表示
一覧
個別

絞り込み:

426件中 71〜75件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 51歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
アトリエ・コロン / Oolang Infini

アトリエ・コロン

Oolang Infini

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2017/3/25 10:52:26

性別や年齢に関係なく使えそうな香り。そして、季節や時間を問わず一年中気軽に付けられ、オンオフどんなシーンにも合わせやすい魔法のようなフレグランス。そんな香りはないか?と聞かれたら、まずはアトリエ・コロンのウーロン・アンフィニをお薦めする。30mLボトルで¥9,720(税込)。

ウーロン・アンフィニ。直訳すれば無限のウーロン茶。なぜ烏龍茶が無限なのかは定かではないが、アトリエ・コロンはキー素材となる香料名にミステリアスな言葉を合体させたネーミングが特徴なので、そこは追求しない。むしろ追求したいのはその香りだ。ウーロン・アンフィニは、とある有名な香りに似ているとよく言われる。それはあのブルガリ・プールオムだ。では、本当に2つの香りは似ているのだろうか?

結論から言うと、ウーロンを付けたときに立ち上る香りは、ブルガリ・プールオムの香りを知っている方であれば、かなり間違えそうなレベル。それほど印象は似ていると思う。ではどこが似ているのだろう?

それは、ベルガモットの爽やかさと、その下から広がる穏やかなティー・ノート。そして他の香料が織りなすアクアティックな雰囲気の透明感といったところだろう。

ウーロン・アンフィニのトップは、スッキリした心地よいベルガモットの香気と、その下からわずかにフローラルな雰囲気をもったティーノートが主張してはじまる。ブルガリの場合は、トップから高音で透明感あるアルデハイドが、ベルガモットやスモーキーな紅茶の香りを引き立たせる。ベルガモットが強いウーロンに対して、ブルガリは紅茶のコクが強い。

トップから5分ほどすると、ウーロンの方はミドルに移行する。引き続き、高いところで酸味と苦みのバランスが効いたベルガモット、中音でわずかにジャスミンっぽさも感じるティーノート、さらに低音からほんのりとウッディの茶色の雰囲気が顔を出し始める。ブルガリの方は、相変わらずスモーキーな紅茶のノートとアクアティックなくアルデハイドだが、鼻がムズムズするようなペッパーなどのスパイシーノートが感じられ、メンズっぽさが出てくる。ウーロンの方がさっぱりとしていて、女性にも付けやすいライトさが感じられる。

ウーロン・アンフィニの香っている時間は、大体3〜5時間程度。ラストは、わずかにベチバーが感じられるうす茶色のウッディに、シトラスグリーンティーな清涼感を保ったまま消失していく。ブルガリのラストは、紅茶のコクにややソーピーなムスクが寄り添って消えていく。

全体的に見ると、ウーロン・アンフィニは、ベルガモットの爽やかさと苦み、ティーのスッキリ感、ウッディの香ばしさが5:3:2くらいの割合でずっと展開する。これに対し、ブルガリの方は、アルデハイドの透明感、紅茶のコクと渋み、ムスクの清潔感が、2:5:3くらいの割合で主張しているイメージ。つまり、紅茶のスモーキーなコクにこだわったブルガリに比べると、ウーロン・アンフィニはもっとライトで、どちらかというと緑茶に近い雰囲気のティーノートといった違いがある。

え?なんでウーロン茶なのに緑茶っぽいの?そう思われる方もいるだろう。ウーロン茶と言えば、多くの方がこげ茶色のペットボトル飲料を思い浮かべるかも知れない。だが、実際には、烏龍茶はブルーティー(青茶)と呼ばれる茶で、緑色のものからこげ茶色までさまざまな種類がある。発酵度が高い紅茶に対し、烏龍茶は半発酵させた種類であり、発酵度により味も香りも全く異なる。極上の烏龍茶は、緑茶と紅茶の中間に位置する極めて繊細で甘い香りのお茶であり、苦みと渋みが強くてどこか塩素っぽさも感じられる日本の黒いお茶とはかなり異なる。

今まで飲んだ烏龍茶で最も美味しかったのは、台湾土産にいただいた凍頂烏龍茶だ。これは、台湾の特定の高山部のみで栽培される高級烏龍茶の名称で、特級品ともなると100g数万円という品も珍しくないとう。発酵度は日本でよく飲まれる中国大陸産の黒い烏龍茶に比べて20%と低く、そのため味が緑茶に近い。独特のふくよかな蘭の花のような香りと爽やかさがあり、茶湯も澄んだ黄色で美しい。茶葉はコロコロした半球型の黒緑色の粒状だが、台湾茶の作法にしたがい器を温めて二番煎じ茶をいただく頃には、急須の中全体に緑の茶葉そのままの形で広がり、これでもかと詰まっていてとても驚く。

ウーロン・アンフィニは、そんな高級台湾ウーロン茶の清涼感をベルガモットで引き出した香り。いわばウーロン茶版アールグレイ。それは高山の草庵で晴耕雨読する日々に、いっときのくつろぎを与えてくれるお茶の時間のよう。庵の窓外には、灰青色に鈍く輝きはじめた雲海が幾重にも重なり合い、遠く彼方まで広がっている。そのまばゆさに目を細め、茶をすするひととき。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
アクア ディ パルマ / イリス ノービレ オーデパルファム

アクア ディ パルマ

イリス ノービレ オーデパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・18,150円 / 100ml・24,750円発売日:-

6購入品

2018/3/17 20:23:18

女性は男性にとって永遠の花。男はその周りを飛び回る移り気な虫。あでやかで、なまめかしい花々の香りは、いつの時代も男を惹きつけてやまない。アクア・ディ・パルマのイリス・ノービレは、そんな美しい花々の香りで人の心をうっとりさせる、つややかなフレグランスだ。

イリス・ノービレ。高貴なイリスの意。確かに、往年の名優オードリー・ヘプバーンやハンフリー・ボガートが惚れ込んだというブランドだけに、パルマイエローの円筒形ボックスやボトルは高級感があってかっこいい。イリス・ノービレにはオード・トワレとオーデ・パルファムがあるけれど、香料も香りも別物。おすすめは、花々の香りがより濃厚に楽しめるこちらのオーデ・パルファム。香りの柔らかさ、持続性ともに申し分ない。

2006年、フランソワーズ・キャロンとフランシス・クルジャンの共作としてリリース。クルジャンが関わっているということで興味深かったこと、最近、アイリス系の香りに傾倒しているところから購入。50mlボトルが実売価格1万円前後。濃度的には手頃な価格だ。

では、イリス・ノービレの香りはどうかというと。

トップ。スプレーすると、オレンジ系のスッキリした香りがかけ抜ける。ベルガモットはその陰で爽やかな苦みを与えている。さすが柑橘の宝庫イタリア系のフレグランス。かぐわしいオープニングだ。ただそこまでならそのへんのオーデコロンと同じ。特徴的なのは、イリス・ノービレのトップには、柑橘の下からアニス調の冷たいスッとした清涼感が出ていること。このアニスの香りがオレンジと同じくらいの出力で出ていて、いいバランスで重なっている。通常、レモンやベルガモットを多くすると、高いところで柑橘がツンと目立ってしまいがちだが、オレンジやマンダリン系の中音域の柑橘にスターアニスの香りを重ねることで、しっとりしたクールなオレンジ香に仕上がっている。これは春から夏向きの涼し気な雰囲気だ。

やがて3分もすると、アニス調のスッと鼻に通る香りが低音で響きつつ、その上に黄色い花粉っぽい香りが漂うようになる。構成を見るにミモザ系の香料が強いようだ。ややクールな黄色いミモザ、そしてその上に暗い紫色の香りが重なってくる。これがアイリスの感じだろう。同時に低音で渋みのような香りも出てくる。「世界香水ガイド」によれば、ミドルでガーデニアが広がってくる云々と書いているが、もっとセンシュアルで暗い。これはチュベローズのムンムンした香りが出ているのだと思う。

してみるとミドルは、アニスのスッとした感じが消失するにつれて、コケティッシュなミモザとアイリスの粉っぽいヴェール、そして低音で濃厚なチュベローズの三重唱といった感じ。そんなミドルが7〜8時間ほど、付けた場所で穏やかに香り続ける。拡散性は低いけれど、ふとした瞬間に空気が攪拌されたとき、愛らしくかつ肉感的に香りが漂う。

このミドルは、一見可愛らしく見える少女の内面に、どこか女性特有の毒をはらんだ色気が時折見え隠れするようなイメージ。これは男性が無意識にそそられる系かもしれない。男って、顔が幼くて可愛らしいのに体つきがグラマラスという相反する理想を女性に求めて、どこかにいないかと探し回っているバカな生き物だが(←二次元で満足してなさい)イリス・ノービレのミドルはそれをフローラルで表現してしまっている。

ラストは、どこまでも蠱惑的なチュベローズの低音の下から、わずかなヴァニラとアンバーの甘さが感じられてフェイドアウト。このラストも美しい。鼻を近づけてゆっくり嗅ぐと、妖しいチュベローズの誘うような香りがいつまでも感じられる。漆黒の闇の中で、月の光に照らされた白い月下香が透明な蜜を滴らせているようなエンディング。そこにイリスのパウダーがかかったような幻想的で美しいラスト。

フローラルウッディムスクというカテゴリのようだが、ムスキーな感じはしないし、何よりあまりイリスの香りがしない。その点は注意が必要だろう。イリス系というよりは、「ややパウダリーなミモザ&チュベローズ」の方が近いかもしれない。

少女のもつ可愛らしさ、あどけなさ、ツンとすました後に微笑むあざとさ。いつの時代も、女性は男性にとって花のようにあでやかな存在だ。そして同時に、女性は幼い頃から、浮気な虫を惹きつけるための秘密の匂いをその花弁の奥にたずさえている。なまめかしく男を惑わせ、離れがたくする誘引の媚薬を。

あでやかは「艶やか」、なまめかしいは「艶めかしい」と記す。一見、陽と陰のように思えるこの2つの言葉も、元を正せば1つの漢字「艶(つや)」だ。

イリス・ノービレは、まさにこの字のごとし。花々の豊かな色が感じられる美しい香りだ。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 56歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
Ormonde Jayne(海外) / Tolu

Ormonde Jayne(海外)

Tolu

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2022/10/8 02:55:17

オーモンド・ジェインのトルーは、一言で言うなら「たまらん悶絶ソフィスティケイトバルサム!」な香水だ。これは個人的に激好き。悶絶するマジに。とはいえ、女性が使いやすい洗練されたバルサミックアンバー。50mlボトルで英120ポンド。日本円にして約2万円。

◎どんなとき、どんな方におすすめ?
・秋冬。肌寒くなってきて、温かみのある木の樹脂香(バルサミック)に包まれたい方に。「思いっきり木です!木!」的なサンダルウッドやシダーウッドでなく、「木からにじみ出るスパイシーな脂」の香りを感じたいときに。
・トルーバルサムの香りが好きな方。なじみは少ないかもしれないが、シナモン系のスパイシーな香りをもった木の樹脂香。昔ながらのニッキの香りや浅田飴水あめ、シナモンチャイ、甘くてほんのりツンとくる木の樹液の匂いなどが好きな方におすすめ。

◎この香水のよさを3つあげると
・ニッチなイギリス香水ブランドの中でも、知る人ぞ知るオーモンド・ジェインのEDPであること。特にこれまで脇役&差し色的に扱われることの多かったスパイシーなバルサム、トルーバルサムの香りをメインに据えた、清涼感ある樹脂香が楽しめる点は貴重。トルーバルサム香の確認用にも。
・一般的なバルサミックアンバリーな香りと異なり、軽やかでグリーンな爽やかさがあること。通常バルサムやアンバー系の香りはねっとり重たく、動物臭もあるメンズ向け。が、このトルーは全体にスッキリ軽やか。温かいのに柔らかく、女性が使いやすいタイプ。
・つけたところがかなりヌメヌメとテカる。これは高品質なオイルを高濃度で使っている証拠。サイトによると25%以上。つまり本当によいものを創りたくて創っている。なのに価格が法外でない点がすばらしい。

▲逆に「ここはちょっと」な点
・日本で普通に売ってない。こういう真摯な香水ブランドの作品こそきちんと日本で売って欲しいし、売れて欲しいと切に願う。

○背景 (ブランド 歴史)
オーモンド・ジェインは、2002年にロンドンで誕生した比較的新しい香水ブランド。高品質な香料を使用し、独自の哲学に基づいた香水を着実に創っている。特徴的なのは、バスマティ米やナツメヤシ、チャンパカなど、これまでの香水ブランドがあまり主役にしてこなかった香料を主役にすえた作品が多いこと。トルーにしてもここは同じ。合成アンバーのミックスでなく、トルーバルサムのシャープで甘いレジン香をうまく引き出している。

○展開
トルーをスプレーする。はじめに立ちのぼってくるのは、シトラスの酸味と軽やかさをともなったバルサムの香りだ。シナモン様の切ない辛みが広がり、コーラのシュパッ!とした泡の香りを思わせる。透明感あるスッキリ抜ける香り、ジュニパーもある。奥にはちょっと茶色いスモーキーな甘さもある。ほんのりチョコレートライクなビーンズ系の香りだ。トンカビーンだろう。レモンましましコーラに、ほんのりカカオチョコを足したようなトップ。気持ちがあがる開幕。

3分ほどするとやや青いグリーンな香りが浮かび上がってくる。この青い感じは、中音階で鳴り響くフローラルのメロディ。次第に強くなってくる。ラン系の妖しい苦み、ゼラニウムのしっとりした花香、そしてローズの清涼感。これらのフローラルアコードが静かに流れる。しっかりフェミニンなフローラルになる。だが、背後にきちんと樹木のバルサム香がベースを響かせている。甘辛スパイシーな極上の低音。

中音フローラルの柔らかくみずみずしい香り、トルーバルサムの甘辛い香り、この2つがユニゾンでメロディを奏で、ぴったりきれいに決まっている。なんと美しくオリエンタルなミドル。

やがてバルサムは静かにソーピームスクに代わり、洗いざらしの白いシャツのような清潔感ある香りが広がってくるとラスト。ゼラニウム&ローズの余韻を引き連れて、フローラルムスクの石けん香となって晴れやかに伸びやかに終息してゆく。このラストのムスキーは4時間ほど続いてドライダウン。色とりどりの花と木々の香りは、まばゆい空のようなソーピームスクでクロージング。それは遠い異国の野趣あふれるガーデンを思わせる。


亜熱帯の太陽。咲き乱れる花々。風がそよぎ、木々の葉がざわめく。トルーバルサムの木に、茶色いひょうたん型の実が揺れている。甘酸っぱい樹液の匂いがしている。ポットから注いだスパイスティーの湯気が、高い空に吸い込まれてゆく。ここには心落ち着く全ての香りがある。

それは心を安らげるための大切な真実。トゥルー。
心の傷をいやす大切な香り。トルー。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 56歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
Puredistance / M V2Q

Puredistance

M V2Q

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2022/11/26 20:06:56

あなたにとってヒーローやヒロインは誰だろう?もしもいないなら大至急探すといい。自分の中に英雄をもつ者は強い。たとえどんな逆境にあっても、その存在が進むべき道を照らしてくれるからだ。オランダの香水ブランド、ピュアディスタンス(以後PD)の社長、ヤン・エワウト・フォス氏にとってのヒーローは、英国秘密情報部MI6のエージェント、007だったようだ。

「ボトルに入ったジェームズ・ボンド」。PD3作目の香水「M」は、そんな通り名で人気を博した。しかし近年、欧州の香料規制によって一部の香料が使えなくなり、惜しくも廃番になったようだ。そこで「M」の穴を埋めるべくフォス氏が提案したのは「Mの流れを継承しつつ、より優雅でパワフルなバージョン2(V2)の製作」だ。その困難な特別任務についた調香師は、PD香水を何度も手掛けたアントワーヌ・リー。彼の存在は、まさに007のために数々の秘密機器を作るエージェント「Q」その人だろう。かくしてMのV2は、Qの名前も織り込んで2022年に誕生した。その名も「M V2Q」。17.5mlボトルで28,100円。日本正規代理店「PDジャパンEサイト」より購入可能だ。

M V2Qはダニエル・クレイグ版007を彷彿させる、スタイリッシュでハードボイルドなウッディレザー系フレグランスだ。

M V2Qを肌にスプレーする。まず感じられるのはビターなスパイス。ひりつくシナモン。ラベンダーのシャープなアロマティック。これらが同時に香る切れ味の鋭いトップ。この疾走感あるトップは、例えるならダニエル・クレイブ版007の映画の冒頭。群衆の中、ターゲットを追跡するボンド。その奇想天外なパルクールアクション。壮絶なカーチェイスの末、毎回見事に大破するシルバーグレイのアストンマーチン。徹底的に標的を追い詰めるシベリアオオカミのような瞳の007のイメージ。

5分もするとM V2Qはミドルになる。火を噴くワルサー。流れる黒い煙。その硝煙の匂いが立ち込める。ラベンダーのクールな紫の風が、スモーキーなパインウッドの焦げた匂いをはらむ。テロ組織の重要人物を毎回平気で殺めてしまうダニエル版ボンド。MI6の女性上司「M」が「できる限り殺さないでほしいんだけど」と一刺しするも「努力はします」と返し、全く意に介さない007。仕方ない。

00(ダブルオー)は殺しのライセンスだ。

そしてM V2Qはこのミドルからどんどん危険で魅惑的な香りになっていく。まるでひと仕事を終えたボンドが次のターゲットを見つけたかのように。それは、きまって陰のある美しい女性だ。

紫と黒の煙が沈静するにつれ、ほのかなワインアコードと上質なスエード革の香りが感じられてくる。ワインというよりブドウの香りに近い。このブドウ&レザーのフルーティーなミドルは、暗くメランコリックで狂おしい。それは出会ったばかりのミステリアスな女性とグラスを傾けながら、互いの手の内を探り、相手のプライヴェートゾーンへの距離、いわばピュアディスタンスを縮めていく「瀟洒な時間」の香りだ。賦香率28%という驚異の高濃度パルファム・エクストレは、超至近距離でのみ香る一撃必殺のガジェット。ワイルド&センシュアルなこのミドルの香りに気付いたときには、すでに女の心と唇はボンドに奪われている。

ただ、この美しいフルーティーレザーの背後には、いまだスモーキーなウッディの暗雲が立ちこめている。孤独、不安、怒り、そして抑制を表すようなネガティヴな黒い煙。全ては任務のために自身の過去とともに封印してきたもの、あるいは傷。それらが黒いインセンス香となって背中に張りついている。M V2Qのミドルはそんな黒い硝煙と血の匂いを常にちらつかせながら、10 時間ほど続いていく。

ラストはオリエンタルなムードを醸し出してドライダウン。スモーキーなサンダルウッドのベースに、ほの甘いジャスミン、ヴァニラのクリーミー、レザーのドライな香りをにじませ、灰色の霧の中へ消えてゆく。それは去り去るアストンマーチンD5の排気煙。ダブルオーのためにQがあつらえた秘密装備満載のボンドカーの後ろ姿のように。

それでもM V2Qは「ジェームス・ボンドの香り」ではない。この香水は、自分にとっての強いヒーロー&ヒロインを思い出させる香りだ。時代のストレスにさらされ、孤独と不安にさいなまれながらも、自分のなすべき任務を絶対に遂行すべく、傷つき、もがきながら孤軍奮闘する者を力強く支える香りだ。

あなたにとってのヒーローやヒロインは誰だろう?もしいないなら、あなた自身が自分のヒーロー、ヒロインになれ。そんなMの極秘指令が届くはずだ。

”常に心に銃を持て。狙った獲物は必ず仕留めろ。 コードネーム「M V2Q」へ。”

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
メゾン・ヴィオレ / コンプリマン

メゾン・ヴィオレ

コンプリマン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2021/7/17 10:30:31

ムンとした夏の夕暮れ。夜のとばりが下りると、インディゴブルーの空の手前に、ビル群のシルエットが巨大な黒い墓標のように浮かび上がる。悼むのはどれほど大きな死なのだろう。

そんな時間にメゾンヴィオレのコンプリマンの香りをまとった女性とすれ違った。高架下の風の中で。誰もが足早にかけ抜ける暗がりで、一瞬、心と足が止まった。「邪魔」の舌打ちと侮蔑の視線と共に人々は過ぎてゆく。あの香りはコンプリマンだ。そう思って振り返った。そこには点滅する信号機と幽霊たちの行列と、強いビル風しか見当たらなかった。

あれは確かにコンプリマンだ

電車の窓の外、薄暮の広大な河川敷が自分の暗いシルエットに重なって流れてゆくのを見つめながら、さっきすれ違った香水のことを考えていた。部屋に帰るなり、香水棚の奥からサンプル箱を探した。

あった。メゾン・ヴィオレ。コンプリマン。

コンプリマンは、“COMPLIMENT”と表記する。「ほめ言葉」。元が英語なので前は「コンプリメント」と呼んでいたが、仏語発音だと「コンプリモン」に近いことから、香水サイトではコンプリマン表記となっている。

すぐさま左手首にプッシュした。その瞬間、濃厚な白い花の香りに包まれ、そのあまりの美しさに意識が遠のきそうになった。すぐにネットを開き、メゾン・ヴィオレについて確認した。クラシカルな香水にめっぽう詳しいサイトに次のようにあった。

「メゾン・ヴィオレは、かの香水帝国ゲランより1年早い1827年に創業し、香水の黄金時代に人気の絶頂を迎えて、戦後、次第に消えていったフランスの香水ブランド。今から68年ほど前に最後の香水をリリースしたのを最後に、香水界の歴史からその名が消えた。」

そうだ。そして調香学校を出たばかりの若いイケメン3人がこのメゾン・ヴィオレを再興したんだった。

経営者の子孫でもなく、ブランドとも何ら関係のなかった20代の若き調香師たち。彼らはメゾン・ヴィオレのクラシックボトルを世界中からかき集め、失われつつあった香水レシピの復元に挑み、そしてアドバイザーの協力も得て、「古くて新しいメゾン・ヴィオレ」をリブランディングしたという。

そうか。一度死んだ者の骨を拾って再生させた、ってことか。

新生メゾン・ヴィオレが始まったのは2017年。代表作であったプープル・ドートンヌをはじめ3作品をリリースして、ヴィオレは再び世界に産声を上げた。さらに過去作品のレシピを基に再調香し、2021年にコンプリマンが上梓された。現在はフランスの公式サイトから世界中にオンラインで販売されていてサンプルも購入することができる。

改めてコンプリマンの香りを嗅いだ。スプレーした瞬間から、濃厚な白い花々の香りに包まれるハイエナジーな作品。スパイシーな暗さももったとろけそうなチュベローズ香水。それが一番の印象。同時に、トップからふくよかでインドールの影をもった力強いジャスミンも寄り添っている。この2つの香りが核となって、ボリューム感のあるホワイトフローラルブーケを彩っている。トップにシトラスも何もない。最初から濃厚チュベローズクライマックス。例えるならそう、泥沼に降り立った白いワンピースの女性。

漆黒の闇に包まれた全ての欲望で淀んだ世界。その中を優雅に歩く貴婦人のような香り。あたりには腐臭さえ漂っているのに、その女性が通り過ぎたところだけは、美しく華やいだ香りの引き波が空気を浄化していくイメージ。コンプリマンにはそんな「ほめ言葉」が似合いすぎる。

この香水は、白い花々の美しくかぐわしいエッセンスと同時に、ユーカリの清涼感、インドールのゴムっぽさや樟脳っぽい匂い、そしてヴァニラの茶色い香りをも併せ持っており、明暗の対比がとても効いている。そう思う。うす汚れた高架下の闇。そこでこんなにも白くて強い光のような香りとすれ違った。彼女は誰だったのだろう?しばし香りの向こうにその女性の姿を思い浮かべた。

あたりはすっかり夜になっていた。手狭な部屋の窓の向こうには、夜の街の灯りが、地上の星々のように散らばってまたたいていた。

街は今日も人の心を殺した。無言の雑踏の中でぼくの心も死んでいた。いつもそうだ。人はあんなにも多いのにとても冷たくて遠い。でもそこに一羽の白い鳥が舞い降りた。闇夜に咲いた真っ白なチュベローズの香りに、ぼくの心は息を吹き返した。

そして夜。弔われた幽霊たちは、日中死んだ自分の骨や残滓を拾って、再び夜の街で何かを求め、さまよい歩くのだろう。

そんな亡者の街を、白いワンピースの貴婦人が優雅に歩いてゆく。
黒い墓標の街に、コンプリマンの美しいシヤージュをたなびかせ。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

426件中 71〜75件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済

doggyhonzawa さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・58歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・普通
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • ブログ
  • 映画鑑賞
  • Twitter
  • 読書
  • 音楽鑑賞

もっとみる

自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

  • メンバーメールを送る