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doggyhonzawaさん
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アユーラ / スピリットオブアユーラ オードパルファム(ナチュラルスプレー)

アユーラ

スピリットオブアユーラ オードパルファム(ナチュラルスプレー)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:2001/12/1

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2018/9/8 13:55:50

汚れちまったな。服も心の中も泥だらけだ。誰かの手垢まみれの自分。こんな自分いやだ。好きになれない。心も体も洗濯して漂白したい。浄化してしまいたい。

なぜだろう。季節の変わり目にはそんな思いにとらわれることがある。ふだんは透明に見える心の水が本当は泥水だったことに気付くような。ただ泥が心の底に沈んでいて透明に見えていただけで、季節が変わって水がターンオーバーし、沈殿していた心の泥を撹拌してしまったような。そして心の中は視界ゼロの泥水状態。

スピリットオブアユーラという香りに出会ったのはそんなときだった。憂鬱、怠惰、慢性的な心の疲れ。人の心は弱い。たやすく落ちる。そして得てして、落ちたら長い。そんな長さを少しだけ短くしてくれたのがこの香りだった。

アユーラはサンスクリット語で「命」を表すコスメブランド。かつては資生堂の子会社だった。西洋科学と東洋叡知の融合をコンセプトとして、独自の商品を開発・展開している。 中でも2001年に発表されたスピリットオブアユーラ・オードパルファムは、発売と共にじわじわと人気になり、ブランド認知の大きなきっかけとなった作品だ。

スピリットオブアユーラ、「アユーラの精神」。まさにブランドの方向性や考え方をこの商品で語るという大役を担った作品。それは香りでどのように表現されているのか?

スピリットオブアユーラは、まずボトルがとてもいい。大きさも色も形も夏の朝に咲くハスの花のつぼみそのものだ。ハスの花は泥水の中から茎を伸ばして水上に突き出て、やがて大きなピンク色の花を開かせる。それゆえに昔から「聖なるもの、清らかさの象徴」とされ、宗教において珍重されてきたアイコンだ。このつぼみの中にはどんな香りが隠れているのだろう?ふだん香水などに縁遠くても無意識に誘われる意匠だ。

ボトルキャップを軽くつまんで外し、スプレーする。その瞬間、ふんわりと心地よい風が吹く。どこか懐かしいような、あたたかさに包まれているような優しい香りだ。たとえるならお風呂上がりの匂いだ。ジャスミンの入浴剤の蒸気、シャンプーしたてのフローラルの残り香、クリーミーなボディーシャンプーの香り。そうしたものが自分の体から湯気とともに立ちのぼってきたような香りがする。

このトップをよく嗅ぐと、まず酸味のあるハーブの香りがしている。クレジットで見れば、ローズマリーやカモミールなどのハーブが引き立っている印象。そしてその背後からグリーンティーのスッキリした香りが広がってくる。トップからお茶の香りが強く出てくるので、ふーっと安心感を与えてくれる。マイルドハーブ&グリーンティーなトップ。

やがてわずかな清涼感を伴ってほんのり甘いフローラルが感じられてくる。みずみずしく、少しだけ酸味と苦みをもったひかえめなフローラルだ。クレジットによると匂いナデシコと沈丁花とある。匂いナデシコの香りを嗅いだことはないが、カーネーション系のクローブ香をもっているようで、実際、甘くてややツンとした感じの香りだ。ジャスミンとミュゲも背後に感じられ、ミドルは穏やかで柔らかい低音のフローラル香になる。

ところが。

このお風呂上がりの入浴剤みたいなリラグゼーション香は、あっという間に消えてしまう。体温高めの自分の場合は、30分程度であとかたもなく。ラストは淡くまろやかなムスクが残っているばかりだ。同時に樟脳のような暗いシャープな香りがずっと続いていたことが最後にわかる。これがアユーラの言うところの墨の香りだろう。アニス香に似たスッとした香りとして最初からベースに感じとれる。

全体的に見ると、これはとてもニッチな香りだ。香水とアロマテラピーの中間。嗜好品と薬の中間。高価と安価の中間。30分間の癒し&気分転換のための気付け薬的な使い方がメインとなるフレグランス。落ち込んだとき、心がもやもやしているとき、イライラしてスッキリしたいとき、ほっと一息つきたいとき。そんなときにこんな穏やかな香りが心を救ってくれる。「心につける香り」というキャッチから見ても、この作品は自分が香気を吸ってくつろぐための香りなのだろう。うつむいてしまった自分を再び立ち上がらせ、凛として背を正してまた前へ進むための。

「蓮(ハス)は泥より出でて泥に染まらず」という中国の古い言葉がある。いつしか積もったストレスの澱は、いわば心の泥だ。だがそんな泥からも育つ植物がある。ハスは泥水が濃ければ濃いほど大輪の花を咲かせるという。たとえ今が苦しくても、そんな時こそ必ず心の中で伸びている茎がある。それはやがて大きなつぼみとなる。

だから、あなたはいつか必ず咲く花だ。

スピリットオブアユーラは、そんなメッセージと共に心に寄り添ってくれる香りだ。

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ジャン ポール・ゴルチエ / ル・マル オードトワレ ETS

ジャン ポール・ゴルチエ

ル・マル オードトワレ ETS

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:75ml・7,700円 / 125ml・10,450円発売日:-

5購入品

2018/9/22 20:49:30

「その男がね、すごいきつい香水つけててさー」背後から聞こえたセリフに、思わず振り向きかける。週末の夜、狭くて騒がしい居酒屋でのこと。ついたてを隔てた後ろのグループは20代後半とおぼしき女性たち。自分は向かいの同僚の愚痴につきあいながら、背中ごしに聞こえる香水の話に聞き耳を立てた。

「うちの会社来るたびに用もないのに受付に寄ってきてさ、いい店知ってるから行かないかとか、昼間から誘ってくるのね。で、そいつのつけてる香水がきつくて耐えられなかったのー。」

「へー、どんな香りなの?」一緒の女性に聞かれると、背中越しの声は投げやりに答えた。

「なんかスパイシー的な?どこのブランドかわかんないけど、ボトルがさー、緑色で男の裸の形してんの。知ってる?」

思わずうんうんと頷きそうになった。『たぶんそれゴルチェのル・マルだよ。』教えてあげたかったけど、レモンサワーと共に飲みこんだ。そうか、ル・マルかあ。確かに強くてエロい香りかもな。そんなことを思いながら。

ル・マル・オードトワレは、ジャン・ポール・ゴルチェから1995年にリリースされた、ブランドのファースト・メンズフレグランスだ。調香は今をときめくフランシス・クルジャンで、彼自身のデビュー作でもある。男性のボディを型どったトルソーボトルは、そのままではヤバイくらいの造詣なせいか、缶ケースに入れて販売された。ちなみに発売当時はゲイの方々に大人気だった。

ル・マルをスプレーすると、まずトップから感じられるのは、クールなミントの香りだ。ラベンダー独特のじんわりとした清涼感もすぐに感じられる。ミントとラベンダーとくれば、ダビドフのクールウォーター(1988)の影響が見てとれる。ル・マルは、クールウォーターに比べるとネロリのこんもりした香りがない分、とてもスマートでシャープなイントロだ。クールな外国人イケメンといった風情。

5分ほどすると、暗いスパイスがじわじわ感じられるようになってくる。シナモンとクミンだ。これらがラベンダーの背後から妖しく香り出す。このミドルの暗いスパイスミックスがヤバい。心を惹きつけられる狂おしさがある。やがて、そんな清涼感ある暗さがヴァニラのベールに包まれてまろやかになってくるのが分かる。わずかに甘さが出てクリーミーなスパイス香になる。気難しいイケメンと思っていたのに、実は人あたりがマイルドで、何事にも臨機応変に対処できる柔軟性をもった男。そんなイメージのミドル。

そんなミドルが約4時間ほど続くと、香りは穏やかなウッディ&アンバーのやや焦げたような香りを呈して終息していく。最後までシナモンのスッとした感じを残したまま、ヴァニラとウッディに支えられて温かく終わる印象。枕やブランケットに残る男の体臭のようなセンシュアルな残香。驚くことに8時間ほど香りが残っていることもある。トワレにしてはかなりロングラスティングな部類だ。

してみると、ル・マルの創作にはメンズの名香といわれるゲランのジッキーとダビドフのクールウォーターの影響が少なからずうかがえる。ル・マルはジッキーの基本骨格であるラベンダー&ヴァニラのコンボを中心に据えつつ、クール・ウォーターやポロスポーツで印象的に使われたミント&ハーブをトップに持ってくるという合わせ技を用いている。そこにスパイスの辛みとウッディの温かみを効かせたことで、ミントとラベンダー、ヴァニラ、それぞれの長所をうまくつないでいる。

「でもさ、9月に入ってから、もうそいつ、来なくなったんだー、たぶん配置換え。」不意に思考が引き戻される。さっきまでひとしきりその男をネタに笑ったり、罵倒したりしていたトーンが少し変わったことに気付く。やや鼻にかかったような声。酔いが回ったのだろうか?いや、たぶん…。

ぐすっと鼻をすする音がした。女友達がなだめるように何かささやいている。たぶん彼女たちも察したのだろう。男がふだん使っている香水のボトルまで見ているということは、たぶんそれなりに親密だった関係。

「だからさ、もうあのくさい香水、かぐことないんだけどさ、でもなんかねー、時々なんかねー、思い出すっていうか…」

連れが会計のために立ち上がり、自分も居酒屋を後にしたのでその先を聞くことはなかった。

いつの間にか涼しくなった夜風を感じながら、ネオン街を歩き始めた。街にはくすんだ夜の匂いが漂っていた。あの子はいつかまたくだんの男と街ですれ違うだろうか。何年かたって互いに風貌が変わっても、そのとき気付くだろうか?そんなことを考えた。

きっと気付かないだろう。それでも同じ香りをつけた人と街ですれ違ったら、きっと振り向いてしまうんだろうな。そしてそのとき思い出すのだろう。

あのル・マルの男を。

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ザ・ディファレント・カンパニー / マジャイナシン

ザ・ディファレント・カンパニー

マジャイナシン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2018/9/29 23:08:29

人生には4つのタイプの香水が必要だ。1つめはふだん使いの香り、2つめは気分転換用、3つめはここぞという時のとっておきの香り、そして4つめは自分だけのお守りとなる香り。

新間美也さんの著書「香水のゴールデンルール」には、そんな4種類の香水のラインナップ作りが提案されている。このうち、1と2のタイプに春夏秋冬それぞれ1本ずつ用意して香りのシーズナルパターンを作ると、1年間に使いたい香りは少なくとも10本以上になるだろう。香りも服と同等にTPOに応じた着替えや衣替えが必要というとらえ方だ。

季節はまさに秋、シトラスや軽めのさっぱりした香りをチョイスしがちだった猛暑を越えた今は、センシュアルなオリエンタル系や、デザートのようにスイートなグルマン系が華やかに香るいい頃合いになってきた。

ディファレントカンパニーから2017年秋にリリースされたばかりのマジャイナシンは、そんな清々しい秋の空気感に似つかわしいフロリエンタル&グルマン系のオードパルファムだ。レスプリコロンと名付けられた比較的ライトな香りだちを提案するシリーズの最新作で、調香はジャン・クロード・エレナから指導を受けた女性調香師エミリー・コッパーマンが手がけている。100mlで2.1万前後。

では、どんな香りかというと。

ラグジュアリー度が高い白キャップ、そして見るからに「濃厚なオリエンタルに酔いなさい」と言わんばかりのブラウンの液体色とスクゥエアガラスボトルは、まさに高級感&ザ・香水な感じ。そんなボトルからスプレーすると、一瞬くらっときそうな甘い香りに包まれる。とても甘いトップ。まるで幼少の頃にかんだアメリカのバブルガムのような強い甘さ。あの歯が溶けそうなほどに甘いショッキングピンクのウォーターメロン味を思い出す。クレジットによると砂糖漬けビガラードと書いている。つまりビターオレンジの砂糖漬けだ。ベルガモットのサッパリ感もあるけれど、とにかくガムシロそのものといったこっくりした甘さが強烈に主張してくる開幕。

ただ、その甘さは3分ほどしてうすらいでくる。綿アメのような甘さが消失してくると、わずかなシナモンのスパイシー、そして温かみのあるジンジャーの辛みがじわじわと聞こえてくる。そこにフェノリックな薬品っぽさも感じられ、オリエンタルムードが出てくる。ほのかにスパイスチャイのテイストになり、バブルガムの甘さから少し大人びてビター&スパイシーになってきた気配。さながら甘ちゃんな子ども時代から成長して、ピリッとした辛口な大人になったような変化。

このミドルには、トップとは異なったクリーミーな甘さが出てくる。何となくラッシュの「みつばちマーチ」のようなコクのある甘さ。クレジットによるとマロンクリームとある。そこにシナモン系スパイシーが柔らかく重なってグルマン系なイメージ。香料表記にランの花やヘリオトロープもあるけれど、あまり感じない。甘さ:シナモン&ジンジャー:フローラル=5:3:2くらいの割合で主張しながら、ミドルは2時間ほどゆったりと香り続ける。

やがて、この香水の真骨頂であるヴァニラが静かに香るラストを迎える。ここで使われているマダガスカル産のブルボンヴァニラは、通常アイスクリームなどに使われているようなクリーミーな香りではない。結構スモーキーでカカオの風味をもったような、ちょっと焦げた感じのヴァニラだ。トンカビーンの香ばしさ、木の樹脂っぽいアンバーのムードに支えられて大人系の茶色いヴァニラ香となっている。ひかえめだけど、とても心安らぐヴァニラとウッディのコンボだ。そんなスモーキーなヴァニラ香が3時間ほど柔らかく続く。人生で言えば、酸いも甘いも知って、穏やかに日々を過ごす晩年を感じさせるような静かなラスト。

調香師エミリー・コッパーマンは、この香りを創るために直接マダガスカル島を訪れ、現地の人が手作業で作っているブルボンヴァニラをはじめ、薫り高いシナモン、爽やかな辛みのジンジャーを入手したそうだ。人工香料のバニリンを使えば安価で済むところを手間暇かけて抽出した天然香料にすることで、あえて本物のラグジュアリーとは何かを香りで語ろうとしたのだろう。彼女はこの作品名"MajainaSin"という言葉の中に、マダガスカル語の"aina"という語を入れた。それは現地で「人生」を意味する大切な言葉だという。

人生には4つの香りが必要だと説く方もいる。それでも、その4つを全て満たす1本が見つけられたら、必要な香りは1つで済むと考える人もいるだろう。謎かけのような話だ。では最後におひとつ。

「マジャイナシン」とかけて「理想の人生」と解く。その心は?

どちらも「はじめは甘く、それからピリッと辛く、最後は柔らかくクロージングする。」

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ヨウジ ヤマモト / ヨウジオム

ヨウジ ヤマモト

ヨウジオム

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2018/10/13 14:40:34

「これに匹敵するほどの男性用香水はほかに2つか3つくらいしかない。」

「匂いの帝王」と呼ばれる人がいる。「世界香水ガイド」という香水の辞典を著したルカ・トゥリンという人物だ。彼は自分が気に入らない作品はバッサリ切り捨てるが、本当にいいと思った作品はあらん限りの比喩や状況説明を用いて称賛することで有名だ。そんな彼が2000近いフレグランスの中で前述のように絶賛した作品、それがヨウジオムだ。

ヨウジ・オム・オードトワレ。日本人デザイナーでありながら世界で活躍する山本耀司氏の最初の男性用香水だ。ヨウジオムは「強さと官能美のバランス」をテーマに1996年に欧州で発売された。調香師はジャン・ミッシェル・ドュリエ。これがルカ・トゥリンを唸らせ、幻の逸品と呼ばれた香り。ヨウジオムは一度廃盤となっていたが、ルカ等の熱いリクエストに応え、2013年に再発売し、今また世界中にその名を知らしめようとしている。ルカの願いは叶ったわけだ。

ただし、現在流通しているヨウジオムは2013年に調香師オリヴィエ・ペシューがリファインした香り。オリジナルの1996年版とはかなりレシピが異なるようだ。自分の手持ちも2013年版の物。ではヨウジオム2013はどんな香りかというと。

付けたて。一瞬、透明感ある洋酒のような香りがしたかと思うと、すぐに暗くて甘苦い香りが出てくる。ジュニパーベリーのスッキリ感とリコリスだ。エンジェルのトップほどガツンとは来ないものの、似たような暗いオープニング。どちらかというとロリータレンピカのイントロに近い。ただロリータほど甘さは出なくて、リコリスの背後にわずかにお香のようなドライな香りが控えている。リコリスじたいは風邪の内服薬によく入っている甘草という成分なので、葛根湯を飲んだ時に感じる甘苦さを思い浮かべると分かりやすい。

5分ほどしてミドル。ラムの香りがしてくる。透明感ある甲高い香りと独特の渋みが広がってくる。ベルガモットやライムをもっと効かせれば、ティエリー・ワッサー氏の創ったゲランオムのミドルに似ている。このへんはルカ・トゥリンが評している点だが、確かに納得。ワッサー氏の方が後発なので、ヨウジオムを参考にはしていたかも知れないなと思う。さらにラムの下からかなりロースティーでダークな香りが漂ってくる。コーヒーリキュールの香りだ。ミドルはそんなふうに「リコリスの苦み+ラムのスッキリした辛み+コーヒーリキュールのコク」がせめぎあいながら、黒っぽい香りを展開する。

1999版のレシピでは、イントロにラベンダーやコリアンダー、ミドルにはシナモン、クミン等が配されたいたようだから、オリジナル版はもっとホット&スパイシーだったことが予想される。そうなるとリファイン版はかなりスッキリマイルドに調整された印象。どこか洋酒のようで、漢方薬のようだ。コーヒーの香りは弱め。アクは弱く、香り立ちも柔らかい。似た系統ならエンジェルの方がガツンと来てバランスがいい。

ラストも思いのほかあっさりしている。つけて1〜2時間ほどでソフトなレザー香に収束していく。レザーといってもバーチタールなどの燻ぶった香料ではなく、ソフトななめし革系の香りでフェードアウト。清潔感あるムスク系ではなく、レザーを配したあたりに山本耀司氏への忖度を感じる。彼は以前「男は何歳になっても男だ。俺が最も興味あるのは女だ。」と語っていたから、ワイルドな男性性を感じさせるための選択だろうかと推察する。

気を付けたいことは「ヨウジヤマモト」など、似たようなネーミングの香りがたくさんあることだ。2013年リリース作品は男女用全6種類あってどれも安価でいい。ただヨウジオムは、ルカが評価した1999年版とは別物と思った方がいい。全体的にあっさりして付けやすくなったであろうリファイン版。ルカはどう評価するだろう?

ヨウジヤマモトの服は何着か持っていた。どれもワイドでロング丈で、それまでの既製服の常識をくつがえすゆったりしたデザインが好きだった。彼の服を着て街を歩くと、服と体の間に風をはらむ感じがして心地よかった。かつてカラフルが当たり前だったプレタポルテに敢えて黒一色で挑み、全世界を騒然とさせた彼の服は「黒の衝撃」と呼ばれて賛否両論を巻き起こした。彼は75歳を過ぎた今も常に常識を打ち破り、前衛的ながらも着る人を魅せるデザインを創り続けている。

「魅力とは、服とそれを着る人が出会った時に生まれるものだ。俺はそれを“チャンス”または“偶然”と呼んでいる。」彼自身の言葉にあるように、このヨウジ・オムもまた男が身に付ける武器の一つになるだろう。

ヨウジオムは、そんな彼の男としての生きざまを体現した、香水版「黒の衝撃」だ。

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イッセイ ミヤケ パルファム / ロードゥ イッセイ オードトワレ

イッセイ ミヤケ パルファム

ロードゥ イッセイ オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:10ml・3,190円 / 25ml・8,690円 / 50ml・12,540円 / 100ml・17,600円発売日:- (2022/2/1追加発売)

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5購入品

2018/10/27 14:47:51

「香水なんてシミを消すわけでもないし、肌にいいわけでもない。何の効果があるの?」コスメに機能を求める方は言う。そのとおりかもしれない。ざっくり言えば香水なんて香りをつけたアルコールだし。それでもあえて言う。香水はすごい。それはときに人の心や世界の流れまで大きく変えることがあるからだ。

ここに1本の有名な香水がある。細長い円錐形のすりガラスボトルに入った透明な液体。作品名はロードゥイッセイ(イッセイの水)。世界的デザイナーとして有名な三宅一生氏の最初の香水にして最大のヒット作だ。このオードトワレは、それまでの香水文化を大きく変えたといっても過言ではない。

ロードゥイッセイは、まず人の心を大きく変えた。「香水なんて派手だし、くさいし、嫌い」そう感じていた女性たちがこぞってこの香りを買うという現象を生んだ。もともとこの香水は、香水嫌いで有名だった三宅一生氏のブランド戦略として提案されたもので、当然ながら彼は最初は乗り気ではなかった。しかしどの服飾ブランドもイメージアップ戦略の一つとして香水を扱いだした流れにもまれ、遂にイッセイ・ミヤケの香水を出すことが決まったとき、彼は新人調香師に向かってこう言った。

「創るなら、ぼくを驚かせる香りであってほしい。それは例えば、自然の中で深呼吸しているような香り、水のような透明感のある香りだ。」と。

それを聞いた関係者は、みな首をすくめたという。「水の香り?そんなの作れるか。作ったとしても売れるわけがない。」だが新人調香師だけは違った。当時、カルバンクラインのエスケイプで大量に使用された新しい人工香料カロンを使えば、彼の厳しい要求に応えられるかもしれない。そう感じていた。

その調香師の名はジャック・キャバリエ。今でこそルイ・ヴィトンの香水部門の専属パフューマ―として世界的に有名な彼だが、当時はフィルメニッヒ社に入ったばかりの無名の新人だった。彼は試作に試作を重ね、1992年、今までにない新しい香りをこの世に誕生させた。それまで派手なフローラル中心だった濃厚な香水は日本のバブル崩壊と共に影を潜め、時代はこのあっさりとした優しい香りを全面的に迎えた。世界は緊縮財政に向かい、香水業界はこの香水のヒットをきっかけに、新たなトレンドである「水の香り」「オゾン系」「マリン系」「ユニセックス」へとシフトしていった。

そんな記念碑的な香りとなったロードゥイッセイ、どんな香りだろうか。

ロ―ドゥイッセイをスプレーすると、まず広がるのはユリの花のたおやかな香り。そこにシクラメンの低いしっとりした香りが混じってくる。トップからフローラルブーケ全開で、シトラスはない。水滴がしたたるような白い花の香りだけが漂う。そこにわずかにツンとした透明感ある匂いがする。うっすらと潮風のように吹き抜ける感じがあって、それでいて花の香りもするカロンという香料だ。

このカロンという香料物質こそ、このロードゥイッセイ最大の特徴。よくいう「メロンのような香り」と称される元祖「瓜系」の香り。カロンは1960年代にファイザー社で開発された人工香料で、もともとは洗濯洗剤の基材臭をマスキングする目的で研究されていたものだ。これが1980年代になって少しずつ香水に使用されるようになり、脚光を浴びた。ロードゥイッセイはこのカロンを多用したことで「みずみずしさ」や「しっとりした空気感」を表すことに成功している。そのため、オゾン様ノートの元祖とされる。

優しく穏やかな香り立ちに思えるが、実はかなり強い拡散力をもっているので、気を付けないと周りにとても迷惑をかける類だ。人工香料が多く使われているため、天然香料の多い香水に比べて香りがシンプルで透明感が感じられるというメリットがある反面、強い香りがずっと続くという特徴がある。付けた瞬間に鼻を近づけたりすると、頭痛をおこしかねないので付け方には注意が必要だ。ラストまであまり変化なくウォータリーな白い花のブーケが6〜8時間ほども続く。香水が苦手な方になぜかこの香りを好む人が多いのも特徴だ。今となってはこれに似た香りはたくさんあるが、26年前は本当に新鮮だった。まさにこの一滴がその後の世界を変えた。

大河も海も「一滴の水」の集まりでできている。三宅氏は常に「1枚の布」という素材勝負のデザインをし続けてきた。この香りから始まったオゾン系の「大河の一滴」は、今なお多くの香りを生み続けている。円錐型の美しいボトルは、エッフェル塔の上に満月が重なった姿と同時に、一滴の水がはじけた瞬間を表しているという。

ロードゥイッセイは、香水界の「大河の一滴」だ。たった一滴で混沌とした時代の空気を塗り変え、文化という水の流れを変えた美しい香りだ。

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tofuchikuwaさん
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プロフィール
  • 年齢・・・54歳
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自己紹介

香りの良いものが好きですが、柔軟剤のような人工的なのは苦手です。 特に好きなのは薔薇、そして針葉樹の香り。 my favorite parfumは… 続きをみる

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