Cookieyukiさんのロベルトピゲ / フラカへのクチコミ |
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- Cookieyukiさん
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- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿142件
2021/11/8 00:35:43
規則は破るためにある。
フラカを作った調香師、ジェルメーヌ・セリエはきっとそう思っている。
20世紀初頭から中頃のファッション界は圧倒的男性優位だったのにも関わらず、セリエ氏はかなり型破りなことをして成功。彼女はソフィア・グロスマンよりもずっと前に活躍した女性調香師の草分けで、フラカ以外にもロベールピゲからガルバナムを過剰にくわえるという思いきった香調のバンディ、ピエールバルマンからヴァン・ヴェールも発表し一世風靡した。
彼女は自分の信念のためには衝突も辞さない性格だったようだ。タブーで知られる当時のカリスマ調香師ジャン・カールは香水を完璧な香料間のバランスのもとに調合することで知られていた。一方セリエ氏はその完璧なバランスをひとつの香料をオーバードーズすることで個性と魅力を出したいと思っていた。どちらも売れっ子ということで同じ会社で共作させられそうになったからもう大変。「混ぜるな、危険!」を地でいく戦いになったらしい。かくしてセリエ氏のオフィスは彼から遠く離れたところに隔離される。
前置きはここまでにして遂に取り寄せたフラカのオリジナルをプシュッ!
ああっ、脳天直撃。
ピンク色でふわふわの綿菓子みたいな靄にノックアウトされた。絶対腕力弱いだろと舐めてかかっていたベビーピンクの半透明の羽根の生えた可愛い妖精さんからモハメド・アリさながらのクロスカウンターパンチを食らったような衝撃。
久しぶりにこんなに強烈なのを嗅いだ。匂いが強いとか臭いとかではなくインパクトありすぎ。あーびっくりした。で、また嗅ぐ。
また脳天直撃。
でもまた嗅ぐ。
それを暫く繰り返しているうちにパンチがありながら意外に繊細なのに気付く。ゲランのミツコから切り取ったような食べられそうもないけど魅力的なふわふわの桃の香りにベルガモットとマンダリンオレンジのフルーティさが輪郭を与えている。ヒヤシンスとオレンジブラッサムの花でありながら草っぽく少しフルーティな香りがグリーンリーフとピーチの間を上手く取り持っている。
ミドルは煌びやかなチュベローズ。ひたすらチュベローズかと思いきやそれを押しのけて他の花の香りが時々ポロっと飛び出してくる。天候と体調によるけどよく出てくるのが金木犀、ガーデニア、ジャスミン。常夏のリゾートで繰り広げられる女性が参加者の99%を占める賑やかなパーティが脳裏に浮かぶ。擬態語で表すとキャッキャッウフフだ。(何のパーティだ?)
そんな中で異色を放つのがコリアンダー。ウェイター以外は女性ばかりで騒いでいるところに男性がたった1人でビシッと決めたタキシード姿で入ってきたイメージだ。そして周りの女性たちが騒めく。チラ見して結構イケメンねえとか言いながらライバル意識を燃やす。それと同じでコリアンダーが入ることで花々の艶やかさがいっそう誇張される。
フラカのラストノートは記憶にない。正確に言うとミドルノートが延々と続きすぎて、ラストまでにつけてることをすっかり忘れているから。朝つけると翌日の昼頃まで香ってることもあるくらい長持ち。花の匂いのバターがあってそれが皮膚に薄くついたまま香り続けている感じ。翌日つけたところにふっと息を吹きかけるとジャスミンの香りが蘇ってくるところが気に入ってる。
フラカは普通の香水と比べ超アンバランスだがとても魅力的だ。ここまで華やかさと賑やかさを追求する姿勢が潔い。セリエ氏が凄いと思うのは規則を完璧に理解した後あえて壊していること。それでいて何故か気品は保ったまま。無茶に見えても元々優秀な科学者として石鹸などの香りを作っていた彼女にはちゃんとした計算があり、何でもかんでもオーバードーズすれば個性が出るというものではないと分かって調香していたのだ。
そんなことを考えているとフラカをあえて一般には相応しくないと言われるシチュエーションでつけたくなる。普通ならパーティとかでシンプルでセクシーなドレスに合わせるだろう。香水とそれに似合うファッションの一般法則みたいなものを研究してみたい。そしてそれをあえて崩すのも楽しそう。
規則を知ろう。それを効果的に壊すために。
規則は破るためにある
素敵に
トップノート: ピーチ、ベルガモット、グリーンリーフ、オレンジブラッサム、ヒヤシンス、マンダリンオレンジ
ミドルノート: チュベローズ 、ジャスミン、ガーデニア、金木犀、西洋水仙、鈴蘭、カーネーション、ホワイトアイリス、バイオレットルート、コリアンダー、ローズジェラニウム
ラストノート: ムスク、サンダルウッド、 アンバー、、オークモス、 ベチバー、シダー
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