doggyhonzawaさんのKAYALI / ラブフェスト バーニングチェリー48へのクチコミ |
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 58歳
- 乾燥肌
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2024/12/13 21:17:44
情熱の炎を纏う者は、永遠の魅力を手に入れる。
KAYALIのラブフェスト・バーニングチェリー48は、情熱の炎を香りに閉じ込めたセンシュアルな香水だ。2022年にリリースされたこの香水は、甘美なチェリーの誘惑と神秘的な木々の囁きが織りなす、官能と洗練の境界線をゆくチェリー系香水だ。
バーニングチェリーをスプレーする。最初の一吹きで、燃えさかるチェリーの香りが五官を包みこむのを感じる。TFのロストチェリーのトップで花開く、甘く狂おしいチェリー香に似ている。だがこちらは単なる甘いシロップ漬けのチェリーではない。マラスキーノチェリーの持つ微かに薬草的な苦みが、ラズベリーとベルガモットの爽やかな息吹と出会い、清冽な風をたなびかせる。それは、ダークレッドの口紅をひいた唇が、妖しく微笑みかけるかのよう。
時が経つにつれ、香りは深みを増していく。プラリネの香りが、チェリーの情熱に甘美な余韻を与える。そこにわずかなフローラル、ヘリオトロープやダマスクローズ、ジャスミンサンバックが、夜の庭園で密やかに咲きほこるように香りを重ねていく。月明かりに照らされた色とりどりの花弁が出会う秘密の逢瀬のように。
同時に、木々の神秘的な囁きが聞こえてくる。パロサントの温かく香ばしい香り、グアヤックウッドのスモーキー、トンカビーンのクリーミー。これらが絡み合い、温もりのある深遠な香りを醸成する。ペルーバルサム、パチュリ、ハイチアンベチバーがわずかに影を落とし、香りは暗い森の中でより扇情的になる。チェリーの赤い誘惑とパロサントの茶色い安らぎ。それらはやがて絡み合うように熱をもって、肌を火照らせてゆく。
持続時間は、付けてからドライダウンまで1〜2時間ほど。香料的にはTFのロストチェリーや亜種とかぶるため、二番煎じと呼ばれても仕方ないところ。ただし、TFのチェリーが50mlで4万円を超えるバカみたいな価格の昨今、バーニングチェリーは100mlボトルで23000円と、まだ良心的な価格だ。同じような香りをコスパ重視で求めるなら、こちらも選択肢に入るだろう。ただしこちらはずっとチェリーが香るわけではない。後半は、あたたかみある木の香りがチェリーと入れ替わるように流れてゆく。その変化が好きかどうかは大きいだろう。見つけたらぜひ肌にのせて試してみてほしい。
この香水を肌にのせていると、ランプの明かりが狭い軒先の遠くまで続く、異国の夜のバザールが思い浮かぶ。そこで微笑むエキゾティックな褐色肌の女性。艶やかな黒髪、チェリーレッドの唇、ウィングドアイライナーを纏った大きな瞳。そのしなやかな肢体は、控えめでありながら力強く、出会った者の心を魅了してやまない。女の後を追うように、狭い路地をすり抜けてゆく。異国の夜はめまいにも似た喧騒をはらんだまま、ふけてゆく。古い石畳を歩く足音、遠くから聞こえる乾いたシタールの調べ、路地裏から漂う秘密めいたスパイスの香り。暗がりの中で輝く赤いネオンサインは、いかがわしい店のチェリーの形に点滅している。
夜が深まるにつれ、香りは静かに熟してゆく。グラスに強いアルコールを注ぎ、浸したチェリーが変化していくように、暗くあたたかく。グラスにフランベの炎を灯すと、はたしてチェリーはその実を赤黒く焦がし、唯一無二の熱い美酒となる。その燃える果実酒の香りを、焚き火のかすかな煙の匂いが燻製してゆく。
ラブフェスト・バーニングチェリーはそんな妄想をかきたてる香りだ(←妄想しすぎ)。チェリーの甘苦さと木質ノートの深みが絶妙なバランスで融合した、魅惑と複雑さを秘めた香りのリキュールだ。この香りを纏う者は、幾千の夜を照らす、自分だけの情熱と官能の物語を紡ぎ出すだろう。この香水は、肌の上であたたかくたゆたい、あなたの内なる魅力を静かに、しかし確実に輝かせる魔法の媚薬になるのかもしれない。
情熱の炎を纏う者は、永遠の魅力を手に入れる。
ラブフェスト・バーニングチェリーは、その無言の約束をボトルの奥底に秘めた、燃えさかる官能のサングリアだ。
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