TOP > ★キャプテンD★さんのLikeしたクチコミ(Like件数順)

1330件中 1〜5件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 54歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
トム フォード ビューティ / ビター ピーチ オード パルファム スプレィ

トム フォード ビューティ

ビター ピーチ オード パルファム スプレィ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・15,400円 / 30ml・34,100円 / 50ml・52,250円発売日:2020/10/23 (2023/6/2追加発売)

ショッピングサイトへ

5購入品

2020/12/5 13:35:10

ビターピーチはあざとい。あざとすぎる。その名を「苦い桃」と額面どおりに受け止めてはいけない。これは間違っても「ビターピーチ大好き!ビターピーチ最高!」などと人前で大声で連呼していい言葉ではない。特に英語圏では。

2020年の発売以来「甘くて芳醇な桃の香りの可愛らしい香水」と巷で評判のビターピーチ。特に香水にあまり詳しくない方にも人気が高まっている。それはいい。ただこのネーミングに込められた裏の意味だけは少しかじっておいた方がいい。おトムの桃をかじる前に。

ビターピーチとは、英語で「汗をかいた男性の苦いアスホール」という意味のスラングだ。ということは、そういう行為をも暗喩する。もともとは200年ほど前の中国で、同性愛を「噛まれた桃の喜び」と隠語で表現したことが由来。「噛まれた桃」は英語で”Bitten peach(ビトゥンピーチ)“。”Bitter peach”とはたったひと文字違うだけだ。

さらに拡大解釈すると、ビターピーチには性的なニュアンスが他にも含まれていることに気付く。

“Bit her peach”ビットハーピーチ(ひとくち、彼女の桃を)
“Bite her peach”バイトハーピーチ(彼女のお尻をかじれ)

おトム壊れてるのでは?大丈夫か?と思うほどの言葉遊び。これはもう「攻めてる」というよりイッちゃってるのでは?と思うくらい。エロティックを越えてデンジャラスな狂気がほとばしっている。事実、英語圏では香りじたいよりも「ちょっとこの名前で戸惑う…」的な感想が多いようだ。そういう意味で、日本の婦女子の皆さんにおかれましては、どうか人前で大声で「ビターピーチ最高!最高!」的な連呼は厳に慎んでいただきたいと願う次第。あと間違ってバターピーチって言うのもアウツ。

ということでこのネーミングだけでごはん3杯はいけるんですが、肝心の香りはというと。

オレンジを基調にした半透明ボトルはロストチェリー継承。海外の桃は日本の白桃とは違い、やや固くて酸味が強い黄桃タイプのネクタリン系だ。だからボトルはネクタリン色のオレンジカラーなのだろう。そこから1〜2プッシュ。

ビターピーチを吹き付けてまず最初に感じられるのは、クールな清涼感のあるカルダモンの風だ。その後すぐに、甘くてややスパイシーな桃の香りが広がってくる。わずかにソリッドでキレがあるフルーティーな香りだ。背後にインセンスのお香感もじんわり感じられる。全体にシャープな香りと桃のフルーティーが拮抗しているイメージ。日本の甘々ふんわりジューシーな白桃の香りではない。これはキリッとハンサムなネクタリン香だ。

5分後、甘やかなピーチ香の下から、スッキリグリーンノートと酸味あるプラム系の香り、香ばしいウッディノートが明確になってくるとミドル。グリーンノートはダバナ(ヨモギ系)とラブダナムがイメージクレジットされているものの、はっきり分かる感じではない。プラム系の酸味はとても印象的で、全体の印象を桃より酸味の強いアプリコットに近い香りにしている。さらに、トップで感じたインセンスっぽさがサンダルウッド系であることもわかってくる。これらが1つになって、スパイシーアプリコットフレーバーのように感じられてくるミドル。これが7〜9時間続いてそのままドライダウン。

全体的にシングルノートのように展開し、香りの変化が少ない現代的な香水だと言える。もはや重ね付け前提PBシリーズの1本というより、1つの作品になってきた感がある。トップに吹き抜けるクールなカルダモンの後は、ずっとオレンジ色のアプリコット的な硬い桃の香が続くフルーティーノートがメインだ。ラスト近くで、ジャスミンのふくよかさが感じられることもあるし、サンダルウッドの乾いたお香が強めに出ることもある。

価格は50mlで税込40700円。やや単調な香水の割に値段はかなり高いと思う。ただ、安価なシャンプー等の桃の香りとは違って、確かに香料の層が厚くバランスはよい。それでいて香水っぽい複雑さが少なく、自然なフルーティーを感じるので、女性らしさを引き出す力は高いと思う。おそらくこのキリッとしたネクタリン香を好ましく思う人は、男女問わず多いだろう。

日向に完熟桃が転がっている。それを見て「桃を食べたい」は微笑ましい。だが、好きな人を見つめて「君の桃を食べたい」となると話は違う。トムはその言葉の狭間で笑っている。性別も人種も超えたところで。

ビターピーチは本当にあざとい香りだ。彼はシニカルなメッセージを甘く酸味あるフルーティー香でオブラートのように包みこむ。それは官能的な愛の世界に佇む彼からのオレンジ色のギフト。

トムが偏愛する”Bitch peach(ビッチピーチ)“な香り。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 53歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
トム フォード ビューティ / ロスト チェリー オード パルファム スプレィ

トム フォード ビューティ

ロスト チェリー オード パルファム スプレィ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・15,400円 / 30ml・34,100円 / 50ml・52,250円発売日:2019/2/1 (2023/6/2追加発売)

ショッピングサイトへ

5購入品

2019/7/6 05:54:36

秘密。だれにも言えない秘密。大人が教えてくれなかった事実。大人になるために最も知りたかった事実。

快感。だれにも言えない快感。母のルージュをそっとひいた日の、何かいけないことをしてしているという甘美な記憶。あるいは女性の裸体に初めて硬直した少年の、絶対に親に知られてはいけないと感じた背徳の記憶。触れてはいけないところにさわったやましさ。

トム・フォードのロストチェリーは、そんな香りがする。

桜の香りがするトップは幼い日のノスタルジー。どこまでも甘美でキュートなチェリーシロップの香りが心を鷲掴みにして離さない。離れない。

次第に鼻腔の奥をツンと刺激するシニカルなアーモンドの苦みが訪れてミドル。ピュアなくせにギリギリするほど苦々しい。それは思春期の葛藤をフラッシュバックさせる香り。

ある日突然、胸をときめかせる人が現れたときの戸惑い、高揚感。鏡を見て自分の容姿に落ち込み、その顔をにらみ、変えられない顔に悲観し、せめてと思い髪をいじり、何度も髪を濡らしてはブローした日。ガラスのように壊れやすく、うすっぺらな自我に固執した思春期。青臭くて一人じゃ何もできないくせに大人にもなりきれず、不平不満を周囲にぶちまけ、毒づくことで己のレゾンデートルをわずかに保ち、自分も周囲も大嫌いで、自分の弱さを繕うために他者をあざ笑い、蹴落とし、心の中で全てを否定する。浅はかで脆弱な魂の彷徨。

けれどある日。そんな自分がなぜ生まれて来たのかを知る。どんなふうに命が紡がれてきたのかを知る。思いと肌を重ねることで言葉以上に感じ合えるものがあることを知る日が来る。信じ合えるもの、信じられないものの境界があること、快感と痛み、快楽と苦痛の狭間でスパイラルにのぼりつめる狂気があること、全ての生命の営みの輪の中に自分もいたこと、己の欲望に忠実に体が反応すること、そして心は身体の快楽に勝てないこと。それらを思い知る日が来る。人間の業。

ロストチェリーはそんな香りがする。

幼年期のチェリーの甘さ、思春期のアーモンドビター、そこに絡むシナモンの誘惑に身悶えし、ローストトンカの人肌の匂いに酔いしれてゆく。ラストに感じられるわずかなヴァニラは昨日までの自分との決別。ほろ苦く甘い、もう戻れない白い朝の追憶。

それは通過儀礼。大人になるための痛み。少年少女との決別。小さな世界の喪失。広大な世界への不安。自分の中のエロスに気付く日。異性を誘う自分の秘密の匂いを知る日。しっとりと濡れたシロップの誘惑に、あくなき生と性の悦びをかいま見る日。自分の価値が揺らぐ日。自分の武器に気付く日。

その日を夢見ていたわけではない。その日を待ち望んでいたわけではない。ただある種のノスタルジーと悲しみは、小さな頃からずっと自分の中にあった。父と結ばれたいのに、母と同化したいのに、どこか拒絶された単体として存在しているちっぽけで儚い自分。その理由を知った日。

汚れた血。純潔な血。自分の中の不道徳を知る日。自分の中の清らかさを思う日。それでも唇をきゅっと結んで髪をかき上げて、さも何事もなかったかのように風の中を歩く日。何かを捨てたようで、何かに見捨てられたようで、全てを知った気になって、この感じを知らなかった自分を深い海に沈める日。

すれ違いざま、オヤジどもがなぜ濁った眼で自分をじろじろ見るのか、なぜ電車の中で痴漢されるのか、なぜこのロストチェリーが2〜3時間しかもたないのに3.5万円もするのか、そしてなぜこれまでになく売れているのか。その秘密を知る日。それは性が媚薬だからだ。愛情同様、性に困窮している餓鬼亡者が世界中にあふれているからだ。

こうならなくてもよかった。知らなくても生きられた。けれど知ってしまった。もはや永遠に心を奪われ、性の呪縛に囚われ、甘美な悦びに身悶えし、ときに燃えさかる業火のように嫉妬で相手を焼き尽くす。それは諸悪の根源。心の足かせ。神の手から最も遠い場所にあるダーククリスタル。仮面をつけて微笑み、仮面の下で己の外道を飼いならし、雑踏の中、風を切って歩き始めるために失ったヴァージニティー。SEXは甘く、かぐわしく、どこまでも心をとらえるけれど、その快感と感動は一瞬。あとに残る寂莫とした思い、荒涼とした大地にただ一人残された孤独。それらと向き合うことをたたきつけられ、人は自分の中の獣を知る。それでもまた、自分だけのチェリーを探し求めてこの世界をさすらう。

天使のように甘く、悪魔のように苦々しい。少女のようにほほえましく、遊女のように猥雑に誘う。チェリーボムはかじられた。したたる果汁は大人味のダークブラッド。

その血を煮詰めた背徳の香り、ロストチェリー。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 50歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ゲラン / シャリマー 香水

ゲランゲランからのお知らせがあります

シャリマー 香水

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・48,400円発売日:2002/1/2

ショッピングサイトへ

7購入品リピート

2016/7/2 01:18:34

シャリマー、それは女性用香水の至高の逸品。あらゆる年代の女性の魅力を底上げする香り。
女性の美しさ、高貴さ、甘美さをひきだす琥珀色のヴェール。男性の本能を無意識下で揺さぶり続け、心に刻みつける香り。恍惚の媚薬。

この世には、本当に出会った瞬間、衝撃でのけぞるような香りがある。自分にとって、シャリマーはその1つだった。本当にときどきしかないが、初対面で心を奪われる人がいるように、香りにも心をわしづかみにされる物がある。「何を大げさな」と感じる方は、まだ出会っていないだけかも知れない。かけがえのない人にも、心震わせる香りにも。

だが「彼」は出会った。その人生において、何者にも代えられない運命の女性と。

ムガール帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーン。彼と彼の愛妃、ムムターズ・マハルの物語。シャーはハーレムにいた他の女性には目もくれず、ただひたすらにタージ(ムムターズの愛称)だけを愛し、その間に13人の子をもうけたという。14人目を身ごもったタージが亡くなったとき、シャーの悲しみは天空を裂き、全ての権力と財を注いで、総大理石造りの彼女の霊廟、タージ・マハルを何十年もかけて建設させた。この愛の逸話はつとに有名だ。

もしもこの逸話に感銘を受けたジャック・ゲランが、「タージ・マハル」という名の香水を作っていたなら、それはおそらく、彼の叔父であるエメ・ゲランが作ったジッキーのように、愛する者との別離や深い喪失の色を呈した、もの哀しげなフレグランスになったことだろう。だが、彼はちがった。

ジャック・ゲランは、一途にタージを求め続けたシャーの偏愛とも言うべき姿を、2人が愛を睦み合った庭園の名である「シャリマー(愛の殿堂)」というイメージに凝集した。それは、愛する者を失った悲しみ以上に、深く強く心に刻まれていたであろう2人の歓喜の日々。そんな美しく官能的な日々を彷彿させるあたたかい香りだ。センシュアルではあれど、エロティックにはあらず。

そんなシャリマーのトップは、強烈なハーブと樹脂の辛みとベルガモットが、噴水のように空気中に霧散して開く。まるで、チェリーコークに花々やハーブを入れて煮詰めたような雰囲気だ。そして、確かにジッキーのオープニングを思わせる。シャリマーは、ジッキーのノートにさらに香料を加え、重層的にリファインしていく中で作られたようなので、なるほどと思う。心をわしづかみにする強烈なベルガモットの拡散と、その下から同じ熱量で鼻を刺激してくる薬草や樟脳っぽいスパイシーなオープニング。好き嫌いはあるにしても、ひとかぎで他の香水と全く違う繊細な複雑さ、高級さが感じ取れると思う。けれど、高慢ではない。絶え間なく鼻と脳を刺激し続け、あっという間にとりこにされる。まるで、シャーとタージの衝撃的な出会いのように。

そしてすぐにミドル。炭酸のように拡散していたベルガモットが落ち着いてくると、シャリマーのミドルは、驚くべきことに温度が上昇する。ここがジッキーとの大きな違いだ。もっと甘くかぐわしく昇りつめていく。暗くパウダリーなアイリスと樹脂の甘み、パチュリの苦みが入り混じり、重奏を奏でる。低い太鼓が鳴り、シタールの調べが聞こえる中、松明のオレンジ色の灯りに照らされて、2人の体温がどんどん上昇してゆくイメージ。それは、燃えさかる愛の調べ。誰にも邪魔されない2人の時間。

やがて気がつくと、穏やかなヴァニラとトンカビーンの香りに変わっていることに驚きを覚える。そんなクリーミーな甘さが感じられたらラスト。パルファムなので拡散力は弱めだが、点でつけたときのかぐわしさ、自分の体温や気温、湿度に応じて、さながらオーロラのようにさまざまに変化する香りの揺らぎは、トワレやオード・パルファムの比ではない。そのわずかな変化を楽しむだけで深い安息を得ることができる。それは、オポポナクスの甘い樹脂香と、白っぽくパウダリーに落ち着いたアイリスと、柔らかなヴァニラ。至福のラスト。恋人たちの体温であたたかみを増したシルクを思わせる香り。このラストに包まれて眠りにいざなわれたなら、どんなにか安らぎ、よい夢が見られるだろう、そう思えるようなドライダウン。シャリマーを特別な夜の寝香水にしている方が多いという話も頷ける。それは、2人の穏やかな寝息。白亜のパレスの蒼い夜。

シャリマー、それはゆるぎない愛と官能の泉。こんこんと湧き出る琥珀色の陶酔。一途な愛を現世にとどめつつ、時空を超え、天上での再会を誓って焚きしめられた聖なるバルサムの香り。思い出の庭園の上に広がるインディゴ・ブルーの夜空。星々のまたたきに吸いこまれ、消えていく白い燻煙のドレープ。とろけるような天使のヴァニリック・ゲルリナーデ。

その香り、別格。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 54歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
モルトンブラウン / ミルクムスク オードトワレ

モルトンブラウン

ミルクムスク オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・15,400円発売日:2020/4/30

ショッピングサイトへ

5購入品

2020/9/26 12:07:05

ミルクムスク。これはやられた。この名前を聞いただけで超絶嗅ぎたくなるすばらしいネーミング。もう名前で勝利確定系。閉塞感と孤立感、不安感が強い今の時代に、ミルクのように安らぎを与える香りだろうか?ミルクムスクは世界を救うだろうか?(←そこまで言うか)

ミルクムスク。この単純にして今まで誰も思いつかなかった魅力的な名前の香水をリリースしたのはモルトンブラウン。英国のブランドで、どちらかというとトータルバスケア製品で有名だ。かのエリザベス女王のロイヤルワラント(英国王室御用達認証)を持ち、世界中の名だたる高級ホテルのアメニティにも採用されており、信頼度は抜群だ。

ミルクムスクは2020年4月に発売されたばかりの香水。やや拡散力が強いオードトワレ(EDT)と、付けた場所で香りが続くオードパルファム(EDP)の2種類を同名で展開している。EDTは50mlで税込11000円、EDPは100mlで税込22000円。EDTとEDPは香料の構成も印象も結構異なるので、単に濃度の違いではないことは留意したい。このレビューはEDTの方だ。

では、そんな名前でつかみOKなミルクムスク、実際の香りはどうなのだろうか?

可愛いたまキャップを取ってスプレーする。ほんの一瞬、アルコールの冷たい香りが抜けていくと同時に、ふんわり現れるクリーミーな柔らかい甘さ。何だろう?わからない。その下からは割合スッキリした石鹸のような香りも出ている。よくある白い石鹸の香りのようだが、ツンとしたソーピーさではない。もっと控えめでパウダリーに傾いた香りだ。

柔らかくてクリーミーで、ほんのり甘くてフルーティーな気配もする白い香り。それがミルクムスクEDTのトップだ。ブランドは構成イメージを次のように示している。

トップ:ペアー、ピーチ
ミドル:ソフトムスク、アンブロキシド、ヴァニラ
ベース:ホワイトシダー、トンカビーン

トップにペアーとピーチとあるけれど、どちらの香りも明確ではない。ただ桃のもつ柔らかな風味、洋ナシのみずみずしさあたりは感じ取ることができる。同時にソフトムスクのマイルドな清潔感&白いパウダリー感もトップから感じ取れる要素だと思う。そこに柔らかなヴァニラの白いヴェールがかかっている感じ。この白くてマイルドクリーミーな香りが、しばらく続くミドルになっていく。

トップ〜ミドルで大きな変化はないものの、次第に見えてくる香料がいくつかある。特にミルクノートの部分。その1つは乾いた粉っぽいクマリン、いわゆる杏仁霜の香りだ。それからほんのわずかナッティーなココナッツ香もかいま見える。ただ、ミルクムスクという名の「ミルク」の部分がEDTでは実はそれほど強くなくて、その白いブレンドの下からかなりエアリーでスッキリした風が流れている点が特徴的だ。これは、アンブロクサン等でウォータリーなベースを作っている感じ。

この作品を創った女性調香師マーヤ・レヌは、今回のミルクノートが特別なオリジナルであることをフィルムで語っている。その秘密はおそらく、ミルクノートの下に流れるこのスッキリした水のような香りとの配合にあるのだろう。

「ミルク」を感じさせる香りはこれまでにも多くあった。例えばディメーターのコンデンスミルクやフエギア1833のキロンボなどは、かなり練乳寄りなミルクノート系。これらは濃く煮詰めた甘さが引き立つ感じ。これに対して、ヴァニララスト系の香水は数多くあって、ほぼ2種類に分かれる。一つはヴァニラアイスクリーム系の甘く白い香り、もう一つはローストしたヴァニラビーンズ系の焦げた茶色い香りの系統だ。だが、ミルクムスクのミルクノートは確かにそれらのどれとも違う。

なぜなら、ミルクムスクのミルクは液体で流れているからだ。

これまで「ミルキー」と称されてきた香りは、割にアイスクリームやミルクキャンディを思わせる個体系の香りが多かった気がする。マーヤ・レヌは、そこにウォータリーノートを交えることで、流れる液体イメージのミルクにしたのではないだろうか。

ミルクムスクの香りは、桃でもなく梨でもない。石鹸でもなく海の香りでもない。練乳でもなく牛乳の香りでもない。それらのどこからも等距離にあって、香りの円環の中心でソフトなムスクの毛布にくるまれているピュアな香り。赤ちゃんを包みこむ柔らかなおくるみの匂い。

赤ちゃんの顔にそっと顔を近づける。干し草のようにあったかくて、ちょっと酸っぱいようなミルクの匂いがする。いつまでも嗅いでいたい不思議な香り。そして自分が遠い昔、どこかで味わって忘れかけている大切なものを思い出させてくれる根源的な匂い。

ミルクムスク。それは大人になった貴方に捧ぐ、聖母の愛の香り。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
トム フォード ビューティ / ローズ プリック オード パルファム スプレィ

トム フォード ビューティ

ローズ プリック オード パルファム スプレィ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・49,500円発売日:2020/2/8

ショッピングサイトへ

4購入品

2021/6/12 00:02:03

なぜ誰も本当のことを言わないんだろう?この香水の名の本当の意味を。ローズ・プリック。「バラの刺し傷」?「バラのひと刺し」?違うだろ。プリックは英語のスラングで男性器のことだ。

F・ファビュラス、ロストチェリー(破瓜・童貞喪失)と、突然何を血迷ったかおトムさん、と言わんばかりのスキャンダラスネーミングな作品が続いた後でリリースしたローズプリックが、まんま「貫通するバラの棘」なワケがない。同じ「カンツウ」でも多分、漢字が違う。これは最も過激なネーミングの香水だ。

ローズ・プリック。直訳「バラの男性器」。一方で、かつて日本のゲイカルチャーを支えた「薔薇族」という雑誌名が語源となり、日本のゲイによる作品を欧米で”Bara”と呼んでいることから、うがった見方をすれば「男色のプリック」と訳しても差し支えないはず。自身のセクシャリティを公言しているおトムが、Baraを知らないわけがない。

もっと言うと。

“rose”は薔薇という名詞じゃないかもしれない。もしかしたら”rise”という動詞の過去形?だとすれば、一般的な「昇る」「上がる」といった意味でなく、「そびえ立つ」「増大する」「膨れあがる」の意味を匂わせている可能性も。

ああ。さすがにいかん。もうやめる。

確かにここまで曝露してきただけで、何かいたたまれない感じ。だから誰も言わないのか。どうりで海外サイトの女性達が「この卑猥なネーミングだけは×××!」と言ってるわけだ。

そんな究極の匂わせネーミング香水、ローズプリック。おトムによると「自身の薔薇園で育てている大切な薔薇の香りからインスパイアされた香り」だそうだ。ただそんな言葉も、つい裏読みしてしまいたくなる。そもそも薔薇族という雑誌のネーミングだって、かつて男色が当たり前だったギリシア神話の言葉「薔薇の木の下で男同士が契りを結ぶ」から来ているという。そこまで知ってると、おトムの言うことが全てそっち方面の秘密ワードに聞こえて仕方ない。一体、自身の秘密の薔薇園で、ふだん何を育てているのだろうか(←やめなさい)

ま。たいがいにしとく。やはり香りが大事。ではローズプリックはどんな香りなのか?

マットピンクのボトル。可愛いけどあざとい。海外では「ハローキティの持ち物みたい」とか言われている。そこに黒いラベルと黒いスプレーノズル。何か闇を感じる仕様。そこからプッシュされる霧は、実はとてもローズらしからぬ香りがする。

プッシュしてすぐ。鼻が感じ取るのは、パチュリのスパイシーな黒い香り。ターメリック(ウコン)のマイルドな土っぽい香り、そして鼻にくるペッパーの香りだ。そして、これらのウッディスパイシー・ミックスの裏から、品のよい暗いローズの香りがしみ出してくるといったトップ。黒いスパイス:ピンクのローズ=7:3くらいの比。かなり黒いトップ。ギリギリとパチュリの苦味が主張してくる。かなりだ。

そしてその後も、この黒いスパイシーな香りがメインで展開する。薔薇はそっと後ろで咲いている印象。とてもマニッシュな風合い。ガチで鍛え上げたメンズが、黒光りした上腕二頭筋や大胸筋、シックスパックをこれでもかとパンプアップしているかのような危険な絵柄な感じだ。あるいは、暗闇に咲き乱れる真夜中の薔薇といった印象のストイックブラックな香り。そんなシングル展開のまま、6〜8時間持続してドライダウン。ラストだけほんのりトンカの甘さが出て終焉。

夜の薔薇で思い出すのは、以前トムが「ジャルダン・ノワール(真夜中の庭園)」というシリーズで出していたカフェローズだ。紫ラベルで夜の庭園に咲く花の魔性をテーマにしたやつ。あれは、コーヒーと薔薇の香りを取り合わせた作品だった。カフェローズも暗くて黒い薔薇。どうやらトムは真っ黒い薔薇がお好みのようだ。

トムと夜の庭。そして薔薇。そう言えば、カーネギー賞をとった児童文学作品に「トムは真夜中の庭で」という本があったな。あれはもろジャルダン・ノワールだ。預けられた叔母の家の庭で、真夜中に時空を越えて一人の少女と出会う少年、彼の名もトムだった。その秘密の時間に出逢うたび、2人の時間はどんどんずれていき…、というファンタジックな話だった。

そうか。

きっとトム・フォードは、あの物語の少年のように、今もまだ真夜中の庭で何かを求めてさまよっているのだろう。暗闇で誰の姿も見えないけれど、かぐわしく香るピンクの薔薇の香りを頼りに。そう思ったら何だかローズプリックの香りが、急にせつなく思えてきた。

ローズプリック。それは確かに薔薇の棘に刺された者の香りなのかもしれない。痛くて、愛おしくて、狂おしい桃色の記憶。

あのかぐわしい黒い棘が 今も刺さったまま抜けない

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

1330件中 1〜5件表示

★キャプテンD★さん
★キャプテンD★さん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済

★キャプテンD★ さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・48歳
  • 肌質・・・普通肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・少ない
  • 星座・・・乙女座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • 映画鑑賞
  • スポーツ観戦
  • 写真
  • ドライブ
  • 読書

もっとみる

自己紹介

キャプテン ドラです。 いつもクチコミやブログを見ていただき、ありがとうございます。 この度、フレグランス専用「フレグランス アッセンブル… 続きをみる

  • メンバーメールを送る