TOP > 明け星さんのLikeしたクチコミ(Like件数順)

41件中 1〜5件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 48歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
セルジュ・ルタンス / フェミニテデュボワ (Feminite du bois)

セルジュ・ルタンス

フェミニテデュボワ (Feminite du bois)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・14,300円 / 100ml・22,000円発売日:-

7購入品

2014/1/24 00:42:07

「自分が本当にうっとりとするような香りは、どこを探してもないんじゃないか?」
「たとえ見付けたとしても、それが周りからよいと思われることはないんじゃないか?」
「ならば、自分は何のために狂ったように香りを探し続けているのだろうか?」

二律背反である。二つの相反する推論が、等しい合理性・妥当性をもっている。そしてそれゆえに自己矛盾に陥っている。堂々巡りである。ドグラ・マグラだ。

そんなとき、この「フェミニテ・デュ・ボワ」に出会った。一瞬、息が止まった。

これまで味わったことのない香り。冷たく、清々しく、たおやかで静謐な、とても美しいウッディの香り。

プロデュースは、資生堂で1980年から20年間イメージクリエイターをつとめたセルジュ・ルタンス。調香は、ルタンス自身の右腕とも言うべきパフューマーのクリストファー・シェルドレイクと、ダビドフの「クール・ウォーター」やディオールの「ドルチェ・ヴィータ」などを手がけたピエール・ブールドンによる合作。

「フェミニテ・デュ・ボワ」。その意は「木のフェミニティ」。言いかえれば、「木のもつ女性らしさ」。その名のとおり、女性用フレグランスでは珍しいウッディノート。

初めての出会い。何の前知識もないまま。

トップ、付けたて2分まで。品のいいウッディ香が鼻の奥を刺激する。ウッディがトップでくることに少し驚きつつ、このあと濃くなるんだろうなと警戒。鉛筆っぽさも少なく、樹脂の清涼感も少ない。ややひんやりとしているが、固くて上質な木のイメージ。ローズウッドっぽいかなとも。

2分後。奥から出てくるややスパイシーな風合い。あれ、今頃、針葉樹系の清涼感?ん、ちがうな、これは調味料系スパイスだな。きつくはないものの、空気を押し広げるようなじんわりした重みが少し感じられる。けれど、下の方で先ほどのまろやかなウッド香も同時にしている。

そして10分後  「!!」
驚きの展開。スパイスのデクレッシェンドとともに現れたのは、バイオレット(スミレ)と淡い葡萄のような香り。ほんのり甘く、けれど暗く静かな、冷たいフローラル&フルーティ。このバランス!「目を疑う」という言葉があるが、自分の鼻を疑った。

まろやかで、けれどすっきりしたウッドの香り。その上にそっとベールをかぶせたような、淡いバイオレットフィズの風味にも似た、やや内省的な紫のフローラル。なんていい香り。なんていいバランス。静かで、落ち着いていて、すっきりと透明で、優しく時間がまどろむような、儚く直線的な香り。

それがずっと続く。オードパルファンだけれど、いたずらに濃い香りをこれでもかと自己主張するのではなく、柔らかく長くたゆたう。ほの暗く、涼やかに。

ずっとこの香りに包まれていたい。男であることも、自分の年齢も、顔や体型も、社会的地位や立場も、全くこの香りの前では意味をもたない。気にする必要がない。この美しい香りをいつまでもかいでいたい。この香りにずっと染まっていたい。久々にそう思える香りに出会ったことをはっきりと知った。

自分の印象を確かめるべく調べまくる。香りの構成は、ピラミッド型三段階ではなく、どうやら2段階。ミドルとラストが似ている変調子。どうりで同じ香りがずっと長く続くと感じたわけだと納得。構成は諸説あるようだが、大体次のように感じた。

トップ:アトラスシダーウッド、ジンジャー、クローブ、カルダモン、オレンジブロッサム、
ミドル:アトラスシダーウッド、プラム 、ピーチ、バイオレット、ローズ、ハニー(蜜蝋?)
ラスト:アトラスシダーウッド、ムスク、サンダルウッド、ベンゾイン、ヴァニラ

特筆すべきは、トップからラストまで、ずっとアトラスシダーウッドが優しいウッディを香らせていること。その音階と混じり合うことなく、もう1つの音が、スパイス〜フルーティ・フローラル〜オリエンタルへと変化していくような。つまり、混じり合うことのない上下のハーモニーが、絶妙なバランスで平行線を紡ぎ合っているような印象。

わかった。だから、突き抜けたんだ。

二律背反。「自分の一番いいと思う香りを見つけたい。」「自分の見付けた香りを人にもいいと思われたい。」相反すると思われた2つの欲望は、セルジュ・ルタンスの魔法の前に瞬時に消滅した。2つの思いは常に同次元に同列で存在していい。いわんや、それらが交わる事なき、平行線であったとしても。自分という存在同様、香りもまた「自分の絶対」であり、「相手の相対」という実存なのだから。

答えの1つをフェミニテ・デュ・ボワで見つけた。俺は、この香水に包まれている自分自身をこれまで以上に自己肯定する。たとえ君がこの香りを否定しようとも。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
chance1992さん
chance1992さん 50人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 25歳
  • 敏感肌
  • クチコミ投稿14
ゲラン / シャリマー 香水

ゲランゲランからのお知らせがあります

シャリマー 香水

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・48,400円発売日:2002/1/2

ショッピングサイトへ

7購入品

2018/3/16 11:58:20

この香りは私にとって衝撃でした。
初めて店頭で試した時、渋いベルガモットの香りと、香ばしい樹皮の香り、それと心地良く甘いふわりとしたバニラの香りが、バランス良く調和しながら、滑らかにひとつの香りとなって、胸のずっと奥深くまで染み入り、柔らかく広がりながら心を満たしてくれたようでした。
あの時の感動が忘れられず、まずはPから購入してみました。徐々にラインで買い揃えていますが、不思議なことにこの香りは毎日つけていても飽きません。
シャリマーは鼻先で楽しむものではなくて、心で感じる香り。

流行のフルーティーフローラルやシトラスとは程遠い香調で、極上の柔らかさと奥深さを持つ香り。
この香りは、薔薇やジャスミンなど特定の何かの香りが主張するのではなく、さまざまな香料が絶妙に合わさってひとつの香りを織り成し、情景や心の移ろいを想起させる香り。美しい夕焼けの情景や、しんとした森の景色や、肌の質感のような柔らかい甘さを感じます。

シャリマーの魅力の一つは、美しく完成されたデザインのボトルです。
ゆったり羽を広げた孔雀の立ち姿のような優雅なシルエット。緩やかな曲線のアウトラインと、キュッとしたくびれのギャップも美しくて、足元にはジュエリーのような細かいカッティングが入っています。表面のプリーツは、仕立ての良いブラウスの胸元みたい。金の刻印の入った蓋は、噴水から溢れる水のようなフォルムで、薄いフチには細かいカッティングが施され、綺麗な透明感のある青い色。とても繊細で、蓋だけでも独立した芸術品のようです。

(惜しいのはガラスの質で、ソーダガラスのようなキメの荒いガラスです。シャネルのフラコンはもっと透明度の高いすべらかなガラスを使用しています。)

肌に乗せた瞬間、ずっしりと重くて渋いベルガモットの「皮」の香りが、鮮烈に駆け抜けます。柑橘系でも、弾ける感じや爽やかさはありません。
この香りが飛ぶと、ほんのりと甘い木と樹皮の香りと、それを低音から支えるバニラの柔らかい香りが主張します。
木の香りといっても、香木を燻したようなしっとりとした香り。冷えた身体をほっこりと暖める温度感があります。

次第にゆったりと甘い花々の香りが引き立ってきます。柔らかいアイリスとローズの、ふわっとした軽さのある香り。この花々の香りが本当にふくよかで、豊かで優しくて。
EDPではあまりこの花の香りが立たないんですが、Pのミドルはゆったりしていて、花々の香りを存分に楽しめます。
ラストではベースにいた濃厚なバニラが絡むように上気して、ふわふわと香ります。バニラの香りは、気温によってはパウダーや石鹸のような淡い香りに変化して消えていきます。
ドラッグストアに売っているような安い海外のボディスプレーのようなねっとりしたバニラの香りではありません。バニラビーンズに少しお砂糖を足した、自然な甘い香り。

シャリマーは柔らかく暖かい空気のように身体を包み込み、寄り添って香るので、決してうるさくなりません。つけたのを忘れた頃になって、時折静かに鼻先をかすめる。いつでも大音量で香りつづけるということがありません。

インドのイメージを投影しているのでしょうか、全体的には重厚でしっとりした香りにも関わらず、一貫してカラッとした表情を維持しつづけて、終始ドライな印象の香りです。甘い花やバニラの香りの中にもカラッとした抜け感があるので、ジメッとした重さがありません。あくまで香りの質の重厚さで勝負していて、香りそのものの質量は軽やか。
砂っぽい、インドの熱い気候を感じます。
(ちなみにドゥーブルヴァニーユはかなり湿度を感じる香りです。)

ミツコは香水とEDPが完全に別物ですが、シャリマーはEDPも香水に近い香り方をします。
全体の香りの柔らかさと、ミドルの花々のゆったり花開く様子は香水ならではです。終始香りが肌から浮き立つような立体感も、香水が上です。
EDPは花々よりも終始バニラが強調されています。私自身はどちらも愛用しています。

ボディパウダー、石鹸、ボディミルクと合わせて飾ると、上品で高貴なデザインの品々はさながら王妃の調度品のようです。
市販のボディケアアイテムや化粧品がどんなに進化しても、こんなに高貴で美しいアイテムは他にないでしょう。
綺麗な品々で時間をかけて丹念に身支度を整えたら、とっても優雅。
ボディケアまでラインで使ってから香水をのせると、柔らかい上質な香りが幾重にも身体を包んでくれます。

シャネルやディオール、大好きな香りがたくさんあります。けれどシャリマーに取って代わる香りはありません。同じゲランが生み出した、多くの香りでさえも。シャリマーは別格です。
そして、意外と付ける人を選ばない香りだと思います。是非一度、店頭で香りを試されることをお勧めします。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
chance1992さん
chance1992さん 50人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 25歳
  • 敏感肌
  • クチコミ投稿14
ディオール / ミス ディオール オードゥ パルファン(旧)

ディオール

ミス ディオール オードゥ パルファン(旧)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:2017/9/1

2購入品

2018/1/25 20:55:54

最近のディオール香水、特に昨年発売されたプワゾンガールやアブソリュートリーブルーミング以降何か迷走していますね…
今回発売されたオードパルファム、ミドル以降の香りはアブソリュートリーの香り立ちと、かなり被っていませんか?

アブソリュートリーもトップから押しの強いベリーの香りが広がり、しかも人工甘味料だらけの海外のグミのような香りでした。それが勢いよく香り立ち、その後胃もたれしそうなもわもわした甘ったるい香りが永遠と香ります。ミドル以降のくどい甘さは、ベリーグミが溶けて蒸発して周囲に立ち込めているよう。そして持続力は流石のもの。朝のワンプッシュで夜までしっかり香り、入浴しても残ります。持続力に関しては、メゾンの本格香水と言えます。

この新しいオードパルファムも、トップはバラの砂糖漬けみたいな、独特の甘い香りがするけど、ミドル以降はアブソリュートリーと同じ香り。時間が経つにつれて、徐々に当初よりずっと甘さが増し、もわもわ鼻に残留します。ただ砂糖のように甘いだけではなく、独特な青臭いエグミがあって、ラストに向けて甘さとエグミが共鳴してどんどん強くなります。胃もたれしそうです。

最近のミスディオールシリーズの甘さって、バニラやムスク、アンバーのような人肌に馴染む甘さではなくて、とても人工的な甘さです。立体的な香りの展開はなく、平面的な香りの主張の一本調子です。とにかく終始甘過ぎる。無機質な香りがいつまでも甘くて、くどくてうんざりします。私はバニラやプラリネの香りも大好きで、甘い甘い香りもたくさん愛用していて、甘い香りには結構免疫あるはずなんですけどね。

私がこの香りを嗅いで眼に浮かぶのは、花や果実そのもののや色味、質感ではなくて、ベリーや花の香りのついた、無機的な粉末です。展開のドラマ性、花や果実の香りの立体感に乏しい。キャンメイクのコロンや、マジョマジョのジェルパフューム、エンジェルハートと同等のレベルのべたべたした香りかと思います。最近はブームもあって、香りつき柔軟剤の進化が凄いですよね。このような平面的な香りなら、わざわざ香水の形を取らなくとも、柔軟剤で充分かなと。

それに、最近発売される香水って、誰がつけても全く同じ香りになります。特にこちらはそれが顕著。街の中ですれ違った時、電車やデパートですれ違った時、すぐにこの香水だと分かります。CHANELのココマドやチャンスのつけたての香りもすぐに分かりますけど、あちらは時間が経つとちゃんと馴染んで、バニラやアンバーの香りと人肌の香りが合わさって、やわらかくてほのかな体臭のように香りますよね。けれどこちらは人肌の香りに馴染まず、最後までパーソナルな香りになることはありません。彫りの深い欧米人ならともかく、日本人で、こんなに強い香りをつけても自分自身のオーラや印象が香りに負けない人っているのかな。

不思議なのは、この香水が軒並み高評価であることです。香りは好き嫌いが分かれるので、どんな歴史的名香でも、受け取る感性によって賛否分かれるもの。爽やかでアクのない、淡い香りのブルーミングブーケが日本で多くの方に受け入れられたのは理解出来ますが、この濃厚な香り、日本では苦手とする方も多いのでは?DIORのブランド力、ボトルのビジュアルを抜きに、香りだけでこちらを選んで自ら購入する方は少ない気がします。広告ビジュアルや外観に評価の重きをおいた口コミが増えている。最近このサイトでもサンプルのバラ撒きや疑わしい投稿も増えており、外観では判別出来ない中身の使用感を消費者が正直に伝える手段、「口コミ」の存在意義と信憑性が問われますね。

それにしてもどうしたんだろう、最近のフランス香水。CHANELといい、ゲランのラプティットといい、サンローランのモンパリといい、ベリー系の香りが流行なのでしょうか?ちょっと食傷気味です。近年、老舗各社が歴史的名香を次々に廃し、甘ったるいばかりの香りを立て続けに発表しています。長年のブランドイメージや威信、老舗ならではの香りの格式高さは最早崩れかかり、瀕死の状態。大衆に迎合した安っぽい香りを大量生産する現状は、実に芸術的な数々の香りを産み出した、老舗ブランドの威光と香水の時代の終焉を示しているのでしょうか…また選りすぐりの調香師によって綿密に調香されたはずの香りが本領発揮出来ないのは、日本の気候の影響もあるのでしょうか?カラッと乾いた空気で香るとまた大きく違うのかも。

ただやはりデザイナーのディオール、ボトルのフォルムや底面の千鳥格子、バランスの良いリボンの愛らしさ、香水の色の素敵さは相変わらず抜群ですね。様々な香水ボトルを持っていますが、ミスディオールのボトルの愛らしさは突出して素敵です。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
セルジュ・ルタンス / Sa Majeste La Rose(バラの女王)

セルジュ・ルタンス

Sa Majeste La Rose(バラの女王)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

5購入品

2018/4/21 23:08:40

さて2017年末、一部の香水マニアを震撼させた「セルジュ・ルタンスのリニューアルに伴う多数の廃盤決定通知」により、自分なんぞは足元にも及ばない高レベルの香水マニアックスな方々が「やめてー!私のアラニュイがなくなる!!」など、阿鼻叫喚の心の叫びとともに在庫ボトルの静かな買い占めに走られたわけですが、そういう意味で、こちらにもそろそろお別れを告げないといけませんね。

セルジュ・ルタンスの「黄バラ」こと、真っ黄色なジュースが売りのサマジェステラ・ローズも、2018年ついに販売終了です。

いやあ、薔薇の女王、売れていたにも関わらず、終了ですか。有名人も愛用していると公言しているのにやめますか。さすがルタンス!どこかの政治家みたいに全くどこ吹く風ですね。ある種、神々しささえ感じます。彼には。

さて、そんな経緯で入手困難香水の仲間入りをめでたく果たしたサマジェステラ・ローズなんですが、自分はいつもサンタル・マジュスキュルと言い間違えてしまいますね。共通文字は「サ・マ・ス」ぐらいなんですけどね。その語順が同じせいなんでしょうか。どうでもいいですね。

ついでに言うと、黄色いジュースと「サマ」という出だしの音から「黄色い太陽が照らすサマー・ローズ」なんてイメージしてしまいがちなんですが、どっこい、そうはルタンスがおろさない。ただ者ではないですからね。闇の使者ですからね。暗闇から突然、ルタンス氏のエキセントリックなお顔がぬっと現れたら、本気でお化け屋敷より怖いですからね。ま、それもさておき。

では、実際の香りを紹介してみましょう。それにしてもなんか変ですね。久々に丁寧語で書いたらまどろっこしいったらありゃしない。以下、常体。

サマジェステラ・ローズ。香りを感じやすくするため、手首にプッシュ。つけた瞬間、柔らかいエーテルの揮発とともに感じられるのは、一瞬のフルーティー。ペア―のような、甘くてみずみずしい香りがすっと駆け抜けていく。クレジットによるとライチのよう。すぐにその下から出てくるのは赤黒い雰囲気の薔薇の香り。じわじわと心の柔らかいところを侵食してくる暗い清涼感のあるローズ香。かなりグリーンノートが効いている。何がというわけでなく不遜。どこがというわけでなく淫猥。重たい暗闇の中からそっと浮かび上がったような真紅の薔薇。まるで暗がりからルタンス氏の顔がぬ〜っと出てきたような(←もうやめろ)

このローズ香は、いくつかのローズエッセンスをブレンドしているよう。共通しているのは、薔薇独特の清涼感あるツンとした香り、スッキリとしていてコクがある点。それでいて硬くて内省的。ふんわりとしたイメージとは真逆。なぜだろうと考えてみる。まず酸味が強い。というか、これはメタリックといっていいほど。キンとした冷徹さを感じる酸味だ。そして、拡散しないストイックな香り立ち。メタリック&ソリッド。ん?メタルギア・ソリッド?

とまあ、これまた一部のゲームファンにも意味のない媚びをうったところで本題に戻ると、そんなミドルが約1時間ほど続く。というのも、ローズの精油だとそれくらいしかもたないからだ。よい香料を使っている感じはある。ただ、どこか黒インクや墨をこぼしたような違和感ある香りも混じっている。通常、天然香料が消失した後は、合成ローズ香料にスライドして香りを引き継がせていくものが多いが、そこはさすがルタンス。フローラルで用いているのは薔薇の天然香料のみのようだ。潔し。

ラストは香ばしいスモーキーなウッディ香、そしてソーピーなムスクがわずかに残る。薔薇は本当にどこかに消え失せてしまったようだ。すっと姿を消したかと思うと、後に残るは漆黒の闇。うーむ、芥川の「羅生門」のようなエンディング。というか、

これは、どこかほのかに血の香りがする薔薇だと勝手に思っている。暗闇の中、鉄の鎧をまとったいかめしい顔の女王が思い浮かぶ。彼女が手にした剣の先からは赤黒い血が滴り落ちている。その暗闇の中、息絶え絶えに倒れているのは先の国王。彼の周りに飛び散った血の花びら。そんな情景を思い浮かべてしまうのは、自分の心の闇が深いせいだろうか。それともルタンスの作品だから?

黄色くて明るい色のジュース。その意図は?夏の爽やかな日中の薔薇?彼がそんな薔薇を作るはずがない。黄色の意図は「警戒色」ではないか。黒と合わせることで最も注意を促す色彩、それが黄色だ。だとすれば、サマジェステラ・ローズの裏メッセージは「警告」かも知れない。

コノ ジョオウ ニハ オイソレト チカヅイテハ ナラナイ

サマジェステラ・ローズは、そんな不穏な薔薇だ。どこか鉄のような匂いの混じった、気高い孤高の薔薇だ。

もう会えない。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 52歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
エルメス / イリス オードトワレ ナチュラルスプレー

エルメス

イリス オードトワレ ナチュラルスプレー

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2018/3/3 23:48:02

その男に誘われたとき、女の心に紫のインクが一滴こぼれた。あ、どうしよう。答える暇を与えず、男は隣のスツールから腰を上げ、ホテル最上階のバーカウンターから去っていった。先ほど部屋番号のついたカードキーを渡され、耳元で囁かれた言葉が、さながら呪縛のように女の心に反すうしていた。「下の部屋で待ってるよ」

エルメスのイリス・オードトワレは、美しくてせつない香りがする。はかなさと脆さと、そしてどこか哀しげなニュアンスの強いフレグランス。まるで禁じられた恋を今も心のどこかで引きずっているような。

1999年、オリヴィア・ジャコベッティ作。ラルチザンのジング!やプルミエ・フィグエなどで知られる彼女の比較的初期の作品。その名の通り、イリスの香りをフィーチャーしていて、珍しくシングルノートのような雰囲気。他の香料とミックスした際に、それらの上にパウダリーでふんわりとした柔らかさと、バイオレットのような暗い香気をまとわせるタイプの使われ方が多いイリスをメインに引き立てようとした意欲作。

とはいえ、アイリス(イリス、オリスも同義)の天然香料であれば最も高価な香料と言われ、シャネルあたりでないとふんだんには使えないほどの代物。ここで使われているのは、どうやらイリスの人工香料であるイロンのようだ。それでも他の人工香料よりはずっと高価だと聞くけれど。

そんなエルメスのイリスをスプレーすると、トップは苦みのあるツンとした香りが広がってくる。一瞬、パチュリの墨っぽさかなと思うような土っぽいウッディな香りだ。だが、クレジットを見ても特に書いていない。アーモンド系のギリギリした苦みとカルダモンのほんのりスパイシーな感じか。柑橘が一切香らないトップはなぜか潔くも感じられる。

やがて2分もすると、澱粉のような粉系のベールとともに、わずかに暗いバイオレット系の香りがしてくる。淡いけれど、カーネーションのスパイシーフローラルも同時に香っている。クローブがほんのりという印象。このパウダリー&わずかなバイオレットが、イロンの香りだろう。シャネル19番のなめらかで上質なイリスとは違って、どこか一本調子な紫色の香りが続いていく。優しくて、それでもわずかに冷めているパウダリー。

ミドルが2時間ほど続くと、かなり香りが薄れてくる。ラストに残るのは、一段階明るさを増した粉っぽい香りと、どこかインセンスを思わせるウッディ系の低いニュアンスだ。全体に合成香料を多く使用していて、香りの変化はあまり感じられない。女性らしい柔らかさと穏やかさが表現されていて好ましく、甘さや爽やかさはほとんど感じられないタイプのフレグランスだ。体温高めの方だと持続時間は2時間程度で、かなりウッディな低い香りが出やすい。ムエットにつけると柔らかいバイオレット系の粉っぽさがずっと続くので、体温低めの女性はアイリスの香りがきれいに出て使いやすいだろう。

全体に、どこかもの悲しい陰のある香りといった印象が強く、静かでひかえめ、まろやかで優しい雰囲気。人一倍感受性が豊かで、それゆえに自分から相手のプライベートゾーンに入っていけないようなパーソナリティーを思い浮かべる。一見快活で誰にでもオープンに開いているように見える方にも、そんな自分はいるものだ。だから、自分の中の鬱や陰、傷といった部分が前面に出てきそうなとき、こんな内省的な香りがそばにあると、安定剤のように守ってくれそうな気がする。

女はひとしきり考えた。それでも答えが定まらず、カードキーをそっとバッグに入れてスツールから降りた。バーを出る前に、窓の外に広がるビル群の夜景を見つめた。男は直属の上司、そして彼の妻は元先輩だ。心の中に落ちたインクは、紫色の沁みになって深い憂いをたたえて広がっていた。女はバーを出て、トーンの落ちたベージュ色のカーペットの上を歩き始める。エレベーターホールまでのわずかな時間、女の足が不規則に進む。押すのは15階か、それとも1階か。

下向きのボタンが光り、目の前のエレベーターが到着を告げる。左右にドアが開く。女はゆっくりと乗りこむ。その瞬間、仕事終わりにつけたイリスの香りが不意に鼻をかすめた。女神イリスの逸話をぼんやりと思う。

ゼウスの妻、ヘラに仕えていた侍女イリス。彼女はゼウスに何度も求愛されたが断り続け、遂にヘラに「どこか遠くへ行かせてほしい」と頼み、虹の女神となって彼らの元を去ったという。

眼前でドアがゆっくりと閉じていく。女は一瞬バーで見た夜景を思い出す。目を閉じて微笑む。そして女の白い指が、行き先を示すボタンを押した。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

41件中 1〜5件表示

明け星さん
明け星さん 10人以上のメンバーにフォローされています

明け星 さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・47歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・未選択
  • 髪量・・・未選択
  • 星座・・・牡牛座
  • 血液型・・・未選択
趣味
  • 読書
  • 映画鑑賞

もっとみる

自己紹介

自己紹介はまだ設定されていません

プロフィールをみる

  • メンバーメールを送る