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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:40ml・14,850円 / 125ml・31,680円 / 250ml・45,100円発売日:-
2015/12/11 00:10:24
朝の森はグレイだ。こんもりとした黒いシルエットの木々。あたりに立ちこめる白い朝もや。その墨絵のようなコントラストは、思わず息をのむような美しいグレイだ。
グリ・モンテーニュは、ディオール調香師フランソワ・ドゥマシーが、2010年から発売しているディオール・フレグランスの特別ライン「ラ・コレクシオン・プリヴェ」の中の1本。高価な香料を惜しげもなく使い、1本1本のオー・デ・パルファンを並べた時の液体カラーのグラデーションにまでこだわった最高級のシリーズ。このうち、グリ・モンテーニュは、その名の通り、透明に近い淡いグレイの色合いを呈している。
「グレーを香水で表現するとしたら?
モンテーニュ通り30番地...ディオール メゾンの伝説的なアドレスが香りになりました。この洗練されたシプレー フレグランスは、ディオール グレーを野心的に解釈した香り。1947年以来コレクションに繰り返し登場するクチュール グレー、グランヴィルのディオール家に使われたグレー、モンテーニュ通り本店の外壁に使われているパール グレー。」
ディオール公式サイトにはこう紹介されている。このグリ・モンテーニュに込められた思いは、ディオールの輝かしい歴史そのものだ。さらに、美しきモダン・シプレーの傑作、ミス・ディオールへのオマージュも添えて。
グリ・モンテーニュは、そんなディオールカラーとも言えるグレイを冠した、朝の森のような清々しい香りを散りばめたシプレー・フローラルだ。
グリ・モンテーニュのトップは、一瞬のシトラスで開口する。爽やかで突き抜ける青い果実、ベルガモットの酸味。すぐに、墨やインクの匂いを思わせる湿った低い香りに包まれる。そして強烈な苦み。手首など体温高めのところにのせると、この辺の香りは短いのだが、ファブリック等に付けたときは、確かにシプレーの類だなあと実感できる。ゲランのミツコほどではないものの、苦みばしったモス系の雰囲気、パチュリの土臭さ&スパイシーさ。そこに、ほんのりアールグレイ的なコクが漂う。
やがて、手首で1〜2分、ファブリック等で10分ほどしてミドル。苦みや渋みが落ち着く頃、独特の透明感とともに、奥から甘ずっぱいフローラルが顔をのぞかせてくる。まるでグレイのしっとりとした霧の中で、つややかな香りを漂わせる一輪の花を見つけたような印象だ。それは、優雅で柔らかく、心を落ち着かせるかぐわしい花。そして周りには苔むした木々が、清涼感あふれる香りを漂わせている、そんな雰囲気になってくる。
このフローラルの正体はローズとジャスミンのようだが、ラズベリーのようなフルーティーさも感じられて心地よい。そして、じわりとしたモスの渋み、パチュリのアーシーな香りが、その輪郭をキリリと引き立てているよう。まさに貴婦人を思わせる香りだと思う。けれど、決してクラシックではない。うっとりするようなバランスで、それぞれの香料が拮抗し合っている。このミドルが好きだ。
やがて、手首では30分、ファブリック等では、1時間ほどするとラスト。フローラルが静かに消え入り、アンバーの甘さやパチュリのややレザー風な風味が増してくる。それは、よくあるムスク調のラストではなく、青い草のような、それでいてどこかスパイシーな苦みをもったラスト。苦手な人もいるだろうけれど、パチュリ系が好きな人は、このへんがくせになる感じかなと思う。数種類のモス系の香料をブレンドしているようだが、ミツコほど強すぎず、しぶ過ぎない点が、現代的なシプレーかなと感じる所以だ。
そして、最後の最後、意外にも、香ばしいサンダルウッドのような香りがふわりと現れて驚く。薄墨の森に金色の光が斜めから差しこんできて、現れたのは温かみのある茶色の木々の香り。そういった風情だ。
全体にキリッとしたモス系の苦みや渋みが、終始香りのボディを引き締めていて、フローラルにしては、とてもストイックな印象。背筋を伸ばして、スーツ姿で雑踏の街を闊歩するキャリアな女性のイメージが重なる。そういう意味では、シャネルのNo19やクリスタルなどのように、女性がビジネスシーンでも使いやすい香りの1つかも知れない。もちろんオフやカジュアルでもいける、汎用性の高いスッキリとした香りだと思う。気持ちを引き締めたいときにも似合うだろう。
朝の森。吸い込む空気は冷たく、木々のフィトンチッドの香りが胸に清々しい。葉と土の香りを包みこんでいたグレイのミストが静かに消えゆく頃、人知れず咲いていた花の花弁に、露の玉が静かに揺れる。新しい世界の光をそこに宿して。
Hello, New World! それは、シプレーのディオール型ニュールック。グリ・モンテーニュ。
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2015/11/25 15:43:59
あぁ… なんて不思議で素敵な香りなんでしょう。ボトル買ってしまいました。
秋冬用にエメモアやロカイユなんかもいいなぁ… でも、もう少しスパイシーなほうが好きだし…メンズのも試してみよう…うーん…買います!!
って買っちゃいました〜
このトロワジエム、ほんとにメンズ・レディスの境界線が無いし、付ける量でオールシーズンいけると思います。
トップはレモンとコリアンダーが際立ちます。ここがこの香水の最重要ポイントではないでしょうか。
柑橘類とかシトラスとかではなく、完全に「スィートレモン」な優しい香り。
酸味が無いレモンの香り。だからコリアンダーと混ざっていてもアジアンな調味料の匂いになってないんです。
レモンとコリアンダーから続いて重なってくるのもとっても優しいラベンダーとジャスミン。これも素敵。
こんなに優しいジャスミンの出し方があるのね〜 スゴーい。インドールで頭が痛くならない素敵なジャスミン♪
このあたりで柔らかいバニラも感じます。
ラストに向けてはオークモスが目立ってきてやっとクラシカルな感じに。
甘い優しいバニラが残っていてフンワリ女性的。(でも香調にはバニラがどのサイトものせてないんだよなぁ… でもバニラな感じ)
シプレとフゼアの中間。
「もうこの歳になるとこんな香りも付けこなせるのよ、ワタシ」 って思いながらこの秋冬はトロワジエムに浸って過ごします。
アトマイザーに入れて母にも分けてあげます。きっと好きなはず!
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レ ゼクスクルジフ ボワ デ ジル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)
容量・税込価格:200ml・36,300円発売日:2009/4/1
2015/11/27 01:00:42
1926年、シャネルはこの世に2つの重要な作品を誕生させた。1つは、モードにおけるリトルブラックドレス(LBD)の発表。そしてもう1つは、パルファム・シャネルにおけるボワデジルの発表だった。
ボワデジルは「島々の森」の意。「島」にあたる単語が複数形表記だから、ここでいう「島々」は、当時フランス領となっていた北アフリカや西アフリカの国々、レユニオン島、マダガスカル島、カリブ海の西インド諸島などを指しているようだ。
1926年のフランスには、それら植民地から連れてきた黒人などの労働者があふれていたという。その数、実に20万人。もともと人口密度が少ないフランスは、第一次世界大戦で多くの兵を失い、終戦後、労働力の確保が急務となったためだ。必然、国内に多様な文化が流入し、パリの街のそこかしこに、その影響が見られるようになった。
フランス国内に一気に増えたアフリカ系の黒人たち。そして、初めて彼らの文化に触れたパリ市民は、その民族的なファッション、ジュエリー、歌や踊りをどう感じただろう。少なくとも、ココ・シャネルは、その神秘的で、自然や大地から生命エネルギーを得ているかのような彼らの文化に、少なからぬ刺激を受けたに違いない。ボワデジルにはそんな影響が感じられる。
ボワデジルのトップは、強烈なアルデヒドの拡散で始まる。ウッドとフローラルとスパイスの香り。それらの境界を溶かし、つややかな光沢を与えたようなアルデヒドの主張。それはNo.5のきらめくようなオープニングや、キュイールドルシーのちょっと息苦しいスモーキーなトップと同系の印象。ややクラシカルで、とても強い。
ただ5分もすると色彩は変化する。そこに現れてくるのは、複雑な樹木の香りと、なまめかしいフローラルの協奏曲。
ミドルは、シャネルお得意のローズやジャスミンなどのミックスに、低音からイランイランがもの憂げに香る。そしてその下から、サンダルウッドの心地よい香ばしさと、ヴェチバーの湿った黒土っぽさが絡み合いながら表出し、硬く茶色い木を思わせる香りを紡ぎ出す。それらが、アルデヒドのベールを脱ぎ捨て、輪郭をあらわにしてくる。さながら、アフリカの大地に太陽が昇り、朝もやをかき消して、全ての自然の色や形をあばいたかのように。
やがて、柔らかなヴァニラが、ほんのりと全体を包みこみ、穏やかなラストを迎える。それは、木の器に盛ったアフリカの白い穀物粥、ウガリをイメージさせるような雰囲気だ。温かくまろやかなウッディ・ヴァニラの香りとなって、安らかに消えてゆく。
いつ纏ったらよいとか、どんなシーンに合うだろうとか、そんなTPOを考えることじたい、ナンセンスに思えるような複雑な香り。ただただ、美しいサンダルウッドとヴェチバーの和音に心を預けて、好きな時に自分の肌から立ちのぼらせて楽しめたらいい。そう思える静謐さを感じる香りだ。
アフリカ文化との邂逅。それは、フランスにとって、新たな多民族文化の始まりを意味するものであったろう。大陸や島々から取り寄せた高価な樹木、中でもアフリカン・ブラックウッド(黒檀)は、ジュエリーやインテリアに用いられ、フランスの人々に珍重された。そんな中、マドモアゼル・シャネルは、未だ足を踏み入れたことのない暗黒大陸や島々の森のインスピレーションをもとに、エルネスト・ボーにボワデジルを作らせた。
硬く乾いた木々を焚き、その燻煙を体にまとう黒人たち。暗い森に響く呪術のような歌声。鳴りやまぬ大地の太鼓のリズム…。彼女もまた、そんなイメージを思い描いたのだろうか。黒檀ならぬ、白檀が印象的なこの香りの創造において。
そして、ボワデジルを作った年に発表されたもう1つの作品、リトルブラックドレス。ここにも、どことなくアフリカ文化と出会った影響が感じられるのは気のせいだろうか。それまで貧困や喪を意味するタブー色とされていた「黒」。その概念を打ち破り、機能美と汎用性を全世界にアピールしたリトルブラックドレスの発表、それはモード界における大きな革新であったという。
1926年、それは禁じられた色を再発見した年だったのだ。ディスカバー・ブラック。アフリカの歌と踊り。黒檀の美しい光沢。ブラック・オニキスをあしらったアクセサリー。そして
ひるがえるリトルブラックドレス。心震わせるボワデジル。
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2015/11/8 00:53:45
南スペイン、アンダルシアの州都セビリア。そこは、闘牛とフラメンコの町。春には、町中に並んだオレンジの木に、白い花々が一斉に咲き乱れ、太陽がその芳醇でまろやかな蜜の香りをまき散らす。この香りが町のあちらこちらにあふれ出すと、セルビアの人々は色めきたつという。それは、一年で最も重要なイベントの一つ、復活祭を祝うためのセマナ・サンタ(聖週間)の到来を告げる風。
それがセビリア・オレンジの白い花々の香り。ルタンスのフルール・ド・ランジェ。2003年、クリストファー・シェルドレイク調香。スクウェア・ボトルに、オレンジの液体色が映えて美しい。
トップは、スッキリした苦みのある柑橘の香りが一瞬。そしてすぐ、甘くふくよかなオレンジフラワーとジャスミン系のフローラル・ミックスが広がる。通常のネロリの精油に比べて、苦みやスパイシーさが強いオープニング。クレジットにあるセビリア・オレンジは、実が苦く、マーマレード以外、生食はほとんどしないビター・オレンジだという。そのへんのキリッとしたドライな皮の雰囲気と、花の香りの共演とも感じられる。
5分後、白い花のブーケ香にスライドする。高音でオレンジフラワー、中音域でコクのあるジャスミン、さらに低音の方でチュベローズの和音。ややジャスミンが強めかという感じ。キンモクセイっぽいテイストでもある。そして、特筆すべきは、ホワイトフラワーブーケの奥に、ややアクの強いスパイス香が感じられる点だ。
軽くかいだだけでは分からないが、少し強めに香りをかぐと、そこには鼻腔の奥を刺激するスパイス類の存在を確かに感じる。クレジットにあるように、カレーの香りっぽいクミンやスッキリしたキャラウェイ、ややじんわりとしたナツメグっぽさが、時折明確に顔を出す。
さらに、ミドルあたりからは、日焼けした肌の匂いのようなスモーキーさと酸味がほんのり感じられる。シベットが少し使われているらしいことと、ジャスミン香を放つインドールの加減、さらにベースのムスクとの調合で、そうした体臭っぽいややダーティーな香りが時折するのは事実だ。それはアンニュイで、ちょっとドキリとさせられる部分。
やがて、ラストは、ジャスミンとチュベローズの中低音と、前述のややアニマリックな混合のうちに消えてゆく。ミドルからラストへの変化はあまり感じない。ここまで2時間〜4時間。白いフローラルミックスの香りは濃厚で、ラストのムスクっぽい淡い香りの上でも、最後まで香っている様子。
全体に、ねっとり甘く、ホワイトフラワーブーケの蜜の香りを呈するが、その背後にスパイスやアニマリックが思ったよりも強く出ていて、相反する光と影の両面が感じられる構成。それはまるで、南スペインの春の日差しの下、咲き乱れるオレンジの花々の枝や葉の隙間から、暗く黒い影の息遣いが感じられるかのよう。
ボディが強めで、濃厚。だから、日本では夏以外の季節の使用が比較的よいと思う。付けるときは、背後から絶えず主張してくるスパイシー&アニマリックな暗いベースの強さも考えて、ウェストから下がよいかと思う。上半身、あるいは、直接肌が露出する場所に付けると、周囲に「ムワッと感」「ファッティ感」をアピールしてしまう場合もあるかと。それほど付け方に配慮が必要な押し出しの強さ。
それでもこの香りの一番のよさは、ネロリ系のもつ「不安やストレスを取り除いて気持ちをゆったりとさせてくれる」雰囲気が強く味わえる点だと思う。女性ならバッグに香り付けしたハンカチや紙を入れておくのもいいかも知れない。特に、仕事中、ふっと気持ちを抜きたいときに嗅ぐと、リラグゼーションにもなると思う。ルタンスの中では、スパイスの香りやウッディ系の香りがまだ柔らかめな方なので、使いやすい部類だと思う。
スペインのセマナ・サンタ(聖週間)は、文字通り、キリストの復活祭を祝うための重要な7日間。この時期、街中には、キリストの受難や聖母マリアの悲しみを表現した豪華絢爛な彫像を乗せたパソと呼ばれる山車が出て、昼夜を問わず巡行するという。特に、セビリアのセマナ・サンタは、派手でにぎやかなことで有名だそうだ。
厳かな楽団の演奏の中、三角の頭巾とマントを身に付けた男たちが先導し、悠然と進むパソ。そこには、連れ去られていくキリストの憂いの横顔も見える。そんな巨大な山車の周りに人々はごった返す。7つの昼と夜の間、人々は熱狂に包まれる。
やがて最後の夜が訪れ、闇が太陽にとって代わる頃、酒の匂いと、復活祭を迎える人々の熱気やムンとした体臭がまじりあい、オレンジの花の香りを一層濃厚に、狂おしく彩る。
それは、セマナ・サンタ・フェスタの夜の匂い。闇に咲き乱れるその五つの花弁の花は、人々に福音をもたらす地上の白い星々。
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- *Haraheri*さん
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