Cookieyukiさんのフレデリック マル / イリス プードゥルへのクチコミ |
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- Cookieyukiさん
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- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿142件
2022/2/27 13:41:55
とても素敵なアイリス香。貴婦人が纏う薄いシルクシフォンを連想させるほど柔らかい。
主役は当然パウダリーなアイリスだけと脇役のウッディな香りがとてもいい仕事をしている。まるで新人俳優が主役を務め超ベテラン俳優が脇役でがっちりサポートみたいに。年季が入った演技で主役を食おうと思えばできるのに、敢えてそれをやらずに引き立て役に徹している。
シュッと一吹きするやいなや上品なスミレとアイリスのパウダリーな香りが広がる。パウダリーと言っても白粉のようなむせそうな化粧っぽさはない。寝具や服の香り付けに使われたオリスルートに上品なフローラルを足したようだ。
トップの名脇役はローズウッド。精油持ってるけど薔薇と木が合体したような香りに加えて、スースーした樟脳に似た微かな刺激臭と酸っぱさのある柑橘系の香りが混ざっている。そんなローズウッドとスパイシーさのあるカーネーション、ほろ苦い爽やかさのベルガモットがこの香水を洗練されたものにしている。これだけだとかなりメンズ寄りな香りになるところにイランイランとオレンジが軽やかな甘さを添える。さすが名香クールウォーターを作ったピエールブルドン。上手い!
やがてミドルでフローラルが重なる。アルデハイドも入っている香水は外国製の強い香りの石鹸に例えられることが多いが、同じ石鹸でもそんなキツさも感じさせない。衣服に残ったフローラル石鹸の残り香といったところだ。特定の花が目立つことなくまとまっているが、時々一種類だけが強く感じられることがあるのが面白い。
ラストになるまでかなり長時間特に驚くほどの変化が無いミドルノートが続く。心地よいふんわりした香りなので変化のなさは安心感などの長所として働く。この香りに包まれてウトウトすると幸せだ。
というわけでつけたまま昼寝。悦びに浸ろうとつけた鼻を近づけて香水をつけた手首を嗅ぐ。
あの…..
香りが「ムフフ」って言ってるんですけど。
誰かが香水はキスしてほしいところにつけるのよって言ってたよね。これつけて男性とハグしたらキスに続くその「ムフフ」が始まりそうなんですけど。
遠いところで嗅いでみると先ほどのシルキーな貴婦人の香りにもどっている。
そういえばこれってカトリーヌドヌーブの映画、昼顔をモチーフにしていた。上品な女性の裏の官能的な顔に焦点を当てたストーリーだったっけ。香りでもそれを表現したんだ。先ほどの上品なアイリスとは対照的なダークな香り。お酒飲んだ後お持ち帰りされちゃった翌日の朝のベッドのようなにおいが微かに混ざったムスク。動物的なニュアンスはミドルからのジャスミンか。
アイリスの下で香る微かなバニラとベチバー、サンダルウッド、アンバーに加えてなんだかわからないウッディな香り。キャラメルや黒蜜を思わせる甘味とよく熟成した煙草のようなコクと微かなスモーキーさを伴ったウッディだ。調べてみるとエボニーウッドとある。
エボニーウッドとは黒檀のことらしい。黒檀自体が希少なので実際にその精油が入っているかはわからない。予算内で香水を作れとは言わないフレデリックマルだから本当に使っていても不思議はないけれど。
黒檀は読んで字の如く木目細かい美しい黒い肌が特徴で18cmの太さになるまでに20年もかかるようだ。色調も薄いものから濃いものまで色々あって一般に濃い方が価値が高い。産地は主に東南アジアで許可証付きで超高額取り引きされている。現在日本では入手困難、エボニーウッド近縁種の産地のアフリカでは資金源としてギャングに強奪される事件が相次いでいるほどだ。そんなことを言われるとますます黒檀の精油を嗅いでみたくなる。
ずっと香りを嗅いでいるとなんだか肌の中から自分でコントロールできない感情が湧いてきているみたいで変な気分。黒檀そのものは昔から高級木材として世界各地で使われていて、その香り自体が催淫作用を持つものとして知られているわけではないのだが。
このダークでエロティックな香りが上品なアイリスの香りの中から時々滲み出る。自分の中の女性性に向き合えと言われているみたいで複雑な気持ち。かといって嫌いではなくてむしろ好き。
そういうわけで別に隠す必要もないけど自分ひとりの時だけこっそりつけてる。
トップノート: イランイラン、カーネーション、ベルガモット、パリシアンローズウッド、オレンジ
ミドルノート: アルデハイド、バイオレット、ジャスミン、ローズ、リリー、マグノリア
ラストノート: アイリス、サンダルウッド、ムスク、エボニーウッド、バニラ、 ベチバー、アンバー
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