CookieyukiさんのEtat libre D'orange / Secretions Magnifiquesへのクチコミ |
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- Cookieyukiさん
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- 52歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿142件
2021/6/6 01:49:54
閲覧注意。お食事中の方は特に。
商業主義に走らないことを商業の主義にしているエタリーブルドランジェさんの熱い主張が凝縮された一本。「なんてものを作ってくれたんだー、うおーっ」と世界の素人玄人共々を絶叫させたSecretion Magnifiqueがついに我が家にやってきた。外国レビューではボロクソに書く人多数対それに熱く反論する人少数の熱い闘いという炎上状態になっている。
マルセル・デュシャンの「泉」を思い出す。美術史に詳しい人はご存知だと思うが、デュシャンは便器に「泉」という題をつけて、誰でも参加できる美術展覧会に出品したのにもかかわらず受領拒否された。でもこの事件は美術界に一大センセーションを巻き起こす。ぶっちゃけ彼が何を言いたかったかというと「アートの定義って何?」という問いだ。それまでのアートとは「目の前に置かれた美しいと思われるもの」だった。デュシャンはそれに対して「アートとは目の前に存在するものを起点に自分の心の中で感性によって完成させるもの」ではないかと問いかけたのだ。
Secretion Magnifiqueはいい香りとは、香水とは何か私たちに問う。
直訳すると素晴らしい分泌。分泌物、体液の匂いくらい男女共に経験済みの私は「きゃーん」とか言ってたじろがないのだ。伊達に年齢は重ねていないワタクシ。
色々な香水サンプルを取り寄せたが何故かこれだけ小さいジップロックに入っている。もうこの時点で危険物感プンプン。税関で没収されるヤク扱い。
早速開ける。つける前に嗅いでみよう。昔、理科の時間に液体の匂いを嗅ぐ時には鼻から離して手で仰ぐようにして嗅ぐと習ったな。教育って大事だわ。先生ありがとう。手でパタパタ。
え?理科の実験室の匂い?
でも思ったより過激じゃないのでペタペタつける。
うーん….
今まで遭遇したことのない匂いに唸る。シーウィード、要するに海藻の匂いがするとクレジットにあるが何だろう?一応、海苔、ワカメ、昆布、ヒジキを用意。嗅ぎ比べた結果乾燥ワカメに一番近い。
血液に含まれるヘモグロビンの鉄っぽいメタリックな匂い。精液そのものの再現香ではないが、それを表現したかのようなミルキーな匂いも。私は変わった職業についていて、裸の女性に接近することも多いのだが、彼女らの皮膚から匂い立つ少し薔薇に似た香りも含まれている。何となくクラブで夜通し遊んでいる時のような匂いだ。蒸気があがりそうなほど熱くなった身体、汗ばんだ肌と肌が触れ合っているようなスリルがある。
控えめに言ってもこのトップが好きな人は殆どいないと思う。そしてこの体液カクテル状態が二、三時間続いた後、摩訶不思議なことが起こる。
筋肉質でシルキーな肌から匂い立つような官能的なムスクとセクシーさを凝縮したようなマリンノートが出現。理性というタガを外したら飛び込んでみたくなる日に焼けた分厚い胸を思わせる。しかも胸毛付き。一応ユニセックスだが、この辺の香りは骨太で男性的だ。
遠い昔に読んだ詩に女の子の体の中には大切な箱があるという詩を思い出す。普段は大事に鍵がかけられているけれど、時々「開けて」と言わんばかりに蓋が動く時がある。Secretion Magnifique のミドルを嗅いでいるとその蓋がガタガタ激しく揺れて何かが中から溢れて出てきそうな衝動に駆られる。
ラストでは柔らかいサンダルウッドが包み込む。ピロートークの時に大きな手で優しく撫でられているみたい。また妄想スタート。サンダルウッドは人肌に似た香りと言うが実に色っぽい香りだ。トロトロに溶けた心と身体が愛する人の腕の中にいるような浮遊感を伴った感覚。睡眠と覚醒の狭間をボートに乗ってゆらゆら彷徨っているかのような。
もしかして人間にとって一番いい香りの香水は人間自身の香りかもしれない。自分にとって一番相応しい人を選ぶ判断基準はDNAにコントロールされているという説もある。だからかもしれない。理性ではノーな相手に潜在意識がイエスと言い、抗えないような強い力で背中を押すのは。
そういえば私は恋人を選ぶ時に最終的には身体の匂いと触り心地で決めている。性格が自分好みであるのは勿論だが。
それは身体の奥にある普段は鍵がしっかりかかった大切な箱が決めてくれるから。
シーウィード、ミルク、ココナッツ、アイリス、サンダルウッド、オポポナックス
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