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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:40ml・19,140円 / 125ml・39,600円 / 250ml・55,880円発売日:-
2020/4/25 14:10:12
最初はたくさんいる友達の1人だった。特にめだつ人でもなかった。けれど、気がつくといつもそばにいて笑っていた。そしていつのまにか、かけがえのない人になっていた。
そういう友達や恋人がいる人はとても幸せだ。そして、ディオールのラッキーは、どこかそんな大切な人を思わせる香水だ。
メゾンクリスチャンディオールを訪れると、いつも気分が華やぐ。清潔感あふれる白い店内、そこには色とりどりの香水ジュースで満たされたシリンダーボトルが美しく並んでいる。
たいてい最初に試香するのはサクラだ。そこからローズ系に移行する。ラコルノワール、ローズカブキ、ローズジプシーあたりを嗅ぎ比べする。ピンクジュース系からのグラデ。その頃合いで話しかけてくる店員さんに「全部ローズなのに結構違いますね」なんて話をちょっとする。すると詳しい方ならそこからいろんな事を教えてくれる。その話に耳を傾けながら、次々と他のボトルを試していくのがパターンだ。ただ、いつも通り過ぎてしまう香水があった。
ラッキーだ。
なぜラッキーはいつもスルーしてしまうのか?
1つはその淡いグリーン系カラーのせいかなと思う。色とりどりのジュースの中、なぜか淡い緑のジュース系には手が伸びにくい。不思議だ。それでも、テカシミアはティーのスッキリした香りで鼻をリセットしたくて必ず手に取る。ただラッキーは「うん、ま、今日はいっか」になっていた。なぜか?
それは、初めてラッキーを試したときにあっさり香りを覚えてしまったからだと思う。フルーティーでグリーンでジャスミンが強めのスズラン香。「これは洋ナシスズランだ!」そう鼻と脳にインプットされた。名香ディオリッシモの濃厚なスズランとは桁違いに淡くてスッキリしている。「なぜ今さらこんなに淡いスズランを?」そう思った。それ以来、ボトルを見かけてもすぐに香りが脳内再生され、試さなくてもわかる的なスルーを繰り返すことになった。
ところが。
それ以後、MCDのボトルを何本か所有してみて驚いた。MCD香水の中で、実際最もよく使うのはそのラッキーだ。店頭ではいつもスルーしていた香水。淡くてわかりやすくて、フルーティーなスズラン香水、ラッキー。
ラッキーをつけるときは2〜3プッシュする。MCDの香りの中でも「淡い」スタンスにある香りだからだ。つけた瞬間、まず華やかなホワイトフローラルがふんわりと広がる。ジャスミン、オレンジフラワーをメインに、わずかにチュベローズとイランイランの陰影も。
そしてすぐにフルーティーなファセットがフローラルを包みこんでくる。青リンゴのような洋ナシのような、人によってはメロンのような香りだ。この香りはかなりウォータリーで、花の香にみずみずしさを与えている。濃厚なホワイトフローラルのエッジをスッキリグリーンウォータリーで溶かしているイメージだ。
そしてこれがラッキーの全て。MCDの香りは基本シングルノートなので、このまま減衰する。ときどき、間違ったように苦めのグリーンがメンズっぽく出ることはあるけれど、基本的に「グリーンフルーティー>ホワイトフローラル」というシンプルなアコードのまま続いてドライダウン。時間はやや短めで、3〜4時間程度。もはやスズランのオーデコロンといった印象。なんかずっと昔、北海道で買ったすずらん香水を思い出すまろやかな感じ。
でも
だからよく手が伸びるのかもしれない。そう思う。スズラン香はグリーンでシャープなエッジとふんわりホワイトフローラルという相反する二面性をもつので、スッキリさと柔らかさ、どちらがほしいときにも重宝する香りだ。オンにもオフにも使える。
なんかシャキッとしたいな、そう思ったらラッキー。ちょっと優しい気分になりたい。そう思ったときもラッキー。確かに、気付けばいつもそばにいてくれる友達のようだ。派手ではないけれど、フランクで、優しくて、一緒にいて気持ちが穏やかになる。
例年5月1日は、親しい友人や愛する人に小さなスズランの花束を贈る「スズランの日」として、フランスでは昔から親しまれている。スズランの花言葉は「幸福の訪れ」「純粋」「繊細」だ。スズランをもらった人にはすばらしい幸福が訪れるという。
花はディオール。ディオールの花といえばスズラン。それほどまでにクリスチャン・ディオールに愛された花の香りスズラン。名香ディオリッシモの花束感とは違うけれど、調香師フランソワ・ドゥマシーは、創業者ディオールの心を香りにこめて、この幸運のお守りを世界の人々に届けたかったのだろう。
「いつもありがとう。あなたに幸福が訪れますように。」
スズランの花一輪のラッキーチャーム。ディオール、ラッキー。
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:40ml・14,850円 / 125ml・31,680円 / 250ml・45,100円発売日:2019/1/11
2020/9/19 08:35:15
世に美しい人はいるもので、どんな所作をしても麗しい方をかつて日本では花にたとえてこう言った。「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」。
ただここに使われている花の名を英語にすると、やや微妙だ。
「立てばピオニー、座ればピオニー、歩く姿はリリーフラワー。」ルー大柴か?(←それも微妙なツッコミだな)
そう。実は芍薬も牡丹も、英語ではまとめてピオニーとされている。
芍薬と牡丹、この2つは似ている点は多いものの、完全に別花だ。芍薬はスッと1本茎が立つのに対し、牡丹は枝分かれしていくし、花の形、花弁の数も互いに多種多様だ。だから花の香りも無香の物から強香系まであって、一概に「これがピオニー系の香り」というのが難しいという。しかし、逆に言えばそこが香水の調香師にとっては魅力でもあり、あの大ぶりの豪華な花の香を自分なりに表現したいと、心をくすぐられる素材なのかも知れない。
実際、世に「ピオニーの香り」を謳った香水はたくさんある。芍薬も牡丹も天然香料が採れないので、これらは全て調合香料で作られた人工的再現の作品だ。こうして作られたピオニー系の香水は、調香師が提案する「私がイメージするピオニーの香り」ということになる。そこに調香師の独自のセンスや解釈が感じられるからこそ、香水としての面白さがあるのだろう。
ディオールのホーリーピオニーは、2019年にリリースされた最新のピオニー系香水だ。ホーリーは「神聖な」「高貴な」といった一般的な意味合いだろうか。「またピンク色の香水か、MCDはピンク多すぎ」なんて苦笑&ツッコミはさておき、ドゥマシー版ピオニーの香りの秘密に迫ってみたい。
ホーリーピオニーをプッシュする。その瞬間まず感じられるのは、爽やかな清涼感だ。ペパーミント入れた?と思うくらいスーッと鼻の奥に抜けてゆく一陣のクールな風がある。同時にジャスミンサンバック系のふくよかなフローラルがたなびいてきて、とても懐かしい匂いを思い出す。これは昭和時代(苦笑)にロッテが出して一世風靡した香水味のガム「EVE」の味を彷彿させるトップ。つまりジャスミンミント系の香りだ。
このクール&フローラルなトップは、開幕3分で和らぎ、やがて下から甘いベリーの香りとローズ調の華やかなフローラル香が広がってくるのを感じると、展開はミドル。MCDお得意のソリフロール(一輪挿しワンノート)かな?と思いきや、きちんと香りが変わるタイプだと思う。トップから続くアロマティックな清涼感とバラ調の香りに、甘いフルーティーが絶妙のブレンドで広がってくる。
そういや、ミスディオールブルーミングブーケにも、確かピオニーノートとクレジットにあったな、そう思ってあの銀リボンの乙女なボトルを持ってきてつけ比べしてみた。(←自分用ではないので許してください)
ミスディオール何ちゃらの方は、シャネルのピンクチャンスの向こうを張って作った系と勝手に認識しているけれど、いざホーリーピオニーとつけ比べると、かなりグリーンなハーブ調の清涼感が強いフローラルブーケだということが分かる。対するホーリーピオニーはしっとりみずみずしく、女性らしい落ち着きと洗練されたスイートな花の香りがする一段階低い香りという印象だ。
ここから共通項をくくってみて分かるのは、ドゥマシーがピオニーノートを作る際に外せない香料がいくつかあるということだ。一つはリナロールやゲラニオールなどのバラ調の華やかな香りをもつ香料、もう一つはシオネールなどの鼻にスッと抜ける清涼感ある香料だ。菊やユーカリ、樟脳などの匂いがイメージしやすいと思う。少なくともこの2つを軸にしてドゥマシーは彼なりのピオニー香を表現しているように思う。
このクール&エレガントなフローラルは3時間ほど持続し、やがて高いムスキーな香りに溶けてそのまま減衰する。人によって異なると思うが、香り立ちは柔らかく、4〜5時間程度香るタイプの香水。
ピオニーは千本あれば千本違う。色も香りも花弁の数も千差万別だ。特にヨーロッパで人気があるのは、バラ咲きの大ぶりなピンクの花だ。それは薔薇のようで薔薇でなく、何かと何かの間に咲く美しいフェミニンな花。例えば白いサクラと赤いバラの間。乙女フリルと大人プリーツの間。プリティとエレガンスの間。片恋の熱情と深い家族愛の間。そんな狭間でピオニーのクールロマンティックな香りは、やわらかく微笑んでたたずんでいる。
バラよりも淡く爽やかに。ジャスミンより甘くみずみずしく。千の花びらの奥に秘めたしっとりフルーティーなフローラル。ディオール、ホーリーピオニー。
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2018/6/23 21:30:17
気温が30度近くになってくると、ふだん香りと上手に付き合っている方も、さすがにシトラスでさえうっとうしく感じるようになるという。では、そんな高温多湿の日本の夏に使えるフレグランスはないのだろうか?
答えは「ある」だ。しかも、真夏にこそ使いたいスーッとしたひんやり系の香り。陽炎ゆらめく日本の猛暑に、特に女性にヘビロテされている香りアイテム、それは、ゲランのアクア・アレゴリア・シリーズ不動のスタメン、ハーバフレスカだ。
ハーバフレスカ。フレッシュなハーブの意。1999年にゲラン4代目調香師ジャン・ポール・ゲランが、「もっとライフシーン全体で使えるライトな水を」というアイディアを思いつき、最初にリリースしたアクア・アレゴリア・シリーズ5本のうちの1本。
この作品群はたえず実験的な調香作品を提案しつつ、その反応を見ながら、フレグランスに対する現代の消費者の好みや動向をリサーチする役目を担っているゲランのアンテナだ。そのため、毎年のように新製品を投入しては、市場の反応を見て廃盤や残す物を決め、新作をリリースするというサイクルを形成しながら今に至っている。
これまでリリースされた作品は40近くあるが、店頭に並んでいる作品は毎年入れ替わっていることになる。その中でハーバフレスカは、パンプルリューヌと共に初代リリースでありながら、ずっと生き残っている貴重な作品。これは実はとてもすごいこと。では、そんな人気の高いハーバフレスカの香りはいったいどんな香りなのか?ズバリ結論から言うと。
トップ→レモンバーム。ミドル前半→強力なスペアミント。ミドル後半→グリーンティーの渋み+クローバーの青臭さ。つまりハーバフレスカは、夏の庭先で飲む「アイス・ミントグリンティー・レモン添え」の香りだ。(←きっぱり)
黄金色の蜂の巣飾りがついたボトルからハーバフレスカをスプレーすると、すぐに広がるのはミントの青くひんやりした香り。肺の奥までスーッとした清涼感を運んでくれるオープニング。歯磨き用ペーストの匂いという方も多いけれど、自分はあえて、「強めのスペアミントタブレットとレモンキャンディーを一緒に口に放り込んだ味」と言いたい。鼻から吸う空気が2〜3度下がったようで、特に夏の朝にこのハーバフレスカをスプレーして香りを嗅ぐと、かなり気分がリフレッシュできること請け合い。ミントの量が結構多めで、揮発し続ける間、付けた場所が熱をもったような冷たいような感覚になる。それでも特徴的なのは、ミントの清涼感だけでなく、そこにレモンバームの葉を揉んだときのようなグリーンなレモンの苦みも混じっているところ。まさにハーブ&ハーブなトップ。
この青いレモンバームとミントの共演は10分ほど続いてデクレッシェンドしていく。そのあと下から出てくるのは、グリーンティーの穏やかな渋味と、やや生っぽい葉っぱの香りだ。公式ではクローバーの香りとあるけれど、合成香料のグリーンノート系のブレンドだろう。トップのミントやレモンは天然っぽくて、その後のミドルは合成香料が引き継いで香りを長引かせるという構成だ。ティーのすっきりした香りが心を落ち着かせるミドル。
ミドルは大体2〜3時間ほど続いて終息。その後残るラストはかすかなフローラル。意外なラストだ。はっきり何とは言えない合成フローラルながら、ゲラン公式サイトでは、スズランやシクラメンのイメージと謳っている。ここがムスキーでない点がおもしろい。ハーバフレスカファンの方は、ふだんあまり香水をつけない人も多いという。もっと気軽にフレグランスを楽しんでほしいと願った調香師が、あえてラストをおきまりのムスクではなく、自然な感じにしようとしたように思える。
してみるとハーバフレスカ。アロマテラピーブームの頃に、香水の側から似たようなアプローチをした作品のように思える。フランスなどで飲まれているミントグリーンティーは砂糖を入れるようだが、このトワレにはそんな甘さがないので猛暑でも使える。トップのミントやグリーンはインパクトが強いものの、香りは飛びやすい。だからこそ、日に何度かタッチアップ(付け足し)して、常に気分をリフレッシュできるよう、あえてライトな調香にしたのだろう。
朝露のおりた夏の庭。そっとしゃがみこんでレモンバームの葉を揉むと、青臭さを伴ったみずみずしいレモンのような香りが立ちのぼる。わきには、濃い緑の葉をそこかしこに重ねてひしめきあっているクローバーたち。テラスのテーブルには、アイスグリーンティーが運ばれ、ミントの香りがそこかしこに漂っている。見渡す限りの緑。そのすがすがしい香りに心がスーッと透き通る。
ハーバフレスカ、それは盛夏にいっときの涼をもたらすアロマティックグリーンの風。
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2020/12/26 09:14:39
女性は、ある日突然天使になる。美しく変貌する。それは緩やかな変化ではない。「キレイになりたい」本気でそう思った瞬間、願いはかなう。美の女神は突然、天空から舞い降りる。
ゲランのランスタンマジーの香りを嗅いでいると、そんな戯れ言も信じたくなる。整形とか吸引とかそういうことだけではない。女性が本気で「美」を目指したとき、その心や体に起こる変化は本当に劇的だ。「これが自分?」と思えるほど美しくなることがある。そして世界が今まで以上に光輝く。ランスタンマジーの香りは、女性にこの上なく優しいパウダリームスクな銀の粉を振りかける。キラキラとまるで魔法のように。
ランスタンマジーは、香水帝国ゲランの転換期に香水開発ディレクターに就任したシルヴェーヌ・ドゥラクルト女史が、シムライズの女性調香師ランダ・ハマミと共に2007年に作ったオーデ・パルファム。香水作りの秘伝秘法が、ゲラン家出身の一人の男性調香師だけに託されてきたかつての伝統を打破し、チーム力と女性の力で作った香水として異色の作品。テーマは「女性の夢がかなう瞬間」。一時廃盤となったが、現在はビーボトルで復活している。30mlで税込9350円。
夢を現実にするともいわれる香水、ランスタンマジー。それはどんな香りなのか?
ランスタンマジーをスプレーする。その瞬間、肌の上に冷たい清涼感あるアニスの香りが広がる。アニスの香りはキッチンスパイスの八角そのもの。クールで知的な女性の印象。ただし冷たくはない。明るい酸味豊かなベルガモットが輝きを添えているからだ。スッと心に沁みこむスッキリ透明感あるトップは、洗練されたフェミニンを感じさせる。
5分後、シトラスとスパイスが消失するにつれ、やや明るいフローラルグリーンな香りがしてくる。クレジットによれば、フリージアの黄色い花の部分だろうか。すぐにミモザやヘリオトロープ系の甘くパウダリーな花粉っぽい香りが重なってくる。とても重層的でロマンティックな雰囲気になる。甘くかぐわしい黄色と白の香り。アニスのスッとする清涼感も残しつつ、華やかさが徐々に増してくる。
10分後、香りはまた変わる。フローラルの核が、温かみあるドライなスパイシーカーネーションになってくる。そこに、キリッと苦いテイストがどんどん主張してくる。これはビターアーモンドの香りだ。温度は上昇し、情熱的に温かみを増してくる。まるで何かに夢中になって、一途にそれを追いかけているようなスパイシーフローラル。それは仕事?恋?それとも自分磨きだろうか。
そして。ランスタンマジーはこのあとがすごい。つけて20分後、はっきり驚く。
黄色いミモザの甘い花粉香、赤いカーネーションのスパイシーフローラル。それらが減衰するにつれ、とんでもなく優しく、ふんわり柔らかい白いパウダリー香が出現する。それはもう、お風呂上がりの赤ちゃんの肌に、ふわふわのパフでぱふぱふしてあげるベビーパウダーの香りそのものかと思うほど。この「ふわふわのパフでぱふぱふ感」が悶絶級。ドラクエのぱふぱふ娘も真っ青。(←は?)これはもう赤ちゃんの香りというよりママの香り。母でもお母さんでもない。どこまでも優しく柔らかな愛に満ちた理想のママの匂い。ママパウダー。
ランスタンマジーは、このミドルのむせ返るパウダリーな香りが真骨頂。そこまでの変化も劇的ですばらしいが、ミドルから訪れる官能的な、苦いアーモンド&甘いパウダリーに撃沈する香り。アーモンド香は通常トップで出てくる苦みなのでラストに出てくるのは面白い。これがこの香水で開発したとされている「ムスキナーデ」のブレンドだろう。アーモンドウッドとパウダリーホワイトムスク。この泣けるパウダリー香が、8〜9時間ほども続く。
これは本当に女性が女性のために創った香りだと思う。ママと赤ちゃん。どんなに偏屈に育った人でさえ、この生まれたばかりの頃のミルキーでシルキーなパウダリー香は原初の匂い記憶として心の奥底に刻みこまれているもの。だから、男性もこの香りには果てしない郷愁を覚えてしまうだろう。これは安心・安全と愛情に包まれていた頃の、まっさらな繭の記憶の香りだ。
どんなにあきらめてきただろう。仕方ないって。どんなに髪で顔を隠してきただろう。人に笑われたくなくて。そんな人はランスタンマジーの香りに包まれるといい。この香りはいつもあなたを抱きしめてくる。誰よりも愛情深く、どこまでも優しく。「あなたはとてもかわいい。大好き。もっともっときれいになれるよ。」ママの笑顔のように。
その瞬間。銀色の濃密なパウダーがあなたを包む。転生の魔法。運命の瞬間が訪れ、空から女神が微笑む。
ランスタンマジー、光の粉に包まれて。女性は美しい天使になる。
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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:30ml・8,800円 / 50ml・13,640円 / 100ml・19,030円発売日:- (2019/7/5追加発売)
2014/2/13 00:49:42
「なんか、何かが、もの足りない」このコロンをつけるたび、いつも何となくそう感じる。←生意気だな
そんなことを言うと、どこからともなく、「ノン!ノン!ジョー・マローンの個々の香りは、そもそも1つの完成形ではなくて、いわば素材ね。彼女は、『フレグランス・コンバイニング』という考え方を提唱していて、それは2つの香りをブレンドすることではなく、付ける量や場所などを自身で考えて、自由に重ねづけするというフィロソフィーなの。それによって初めて、個々の香りが唯一無二のオリジナルな香りを作り出すのよ」と、BAさんもどきな声が聞こえてきそうなわけだが。顔とか斜めにして髪かきあげたぐらいにして。←嫌いなタイプではない
なるほど、「フレグランス・コンバイニング」か。さすがTMマーク(商標)をとるだけのことはある。おもしろい。
「それはまあ、わかるんだよな、でもなあ」とまたまた手首に付けた「ライム・バジル&マンダリン・コロン」の香りをかぎながら思う。
トップ。つけたて2分、酸味も苦みも強くないけれど、シトラス独特の高い香り。ライムの果皮を指で傷つけると、唾液の出そうな酸味と苦みが味わえるけど、あの独特の風味ではないな。オイルだ、まさに。高音で、天然洗剤に使用できそうな高純度のシトラスオイルの印象。ギターの手入れに使うレモンオイルっていうのがあるけど、あれをさらに蒸留かなんかして、純度を高めたような香り。
そして同時に下からあふれ出てくるお湯っぽい香り。んー、なんだろこれ?名前のイメージからバジルの「味」をイメージしていたけれど、ふだん調味料として口にしているバジルの香りとは思えない。何というか、お風呂上がりの何かの匂い。水が蒸発するときの、すこーしだけ雑味やカルキがまじったような湯気の匂い。そこにドライで甘みのないシトラスと、ちょい清涼感のあるハーブを1滴ずつたらした感じ。
つけてから2分で、高音域のライムオイル的な香りはどんどん揮発し、次第に強くなるグリーンな香り。淡いけれど、清潔感のある優しい香りだ。ほんのりとだが、甘さも出てくる。このあたりでマンダリンオイルの香に移っていったか。そして、10分もしないうちに、少し清涼感のあるうすいグリーンな香りに落ち着き、あとはそのままのテイストでドライダウン。
日によって30分で跡形もなく消え失せてしまうこともあれば、4時間以上うっすらとスッとしたグリーン香が鼻をかすめることもある。ライムもマンダリンもバジルも、素材としてはトップノートの素材なので、消えていくのが早いのはいたしかたなしだけど。
うすれていく香りの余韻を味わいながら、頭の中でまだ考えている。
うーん、やっぱ何か、もの足りない。単品じゃよさが味わえないとすると、いくつか持ってないと意味ないな。でも、ジョー・マローン、値段高いしな。30mlで7000円として、そしたら、コンバイニングのよさを楽しむためには最低2本は必要だから14000円かー。でもこれ、コロンだよな。いい香料使ってそうだけど、薄いからコスパ悪い。んー、単品じゃやっぱだめなんかな?大体コンバイニングって言ったって、身の回りにはもともといろんな匂いがあるんだし、だったらさ・・・・、あっ。
そうか!
急に瓦解する。そうだ、いいんだ、別にコンバイニングしなくたって!この香りに感じた「もの足りなさ」は、それゆえに、日常生活のさまざまな匂いにも調和していくはず。
例えば、食事中。確かに合う。もともと全て食べられる素材から抽出している香りのせいか、この香りは食事中も邪魔にならない。それどころか、軽く食欲をアップさせてくれる印象。
例えば、女性の身支度。シャンプーやヘアケア製品の混じった髪の香り、メイク用品の各々の香り、そして、ボディークリームや洋服の柔軟剤の香り。考えてみれば、女性は男性の何倍もの香りを当たり前に身に纏い、もともと複雑な香りを放っているはず。そこにこの香りが混じっても、ぶつかり合うことなく、邪魔になっていない印象。
そう考えたとたん、ジョー・マローンのすごさ、女性としての繊細な感覚に少しだけ触れられたような気がした。
「ライムバジル&マンダリンは、あなたのすでにまとっている香りにすっと合わせていきます。あなたの日常の香りになじんでいきます。だからこそ、最小限の構成なのです。」
そんなメッセージが聞こえたような気がした。
だからこれは単品でも使える香りだなと思う。なぜなら、日常のさまざまなシーンに、自動的にコンバイニングしてくれる種類の香りだと感じるから。
この香りは、「もの足りない」。そして、だからこそよいのだろう。「足るを知る」者にこそ作れる香りだから。
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