2021/6/11 22:36:45
シャマードプールオムは元々は1999年に本家シャマードとペアで発売された限定品。後にビーボトルのシリーズ(Les Parisiennes)に組み込まれ、現在では木枠に囲まれたメンズエクスクルーシヴのひとつとして販売されている。調香師はfragranticaには記載がなかったが、時期的に四代目かマチルド・ローラン(あるいは両方)だろう。本家シャマードのローンチは1969年だから、返事までに30年かかったことになる。いったいどんな思いを香りにしたのだろうか?
トップはゲランらしいベルガモットにスパイス。スパイスはブラックペッパーとナツメグのようだが、ガリガリと粗挽きでガツンとスパイシー!というより、サラサラと細挽きで繊細、鼻の上をくすぐるようなイメージだ。
本家シャマードのミドルはヒヤシンスをメインに、さまざまなフローラルが入れ替わり立ち替わり非常に豪奢で煌びやかだが、このシャマードプールオムは違う。主役を張っているのは本家と同じヒヤシンスのグリーンフローラル。そこに寄り添うのはヴァイオレットの冷たい青さ。ヒヤシンスの甘さをみずみずしく生き生きと仕立てている。ここまでで約二時間ほど。
ドライダウンは静かなベチバーに若干のレザー調で、しっとりとあまり主張せずにフェードアウト。ドライダウンまでは四、五時間ほどだ。
オリジナルのシャマードもプールオムも同じくヒヤシンスをメインのフローラルに据えたフレグランス。前者は名前に相応しく様々なフローラルノートが表現する情熱に溢れたまさに「熱い恋に降伏するような」香りだが、後者はヴァイオレットを合わせることで、ヒヤシンスそのもののみずみずしさを強調した素朴で落ち着いた香りに感じる。
本家シャマードは濃度違いとしてP、EDP(PDT)、EDTと存在したが、プールオムはEDTのみ。燃えあがるような恋の返事としては、ちょっぴりシャイでかわいい香りだと思う。一応メンズフレグランスだけど。
ヒヤシンスの花言葉は、赤色なら「嫉妬」、青色なら「変わらぬ愛」というように、色によって違うらしい。
本家シャマードのヒヤシンスが赤色なら、プールオムは青色だと思う。嫉妬するほどの恋のオリジナルと、不変の愛のプールオム。
赤と青を混ぜると紫色になる。
紫色のヒヤシンスの花言葉は「初恋のひたむきさ」。
30年越しの返事は、ハッピーエンドになった。
トップ:ペッパー、ベルガモット
ミドル:ヒヤシンス、バイオレット、グリーンノート、ナツメグ
ベース:ベチバー、レザー、ウッディノート
(fragranticaより)
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- 55歳
- 乾燥肌
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2021/6/5 12:36:14
”ライラックってどんな花 時々耳にするけど どんな花か知らない。
花なんて昔からどうでもよかったのに でもライラックってどんな花だろう
たぶん赤くて 5cmくらいの冬に咲く花 そんなに人気はない花だと思うけど”
ブランキー・ジェット・シティの「ライラック」という歌の歌詞。パルルモア・ドゥ・パルファムのトータリーホワイトという香水をつけていると、この歌詞が自然に思い浮かぶ。
真冬。コートを着込んで襟を立てて、ポケットに手を突っ込んで、ベンジーは友達と歩いていろんな話をしてる。でも多分、話をしてるのは友達の方。それも一方的に。切れ目なく独り言のように。楽しそうに。だからこの”ライラックってどんな花”のところもその友達がつぶやいた言葉。真っ白な息と一緒に。ベンジーはそれを笑って聞いてる。だってその友達はちょっと変わってるけど「きれいな心」を持ってるから。
ライラックは冬の花じゃなくて春の花。紫やピンク、白などの花色はあるけど赤はない。そんなことは歌詞を書いてもリリースする前に調べればわかること。なのにその歌詞であえて発表したのは、少年のもつ独特の感覚や感性をリアルに伝えたかったからだろう。
世界のことをよく知らなくて、いつかどこかで銃を撃ってみたいとか思ってて、なのに訳知り顔の大人達の後頭部に、指で作った鉄砲で”Bang!!"とやるくらいしかできなくて。そんな青くさくて残酷で、だけどピュアな少年の気持ち。彼の歌詞にはそれが綴られている。
ベンジャミン・アルメラックが、名調香師である父ミシェル・アルメラックと共に作ったトータリーホワイトも、どこかそんな矛盾に満ちている。トータリーホワイトは、うす紫色の冷たいライラックの香りがするのに、トータリーホワイト(完全な白)と名付けられている香水。2016年発売。50mlで15400円。
トータリーホワイトをプッシュする。付けた瞬間、ツンとしたミュゲのグリーンな感じと、シャープで清涼感ある紫のラベンダーの感じが冷たく広がってくる。そこにキンモクセイ風のプラスティカルな感じと、ミモザのパウダリックもひとさじ加わって、不思議なうす紫色の香りに感じられてくる。
5分ほどすると、ラベンダー様の紫の清涼感は若干うすらいでくる。そして沈丁花のような甘くしっとり低い香りが広がってくる。とても落ち着いた低い甘さだ。ヒヤシンスの青く低い香りに甘さを足した、といった感じがしなくもない。そのせいか、全体に紫系の印象がとても強い。それは香りじたいがとても涼しげに感じられるせいかもしれない。
トータリーホワイトは、この涼しげで甘さのあるライラックノートを基調としたまま減衰していく。ラストはホワイトムスクのソーピーな温かみも感じるものの、それがオーバードーズされたランヴァンのエクラほどではない。人工的な香りが強いエクラよりもずっとライラックの花だ。ふんわり自然なうす紫のライラックの香りを呈しつつ、6〜8時間ほどでドライダウン。
ラベンダーの清涼感(紫)とライラック(うす紫)の甘さ。そこにヒヤシンス(青や紫)のグリーンを感じる香り。これではトータリーホワイトならぬ、トータリーパープルでは?と思うほどに。
そう言えば。紫やピンク系の花色が多いライラックには白いライラックの言い伝えがある。昔、貴族と恋に落ちた娘が、身分差を悲観して亡くなり、そこに手向けられた紫のライラックが一夜にして白く変わったという伝説。そこからライラックは「恋の花」と呼ばれ、フランスでは愛する者へ贈る花束として一般的だという。白いライラックは特に人気があるようだ。
この香水は、調香師ミシェル・アルメラックの婦人が、故郷ノルマンディーの庭に咲いていたライラックを懐かしみ、その香りを再現してほしいという願いから創られたという。同時に、ブランド創業者でもある息子ベンジャミンの大切な思い出の場所、パリのモンソー公園に花々があふれる6月のイメージも重ねている。ジャスミンやミュゲ、ユリなど、白い花の香料を多用して126回も試作・調整を重ねてできた渾身の香り。それがトータリーホワイトという香水だ。
”近くで見ると 赤がオレンジに見えるところがあって 小さく揺れてる
おもいっきり息を吸い込んでみなよ 乾いた唇を閉じたまま
冷たい風と一緒に 花の匂いが体中に広がってゆくのがわかるだろう”
「ライラック」の歌。ベンジーの声が高音の金管楽器のように流れてゆく。ねえ、鼻いっぱいに嗅いでごらん。ライラックの香りを。そいつは心の中まで浸食してから、白い息になって出るんだ。
”明るい光の中で 吐く息は真っ白”
トータリーホワイト。
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2021/6/4 12:48:42
ジバンシイの新しい高級ライン、「ラ コレクション パルティキュリエ」ド ジバンシイ。厳選された香料を用いて、妥協を許さないオートクチュールの精神を表現したプレミアムフレグランスシリーズ…
と、ファッションフレグランスのちょっといいシリーズならだいたいそう言うよね、みたいな売り文句を掲げて、日本では新宿伊勢丹のみでの取り扱いでスタートした(2021年5月に阪急百貨店うめだ本店でも販売開始)。この「オワゾーラール」はスリランカ産ブラックペッパーとトベラ(ピットスポルムフラワー)をメインに置いたライトフローラル調のフレグランス。
トップに感じるブラックペッパーの香りはかなり細挽きのスタイリッシュで小洒落た印象。ムエットだとわりと顕著だが、肌に付けるとすぐに馴染む。
ペッパーが一歩引くと、もうひとつのメイン、ピットスポルムフラワーが前に出てくる。あまり聞きなれない花なので少し調べてみたところ、メインの芳香成分はベンジルアセテートらしい(ジャスミンの芳香成分のひとつ)。ややグリーンっぽさのあるホワイトフラワー香、個人的には、ジャスミン+オレンジブロッサム+ミュゲの合いの子に感じた。このすっきりしたホワイトフラワーの香りがだいたい二時間ほど続く。
香りの構成には若干のウッディノートが記載されているようだが、ほぼ感じられない。フローラルの残香に、わずかにバニラの甘さが加わわってフェードアウト。香り持ちはトータルで三、四時間ほど。
このフレグランスは単体でも使えるが、ベースとなる「アコールパルティキュリエ」を使った上から使用するという前提上、ファインフレグランスらしさは控えめ。よく言えば親しみやすく、悪く言えば物足りない。レイヤード使用前提なら最初からアンブロクサンとパチュリ混ぜといてくれよ、と思わなくもない。
ノート:トベラ、スリランカ産ブラックペッパー、バージニア産シダー、ガイアックウッド、バニラアブソリュート
調香師は、オリヴィエ・クレスプ。
(parfumoより)
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レ ゼクスクルジフ ジャージー オードゥ トワレット(ヴァポリザター)
容量・税込価格:200ml・36,300円発売日:2011/10/7
2021/6/2 21:37:27
理想の香りを求めて様々なフレグランスを彷徨っているけども、この香りには勝てない気がする。
ラベンダーにバニラとムスクが、と聞くと少ししつこそうなイメージだけど、とてもサラッとしていて清い。優しくて澄みきっている。
ラベンダーが入っているけどメンズっぽさが出ない、理想の展開です。
イメージは、品があるけど色気を感じさせない立ち振る舞いでいつも爽やかでいるけど、実はすごい色気がある聡明な女性って感じです。
纏うと優しい気持ちになれるし、高貴さもあって、自分に自信を持たらしてくれる唯一の香水です。
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:125ml・31,680円 / 250ml・45,100円発売日:-
2021/5/28 10:29:26
オーデコロンらしく(といってもボトルの裏にはEDPとの記載)、爽快なシトラスミックスから始まる。レモンとベルガモットの酸味、ジューシーなオレンジ、グレープフルーツの苦味…バランスよく配置されていてとても心地いい。コローニュロワイヤルは、ディオールの専属調香師のフランソワ・ドゥマシーが特に原料を厳選して作った自信作らしい。なんでも、ご本人様も愛用とのこと。
ミドルへに移行すると、オレンジの甘さを残しつつ、ミントの清涼感のあるグリーンにネロリのすっきりしたフローラルに。ネロリや柑橘のみずみずしさが際立ってとてもキレイな香り立ちだ。
ドライダウンは淡いサンダルウッドにムスクで締め。持続は二時間ほど。EDPといってもやっぱりシトラスがメインのコロンのような香りなので、持ちはこんなものだろうと思う。
伝統的なEDCをベースに、ミントの清涼感やネロリのフローラルを足したすっきりした香りは夏場には出番も多くなると思う。
しかし、使っているうちに気づいたのだが、このコローニュロワイヤル、ミドルからラストにかけて、けっこうアクアティックなアコードが強い。ドライダウンに向かうにつれ、それが顕著になっていく。
アクアが入っているからダメ、ということではない(嫌いなものが入っているから低評価、なんてのはナンセンスだと思う)。CaloneやHelionalに代表されるアクアノートは、目立たないように使えばフルーティやフローラルのみずみずしさを演出してくれるのだが、これのアクアは少々悪目立ちしている。隠し味は隠れているからいい。もう少し控え目だったらなぁ…
トップ:ベルガモット、ネロリ、レモン
ミドル:ミント
ベース:ムスク、サンダルウッド
調香師は、フランソワ・ドゥマシー。
(parfumoより)
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