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doggyhonzawaさん
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ルイ・ヴィトン / アポジェ

ルイ・ヴィトン

アポジェ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2018/12/8 06:49:33

旅に出よう。自然の中へ。目指す地には何が待っているだろう?モノグラムのスーツケースに最低限の荷物と最高の香りを詰めて。胸いっぱいにワクワクを秘めて。

ルイ・ヴィトンが2016年、満を持して70年ぶりにリリースした「旅」を象徴する美しいフレグランスたち。アポジェはその最初の7本のうちの1つ。旅の始まりが薔薇の羅針盤であるローズデヴァンなら、アポジェはその旅の中で4番目の位置づけ。文字どおり旅の「最高潮(到達点)」を表したであろう香り。それはいったいどんな香りなのか?そこに秘められた調香師ジャック・キャバリエの思いは?アポジェの香りの秘密に勝手にせまる。

シンプルで美しい薬瓶ボトルからアポジェをスプレーする。その瞬間、柔らかくフルーティーな芳香が広がる。甘くて芳醇なお酒のようにクリーミーな香り、これは思いきり洋ナシ系の香りだ。ネット上では誰一人言ってないがそう思う。この洋ナシ系の香りには時々酸味も感じられ、みずみずしいリンゴの果実の香りにも思える瞬間がある。また、わずかながらバナナの香りに感じるような発酵したノートがある。さらにオレンジ系の酸味も感じられるので、洋ナシよりもマルメロの香りに近いかなと思う。

マルメロの近似種はカリンだ。鮮やかな黄色の実をつけ、その甘酸っぱく柔らかな芳香はとてもジューシーで印象的だ。以前、シャネルのチャンスオータンドゥルをレビューしたときに、トップからマルメロのフルーティーさが感じられると書いたけれど、アポジェの場合は洋ナシやマルメロ系そのもののフルーティーな香りが強く主張してくるイメージだ。

10分もすると、フルーティーさはそのままに、下からジャスミンやふんわり軽いローズの気配、マグノリア系のマイルドなファセットが感じられてきて、あ、やっぱりベースはフローラルなんだなとわかる。時折スッキリしたグリーンな感じも見え隠れし、ライトなミュゲだなあと実感することも。とてもしっとりとしてフェミニンな印象のミドルだ。香調全体がスライドするのではなく、さまざまな香料が見え隠れするように現れるのは、ジャック・キャバリエお得意のスパイラル調香の成せる業か。アポジェでメインに据えたのはミュゲ(スズラン)とのことだが、これまでのミュゲの香水に比べてもはるかにライトでフルーティーな印象だ。自分には洋ナシ系の香りがメインとしか思えない。

調香師の大沢さとりさんによると、洋ナシの香りはエチルアセテート、ヘキシルアセテートなどのエステルにムスクを少し入れたフルーティベースを元に、ミュゲ系香料を合わせて創ることができるという。だからアポジェは「ミュゲ香をベースにしつつ洋ナシ様のフルーティーさが強く感じられる香り」という認識もあながち間違っていないだろう。

香りはトップからラストまで大きく変化なく、洋ナシ〜ホワイトフローラルブーケのノートがずっと続いて静かに減衰してゆく。持続時間は自分の場合で4〜5時間ほど。ベース香にジャック・キャバリエお得意の軽いホワイトムスクが配合してあるようで、さすがオゾン系の始祖、どこか水や空気のように澄んだ透明感ある香りのまま柔らかく消えていく。ウッディをほとんど感じないので、他の香水と重ね付けも楽しめるだろう。実際、ヴィトンのフレグランスアドバイザーもそんな話をよくしている。フルーティーフローラル系統といってもいいほど、ライトで透明感ある香りだ。

ではなぜ香りの旅の「最高潮〜クライマックス〜」が、洋ナシやマルメロ系のフルーティーなスズラン香なのか?

一つはスズランがフランス人にとって、大切な人に贈る「幸運の花」であることが考えられる。フランスでは毎年5月1日、街中にミュゲの売り子が現れ、愛する人へ小さな花を贈り合う習慣が続いていることから、とても大切な花としてテーマにしたのでは?ということだ。

また洋ナシやマルメロ香は、どこかギリシャ神話に出てくるヘスペリデスの園の伝説を彷彿させる。ゼウスとヘーラーが結婚したときにガイアから贈られた「黄金の果実」。通常この「不老不死ももたらす」とされる果実はリンゴとする伝承が多いが、黄金色で芳香を放ち、形も似ていることからマルメロだと捉える説も強いようだ。元々フランスやイタリアでは昔からマルメロの生産が盛んで、コンポートやジャムなどの加工食も有名だ。フランスとイタリアをつなぐ香り、いつしかそんな旅のイメージが心によぎる。

旅の最高潮、それは目的地への到着。そこは花々と果樹に囲まれた小さな楽園だった。愛する人に幸運をもたらすというすずなりのミュゲが香り、黄金のマルメロが妙なる芳香を漂わせている。マルメロの花言葉は「魅惑」「幸福」だという。

そこはアポジェ。旅の到達点。幸福の香りに包まれた魂の安息の地。

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エトロ / ウダイプール オーデパルファム

エトロ

ウダイプール オーデパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:100ml・25,300円発売日:2018/5/16

6購入品

2021/5/15 12:30:54

「インドなんか二度と行くか!ボケ!!」という最高に笑える本がある。著者のさくら剛さんはお笑い芸人を目指して上京するも、すぐに挫折してひきこもり生活に突入。好きな人ができても思いきりふられ、その度にインド、アフリカへやけっぱちの傷心旅行。ヤバいとこにばかり首を突っ込んでいく雑草根性が本当最高。エトロの香水を思うとき、ついこの本を思い出して笑ってしまう。エトロじたいはとても洗練されたブランドなのに。

エトロは、1968年にジンモ・エトロが創業したミラノのファッションブランドだ。旅行好きなジンモはインドへの旅で出会ったカシミアのペイズリー柄ショールに多大な影響を受け、その布地やペイズリー柄を欧州に紹介したことで一躍有名になった。香水部門においては、グラースの香料会社ロベルテと協働し、高品質な天然香料を軸にしたナチュラルでオリエンタル嗜好な作品を提供し続けている。彼は何度もインドに行ってる人だ。

そのエトロがブランド50周年を記念して、2018年に発売したのがウダイプール・オードパルファムだ。ウダイプールはインド北西部、ラジャスタン地方にある都市の名前。紺碧のピチャラー湖周辺には、古代からマハラジャの宮殿や城塞が築かれ、別名「湖の町」とも呼ばれ観光地としても人気だそうだ。

でも自分は行きたいとは思わないな。さくらさんの本のせいか、ついそう思ってしまう。

かつてシルクロード交易の要所であり、スパイスや布地、植物や動物など、東方の貴重な交易品をヨーロッパに届けていたウダイプール。それはエトロというブランドにとって、インドとイタリアをつなぐ重要な場所だったということだろう。

では、そんな思いがこめられた周年記念作品、ウダイプールとはどんな香りなのか?

シンプルで美しいボトルからウダイプールをスプレーする。その瞬間、華やかでクリーミー、フルーティーかつウォータリーな白い花の香りがふんわり辺りに広がる。濃密な南国花のミックスだ。一瞬で自分が好きなタイプだと分かる。トップからのけぞりそうなロマンティック。猫にマタタビ。野良犬ドギーにクリーミーフローラル。いきなり悶絶。1ラウンドKO必至。

香りじたいはほぼ変化なく推移するので、もう少し詳しく分析してみたい。ブランドが出している香料イメージは次のよう。

トップノート:ベルガモット、ピンクペッパー、マグノリア
ハートノート:サンバックジャスミン、ガーデニア、ロータスフラワー
トップノート:パチョリ、カシミアウッド、ムスク

自分の肌では、トップからマグノリアやガーデニアのふんわり甘いラクトン系クリーミーピーチ感、タンス防虫剤っぽいカンファーさを伴った超インドールジャスミンの優雅なフローラル感が交じり合い、フルーティー&クリーミー&エロティックなフローラルとなってふわふわと広がってくる感じ。そこにハスの花のみずみずしいウォータリー感も効いていて、水辺のゆったりしたガーデンを思わせる香りになる。これが6〜8時間続く展開。

エトロ香水と言えばかなりインド偏愛で、他の作品にもわざわざ「マイソール産」と書いたサンダルウッドを使用したり、ピンクペッパーやインセンス、ウッディを多用している感じがあったが、このウダイプールは、白く厚い花弁の花の香りをかなり濃厚にミックスした、超ド級ハネムーンロマンティック仕様になっているように思う。

これには参った。今までエトロの香水は「インドっぽさ多め、天然香料使いの地味系多め、シングルノート多め」と勝手に認識していたので、初めてつけたときには本当に驚いたのを覚えている。特に、チュベローズ系、ジャスミン系、ガーデニア系が好きな方には相当おすすめしたい天国の楽園フロリエンタルだ。

インド、ウダイプールのピチャラー湖の真ん中には、かつてマハラジャが住んでいた巨大な宮殿レイク・パレスがある。そこは現在、超リゾートホテルとして観光客の目と心を楽しませており、ときに天国の楽園と称されるという。このホテルの中庭には、リリーポッドと呼ばれる美しいハス池がある。仏教においても古代エジプトにおいても大切にされた永遠の命を司るというハスの花。ウダイプールという名の香水には、東西の水を交わらせ、文化の流れをつないだピチャラー湖とハスの香りも感じられて興味深い。

インドの花とイタリアの花。そして世界の水辺に咲くハスの花。ウダイプールはそれらエキゾティックな花々の蜜を集めた「香りのレイクパレス」だ。

湖に浮かぶ白亜のレイクパレスホテル。その中庭の池のほとりで、美しい花々の香りに囲まれて悠久の時を思い、ゆったりくつろぐ。なんかいいな。そういうの。



なんだ自分・・・。本当はちょっと行きたいかも。インド。

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メゾン フランシス クルジャン / グラン ソワール オードパルファム

メゾン フランシス クルジャン

グラン ソワール オードパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:70ml・32,670円発売日:2016年10月

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6購入品

2018/11/24 14:10:48

晩秋は傷がしみる季節だ。心も体もカサカサと乾いて。そんな時期につけたい薬のようなオードパルファム、それがフランシス・クルジャンのグラン・ソワールだ。

天才調香師という冠で紹介されることが多いクルジャン。メゾン・フランシス・クルジャンは、2009年パリにブティックとメゾンを開設した今が旬の香水ブランド。香水に詳しくない方も、この若き才能ある職人の名は覚えておいて損はないと思う。

彼が自身のアトリエをもつことになって最初に世に出した作品は7つ。その中にプール・ル・マタン(朝のための香り)とプール・ル・ソワール(夜のための香り)というペアフレグランスがあった。この2作品は現在廃盤となっており、リファインされてプティマタン(小さな朝)とグランソワール(壮大な夜)の名でリリースされており、香料もかなり変更している。

グランソワールは、木の樹脂香が強くとてもスパイシーだったプールルソワールをマイルドにして、より多くの女性が使いやすい構成に変えたオリエンタル系のオードパルファムだ。パリの宵の時間を表現したというグランソワール。どんな香りかというと。

美しい琥珀色の液体。キャップはギラギラのゴールドメタルキャップ。テンションが上がる宝石のようなボトルからスプレーする。その瞬間「!」という記号と共に気分は一気にアラビア〜ンな世界へ。粘り気のある強い木の樹脂の香り、ハーバルな薬草の香り、そして乾いたスパイスの香りが一気に空気を濃密にする。思わず周囲を見渡し、サリーやターバンを身に付けている人を探してしまうほど。「ここどこ?中東?」「もしかしてディズニーシーのアラビアンコーストにテレポートした?」(←それだ)

クルジャンによるとシングルノートとのことだが、トップはベルガモット系の香料を用いてスッキリ感を出し、ねっとりした木の脂の香りを抑えていると思う。だから少しだけ変化していく。

オープニングから一貫して感じられるのはアンバー系のアニマリックな香り、ベンゾインの甘く酔わせるラムっぽい香り、ラブダナムの暗くてグリーンなバルサム香、さらにはそれらを包みこむクリーミーなヴァニラの香りだ。この4つがそれぞれ主張し合い、危ういバランスを保ってアピールし合う構成だ。そしてこれがグランソワールの香りの全てだ。

持続時間はとても長い。日中間違って肌に試しづけしてしまうと「わ!アラビア〜ン過ぎ!まずい。みんなキョロキョロしてるわ!きっとサリーかターバンを身に付けてる人を探してる!または黒ひげの大富豪!ダメよ、私は黒ひげじゃないわ!まさに黒ひげ危機一髪!」と心の内で叫ぶやいなや、付けた手首を服の袖口でひた隠して化粧室に行ってゴシゴシ洗う可能性大。ところが。

洗い落としたにも関わらずまだ残っている香りの強さに気付いてムンクの叫び。しかし。

「あら。なに、この甘くて狂おしい香り!」

そこで初めてグランソワールのスパイシーヴァニラのブレンドのよさに気付いて虜になってしまうのだった。合掌。(←大丈夫か)というか、それくらい落ちない。持続時間はゆうに10時間。粘度の高い樹脂系の精油を多く使用しているのでオイリーな香りが長く続く。

この香水に多く使われているベンゾインやシスタスは、自身の傷ついたところを保護したり、過酷な気候から身を守ったりするために粘性のある樹脂を出す木や植物だ。どちらも古来より傷の治療、咳や鼻炎、呼吸器系の治療にも使われてきた薬効高いレジン。晩秋は人の体も乾燥してくる。落ち葉のようにカサカサと。樹木は樹脂を出すことで自らを守り、傷を癒してきた。人にもそんな体や心に効く香りが必要だ。

注意点を挙げるとすれば値段とTPOだろう。フローラルがないので日本の女性は苦手な方が多いオリエンタル系かもしれない。中東の焚香&薫香系、ウードなどが好きな方にはいいだろう。似た香りで言えばルタンスのアンブルスルタン、アトリエコロンのアンバーニューなどがある。それらが好きな方は是非。ゲランのシャリマー偏愛の方も少しならいけるかも。いずれにせよ、淡くシンプルな香りが好きな方が多い日本人女性には賛否両論あろう香り。たくさんの系統の香りを使いこなせる中級〜上級者向けではあると思う。

かなりアクが強いので日中やオフィスワークにはあまり向かない。人混みも避けた方が無難。この香りをまとうなら、せめて夕暮れ空がグランソワールの琥珀色よりも暗く濃くなってからがいい。こういうタイプは寝香水にもおすすめだ。これは夜のための香り、まさにプールルソワールだから。

今日も街に夕暮れがせまる。夕日が空を琥珀色に染めてゆく。それはまるで人々を安息の夜にいざなう焚き火の炎のよう。

そして心に訪れるグランソワール。

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ディオール / ウード イスパハン

ディオール

ウード イスパハン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

6購入品

2018/12/22 18:29:45

「子どもたちが空に向かい両手を広げ、鳥や雲や夢までもつかもうとしている」

この時期になると不意に久保田早紀さんの「異邦人」のメロディが心に流れることがある。今から40年前に大ヒットした歌だ。というかそんなに時間がたったのかと思うと愕然とする。彼女の1stアルバム「夢がたり」はファドやクラシックの要素を散りばめた本物の名盤中の名盤だ。しかしあれから40年とは。(←くどいな)

最近ディオールのウードイスパハンをずっと使っていたせいかも知れない。ラオスのウード、ダマスクローズ、ラブダナムabsなど、東洋系香料を贅沢にフィーチャーしたこのオーデパルファムは、2012年にディオールのラグジュアリーライン、ラコレクシオンプリヴェからリリースされた。調香師フランソワ・ドゥマシーは、若きディオールが東洋のバザールを旅した折に出会って衝撃を受けた香りを基にこの香水を創作している。

ウードイスパハンの桜色の液体は、ダマスクローズのピンクを思わせとても美しい。さらに薔薇のマカロンとして有名な「イスパハン」の名を冠していることからも、ついグルマン調の甘さやクリーミーさまで想像してしまう。だが実際の香りはその期待を大きくくつがえす。

ウードイスパハンをスプレーする。付けた瞬間、柔らかく香ばしい木の香りがする。すぐさま酸味の強いくすぶったウードの香りに包まれ、洋酒っぽいアルデヒドのようなヴェールがかかり、その下から漢方薬系スパイス香が出て鼻腔の奥を刺激してくる。とても強いウッディなトップ。全然ローズじゃない。スイーツ系のスの字もない。完全に苦く酔わせるようなウッディ。

やがて3分もすると、墨っぽいパチュリを伴ったスモーキーなウードに落ち着いてくる。焦げた木と濡れた土臭い香り。そこにシャープでグリーンな苦みがのっている。この香りはラブダナムだろう。クレジットにはサフランも書かれているが判別はできない。全体的にウッディ&正露丸少々といった香りに酸味と苦みが効いているようなイメージ。これはありそうでなかなかないウッディ。同時にたぶん日本では苦手と感じる方が多いであろうトップ〜ミドル。

シトラスもフルーツもフローラルもない。まるで中東のモスクの回廊に迷いこんだような雰囲気。あるいは東南アジアの寺院。暗がりの中、白い煙をたなびかせている香木の匂い。そういったものを思わせる。とても強く暗く、それでいて心の柔らかいところが惹きつけられる香りだ。

肝心なのは終始ほのかにローズのシャープな香りが漂っているところ。サンダルウッドとパチュリとウードを焚き火に入れて白い燻煙を上げている脇に、野生のローズを花束にして置いたようなイメージ。イスパハンはダマスクローズの一種、薔薇の名前のニュアンスなのだろう。

やがて付けて1時間もすると、かなり乾いたインセンスのようなウッディに変わってくる。ラストにいくにしたがって、香ばしく温かい感じのサンダルウッド香&ローズ香にシフトする。薔薇は最後に顔をのぞかせてくる寸法だ。わずかにシナモンも効いたこのウッディローズがとても心地よく、安らぎに満ちたドライなブレンドを長く漂わせる。よくあるトンカビーンやアンバーの甘い薬っぽさがなく、スッキリした残香で消えてゆく。

秋冬はついオリエンタルやウッディに手が伸びてしまうことが多い。そこには温かみ、包容力、心落ち着く香りを求める心理が働いているのかも知れない。ウードイスパハンのエキゾティックな香りは、どこか中東の無国籍なバザールを思わせる。乾いたスパイスマーケット、見たこともない食材の匂い、そしくすぶった焚き火の炎。だから「異邦人」のメロディーを思い出したのだろう。

冬の乾いた冷たい空気、派手なのに冷たいイルミネーション。多くの外国人で溢れる通り。意味不明の言葉たち。ここ何年かで日本の大都市はどこもそんな光景に変わってしまった。まるで自分が異国のスーク(市場)に迷いこんだような錯覚を覚える日々。そんな日々を過ごす自分にウードイスパハンはそっとアイデンティティーを示してくれる。自分がだれなのか、どこにいるのか、何をしたいのか。ややマニッシュな強い香りながら、自分という木の幹に力を与えてくれる香り、そんな気がする。

「祈りの声、ひづめの音、歌うようなざわめき」

久保田早紀さんの「異邦人」の歌詞は、時を越えて今も、砂漠の街のバザールを眼前に映し出す。石畳の通り。鮮やかな原色の織物。乾いたスパイスと花の香り。むせかえる樹脂の煙。見知らぬ人々。

そこはかつて広大な領土を広げた国イスパハンのスーク。異邦人の乾いた心にウードの妙なる調べが鳴り響いている。

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フラッサイ / ア フエゴ レント

フラッサイ

ア フエゴ レント

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2021/5/22 13:01:34

雄大なアンデス山脈を望むコテージの部屋。神秘的な星々のまたたきの下、愛し合う二人の魂が、夜に身を委ねるように燃えさかる。暖炉にくべた薪はオレンジ色の波を揺らし、ベッドでは2人の熱い吐息が互いの肌に引き寄せられていく。漆黒の闇の中、暖炉の炎が2人のシルエットを砂丘の稜線のごとく照らし出す。女が囁く。

”A Fuego Lento..."  ゆっくり燃え続けて

フラッサイの香水、ア・フエゴ・レント(とろ火で)。この作品には、そんな官能的なイメージが添えられている。

フラッサイは、長年NYで香水事業に携わっていたナタリア・オウテダ女史が、2013年に故郷のアルゼンチンで創業した新進気鋭の香水ブランドだ。「本当に好きな作品しか出さない」というオーナーの思いは、品数が少ないながらもすでに世界的に高い評価を得ている。現在、日本に代理店はなく、個人輸入で入手することが可能だ。

このフラッサイの香水が、実はどれもすばらしく出来がいい。

フラッサイを日本に紹介した”La Parfumerie Tanu"のサイトによると、一番人気がブロンディーヌ、次にティセンドゥ、僅差でこのアフエゴレントが続いているという。

愛の炎がゆっくり燃えさかる夜。アフエゴレント。では、いったいどんな香りなのか?

アフエゴレントをスプレーする。その瞬間、花開くのは、甘く濃厚なホワイトフローラル。ジャスミン&ガーデニア系の香りだ。下から冷たくやや接着剤のようなツンとしたインドールの匂いも出て強く鼻を刺激する。そこにクリーミーで甘いファセットが加わっていて、ガーデニア寄りのフローラルになっている。トップから強烈。いきなりラテン系。アルゼンチンタンゴではなく、サンバホイッスルをけたたましく鳴らした女性たちが、激しく腰を振りながら出てきたようなゴージャスさに面食らう。

5分ほどすると、くせのあるインドールの匂いが気にならなくなり、ジャスミン&ガーデニアはよりまろやかに花弁を開いてくる。エキゾティック&ナルコティック。なまめかしく、しっとりしていてクリーミーな香りだ。展開は、トップでガツンとフローラルが開き、ミドルまで変わらずに続くソリフロール調。ただ、トップから来る濃厚な花の香りは、付けて1時間ほどすると意外にあっけなく消えて、後は薄くなったジャスミンの残香だけになる。その状態が長く続いて、全体で8時間ほどでドライダウンという変わり方をする。

似たような香り方をする強烈ジャスミン香水は割とあって、例えばフエギア1833のアマリアあたりもそうだ。トップからインドールジャスミンが強烈に出て、30分ほどであっけなく終息。トップでジャスミンが強いこうしたタイプは、他の香料とのバランスどりが難しいのかもしれない。

アフエゴレントは、香り的にはトムフォードのジャスミンルージュによく似ている。どちらも調香師がロドリゴ・フローレス・ルーなので、さもありなんという感じ。ジャスミンルージュは、ジャスミンにハーバル&スパイシーさが寄り添っているのに対し、アフエゴレントは、ジャスミンにクリーミーさとソフトレザーが添えられているイメージ。甘くて濃厚なのは、アフエゴレントの方だ。ジャスミンルージュのリリースは2011だから、おそらくジャスミンルージュの雰囲気を基にしつつ、アレンジする方向でオファーした作品なのだろう。

濃厚なジャスミンやチュベローズ、ガーデニア系が好きな方は腰くだけになるタイプの香り。逆に、昨今流行のあっさり香水が好きな方々は「うわっ!濃い!!」と鼻を抑えて「ムリムリ!」とのけぞるかも。そういう意味では古典的なホワイトフローラルを押しだしたラテン系強めの香水といった風合い。それでも残香のジャスミンはどこまでも明るく、官能的な夜というよりは、海辺のリゾートや太陽の下でふんわり南国の花々が香るといったイメージの方が似合う香水だと思う。

「ア・フエゴ・レント」というタイトルで一番よく知られているのは、ロザーナ・アルベロが歌ったサンバリズムの軽快な歌だ。晴れやかで伸びやかなヴォーカルが心地よく、身体が自然に踊り出したくなってくる。この歌を聞きながらアフエゴレントの香りに包まれていたら、何だか似合いすぎて涙がこぼれた。

青空の下、光る海辺。自分の好きな服を着て風に吹かれて、気ままにリゾート地を散策したらどんなに気持ちが広がるだろう。ロザーナの声に心躍らせて。アフエゴレントの花の香りに包まれて。ああ。出かけたいな。

そんな夢も、きっとまた叶えられる。心に灯った情熱の炎は、たとえ小さくてもいい。長く燃やせたらいい。ロザーナの声がそう歌う。

”あなたの心で私を満たして ゆっくり燃え続けて…”

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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

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