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doggyhonzawaさん
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Puredistance / WHITE

Puredistance

WHITE

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2019/12/8 12:29:34

ピュアディスタンスのホワイトを知らなければよかった。この香水に出会わなければ、今も目の色を変えて世界中の香水を集めまくり、あれこれ試してはあーだこーだとくだらない能書きを垂れることに夢中になっていただろう。でもこの香水と出会って変わった。もうそんなにあれこれ探さなくていいかもしれない。そう思うようになった。だからちょっとだけこの香水に対する思いは複雑だ。この香水はあまりに美しくて少し哀しい。

ホワイトの第一印象は驚くべきものではなかった。初めて手首の内側にのせたとき、「柔らかくて、とてもなめらかで、どこかでかいだことがある香りだな。」と思った。静かに始まって、一日中ほんのり甘いパウダリーフローラルな香りが鼻を喜ばせ、自分の周りだけが特別な白いヴェールに包まれたように感じた。賦香率38%はすごすぎる。付けた手首をハンドウォッシュで洗ってもいい香りが残っているほど。この香りをウェディングドレスに例える方が多いのも頷ける。永遠の白。永遠に続く幸せ。欧米では、結婚される女性にプレゼントする方も多いと聞く。わかる。この香水はあまりに美しくてやさしい。

ホワイトの香りに包まれていると、どこか近くで聞こえないくらいの美しい音色が優しく鳴り響いている。そんな感じがする。まるで一流の交響楽団の音出しのようだ。弦楽器が静かにフェードインして、個々の楽器の高さでチューニングをはじめる。やがて木管や金管が唇の湿り具合と空間の響き具合をみるようにゆっくりと楽器に空気を送りこむ。あの静謐で、まろやかで、上質な音空間にふわりとそよぐノーブルな香りだ。あるいは幼い頃に添い寝してくれたあたたかな母の匂い。この香水はあまりに美しくてほんのり切ない。

きっとこれを創った人はとても優しい人だ。ホワイトの香りをかぐたびにそう思うようになった。そのシームレスでどこまでもスムースな香料のシンフォニーに耳を傾けていると、いつしか調香師の魂にシンクロしていく。これを創った方は、とても繊細で傷つきやすく、それでもその分、弱い相手の気持ちをおもんばかれる人だろう、そう思う。調香はアントワーヌ・リー。少しワイルドな見た目の男性調香師だ。2004年にアルマーニコードを発表したことで一躍注目され、以後多くの作品を手がけている人気調香師。彼が一年をかけてじっくりと取り組んだ作品、それがこのホワイトだ。

だが、真に熱狂的な方は別にいる。彼のような人気調香師をして一年かけてじっくり納得いくまで作品を創らせ続けたピュアディスタンス社長、ヤン・エワウト・フォス氏だ。このホワイトは彼の情熱の賜物だと思う。アントワーヌ氏は、フォス氏の強烈な圧しと情熱に全身全霊で応えたのだろう、そう思う。本当にすごいのは彼だ。

フォス氏はこの世界にただすばらしい物を生み出したいと願うパッションの塊のような人だと思う。たとえ自分で調香はできなくとも、持ち前の感性で本物を明確にかぎ分けられる天性の芸術家なのだろう。そして最高の作品を創るためならつぎこむ資金にも糸目をつけないような。だからすごい香水ができるのは必然なのだ。彼がお金儲けのために香水を創っていないことは、その美しい化粧ケースに触れた瞬間からはっきり分かる。彼は仕事に一切の妥協を許さない方だろう。ピュアディスタンスはたとえサンプルセット一つをとっても、天蓋付きのふかふかのベッドに横たわった美しい宝石のように大切に大切に提供している。ボトルの箱の方には社長自らのサインを入れて。彼はそうやって作品に魂を注いでいる。だから、この香水はあまりに情熱的すぎてぐっとくる。

最高の調香師に最高の香料を与えて、何度も納得いくまで作品を創ってもらう。香水好きな方にとってこれ以上の喜びはないだろう。そして生まれた美しい香りを世界中の人に届ける。そこにあるのは拝金主義とは全く逆の志だ。それは愛を与える行為そのものだから。

興味を持たれたらホワイトについてぜひ調べてみてほしい。この香水に関しては、香料がどうだとかトップがどうだとか言うつもりはない。ただ、ただ、試してみてほしいだけだ。自分の肌から立ちのぼる世界最高クラスの香りを。そして感じてほしい。そのとき見える世界の美しさを。そばにいて微笑んでくれるかけがえのない人の大切さを。

一人でいてはいけない。一人心を閉ざしてうつむいていてはいけない。嫉妬や憎しみで心を黒くしてはいけない。あなたがこの美しい世界にいられる時間はとても短い。愛する家族、友人、恋人と手をたずさえ、心を抱きしめ、その笑顔とともに、あなたにはいつも笑顔でいてほしい。

ピュアディスタンスのホワイトはそう語りかける。この香水はあまりに美しくて、あなたが愛しい。

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シャネル / シャネル N°19 パルファム

シャネル

シャネル N°19 パルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:15ml・31,350円発売日:-

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7購入品

2022/12/10 13:41:09

あなたをたった5秒で強く颯爽とした女性に変える。それは簡単なことだ。シャネルN°19のパルファムを1滴指にとり、耳たぶの裏につける。それだけでいい。

「また何言ってるんだ、大げさな」そう思うなら試してみるといい。香りが好きかどうかは別。N°19パルファムは、強き女性の代名詞として君臨し続けるココ・シャネルが「世界一売れたN°5を超える香りを!」と「自分のためだけに」作らせた最強のシグネイチャー香水だ。

ただしEDPやEDTでは効果は薄い。N°19の破壊力を実感するためにはパルファム一択だ。15mlで31350円。高い?そうだろうか。「なんでこんな香料でこんなに高いの?」と首を傾げるようなそのへんのニッチ香水に比べたら、100倍良心的な価格だと思う。まず歴史とブランド信用力と品質が別格だ。さらに、スプレーでなく指で1滴ずつつけるフラコンなので、本当に減らない。そして超至近距離でだけ高濃度香料がなめらかにずっと香る。実は香害に一番なりにくいのがこのパルファム濃度だ。これぞ本物の香水。香水に詳しくない方なら、なおさら「本物の凄み」というやつをまず体験すべきだろう。

ココ・シャネルはこのN°19を創るために、調香師アンリ・ロベールに何度も試作品を用意させ、香りを纏ってパリの街を歩いたという。そして人々が香りについてどんなふうに声を掛けてくるか確かめた。全く声を掛けられなかったときは、怒号と共に調香師を責めたという話もある。当時ココは86才。ある日、長年住んでいたリッツホテルから出てきた際、若いアメリカ人男性2人に引き留められ「その香水の名前をぜひ教えてください!」と迫られたことが決定打となってこの香りは生まれたという。

ではそんなN°19パルファム、いったいどんな香りなのか?世界的に「グリーンフレグランスの最高峰」と言われる香りの展開を追ってみる。

N°19パルファムを肌にのせる。するとまずはじめに立ち上るのは、ギリリと青臭いグリーンノート、そして粉っぽいアイリスの白い香りだ。そこにまろやかなネロリの甘さが加わり、キレのいいスッキリとした緑と白の香りが広がるトップ。

3分後、ジャスミンのふくよかさとグリーン香が相まって、スズラン様のフローラルが広がってくる。同時に下の方から冷たく青いヒヤシンスの香りも感じられる。ガルバナムのシャープなキレのある香りを軸としながら、ソリッドで青緑なフローラルが感じられてくるミドルになる。

このミドルは知的でスタイリッシュ。キリっとして本当にかっこいい。全くフェミニンじゃない。若々しく、怜悧で、背筋がスッと立っているイメージ。全てに妥協を許さず、自分のめざすベクトルを見定め、どこまでも一直線で闊歩してゆくような、潔さと強さを感じさせる草原と大地の香りだ。

リラックスというなら、それは大自然の中に放り出されたような心地よさがこの香りにはある。けれどそこには同時に、厳しい自然界の現実に対峙する強さもまた要求される。そんな苛酷さを感じさせる香りでもある。ミドルは、大草原に吹く風がオークモスのビター、ベチバーの土の匂いを運びながら3〜4時間続いていく。

ラストはとてつもなく優しい。土深く眠り続け、長年かけて香りを熟成させたアイリスパリダのパウダリーが優しく心と体を包みこむ。ほのかに甘いムスクとともに、小麦粉のようにきめ細かな白い香りを呈してドライダウン。ここまで5〜6時間。たった1滴で。

N°19はココ・シャネルの誕生日である8月19日から命名されたナンバーフレグランスだ。人は一人で生まれ、空と大地の狭間で必死に生きて、その短い生を全うする。「香水をつけない女に未来はない」と言い切ったココが、人生の最後に自分のためだけに徹底的にブラッシュアップして作り上げた香り、N°19。そこに込められたのは、世界中の女性が男性の下に屈することなく、自分自身を強く美しく保ち続け、欲しいものを欲しいと言い、自分の力で未来を貪欲につかみとれ、というメッセージのように思える。

一面の大地。草原が風に揺れている。湿ったベチバーの土っぽい香りがしている。濡れた苔類のビターな匂いが森から運ばれてくる。自然はどこまでも広く、容赦なく、そして気高い香りに満ちている。服が風をはらむ。草原と森の匂いが髪を洗う。

青いガルバナム。苦みばしったオークモス、乾草のベチバー、白いアイリスパリダ。それらが織りなす、今にも発火しそうな残虐なグリーンノート。クールで、スタイリッシュで、挑戦的。常に現代で戦い続けるハンサムウーマンの香り、実装完了。

最終戦闘に備えよ。
大地を疾走するパルファム「ナンバーナインティーン」発動。

5秒だ。5秒で未来にカタをつけろ。

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イッセイ ミヤケ パルファム / ロードゥ イッセイ オードトワレ

イッセイ ミヤケ パルファム

ロードゥ イッセイ オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・3,190円 / 25ml・8,690円 / 50ml・12,540円 / 100ml・17,600円発売日:- (2022/2/1追加発売)

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5購入品

2018/10/27 14:47:51

「香水なんてシミを消すわけでもないし、肌にいいわけでもない。何の効果があるの?」コスメに機能を求める方は言う。そのとおりかもしれない。ざっくり言えば香水なんて香りをつけたアルコールだし。それでもあえて言う。香水はすごい。それはときに人の心や世界の流れまで大きく変えることがあるからだ。

ここに1本の有名な香水がある。細長い円錐形のすりガラスボトルに入った透明な液体。作品名はロードゥイッセイ(イッセイの水)。世界的デザイナーとして有名な三宅一生氏の最初の香水にして最大のヒット作だ。このオードトワレは、それまでの香水文化を大きく変えたといっても過言ではない。

ロードゥイッセイは、まず人の心を大きく変えた。「香水なんて派手だし、くさいし、嫌い」そう感じていた女性たちがこぞってこの香りを買うという現象を生んだ。もともとこの香水は、香水嫌いで有名だった三宅一生氏のブランド戦略として提案されたもので、当然ながら彼は最初は乗り気ではなかった。しかしどの服飾ブランドもイメージアップ戦略の一つとして香水を扱いだした流れにもまれ、遂にイッセイ・ミヤケの香水を出すことが決まったとき、彼は新人調香師に向かってこう言った。

「創るなら、ぼくを驚かせる香りであってほしい。それは例えば、自然の中で深呼吸しているような香り、水のような透明感のある香りだ。」と。

それを聞いた関係者は、みな首をすくめたという。「水の香り?そんなの作れるか。作ったとしても売れるわけがない。」だが新人調香師だけは違った。当時、カルバンクラインのエスケイプで大量に使用された新しい人工香料カロンを使えば、彼の厳しい要求に応えられるかもしれない。そう感じていた。

その調香師の名はジャック・キャバリエ。今でこそルイ・ヴィトンの香水部門の専属パフューマ―として世界的に有名な彼だが、当時はフィルメニッヒ社に入ったばかりの無名の新人だった。彼は試作に試作を重ね、1992年、今までにない新しい香りをこの世に誕生させた。それまで派手なフローラル中心だった濃厚な香水は日本のバブル崩壊と共に影を潜め、時代はこのあっさりとした優しい香りを全面的に迎えた。世界は緊縮財政に向かい、香水業界はこの香水のヒットをきっかけに、新たなトレンドである「水の香り」「オゾン系」「マリン系」「ユニセックス」へとシフトしていった。

そんな記念碑的な香りとなったロードゥイッセイ、どんな香りだろうか。

ロ―ドゥイッセイをスプレーすると、まず広がるのはユリの花のたおやかな香り。そこにシクラメンの低いしっとりした香りが混じってくる。トップからフローラルブーケ全開で、シトラスはない。水滴がしたたるような白い花の香りだけが漂う。そこにわずかにツンとした透明感ある匂いがする。うっすらと潮風のように吹き抜ける感じがあって、それでいて花の香りもするカロンという香料だ。

このカロンという香料物質こそ、このロードゥイッセイ最大の特徴。よくいう「メロンのような香り」と称される元祖「瓜系」の香り。カロンは1960年代にファイザー社で開発された人工香料で、もともとは洗濯洗剤の基材臭をマスキングする目的で研究されていたものだ。これが1980年代になって少しずつ香水に使用されるようになり、脚光を浴びた。ロードゥイッセイはこのカロンを多用したことで「みずみずしさ」や「しっとりした空気感」を表すことに成功している。そのため、オゾン様ノートの元祖とされる。

優しく穏やかな香り立ちに思えるが、実はかなり強い拡散力をもっているので、気を付けないと周りにとても迷惑をかける類だ。人工香料が多く使われているため、天然香料の多い香水に比べて香りがシンプルで透明感が感じられるというメリットがある反面、強い香りがずっと続くという特徴がある。付けた瞬間に鼻を近づけたりすると、頭痛をおこしかねないので付け方には注意が必要だ。ラストまであまり変化なくウォータリーな白い花のブーケが6〜8時間ほども続く。香水が苦手な方になぜかこの香りを好む人が多いのも特徴だ。今となってはこれに似た香りはたくさんあるが、26年前は本当に新鮮だった。まさにこの一滴がその後の世界を変えた。

大河も海も「一滴の水」の集まりでできている。三宅氏は常に「1枚の布」という素材勝負のデザインをし続けてきた。この香りから始まったオゾン系の「大河の一滴」は、今なお多くの香りを生み続けている。円錐型の美しいボトルは、エッフェル塔の上に満月が重なった姿と同時に、一滴の水がはじけた瞬間を表しているという。

ロードゥイッセイは、香水界の「大河の一滴」だ。たった一滴で混沌とした時代の空気を塗り変え、文化という水の流れを変えた美しい香りだ。

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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) / ネクタリン ブロッサム & ハニー コロン

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

ネクタリン ブロッサム & ハニー コロン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:30ml・11,000円 / 100ml・21,560円発売日:-

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5購入品

2017/5/13 06:19:17

ジョー・マローンの香りを少しだけ敬遠していたのは、ハマると怖いのが分かっていたからだ。

ジョー・マローンの1本1本の香りは、とてもナチュラルで明るく、気分をスッキリさせてくれる優れた品が多い。ただ高いとは思う。コロンというカテゴリで100mlボトルが1本17000円以上。これは庶民にはなかなか手を出しづらい価格帯だ。たとえ30mlが8000円ちょっとで買えるとはいえ、これはもう立派なオードトワレやオードパルファンが買える値段。

何しろネックは、1本持ってるだけではジョー・マローンの香りの良さを知っているとは言えないことだ。これらのコロンはボトル1本1本が「素材」であり、まだ未完成品。ジョー・マローンの香りの本当の楽しさは、それらを自由に組み合わせて付けるフレグランス・コンバイニング(重ね付け)の妙にある。つまり、何本か好きな香りを集めてみて、それらをTPOに合わせて好きなようにコンバイニングした時、初めてジョー・マローンの創った香りの奥深さや本質がわかるということ。

このアイディアは本当に恐ろしい。実践すべく実際にボトルを集め出したら福沢諭吉先生がどんどんお財布から去っていかれるのが目に見えている。ジョー・マローンの「コンバイニングのすすめ」は「学問のすすめ」より強いのだ。何しろ1冊ではなく、全巻そろえたくなるのだから。

そんなコロンの中で、ネクタリンブロッサム&ハニーは、特に女性に人気が高い香りだ。トップにカシス、ハートにアカシアの蜂蜜、ベースにピーチというシンプルな構成ながら、それらのミックスが驚くほど自然なフルーティーさを感じさせる。

ピーチ系のフレグランスは、ともすると合成っぽさが強く感じられたり、わずかに合わせた苦みや酸味で「本物の桃の香りじゃない!」と受け取られたりして、なかなか難しいテーマの一つだと聞く。香水はもともと自然の花やフルーツそのものの香りではないけれど、人はフルーツ系の香りに対しては、本物っぽいかどうかこだわりやすい傾向があるようだ。それは、食べ物として「味覚」とリンクさせてしまうせいかも知れない。それでもこのコロンはかなり自然な香りを再現している部類だと思う。

ネクタリンブロッサム&ハニーは、付けてすぐ、ふわりとした上品な甘さとジューシーな桃の香がみずみずしく漂ってくる。スッキリした甘味、わずかな酸味とグリーンな風味、そして桃やネクタリンの果実がもつ果汁独特の芳醇な香り、これらが絶妙なバランスで心地よく鼻を刺激してくる。これはなかなかすごい調香だと思う。

ピーチの香りと言えば、ウンデカラクトンが有名だけれど、これは桃の表皮にそっと鼻を近づけた時の、柔らかでしっとりした香りを再現している香料だ。これにわずかなカシスの香料を合わせることで、よりフルーティーさをひきだしているのだろう。そしてそれらを支えているのが自然な甘さのハニー系の香料だ。天然のアカシア蜜のような花の香りやコクは抑えられ、すっきりしたいい感じの甘さを出している。何よりよく桃系のフレグランスにありがちなビニルっぽさや苦み、エグみのようなものがわずかなグリーン系香料で打ち消されている点が秀逸。だから、甘いのにスッキリ、桃系なのに爽やかでライトという背反を上手にバランス取りしている。

展開は単純だ。付けた時のふんわりとしたまろやかな、それでもわずかに酸味のあるネクタリン系の桃の香りがずっと同じように長く続く。他のジョー・マローンのコロンに比べて持続時間は長めで、7〜8時間ほども続く。それは合成香料がメインだからだろう。それでもとても雰囲気が穏やかで、女性向けの優しくて可愛らしい香り立ちのコロンだと思う。

コンバイニングにお薦めなのは、ナツメグ & ジンジャー、ポメグラネート・ノアール、オレンジ・ブロッサムあたりのようだ。フローラル系スパイシー系を重ねることで、フルーティー・フローラルにしたり、スパイシーな香りに甘さを足したりするコンバイニングが面白い。ただこの香りに関しては、単品使いで十分楽しめる。高級柔軟剤を遥かに凌駕して使える単品使いがお薦め。

初夏の午後、切り込んでくる強い日差し。風にそよぐ濃い緑の葉。キラキラと明滅する厚い葉陰からそっと顔をのぞかせるネクタリンの果実。その黄色い頬に赤みが差してくる頃、あたりにはえも言われぬ香りが漂い始める。白桃とは異なるつるんとした表面には日の光が輝いている。やがて夏の太陽をいっぱいに浴びて真っ赤に熟した頃、桃園にはネクタリンの甘酸っぱい香りが、南風に乗ってどこまでも漂うことだろう。

ネクタリンブロッサム&ハニー。それは初夏を告げる香り。青空の下、赤桃色の果実からしたたる爽やかなピーチシロップ。

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シャネル / チャンス オー タンドゥル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

シャネル

チャンス オー タンドゥル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:35ml・10,120円 / 50ml・14,520円 / 100ml・20,350円発売日:2010/2/19 (2018/1/5追加発売)

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6購入品

2016/12/4 12:34:54

心惹かれる人はいない。出会うきっかけも、時間も、気持ちの余裕もない。ちょっといいと思う人はいる。でも自分からは何もできない。待っているわけではないけど、仕事上の都合や今までの関係性がこわれたら困るから、愛想笑いや冗談しか言えない。

心惹かれる物はある。でも自分には縁のない物のようにも思う。使えるお金もそんなにない。大体自分に似合わない。ただただ、仕事や家事、育児などのToDoリストをこなすことに神経と体力をすり減らし、延々とルーティンを繰り返す日々。

今を生きる女性には、あらゆる面でリミッターが働いている。シャネルのチャンス・オー・タンドゥルは、そんな見えない縛りと真摯に向き合っている女性におすすめしたいフレグランスだ。ピンクのチャンスを上手に身にまとって街を歩く。それだけで、昨日までの自分には見えなかった景色や風に出会えるかも知れない。

チャンス。

チャンス・オー・タンドゥルは、2010年にシャネルから発売された、チャンスシリーズ3作目の作品。香調はフルーティ・フローラルで、前2作のシプレ調と比べると、柔らかく優しい印象。淡い桜色の液体は、ピンクのボックスと相まって、特に若い世代に強くアピールする。ただ、若い女性向きのガーリーな雰囲気というわけではない。全ての世代の女性につけてほしい、そんなブランドの願いが感じられるしっとりとした穏やかな香りだ。

シリーズ共通の円形ボトルは、正面から見ると、淡い液体色の向こう側に広がる風景がほんのり色づき、まるで夢や希望というフィルターを透かして見る未来のようにも思えて美しい。斜めから見ると、シルバーメタルのプレートが円形のボトル全体を包み込んでいて、大きな平打ちリングのようだ。半透明のスクウェアキャップは、さながらリングのセンターストーン。とても大きな指輪を思わせる。

そんなピンクのチャンスの香りは。

銀色のボタンをスプレーすると、一瞬、柑橘系の酸味と苦みが、アルコールの揮発と共にふわりと立ちのぼる。クレジットにはグレープフルーツとあるが、フルーツやフローラルと共に感じられるので、明確なエッジではない。

スッキリしたそのトップは、2分とせず落ち着き、とろけるようなフルーツの香りと、穏やかなフローラルが立ち上ってくる。これがミドルとなってしばらく肌の上にたたずむ。ここからがピンクのチャンスの真骨頂。

このフルーツ香はマルメロの香りだ。マルメロは、果肉が生食できないことと、寒冷地向きという特徴をもつため、市場にはあまり流通しない果実。だが、その黄色い洋ナシ様の大きな果実から発せられる香りは、ことのほか心を酔わせる。洋ナシのようなコクのある甘さの上に、リンゴの甘ずっぱさをミックスしたような、とてもスイートな香り。花梨(カリン)の優しい香りに近いと言えば、想像がつく方もいるだろう。

秋の陽によく熟れた鮮やかな黄色の果実、マルメロのしっとりとしたみずみずしい香り。そして、静かでほんのりクールな印象のヒヤシンスのノート。そこに、シャネル特有の可憐なジャスミンがミックスされ、果実と花のやわらかいブレンドが、かなり長く続く。

ラストは、クリーミーなベールがかかったホワイトムスクの香りに変わってゆく。どこにもスパイシーさや、とがった部分が感じられない。最初から最後まで、ボトル同様、ふんわりとまるい香りが続く。持続時間は8〜10時間程度。

ただ、香りは優しげなものの、拡散力は驚くほど強いので、付け方はとても注意が必要。ロールオンアトマイザーに移し替え、点で付けるようにしたり、うなじの髪の生え際につけて髪をかき上げたりすれば、ヘアミスト代わりにも使える。女性の髪からチャンス・オー・タンドゥルの香りがふわりと鼻をかすめてきたら、周囲の男は、心中穏やかではいられないだろう。

チャンス・オー・タンドゥル。それは大きな指輪の形のボトルに入った、淡いピンクのフレグランス。まるで、未来を見る大きなレンズのように、美しい桜色の液体を透かして見る世界は、昨日とは少しだけ違う彩りを日々の暮らしに添えてくれるだろう。

性別とか、年齢とか、見た目とか、そんなもので自分にリミッターをかけるのはナンセンスだ。この香りを知っている人生と、知らずに生きていく人生。それはどちらが幸運なのだろう?いつもシンプルにそれだけだ。自分に課しているあらゆる制限を解除できるのも、やはり自分自身だから。

ピンクのチャンス。それはありふれた日常を淡い桜色に上書きしてくれる魔法の指輪。「チャンスはいつも自分の中にある」いつもそう背中を押してくれるココからのメッセージ。

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doggyhonzawaさん
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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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  • 髪量・・・普通
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
趣味
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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

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