指先を見ていた。シックなピンクベージュに抑えたマニキュアの色。それは、私の知っている自由奔放なお姉ちゃんの手じゃないような気がした。

「じゃあ、またね。2人とも結婚式、絶対来てよ!待ってるからね。」

叔母の背中を見送った後、どこか置き去りにされたような気持ちで部屋に戻った。ベッドに寝ころんで、ゲランのイニシアルのことを何となく調べてみた。

2020年春発売。日本では伊勢丹サロンドパルファムでお目見え。125mlビーボトルで36960円。ひえー高い!あーこれ、セットでついてたアトマイザーなんだ。2011年に出たシャリマーパルファムイニシアルの復刻版。そっか。シャリマーのシリーズ物なんだ。調香は5代目調香師ティエリー・ワッサー。彼いわく自信作。シャリマー系ではヒットしたものの、賛否両論多かった香水。あー「これはシャリマーじゃない」とか何とかね。それ、わかる気がする。

おそるおそるアトマイザーからイニシアルを手首に吹き付けてみた。その瞬間、レモンやベルガモットの香りが華やかに広がった。

あ!シャリマーだ。これ、シャリマーだ。そう思った。

1分もせず、下から暗いパウダリーな香りがしてきた。ん?このへん違う。お姉ちゃんのシャリマーじゃない。きっとアイリスが強いんだ。それに煮詰めたカラメルの甘苦い匂いがする。最初暗いけど、だんだん白いパウダリックになってくる。それにバラの香りも重なってくる感じ?すごい。複雑。なんか大人の女性の香り。落ち着いてる。最初がシャリマーなのに、すごくシック。樹脂の香りもしてダークパウダリックになる感じ。まるでスーツの女性がピンと背筋を立ててるような…。そっか。お姉ちゃんの相手ってきっとこの香りが好きなんだ。たぶんその人、スーツが似合って、知的で優しい人。お姉ちゃんをあんな風に変えるなんてすごい…。

イニシアルの香りに包まれながら、叔母との思い出を反すうしていた。華やかで朗らかで、自分の好きな物にどん欲で、でも常に相手への心遣いを忘れない繊細な人。そっか。お姉ちゃん、結婚するんだね…。よかった。

いつの間にかラストのホワイトムスクに変わり始めていた。アイリスのパウダリックと、ほんの少しのヴァニラ&アンバーの切なさを、ソーピーな白いヴェールがまとめていた。イニシアルのほの甘いしっとり幸福な香りに寄り添いながら、しばし窓の外を見上げていた。夏に向かう空が、お姉ちゃんの結婚を祝福するかのようにまばゆく光り輝いていた。


お姉ちゃんが香水を変えた。それは私にとっては大きな事件。イニシアルは姓名の最初の1文字。今日、お姉ちゃんはそれを教えにきてくれた。

「ユミ。あたしね、苗字のイニシャル、変わるんだよ。」

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ギ・ラロッシュ(海外) / フィジー

ギ・ラロッシュ(海外)

フィジー

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2022/5/14 06:11:43

「フィジーっていう香水をつけるとモテるんだって。」

今も忘れない。今から40年前。俺は16才だった。何にも増して「モテ」という言葉に敏感な青いガキだった。ちまたでは「青い珊瑚礁」で大ブレイクした松田聖子さんのクルクル巻髪をした女性たちがそこら中にあふれかえり「このブリッ子が!」と野次られながらも、その実したたかに生きていた。

おう、昭和だよ。そらもう、めっちゃ濃い昭和だったよ。

髪を赤くして、ツンツンおっ立てて、野良犬パンクスのくせにちょっとチェッカーズのフミヤ君の前髪意識して垂らして、バンドやってライブハウスに出入りして、喫茶店で仲間と落ち合って悪いことばっかやって。そらもう全部「モテ」たかったからだろうよ。認めるよ。

そんなとき、女子高生の会話を聞いたんだ。「フィジーって香水つけるとモテる」って。そら気になるさ。モテたかったもん。失恋して1年グダグダ荒れてたもん。気になるさ。あの娘を振り向かせられる?そんなこと毎日考えて、勉強もしねえで窓の外ばかり見てたもん。

フィジー。名前もグッときたよ。南太平洋の諸島。青い空、どこまでも続くエメラルドグリーンの海、白い砂浜。揺れるパームツリーの木陰で、優雅に過ごすひととき…。そんなステレオタイプな「南海の楽園」ムードにみんな憧れてたから、どストライクな名前だった。ちょうど大滝詠一さんの「君は天然色」とか「カナリア諸島にて」とかが大ヒットしてて、どこか遠くの南太平洋の島とか高跳びしてさ、優雅に過ごす。そういうバカンスってのがブームだったんだよ。ハワイとかグアムとかめっちゃ人気で、日本人が海外に出かけ始めてた。そんな時期だったから。

で。フィジー買ったよ。買うさ。青くさい飢えた野良犬だから。車も金も地位も、何一つ男の武器をもっちゃいない青くさいガキなんか、そんな万能薬みたいな魔法のアイテムがあると聞いたらイチコロなんだよ。イチコロ。

初めてつけたフィジーの香り。今もはっきり覚えてる。

トップ。パーンと広がる青い草の香り、でもそこにしっとりした低い花の香りが寄り添ってた。今嗅ぐとはっきり分かる。ヒヤシンスノート。強くてしっかりしたブルーな開幕。それがシャネルN°5っぽい透明なアルデヒドで思いきり拡散される。なんていうか、アルデヒドって油絵の絵の具を溶かす「溶き油」みたいな感じ。香料どうしを上手くミックスさせて香りを拡散するような。そんな脂っぽい香りのアルデヒドの下から、ヒヤシンスともう少しグリーンなガルバナムが出てくる。アルデハイディックで、グリーンで、冷たく青いローラル。

だけど

すぐさま、香りの奥からパワフルなムスクの香りが押してくるんだな。パウダリーが7、ソーピーが3くらいの割合で。アルデハイドの効果でムスクも浮き上がってくる。なんか女性の色香を感じる複雑なトップ。派生としてはN°5系統とすぐわかる。

5分もするとアルデハイドは消えて、わずかなグリーンの影から花々が咲き乱れてくる。ヒヤシンス、イランイラン、ジャスミン、そしてほんのりローズ。ジャスミンとイランイランの妖艶さが強く出てくる印象。下からはパウダリーでほんのり蜜の香りも漂ってきて、もう昭和用語で言ったらこの一言に尽きる。

色気ムンムン! ←死語な

このグリーンフローラル&エキゾティックなミドルが3時間ほど続く。意外にスッキリ消えていくのはクラシカルなオードトワレの特徴。トップからガツンとフローラルをアピールするけど、ラストは意外に清潔感あるパウダリー&クリーミーなムスクで終息。

久しぶり。ほんと久しぶりにフィジーをつけたら、40年前の自分が蘇ってしまって、やたら堕ちた。あの頃の空気感、日本という国がどんどん経済成長して、日々ビルが建ち並び、人と街が流行を追いかけて活気づいていた頃を思い出した。そして

結論。フィジーをつけても自分はモテなかったな。がっかりだよ。(←女性用香水だぞ)

コンテンツの少ない時代に生まれた。テレビで情報が伝わると、一夜にして大流行し、みんなが真似する昭和に育った。みんな同じ歌を口ずさみ、髪型も同じ、そして「この香水が人気!」と聞けば、みんながそれに飛びついた。フィジーはそんな昭和に爆発的に売れた香水。誕生は1966年。奇しくも自分と同い年だ。そして今なお世界中で愛されている香り。50mlで3500円ほど。安いよね。でも昔はこれが当たり前だった。クラシカルだけど、とてもバランスがよくて、気分をあげてくれる香り。これをつけて、いつか南海の楽園とやらに行ってみたいと、憧れを募らせた思い出の香り。

「フィジーをつけるとモテるんだって。」

あの声、今も覚えてる。そりゃもう、見事に昭和だったよ。

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ペンハリガン / ラバンデュラ オードパルファム

ペンハリガン

ラバンデュラ オードパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・23,650円発売日:2007/1/2

5購入品

2021/6/19 00:09:12

ラバンデュラ。いい名前だ。ラベンダーを意味する言葉ラバンデュラは、中世の伯爵がハイカラーシャツに合わせるクロスタイのごとき紫リボンをまとった、凛々しい女性用ラベンダー香水だ。さながら男装の麗人。

そんなラバンデュラが2020年夏にどうやら廃番になったようだ。は?なんで?ペンハリガン、なんでそういうことたびたびするの?聞いた瞬間、「?」が飛びまくった。ラベンダー香水って言ったら昔から英国紳士御用達香料でしょう。英国つったらイングリッシュラベンダーの宝庫なはずなのに。

ラバンデュラのリリースは2002年。日本では未発売だったものの、ネット経由でいつでも買えた香水の1つだった。メンズ用香水によく用いられてきたラベンダーの香りを女性向けに使いやすくした稀少な作品。全く、名前もかっこいいのになぜ廃番にしたのだろう。(←やけにこだわるな)

ネット上では、EDP100mlで1万5千円ほどしていたラバンデュラだが、気付けば大幅ディスカウント。そしてすでに公式サイトからその名は消え、世界的にも在庫が少なくなってきているよう。探せばまだネットで在庫を見つけることはできそうだが、日に日に希少になってきているラバンデュラ。では、いったいどんな香りなのか?

ラバンデュラをスプレーする。その瞬間、本当に天然のラベンダーを摘んで鼻の近くに持ってきたような、すばらしいラベンダーの香りに包まれる。シャープでほの暗くて、カンファー様の清涼感があって、花のこんもりクリーミー感もある。このトップのラベンダーノートはとてもいい。

世にラベンダー精油、ラベンダー香水、あまたあれど、これほどスッキリしていて同時にフローラル感のあるラベンダーの紫な香りはなかなかないように思う。たいていはグリーン感が強すぎたり、青臭かったり、あるいは他の香料を引き出すためのアクセントっぽい使われ方だったりして、自分は今まであまりラベンダーは好きじゃなかった。だがこれは違う。とても優雅で凛としていて、怜悧な美しさを醸し出すすばらしいラベンダートップだと思う。

ちなみに、自称ラベンダー香水偏愛家の「世界香水ガイド」のルカ・トゥリンは、このラバンデュラを思いきりたたいていたけど、あの方じたいあまりにストライクゾーンが狭い人でもあるから、この作品に対する彼の評価は自分的にはスルー。ラベンダー香水がそんなに好きでなかった自分が「これはいいな」と感じたことが全てだと思う。そう。感じ方は100人いれば100人違う。

ただ。

天然ラベンダーっぽい香りは、付けてせいぜい20分で終了という感じ。そこからは急速に色あせていく印象はある。もしかしたらこのミドルの弱さが、ルカ的に気に入らない点だったかも知れない。トップのラベンダーにパンチとワイルドさがある分、肝心のミドルでは、香りが急にうすれたように感じてしまうかもしれない。

それでも、周囲にはきちんとラベンダーが香っている。

ラバンデュラはミドルになると、ほんのり甘さが出て、マイルドかつクリーミーなフローラル感を伴ったラベンダーに変化する。色で言うと、紫に白が混じってパステルカラーになったような雰囲気だ。付けてる自分は気付きにくいものの、グリーンな感じとジャスミンのふんわり感が次第に感じられてくるので、構成的にスズランなのだろう。このクリーミーパープルな香りは、冷たい清涼感があって気持ちをリラックスさせてくれる。そんなミドルが3時間ほど続いてドライダウン。持続時間はEDPにしては短めだ。

まとめると、トップが紫色の天然ラベンダー。ミドルはスズランのグリーンとふんわりフローラルが混じったクリーミーパープル香、ラストはそこにトンカとソーピーな甘さが重なって消えてゆく香水。全体的に、カンファーのクールな感じが強いラベンダーに優しいジャスミンを合わせて、ハーブをほんのりきかせたようなバランスに仕上がっている。このバランスが絶妙。時折シナモンやペッパーのスパイスが感じられる点も、キリッとして清々しい。

夏に向かう季節。気温が高くなって湿度がムンと上がってきたら、こういう清涼感のあるアロマティックな香水がとてもいい。ラバンデュラは、天然のラベンダー香をトップに配置しながら、次第にフローラルに変わっていく展開の優しい香りだ。ふだん付けはもちろん、寝香水にすると、ラベンダーの持つ入眠・安眠効果も感じられて、アロマテラピー的にも使える香水だ。

ラバンデュラの夜。ベッドで瞳を閉じる。吸い込まれそうな青空の下、どこまでも続く広大なラベンダー畑が見える。その紫色の絨毯が、爽やかな初夏の風に揺れる。そのとき、紫煙のごとき芳香が夏空に舞い上がる。

天と地の間。一千億のラバンデュラ。

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イズーさん
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プロフィール
  • 年齢・・・44歳
  • 肌質・・・混合肌
  • 髪質・・・硬い
  • 髪量・・・多い
  • 星座・・・天秤座
  • 血液型・・・AB型
趣味
  • ショッピング
  • 映画鑑賞
  • 食べ歩き
  • 読書
  • ファッション

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自己紹介

はじめまして。 いつも参考にさせていただいてます。 子供のころ、一番最初に興味を持った化粧品が香水でした。以来、色々な香水を試してきましたが、本当… 続きをみる

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