


















escentric molecules(エセントリック・モレキュールズ)
容量・税込価格:30ml(BOX入)・13,200円 / 100ml・18,700円発売日:-
2025/2/15 17:10:13
「モレキュール01」は、香水界のタブーにあえて挑戦した掟破りな香水だ。
というのも、通常100〜200種類のさまざまな香料を用い、それらを匠の技でブレンドして作るのが「香水」だが、この香水にはたった1つの香料しか使われていないからだ。しかもそれは人工香料「イソEスーパー」。つまり
モレキュール01は、イソEスーパーというたった1つの分子をアルコールで希釈した香水ということになる。調香師の作業はイソEスーパーを適度にうすめただけ。
モレキュール 01は、2006年にドイツの調香師ゲザ・ショーエンによって発売されたが、そうした経緯から、発売当時「香水の概念を覆す革新的な一作」と話題になった一方で「単一香料を薄めただけで作品と言えるのか?」など、賛否両論を巻き起こした。そのため、発売から20年近くたった今も、人によって評価は大きく分かれている。
ちなみに自分は、ブランドの思いや自分の理想に向かって、何千もの香料の中から何百種類かの香料を選び出し、それらのバランスを何度も調整しながら、時間と手間をかけてたった一つの統一点に収束させる「調香師の技術」を尊敬しているので、モレキュール01の「香水としての評価」は低い。なぜなら
イソEスーパーという香料を買えば、近い物が素人の自分でも作れるからだ。
事実、単体のイソEスーパーは何千円かでネット販売されている。それをアルコールで希釈(10%までOK)すれば、100ml千円以内で同様の香りが作れるだろう。だが2025年現在、モレキュール01は100mlボトルが3万円を超える。これが理由だ。自分で千円で作れそうな香りが3万円というのはどうかと思うからだ。そこにプロの調香技術は関係ない。
だがイソEスーパーの香りがNGだということではない。むしろ香りじたいは好きだ。「これなら単品で香水いけるんじゃね?」と思った人の気持ちもわかる。そして知れば知るほどおもしろい香料だなと思う。
では、イソEスーパー100%の香水とはどんな香りなのか?
モレキュール01を肌にスプレーすると、すぐにアルコールの揮発がある。それとともに、本当に微かなウッディが立ちのぼる。これがイソEスーパーの香りか。そう思うがたった2分で消える。それはまるで冬の森の澄んだ空気が頬を撫でるような、ただの透明な清々しさだ。
そして2分後、もう香りがしない。正確にはこれからしばらく液が乾くまで香りがしなくなる。時間にして15〜30分。
「つけたのに香りがしない」そう思った頃、突然、透明感のあるうっすらとした木の香が、ふわりと鼻に感じられるようになる。だがそれも不規則。香ったかと思うとまた無臭、不意に少し甘い香りにも感じる、といった様相。つかみどころがない。それは冬の森を歩く感覚に似ている。
霜に覆われた冬の針葉樹林。冷たく澄んだ空気が頬を撫で、足元には白い雪の絨毯が広がる。時折、枝にのった雪がその重みでシャワーのように頭上から降り注ぐ。そのとき、静寂とともに不意にウッディな香りが立ちのぼる。
この「ほの甘い木の香と粉雪の冷たい透明感」。これがイソEスーパー特有の香りだと思う。それはシダーウッドを思わせる穏やかな木質感でありながら、どこかアンバーグリスのような甘くツンとした余韻も感じさせる。なぜか自分自身の肌から淡いウッディが湧き上がってくるような錯覚に陥る。これがスキンセントと呼ばれる所以だ。
そしてしばらく香ったり消えたりを繰り返す。この「間欠性」はイソEスーパー特有のものであり、嗅覚受容体との独特な相互作用によって生じるとされている。そしていつの間にか消失。体温高めの自分の肌で大体2時間。
通常は他の香料を引き立てる役割を担うイソEスーパーの分子が、ここでは主役として輝き、肌に寄り添うような優しい香りを呈する。ウッディでベルベットのような温かみを持つ香りは、着用者の自然な肌の香りと融合し、個々に異なる風合いを生み出す。←ん。Fのアレみたいだな
ただ紹介文にあるような「ヒトフェロモンの誘惑」云々の効果は怪しい。世界中どの文献を調べても、現在ヒトフェロモンとその効果についてはまだ解明されていないからだ。自分はその言葉を謳う香水は、誇大広告だと思っている。違うなら論文でエビデンスを明示してほしい。
遠くから差し込む冬の日差しが、木肌を黄金色に染め、雪の絨毯に斜めのシルエットを映す。冷たい雪と木の香が森全体を包みこむ。自然の懐に抱かれた瞬間、時間は止まり、心は深い安らぎへといざなわれる。
モレキュール01、その透明な香りが、白い吐息とともに肌で温められて揮発してゆく。
そして香りが消える瞬間、あなた自身が香水になる。
escentric molecules(エセントリック・モレキュールズ)
容量・税込価格:30ml(BOX入)・13,200円 / 100ml・18,700円発売日:-
2025/2/16 18:34:03
「モレキュール02」は、香水の常識を打ち破った掟破りな香水「モレキュール」シリーズの2号機だ。←エヴァ?
2008年、ドイツ人調香師ゲザ・ショーエンによって発表されたモレキュール02は、アンバーグリスを模した合成分子「アンブロクサン」のみを用いた香水だ。この分子は、自然界では希少な存在でありながら、合成香料として再現されたことで、温かみとミネラル感を併せ持つ独特の香りを香水ベースとして提供できるようになった。そういう意味でとてもありがたい香料だ。
この香水を発表したエセントリック・モレキュールは2006年に創設され、瞬く間に有名になった。創設者であるゲザ・ショーエンは「Iso E Super」や「アンブロクサン」といった単一分子100%の香水を作り出し、そのミニマルさで多くのファンを魅了している。
ただ
モレキュールシリーズに対する自分の評価は全て低めだ。それは、調香師の技術的なすばらしさを常に評価したいからだ。このシリーズは全て、単品でいい香りのする香料があって、それをアルコール希釈するだけでできてしまうので、肝心の調香師の技術と作品性に対して、価格が高すぎると思うからだ。
ただ個人的にアンブロクサンの香りは好きだ。モレキュールシリーズは極めて香り立ちが優しい。だから、いつどこにスプレーしても、まず人を嫌な気持ちにさせない。それは大きなメリットで、とても使いやすく、ついつい手が伸びてよく使ってしまう1本になっている。
このアンブロクサンは、もともとマッコウクジラが吐き出す体内の結石である「アンバーグリス」の香りを忠実に再現していると言われる。ただアンバーグリス、実は超厄介ですごい代物だ。
アンバーグリスは、マッコウクジラが体内で消化できなかったイカやタコの硬い部分が基になってできる結石だ。クジラは時折、この不要物を体外に排出するのだが、これが長い間海を漂流し、海水と太陽、酸素によって長期熟成されると、独特の香りを放つようになる。これがアンバーグリス(龍涎香)と呼ばれる香料の塊だ。
だから結石が香りを放つまでに途方もない「時間と条件と運」が必要なため、まず現代では天然のアンバーグリスは手に入らない。それでもときどき世界のどこかの海岸で拾う者がいると、たった1個で「何億円」もの値段がつく(マジに)。これはもう一獲千金のトレジャーハンティング。もし海岸を歩いていて、黒や白、灰色の石みたいな塊が転がっていたら、一応匂いをかいでみたらいい。もしかしたら「とんだ億万長者」になりかねない。世界にはそれを狙ってマッコウクジラを追いかける「アンバーグリスハンター」さえいるという。
その龍涎香の香り=アンブロクサン。それが100%=モレキュール02
じゃ、どんな香りよ??←それな
モレキュール02をつける。すぐに感じられるのは当然アルコールの匂いだ。素早く揮発する。通常は手で風を送ってアルコールを飛ばしてから嗅ぐが、ここではアルコール臭ごとスッと嗅いでみる。すると、何とも言えず潮っぽいような少し暗いスッキリした香りが感じられる。これだ。アンブロクサン。数億円の香り。←やめろ
だが01同様、2分もするとアルコールが揮発し終え、一度香りがしなくなる。スプレーしたところがネラリと光っている。このテカリが乾くまで大体10〜20分。アンブロクスは分子が大きく揮発が遅い。だから、液がしっかり乾いたなと思う頃に、やっと香りが浮かび上がってくる。
それはまるで、波打ち際の濡れた石の匂いだ。太陽に照らされたほんのり塩っぽい香りと清涼感ある海の匂い。そして低めのウッディ、柔らかな石鹸ぽさ(ムスク)。それらが混じった透明で滑らかな香りだ。この感じを抽象的に「ミネラルノート」と言ったりする。
岩や鉱物が輝く静かな海岸。波打ち際には濡れた小石が散りばめられ、太陽光を浴びてきらめいている。浜には穏やかな潮風が流れ、遠くには青い海が広がる。その美しさ、純粋さ、そして海洋生物のアニマリックな匂い。
あーわかんねーよそんな抽象的じゃ。そう思うなら
取り急ぎアンブロクサンを知りたい人は、ディオールカウンターに行って、メンズ香水「ソバージュEDT」をつけて、無理に手でこすって強制的に揮発させるといい。すると2時間たったラスト香になる。ソバージュEDTはアンブロクサンを大量に投入してるから、わりと近い香りになる。
モレキュール02は、つけて20分してアンブロクサン出現。2時間ほど柔らかく香ってドライダウン。香りは変化なし。それだけ。でも淡くて心地いいスッキリ感がある。
それが伝説のアンバーグリスの香り。モレキュール02。
escentric molecules(エセントリック・モレキュールズ)
容量・税込価格:30ml(BOX入)・13,200円 / 100ml・18,700円発売日:-
2025/2/22 03:54:36
香水に入ってる「ベチバー」ってよく聞くけど、どんな香り?
1度でもそう思ったことがある方は、英国の香水ブランド、エセントリック・モレキュールズの「モレキュール03」を試してみるといい。この香水は、ベチバーの根から抽出された分子を唯一の成分として使用した「ベチベリルアセテート100%」の香水だからだ。
通常、香水というのは100種以上の香料を用い、調香師が各ノートの配合量を計算し、何度も試香してトップ・ミドル・ラストを調和させながら完成させる。そこには多くの手間ひまと時間、さらにクライアントオファーに応えられる膨大な香料知識が必要である。
だが近年、こうした伝統的なピラミッド型の香水作りの手法は崩れつつある。たった何種類かの香料で作った香水が爆売れしたり、あるいはトップノート香料だけで作った香水に、ミドルノート香料のみで作った香水を重ね付けさせたり。時代の変化に伴い、香水の作り方も変化してきている。
そんな流れの中、香水作りの常識を覆す手法で話題となったのがモレキュールシリーズだ。ブランド創業者ゲザ・ショーエンは「香料にはたった一つでいい香りがする物もある」という、調香師だからこそ知る秘密を全世界に暴露することにした。つまり「単一分子のみで作る香水」というコロンブスの卵的発想を実現した。
こうしてモレキュールシリーズは、01がイソEスーパー、02がアンブロキサンという単一人工香料のみで作った香水としてリリースされ、香水界に衝撃を与えた。
ただ自分の場合、モレキュールシリーズに対して評価じたいは低め。それは調香師のこだわりの調香技術とは全く別のアプローチで作られた香水だから。それだけ。
シンプルさを追求したミニマリズムの極致ともいえるモレキュール。この03は、2010年に「ベチベリルアセテート」という単一分子を用いた香水としてリリースされた。ではどんな香りがするのか?
モレキュール03を肌にのせる。すると最初に感じるのは、意外にもグレープフルーツに似た爽やかな苦味と酸味だ。え?ベチバーってこんなにシトラスっぽいの?アロマテラピーのオイルで嗅ぐと、もっと土臭くてシャープで茶色い苦味が強くて、な印象なんだけど?と驚く方もいるだろう。
それもそのはず。
実は03で使用されている香料ベチベリルアセテートは、天然ベチバー特有の土っぽさやスモーキーさを抑えつつ、グレープフルーツのようなフレッシュさを引き出すために、酢酸と化合させたアセチル化技術で生まれた香料。つまり天然香料と化学を掛け合わせたハイブリッド香料だ。
これにより、自然由来の要素と科学的革新が見事に融合し、その結果ウッディでありながらシトラスの軽さと爽やかさをもち、草原を思わせる滑らかな香りが生まれた。だから天然ベチバー100%の香水とは言えない。天然ベチバーの苦味と重さを軽くし、トップにシトラス感を出した香料、それがベチベリルアセテートの香りだ。
このトップで得られた爽やかフルーティーな香りは5分ほどすると消失する。これも03の特徴だ。01や02は分子が重たく、最初から香りが出てくることはないが、03はトップから香り、次第にベチバー本来の香りにシフトしていくという面白い構造になっている。
03は、時間が経つにつれて土や草っぽいニュアンスが顔を出し、大地と森の生命力が肌に溶けこむように感じられていく。そして最後には、香ばしい干し草のようなアーシーが残り、自然な香りでドライダウン。そこまで自分の肌で34時間。
03は、01や02の完全人工香料と異なり、天然ベチバー由来のリラックス効果をもっているのが特徴だ。同時に、みずみずしいグレープフルーツのトップ香で気分もリフレッシュさせてくれる。そうした変化を楽しめる方や少しマニッシュな土や草感が好みな方におすすめしたい。03は、あなたの忙しい日常に安らぎと静けさをもたらし、人と自然との命のつながりを思い出させてくれるはずだ。
ベチベリルアセテートの香りは、どこか暖かな日差しに包まれた広大な丘陵や、その向こうに広がる神秘的な森を彷彿させる。明と暗、乾いた草と湿った土。リフレッシュとリラックス。この香りには太陽と大地が織りなす対比と調和が息づいている。モレキュール03は、その大自然を吹きわたる風を肌で感じさせてくれる。
ベチバーってどんな香り?もしそう思うことがあったら、どこかでモレキュール03を試してみるといい。それは野生的なベチバーの香りをブラッシュアップした爽快なベチバーの香り。
シトラスの爽やかさと太陽の暖かみ、干し草の香ばしさと森の土のスパイシー。全てをミックスした大地讃頌の香り。
escentric molecules(エセントリック・モレキュールズ)
容量・税込価格:30ml(リフィル)・8,800円 / 100ml・19,800円発売日:2017/11/20
2025/2/22 12:14:29
極上サンダルウッドのサブステ香水「モレキュール04」のクリーミーウッディに酔う。
モレキュール04は、極上サンダルウッドの代名詞「マイソール産香木」を人工香料に置き換えたような香りだ。もちろん同じではない。それでもシンプルなウッディの中に、香木の香りの奥深さと、肌に溶け込む透明感が感じられ、香水の新しい可能性を教えてくれる。
2017年にドイツ人調香師ゲザ・ショーエンによって創られたこの香水は、合成香料の分子「ジャヴァノール」を主役に据えた革新的な作品だ。ジャヴァノールは、天然のサンダルウッドの温かみとクリーミーさを持ちながらも、軽やかで透明感のある特性を持つ分子であり、この香りはその純粋な形で表現されている。
香水ブランド、エセントリック・モレキュールズが掲げる「ミニマリズム」を体現したこの香水は、複雑な香り構成を排除しながらも、驚くほど多面的な印象を与える。
エセントリック・モレキュールズは2006年に英国で創設され「アンチフレグランス」という独自の哲学で知られるブランドだ。創業者であり調香師でもあるゲザ・ショーエンは、単一分子の美しさを追求し、従来の香水業界の常識を覆す作品を次々と発表してきた。モレキュール04もその流れを汲む一作であり、ブランドのシグネチャーともいえるミニマリズムと革新性が凝縮されている。
ただ「完成された香水」として見ると、シリーズを通して自分の評価は低くしている。そこには、本来あるはずの調香師の技術や知識等は反映されていないと見ているからだ。
では、高級サンダルウッドの香りを模したジャヴァノール、一体どんな香りがするのか?
モレキュール04をスプレーする。最初の30秒、アルコールの揮発を待って嗅ぐと、最初に感じられるのは、少しメタリックなシトラスピールを思わせるフレッシュさだ。レモンとグレープフルーツの中間。その皮のような酸味が少しソリッドに揮発する。それはまるで冷たい金属板に滴る果汁が弾けるような感じ。フルーティーよりは無機質な酸味といった印象。そんなトップノート。
その後、少しずつ時間経過と共にクリーミーなウッディノートが顔を出し始める。この変化は滑らかでありながらダイナミックで、森に差しこんでいたまばゆい太陽が、徐々に傾いて夕暮れの色彩に変わるような感覚だ。香ばしい木の香は軽やかで心地よい。それは次第にオレンジ色から茶色へと少しずつ香りの深みを増して広がってくる。
5分ほどすると、トップにあったメタリックな酸味は消失し、豊かで香ばしい木の香りが全体に広がってくる。確かに、数多くの香水のラストで感じる木の香だと思う。感じられるのは、ほのかな甘さ、クリーミーなヴェール。それらが温かみを感じさせ、心を穏やかにしていく。緊張がやわらぎ、ほっと一息つきたくなるような優しい木の香りになる。これがミドル。
最後には、木の温かみとほの甘さ、クリーミー感が融合した独特のベースノートが肌に溶けこむように感じられながら、ゆっくり消失する。このラスト、ジャヴァノール特有のクリーミーなサンダルウッド調が、さまざまな香水ベースに用いられる人気の秘密だろう。その余韻は長く続き、まるで肌そのものから漂う自然な香りのように感じられて心地いい。
このジャヴァノールは、香料会社ジボダンが96年に開発した人工香料で、有名香水では、エルメス「テール・ド・エルメス」やディプティック「タムダオ」などに多く使われている。だからそれらのラストがお好きな方は、モレキュール04にも心地よさを感じるかもしれない。
折しも天然サンダルウッドは、様々な要因で香料としての採取が絶望的なところまできている。だから現在、サンダルウッドを入れた香りを創るためには、ジャヴァノールのような優れた人工香料を使用するしかない現状がある。天然サンダルウッドは、甘くバルサミックで柔らかなウッディ調だが、ジャバノールはそれに加えて透明感や軽やかさ、そしてメタリックなフレッシュさを持つ。さらに香りが非常にきめ細かく均一なのも特徴だ。言うなればジャバノールは、天然サンダルウッドの魅力をブラッシュアップし、現代に甦らせた存在と言える。
人里離れた静寂な森。夕暮れ時、木々の間から差し込むオレンジ色の光が地面に反射し、その空間全体が柔らかな輝きに包まれる。空気には湿った土と木々の香りが漂い、その中に微かな冷たさが混ざっている。モレキュール04は、そんな風景を思い起こさせる詩的な香りだ。
「別の選択肢」や「他の可能性」を表現する際、オルタナという言葉をよく使う。
モレキュール04は、失われつつある最高級のウッディ香を未来につなぐ、オルタナティヴ・サンダルウッド香水だ。
escentric molecules(エセントリック・モレキュールズ)
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)・香水・フレグランス(その他)]
税込価格:-発売日:-
2025/2/23 00:25:05
地中海の夏、松林の清涼感をボトルにつめた香り、モレキュール05。
まばゆい太陽に明滅する地中海。海沿いの小道を歩き、どこまでも広がる空と乾いた大地を見渡す。松林が遠くまで続いている。不意に清涼感ある樹脂の香りが鼻をくすぐる。
モレキュール05は、そんな「松脂」の香りがするカシュメランという単一香料で創られている。
モレキュール05は、2020年にドイツ人調香師ゲザ・ショーエンによってリリースされた。シリーズ第5作目となるこの05は、これまで同様、単一の香料分子を主役に据えたミニマリストフレグランスだ。今回用いられているのは「カシュメラン」というアロマティック・ウッディ系の香料。これは単に木の香りというだけでなく、ハーバルな香りも多分に含んでいる。
カシュメラン分子は、1970年代にIFFの研究所で開発された。ウッディでムスキーな香りに加え、松脂のような甘くシャープなアロマティックを併せもっている香料だ。ショーエンは、この分子が持つ複雑な個性に着目し、地中海の島々で過ごした夏の日々を再現するために、この香水を創りあげたという。
「シンプルさの中に潜む個性」を追求し、複雑な調香を離れて単一香料のみで作るモレキュールシリーズ。この香水群で注目を集めたブランド、エセントリック・モレキュールズ社は、2006年にゲザ・ショーエンによって設立された。現在は、シリーズ5作目のこの香水05までリリースされている。
この香水の最大の特徴は、トップからラストまで一貫してカシュメランが主役である点だ。だが、その香りは時間とともに微妙に変化し、肌化学との相互作用によって、個々人で異なる印象を引き出すとされる。
では、カシュメランとはどんな香り立ちなのか?
05をスプレーする。するとアルコールの揮発と共にすぐ、ツンとした独特の清涼感が鼻の奥を通り抜けていく。「松ヤニ」の香りを嗅いだことがある方はわかるはず。あの独特のユーカリのようなクールな感じと生っぽい樹脂の苦味。それらがスッと高いところに抜けていくトップ。
香水の香料構成では、よく「パイン」と書いてある香り、それがこのカシュメランの香りだ。ミントとユーカリを混ぜて苦々しくしたような松の樹脂の匂い。子どもの頃、松の木の傷から出ていたベッコウ飴色の樹脂に触れたら、この匂いが強烈に香ってきたのを思い出す。一度手についたら激しくベタついて、手を洗っても取れなかった苦い経験が蘇る。あのときも遠くで海がキラキラ輝き、潮風が吹いていた。
5分ほどすると清涼感は次第に和らぎ、乾いた木材と松脂の甘さが漂いはじめ、自分が松林の中を歩いているような気分になる。日本でも海岸沿いに松の防砂林が植樹されているところは多いが、地中海にも沿岸にパインツリーの林が広がっているそうだ。きらめく波光と鳥の声、波の音が聞こえるようなスッキリとしたウッディ香になってくるミドル。
やがて時間が経つにつれ、パインツリーの甘くシャープなウッディに、ほんのり清潔感あるムスキーな温かみがプラスされ、肌本来の香りのような親密さを感じさせ始める。そして最後には、クリーミーでバルサミックになり、4時間ほどでドライダウン。
松脂の香りはアロマテラピーにも精油があるので比較的わかりやすいと思うが、カシュメランはアロマオイルほどキツくなく、香りも少し変化するのが特徴。後半には温かみのあるムスキーな清潔さ、そして甘みが出てきて、香水のラストをスッキリ締めくくりたい時にふさわしい香料だと思う。
地中海沿岸の小道を歩くとき、強い日差しと乾燥した空気でできた樹皮の裂け目から、樹脂の匂いが漂ってくるという。遠くには青く輝く海が広がり、波音が静かに聞こえる。足元には松葉が敷き詰められ、その上を歩くたびにふわりと自然の香りが舞い上がる。この情景こそがショーエンが思い描いた05の本質だ。
樹木は自身の傷を癒やし、外界から守るために樹脂を出して固める。それは人も同じだ。血を流して傷を固め、涙をこぼして心を乾かす。人も樹木も、外敵から自分を守るために、体内の液体を使って生き抜いている。
モレキュール05の香りをつけていると、風雪に耐え、砂嵐を防ぎ、針葉を何億枚も広げて太陽と風に立ち向かう松の木の強さを思う。例え暴風雨に樹形を曲げられても、どこまでも太陽の方へ枝葉を伸ばす針葉樹の強さを。
モレキュール05は、乾燥しきった地中海の夏、ひび割れた樹皮から生まれる自己防衛システムの香り。クールでスッキリしていて、どこまでも自分を愛し、守ろうとするバリア。
強さとたくましさを感じさせる琥珀色の樹脂、そんなカシュメランの冴えた香り。
お運びいただきましてありがとうございます。いつまでも女性でいたい!外見も内面も...お若い方から先輩の皆様、もちろん、同世代の方々のクチコミ、ご意見を… 続きをみる