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doggyhonzawaさん
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ゲラン / アンソレンス オーデパルファン

ゲランゲランからのお知らせがあります

アンソレンス オーデパルファン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:30ml・9,350円 (生産終了)発売日:2008/10/10

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6購入品

2021/3/27 12:41:43

こじらせている。心の中でいつも何かが戦っている。闘争の赤と逃走の青。2つが混じり合って心はずっと紫だ。「そんなの絶対許せない」と赤く燃える一方で、「本当はどうでもいい」と青い斜陽を決めこむ。心の色はそのときどきの土によって紫陽花のように変わる。赤くなったり青くなったり。それでも100%の赤や青にはなれない。ただ、紫色でいれば心は落ち着く。だから人は、ときに紫の香りを心のどこかで求めることがある。

紫の香りと言えば、まずスミレの花の香りが思い浮かぶ。バイオレットフィズという紫のカクテルの香りや味わいを思う方もいるだろう。バイオレットフィズに使われるのはニオイスミレの香りを用いたパルフェ・タムールという紫のリキュールだ。ゲランのアンソレンス・オードパルファム(以下EDP)は、そんなスミレの香りがする。

では、スミレの香りと評されることが多いアンソレンスEDPは、一体どんな香りだろうか。

アンソレンスをつけると、まず立ちのぼってくるのはベリーキャンディ風の甘さだ。スミレのシングルノートで有名なグタールのラ・ヴィオレットは、トップからグリーンな苦味が立ちのぼってくるのに対し、こちらは甘くフルーティーなイントロ。ただその下にメランコリックな紫色の香りが広がっているのがわかる。さながら、いちごアメとスミレの砂糖漬けを同時に口に入れたような赤と紫のトップ。

アンソレンスはよく「スパイラルに変化する香り」と紹介される。これはどういうことかというと、調合香料がどの瞬間にどんな感じで出るのか予測がつかず「連鎖的な変動」をしていく、といった捉えでよいと思う。例えばアンソレンスを構成している香料のうち、特徴的なものは次の3つだ。

・不二家ポップのイチゴキャンディっぽい甘さ(赤)
・バイオレットフィズのようなスミレとローズ(紫)
・おしろいやベビーパウダーのふんわりパウダリー(白)

これらの香料が同時に出てくるタイプで、ときにどれかが強く香ったり全く感じなかったりと、連鎖し合いながらバランスを変えて香り続ける展開をする。「あ、いちごアメだ」と思った次の瞬間、スミレの香りが届いたり、不意にベビーパウダーを感じたりと、ふわりふわり螺旋状に旋回しながら登りつめていくイメージ。まさに初期ボトルの半球らせん3段型のように。

香料の割合的には、ベリー:スミレ:アイリス=1:5:4くらいなので、スミレのイオノンとアイリスのイロンの香料が強い香水ではある。この2つは親戚みたいな関係なので、混じり合うように香る特徴がある。同時に、スミレの香りのイオノンβはベリー系にも含まれるため、こちらも親和性が高い者同士。つまり、この3つは常にシンクロしながら個々に香ることで、幅広い嗅覚レンジを攻められるよう化学的にセットされているわけだ。まさに、どこから何が飛び出してくるかわからない紫色の波状攻撃、黒い三連星のジェットストリームアタックそのものだ。(←また言ったよ)

付けてから5〜7時間。イオノンもイロンも、重くて揮発の遅い香料なので、ゆっくりじっくり長く揮発する。清楚で控えめなスミレの香りにほんのりイチゴ味が寄り添っているので、成熟した大人の女性の香りになりすぎず、ほんのり可憐さを与えている。決してガーリーではないストロベリーの甘さ、この配合バランスが奇跡的にすばらしい。

スミレの香りは、心がやられているとき、曖昧な状況で先が見えないとき、心を安らげてくれる鎮静効果を持っている。香りにもバイタリティがあって、元気な香りは心が元気でなければつけられないし、華やかな香りは心がオープンに開いていなければ似合わない。けれど、スミレの紫フローラルは、心が辛いときに何も言わずただそばにいてくれる。寡黙な友だけれど、誠実な優しさに満ちている。

年度の変わり目、季節の変わり目、新しい環境に飛び込んで、心が戸惑って居場所をなくしているとき、もし心がため息をついていたら、こんな香りとともに過ごしてみるのもいいだろう。心を二極化する必要はない。赤い闘争にも青い逃走にも疲れたら、白い繭の中にこもって、紫の夢を見てゆっくり沈んでみるといい。そんなとき、ゲランのアンソレンスはあなたのわがままにとことん付き合ってくれるだろう。

こじらせている。なんてすてきなことだろう。人間はもともとDNAの二重らせんでできているねじれた生き物だ。二極化を目指す世界は悲劇の色彩に満ちている。赤と青のらせんが紫の心になって世界を優しく沈静させるなら、空はいつでも紫色でいい。心も紫色のままでいい。

人間は不確かな生き物。あなたはあなたの心を守るためなら、もっと自分に傲慢でいい。アンソレンスの紫の香りがそっとささやいている。

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セリーヌ / パラード

セリーヌ

パラード

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2020/12/19 10:40:12

「本当にいい男」の香りを嗅ぎたいと思ったら、迷わずセリーヌのパラードをお勧めする。それは反逆のロックデザイナー、エディ・スリマンが、もてる力の全てを賭した新生セリーヌの看板的な香りだからだ。

「2018年、エディ・スリマンがセリーヌの全デザインを統括する」このニュースがファッション界を駆け巡ったとき、世界はどよめいた。麗しきフレンチラグジュアリーを愛した女性たちは嫌な予感がし、カウンターカルチャー世代の悪い子たちは狂喜乱舞した。そしてそれはどちらも予想どおりになった。

セリーヌは激変した。ブランドの看板ともいえるロゴの変更、ふんわりフレンチシックな貴婦人のための服は、いきなりシャープ&スキニーなガーリー系デザインに塗り替えられた。さらにディオールオムの大成功をもう一度とばかりに、新しくメンズラインも加えられた。店舗の様子もナチュラル指向から大理石&メタルのクール&スタイリッシュに様変わりし、表参道店には巨大な金蛇の抜け殻オブジェまで登場。そしてエディは、セリーヌの新たなスタートに際し、人の心をつかむ香水の存在が最も重要であることを誰よりも知っていた。

すばらしい香水は、それだけでブランドの価値を何倍にも押し上げる。エディはそれを理解している数少ないデザイナーだ。2019年、彼が新生セリーヌのために創った9つの香水は、どれもクラシカルな要素を大事にしつつ、どこまでもモダンにリアレンジしたすばらしい香水たちばかりだ。中でもエディ自身が偏愛する1本、パラードはそつなくよくできている。ではいったいどんな香りなのか?

パラードは、つけた瞬間から心が浮き立つような美しいベルガモットの香りに包まれる。まるで高級なアールグレイティーを淹れた瞬間に立ちのぼる柑橘と芳醇なティーの香り。どこまでも心をとらえて離さず、思わず吐息が漏れるようなすばらしいトップ。もうこのトップのベルガモットが全てだろうというくらいのブレンドだ。疲れた心と体を一瞬でリフレッシュしてくれる救世主のようなトップ。

5分ほどすると、爽やかな柑橘にまろやかでしっとりしたネロリの香りが寄り添ってくる。独特のゴムっぽいファセットも効いていて、麻薬的に心がとらわれる。ここまでのベルガモット&ネロリのバランスがとてもいい。おそらく細かい香料もいくつか使っているだろう。スッと抜けるカルダモン、わずかなローズマリーやジュニパーのスッキリ透明感、そうした物も感じられる。心ときめくミドルだ。それは欲望のおもむくままに行動する楽しさを表現したかのよう。

ブランドは調香師も明かさず、シングルノートと紹介しているが、これは相当に腕のいい調香師の作品だと思う。香料が全てパズルピースのようにピタリとハマって、一つの香りに収束している。元をたどれば、コロンの始祖「王妃の水」や4711の骨格がベース。そしてメンズフゼアの傑作、ダビドフのクールウォーターをよりブラッシュアップして、重たいタバックやウッディ、マリンノートを排除し、ユニセックスかつ軽やかに仕上げようと苦心した様子がありありとうかがえる。星の数ほどもあるクールウォーターフランカーの中では最高の部類ではないかと思う。これは女性もつけられる本物の現代的ネロリ香水だ。

ラストはベチバーの温かみとほんのりベンゾインの甘さやヴァニラが出てドライダウン。あるいはそうしたフローラルムスクのエンディング。心ときめくベルガモット&ネロリが比較的長く続くメインストリームとなって、華やかで美しいオペラのようなハーモニーを聴かせ続ける香り。爽やかさが持続し、ネロリがふわりと柔らかく、シームレスで心地いい。持続は4〜6時間。販売価格は100mlで27500円。昨今のニッチ香水の価格高騰ぶりをみると、決して高すぎる価格ではないと思う。調香師はあえて明かしていないが、9つの作品は凄腕と新進気鋭、どちらにもオファーしているように思う。

「本当にいい男」その定義は人それぞれだろう。このパラードに込めたエディ自身のオマージュは、ベルリン時代のデヴィッド・ボウイがメインだ。ボウイはそのロックスター人生において、常にアヴァンギャルドかつ自分のあらゆる可能性を模索するカルトな道を歩んだが、ジギー・スターダストのように自身のペルソナキャラクターを演じていた時期がいくつもある。中でもベルリン時代に演じていたシン・ホワイト・デュ―クは、退廃的な青白い中性的公爵の姿で世界を震撼させ、後年あらゆるロックスターのスタイルや芸術家に影響を与えた。

人々を扇動するかのように、デュークが静かに語り始める。

「シン・ホワイト・デュークは帰還した。さあ、共に行こう。」

デュークが緩やかに手を天にかざす。そこから始まる新しいパレード。

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ペンハリガン / ガーデニア オードトワレ

ペンハリガン

ガーデニア オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・24,200円発売日:-

6購入品

2018/10/20 17:51:17

人恋しさに、あの人会いたさに、想いこがれる秋の夜は、純白のウエディングドレスさながらのうっとりするようなペンハリガンのガーデニアの香りに包まれるといい。

ペンハリガンのガーデニアは、1976年に誕生したガーデニア(クチナシ)のシングルフローラルのオードトワレだ。チュベローズ、ジャスミン、イランイラン、ガーデニアの花々に、スパイスとバニラを重ねた、クリーミーで悩ましい香り。いったんは忘れられた存在となっていたこの香りは、鬼才ベルトラン・ドゥショフールの手にかかってリファインされ、2009年にアンソロジー・シリーズとしてリリースされている。容量は100mlで定価は税込で2.3万円ほど。ただネットでは半額近くで取引しているところも最近では見られるので要チェックだ。

正直、このガーデニアにはしてやられた。香りこそ変化なく人工香料メインであるものの、数あるガーデニア系香水の中でも香料バランスが絶妙。そして人の心を惹きつける魔力をもっている香りだと感じる。さすがベルトラン。彼がラルチザンで創ったラペルトワなみのガーデニア香。さらには、シャネルのココマドやチャンス系に比べても負けない強い男性誘引力をも兼ね備えているように思う。

ペンハリガンのガーデニアをスプレーする。とたんに濃厚なジャスミン&チュベローズ系のホワイトフラワーブーケが強く空気を押し出してくる。甘くてしっとりしていてクリーミー。同時に背後からスッキリしたグリーンノートが広がってきて、全体の香調を引き締めている印象。この開幕5分のホワイトフローラルブーケのかぐわしいことといったらない。熱帯のフルーツのようなエキゾティックな甘さと乳製品のようなまろやかなコクをもち、そして男性の心を一瞬で奪うような妖艶な女性の色気も含んでいる。このフローラルブーケミックスは生花以上。あえていうなら、生々しい。ごめんなさい、参りました。なぜかそうあやまりたくなるようなしっとりしたグリーンフローラル。そんなトップ。

そしてそのトップの強烈なホワイトフローラルブーケが次第に柔らかくなっていくミドル。香りの変化はほとんどなく、香りじたいが引き波をたてながらゆっくりと時間の経過とともに柔らかくなっていく印象。ラストもまた然り。付けてから8時間たっても、まだ付けたところにうっすらとホワイトフローラルが漂っている感じの消え方。わずかに石鹸ぽいムスクの雰囲気は感じるけれど、全体の印象が確かにガーデニア。クリーミーで甘い。最初から最後まで肉厚な白い花の蜜の香りに包まれたままフェードアウト。

気を付けなければいけないのは付け方だろう。シングルフローラルながら本当に拡散力が強いので、この作品に関してはウエストより下に付けることを全力でお勧めしたい。くるぶし、ひざ裏、太もも、ウエストなどのお好みの場所に、左右1プッシュずつで十分だろう。それでも量が多いと感じる方は、ロールオンアトマイザーに移し替えて塗布量を調整するといい。

ペンハリガンのガーデニアは、ボトルこそカチッとしたこれまでの英国風ではあるけれど(リボンも立ってるし)、香りに関してはセンシュアルで男心を揺らめかせる甘く危険な香りだと感じる。久々の「あまりにいい香りなのでつい後ろからついてきましたええもしよかったらお茶でもいかがですかああすみませんそりゃそうですよねではせめてお名前とその香水だけでも教えていただけませんかそれとラインIDも」的な男に気を付けてほしいかもしれない香り。秋だからね、人恋しくて落ちてる人はたくさんいる。そんなときにこんなふんわりフローラルを纏った女性が目の前を通ったら、男たちの理性はあっという間に吹っ飛んでしまうかもしれない。いや失礼。俺は吹っ飛ぶ。香りにつられてついていったらごめんなさい。(←久々だな確かに。)

夏咲きのクチナシの木は、春のジンチョウゲ、秋のキンモクセイとともに「三大香木」と呼ばれるほど芳香の強い花を咲かせる。アジア原産のこのクチナシは海外に渡ってガーデニアと呼ばれ、欧米ではダンスパーティーに誘う女性へ贈る花として有名になり、プロポーズの時やウェディングブーケにも使われる幸福の花となった。花言葉も「優雅」「洗練」「喜びを運ぶ」などがあり、恋や愛の花としても知られている。ガーデニアの花の香りには、そんなたくさんのメッセージが込められているのだ。

クチナシの香り、メッセージ…。懐かしい歌のフレーズが浮かぶ。

「雨上がりの庭で クチナシの香りの…」

やさしさに包まれたなら、目に映る全てのものは愛のメッセージになるだろう。

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ル ラボ / ANOTHER 13

ル ラボ

ANOTHER 13

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:15ml・11,770円 / 50ml・26,950円 / 100ml・41,250円発売日:2010年

5購入品

2020/10/10 13:24:34

ルラボのアナザー13は、とても不思議な香りの香水だ。うすいミント水のようだなと思えば、冷たい金属の香りがするときもある。付けてしばらくすると乾いた木の香りもしてくるし、ときに酸味があるフルーティーなタッチが感じられることもある。とらえどころがなくて透明感がある香り、それがアナザー13だ。

アナザー13は作られた経緯も異色だ。2010年、英国のファッション・アート・カルチャー雑誌“AnOther magazine(アナザーマガジン)”から依頼を受けて生まれたコラボ作品。販売はパリの伝説のセレクトショップ「コレット」のみというこだわりようで大きな話題となったが、2017年にコレットが閉店し、その際に製造元のルラボに戻して通常ラインに加えられた経緯を持つ。

一般的にルラボの香水といえば、ローズ31やアンブレット9など、メイン香料名の後にブレンドした香料の数が記載されているが、アナザー13の場合は雑誌名がそのまま残されている点で他と異なる。この経緯は定かではないが、限定品で出したにも関わらずとても人気の高い作品だったことも一因かもしれない。

では、ルラボのアナザー13とは一体どんな香りなのか?

アナザー13をスプレーする。最初に感じられるのは、本当にうっすらとしたミント水のような香りだ。アナザー13はスプレーしてもすぐには香らないタイプで、これは揮発しやすい香料が少ない、もしくは入っていないことを意味する。ルラボにはこういうタイプの香水が割とあって、人気のガイアック10もトップはほぼ香らない点で似ている。

3分後。付けたところで香水が人肌で温められてくると、重たい香料が揮発して少しずつ顔をのぞかせてくる。まず感じられるのはヘディオンのやさしい甘さ。ほんのりジャスミンの香りがする人工香料で、量はごくわずかだろう。とてもとても穏やかで、かなり広範囲にスプレーしても、まるで肌じたいが柔らかく甘く香っているようなスキンセント系の香り方をする。

さらに下から出てくるのは、透明感のある塩水のような香り。トップの薄いミント系ノートと相まって液体系やオゾンノートのような雰囲気になる。これはアンブロックスだろう。これも濃度はとても薄い。アンブロックスをガツンと高濃度で嗅ぎたいならヴィトンのアフタヌーンスイムのミドルで確認するといい。かなり潮風風味な香料だ。アナザー13はこのあたりから、次第に「流れる水の匂い」な面が感じられてくる。

やがて、つけたことすら忘れた頃になって、不意に乾いた木の香りがしてきて驚く。自分の肌では30分ほどだろうか。付けたところに鼻を近づけるとやっと分かるような薄さで、ほんのり木の香りがする。流れる水の香に、香ばしく温かい木の香りがグラデしてくるイメージ。

そしてそこにキンとした酸味も感じられてくるとアナザー13の香りの香料が全て出た感じになる。水系ノートを形成しているミントやアンブロックス。乾いた木の香りを呈するイソEスーパーと少量のウッディ香料、そしてスッキリ系ムスクとほのかなジャスミン香ヘディオン。アナザー13はこれらが集まって絶妙なバランスで香るオードパルファムだ。トップが水のように透明感があって、次第に木の香りが深まってくる不思議な香り。

全体的に見ると、うすいミントやジャスミン香、そこに香ばしい木の香が混じるアナザー13は、確かに日本で人気あるのが頷ける香りだ。香り立ちが低めで、多めにプッシュしても香害になりにくい落ち着いた香り。淡い木の香が7〜8時間ほど続くので、さりげなく周囲にアピールもする。ネックは価格だ。ルラボの香水は日本で買うととても高い。15mlボトルで1万円という価格をどう見るか。そこは個人の価値観次第だろう。

水の雰囲気と木の香り。そこから思いつくのは、本だ。本は水と木から作られた紙でできている。インクのリキッド感。そして木や紙のドライな温かみのミックス。これはアナザーマガジンそのものの匂いをイメージした香りなのかもしれない。

洗練された写真が散りばめられた高価な雑誌の匂いをそっと嗅ぐ。漂白された上質な紙の乾いた匂いがする。ツヤツヤしたインクのほんのり暗い匂いもする。美しい写真に彩られたページをめくるたび、たくさんの夢と、まっさらで穏やかな本の匂いが広がっていく。

その香り、別物。アナザー13。

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FUEGUIA1833 / キロンボ

FUEGUIA1833

キロンボ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2020/6/20 10:01:59

フエギア1833のキロンボは、とてもヘヴィーな名前の香水だ。その名の表すもの。「逃亡奴隷社会」。

かつて植民地時代のブラジルで、何百万人もの黒人たちがアフリカから連れてこられ、サトウキビプランテーションで過酷な労働を強いられた。彼らの多くは20歳になるまでに亡くなったという。そこで彼らは脱走し、北東部のジャングルに逃げ込み、先住民ナティーボらと共に密林の奥でひっそりと生きる道を選んだ。その集落や社会を総称してキロンボという。

とても重たい名前だ。もし香水ボトルに日本語で「逃亡奴隷社会」と書いてあったら、少なくとも二の足を踏む人はいるだろう。「ねえ?いい香りね。それ何の香水?」「えとね、フエギアの『逃亡奴隷社会』だよ!」「そ、そうなんだー。なんかすごいね…(汗)。」という会話が交わされるとしたら、いかがなものか。←ま、それはそれで

ともあれキロンボ。初めてその名の由来を知ったときは若干気持ち的に落ちたが、店舗で実際に香りを嗅いだときはとても驚いた。なんというミルキーで優しい甘さの香り。それもそのはず。キロンボは、ブラジルの密林の奥、逃亡奴隷たちが生き延びるために作っていた液体ミルクキャラメルの香りだ。←大事

キロンボをプッシュする。その瞬間、腰がとろけそうになるような甘くてミルキーな香りがふんわりと広がる。よく女性がつけて「おいしそう!」とつぶやいているが、さもありなん。本当にミルクとバターとそしてスッキリした甘さが渾然一体となって広がってくる。バターにはほんのり塩味が効いていてそれすら鼻で感じ取れるのがすごい。本当に「これ、単に食品の香り付け香料では?」と感じるほどの超グルマン。

ミルクと塩バターと甘い砂糖の香り。以上。←終わるのか

展開は特にない。フエギアの香水にはよくある、付けた香りがずっと持続し続けるタイプの香り方をする。人工香料強めだろう。いつまでも同じ香りがずっと持続する感じだ。ただ本当に唾液が出そうなくらい甘くてミルキー。これは不二家さんが「ミルキー」という名でリリースした方がいいくらいの練乳っぽい香り。実際に不二家さんが出してるミルキーボディミストより「不二家ミルキー」な香り。←本家越え?

持続時間は8〜10時間ほど。長い。特に紙やファブリックにつけると、1日過ぎても柔らかく香りが残っているほど。このへんは本当にフエギアらしい濃厚さ。フエギアの香水は全体的に香料の数は少なめでシンプルな香りを濃度高めで展開する、といった感が強い。一般にグルマン系は気温や湿度が高いと重たくて敬遠しがちだけれど、なぜかこの香りは暑い季節でも苦にならない。それは、ほんのひとさじのフルーティーな酸味があって、実にスッキリとした甘いクリーミーさを呈しているからだろう。それがアマゾンフルーツの1つ、クプアスだ。

クプアスはカカオの仲間で、茶色い実の中に白い果肉を有する南米特産のフルーツだ。果肉はパッションフルーツやヨーグルト様の強い酸味をもつ。また、種子には多量の油脂を含み、クプアスバターとしてチョコレートの原料やコスメの素材にも使われる。このクプアスの果実の酸味、バターのコクが、このキロンボを単に甘いミルク香にせず、豊かな風味を添えているように思う。わずかなパッションフルーツ様の香りがくどい甘さになるのを抑えている印象。

ブラジルや南米では、昔からドゥルセ・デ・レチェという液体キャラメルが作られ、愛飲されている。高脂肪のミルクに砂糖をたっぷり入れて、じっくりアメ色になるまで煮詰める。その液体キャラメルには必ずカカオやチョコレート、アーモンド、ドライフルーツを入れるという。そこまで知ると、ああ、この香りにはラテンアメリカの歴史が語られているんだなと実感する。

暗いジャングルの奥に思いを馳せる。先住民との邂逅をはたした逃亡奴隷の黒人たちは、彼らの自給自足の生活様式を学びながら、同時に自分たちの身体に沁み込んでいるアフリカ文化をミックスして継承し続けた。彼らはヤギの乳に自分たちが作っていた砂糖を加えて煮詰め、そこにクプアスの果実やバターを加えて濃厚な液体キャラメルを作り、飢えをしのいできたのだろう。白人社会の攻撃に備えつつ、何百年も文明社会と隔絶して。

その戦いの旗こそキロンボなのだ。その名の重たさを知ったとき、ジュリアン・べデルがこの甘くミルキーな香りに寄せた思いの深さを慮る。そしてそれが悲劇の名称ではないことに気付く。人種差別と闘い続けた彼らの歴史。そして何よりも、生きるために日々の食料を得る戦いを続けた彼らの強さをこの名は表しているのだろう。

どんなことがあっても生きる強さ。今日の命をつなぎ、明日への希望をもたらす香り。キロンボ。

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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

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