2016/4/29 21:43:14
うまく芯をはずした感じのアロマティック・フゼア。
軽すぎず重すぎず、また、かっちりしすぎず崩しすぎず、品よくまとまった印象です。
レザーが主要なエレメントとして盛り込まれているのは、まあブランド的に当然というところでしょうか。
ボトルも側面のぐるりにやや明るいブラウンのレザーを巻きつけた作りで、重厚すぎず、程よくスタイリッシュなデザインで香りとよく合っていると思います。
マンダリンとレザー、それからヴァイオレットとベチバーを含んだフゼア・ノートが、閉じた蕾のように、まさにこれから花開いてゆく予感を滲ませながら一体に香るトップからミドルは、初夏の夜明けを思わせる明るい期待感に満ちています。
うん。
こんな感じの印象が最後までつづいたなら、もっと多く星をつけたいところだったのですけどね……。
個人の感覚ではありますが、すこーしカロンが強すぎるのですね、このフレグランスには。
はじめからマリンっぽい気配はもちろんあるのですが、ミドルまではこれがあくまでワンノブゼムな塩梅に見え隠れしていて、それが絶妙に素敵なのですね。
で、いざふわっと蕾が開いてみたら、これかぁ……という。
いや、分かるんですよ。
トラサルディに イタリーが
アドリア海で ティレニア海 なんですね
ええ 分かります (何それ)
作り出そうとしてるイメージはしっかり伝わってくるし、間違ってもない。と思う。
別にカロンの作り出すニュアンスもね、さいわい苦手なほうではないし、自分なりの公平らしきもので眺めてみるに、じゅうぶんよくできているとは思うのですよ。
全然悪くない。てか、むしろいい。
ただ単に、飽きたんですよね。
かの有名な合成香料が、主役にまでよじのぼって大っぴらに香る作りには、さすがにちょっと食傷気味なのでした。
ちなみに、ミドルからラスト。
レザーの通奏低音は静かに残りつづけていて、あえてほとんどルート音しか弾かないとことん地味で頼もしいダブルベースみたいに、香りを下支えしています。
カロンの潮が引いて、ラストのラストはレザーにトンカビーンのほのかな甘みが重なって、まろやかに穏やかにフェイドアウトしていきます。
あのとき海に出なければ、なんて、おくびにも出さずに、しょっぱい浜辺に寝そべって、静かに瞳を閉じる。
みたいな。
ぼちぼちしっかりめのマリンノートが苦手でなければ、普通にオススメできます。
オンでもオフでもデイタイムに。
なんなく通年使えると思います。
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2016/4/25 19:04:48
ひとこと、エレガント。
こうまでアイリスが主体のパウダリーフローラルな趣とは知らず、はじめて試した時は少しひるみましたw
もともとココアの現れ方に期待を寄せていたのでしたが、このココアは終始アイリスの背中に自らの背中をそっと凭せかけ、裏側でつつましやかに香るイメージです。
もしも、よりダイレクトなココア感を求めるのであれば、選ぶべきはこれではない、かもしれません。
ベルガモットとセージのタッチはほんのわずか。
個人的にアイリス(+ココア)についでよく感じるのはラベンダーで、カルダモンを帯びたこの辺りがちょっとだけソーピーな気も。
それから、レザー。
どこまでもソフトで突っ張らない、やわらかくなめされたみたいなレザーのトーン。
これは、すべての所作に洗練を感じさせながら、あくまで男性性を失わない、的なニュアンスなのでせう。
あとは、少しのベチバー。
ぜんぜん野性的でない、メロウでやさしげなハイチアンベチバー。
このピーラーで剥かれたみたいなつるつるの根菜感が全体の甘みに溶け込んで、なんとなく人参のグラッセみたい。
型にはまった男性らしさとあえて距離をおいた、との旨をドゥマシー氏は語っていますが、それな( ´∀`)、って感じです。
まったくもって、なんという洗練。
だからこそ、「むしろ鼻につくほどの洗練」、ということにも、場合によってはなりかねないかもなのだけど。
女性はともかくとして、化粧品なんかでパウダリーフローラルなニュアンスに親しむこともなく、さしてフレグランスにも明るくないといった類の男性諸氏からすると、特に。
(なんでしょう、<私の頭の中の大時代的な小父様>が、女の腐ったような云々言いそう、みたいなw)
そう、その一段のぼった按配のエレガンスによって、逆に万人には好かれないかもしれない。
それでも、おそらく誰からも、その洗練じたいに疑義を差し挟まれることはない。
そういう香りだと思います。
サンプル使用でのレビューなので、現品をじっくり使ってみるとまた少し評価は変わるかも?
でもまあ、たぶん下げることはないでしょう。
他のアレンジ・エディションも、特に「ディオール・オム・パルファム」(ピュアパルファムではなくEDPなのですね)あたりは試してみたい気がするのですが、なんか大変手に入りにくそうなんですよねぇ……
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:50ml・23,760円 / 100ml・33,330円発売日:-
2016/4/5 20:18:13
皮の苦味をともなった上質な柑橘のスプラッシュ。
アルデハイドのきらきらによって、まさに弾けるようなニュアンスです。
このわずかにレディースっぽいタッチはイランイランがもたらしているのでしょうか。
逆にサイプレスの軽いウッディはレモンの皮とあいまってメンズっぽさを醸し出してますね。
ユニセックスというのはたぶん「未分化な単一の性」みたいなことを意味するものだと思うのですが、そういう意味ではこれは、厳密にはアイソセクシャルとでも言うべきなのかもしれません。
ごりっごりに両性的なのではもちろんなくて、淡くて控えめでありながらにして単一性的ではない、みたいな。
「平板でないシンプルさ」ゆえに、ぼんやりとした「単一の性」とは見えない不思議。
良作だとは思うのですが、価格も価格な上にEDPとしてはけして持ちがよくない点は、ネックといえばネックかもしれません。
個人的には「これでなきゃ」とまで思えないこともあって、総合☆3……プラス、上質さポイントを1上乗せして、☆4というところですか。
ともあれ、酸っぱさも苦味もひっくるめて、まるごと柑橘が大好き! という方にとっては大変喜ばしい作品なのではないかと思います。
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2016/3/20 14:28:31
系統としてはアリュールオムに非常に近しいものがあると思います。
というより、トップの印象だけで言うとかなり似てますね。
アリュールオムと違うのは、
1.少しばかり、スパイシーさが強い(両者に共通するアニス感にシナモンがプラスされた感じ?)
2.ドライフルーツのしっとりと凝縮された甘み+タバコ
3.バニラやムスク系のまろやかさ、あるいはクリーミーさがない分、香り立ちがドライでシャープ。
といったところでしょうか。
ペリーエリスの「m」辺りとも似た系統かな。
ラストはインセンスやサンダルウッドが静かに漂って、漢(おとこ)の黄昏、といった趣き。
EDTですが、特筆すべきレベルにロングラスティングです。(ワンプッシュしてその箇所を洗い流さずにおいたとしたら、丸24時間くらいは香っていそうです。)
香りの輪郭でいえばざっくりフゼア的なんですが(※実際の分類上どうなのかは無知にして存じません)、仕事をする人の香りという感じは個人的にはしないかな。
なんかオンとかオフとかそういうことではなく、ただ、是非も無く、漢(をとこ)、みたいな。(しつこい)
ともあれ、アリュールオムとか好きな方はたぶんこれも好きなんじゃないかと。
現行のマイケルコースフォーメン(名前が似てて紛らわしい)に取って代わられた結果、オークションに安く放出されたりしてることもあるので、見つけたら試してみる価値はあるかもしれません。
*
晩秋の頃だったでしょうか、いつか、がらがらの終電のなかで、この香りを漂わせた小父様と乗り合わせたことがありました。
無意味な会話を持ち寄ることもなく、誰からも少し離れた場所で、黙って暗い車窓を見つめる彼。
ジョウビタキみたいだな、なんてふと思う。
仲間と群れることもなくただ一羽で冬を越える、美しいオスのジョウビタキ。
やがて目的の駅で静かに席を立った彼のあとには、彼の喫う煙草の香りと混ざり合ったマイケルフォーメンの残り香がわずかに漂っていて、何故だかそれはどうしようもなく、一日の終わりに(さもなくば、あるひとつの季節の終わりに)、似つかわしい香りのように思えたのでした。
アリュールオムがふとした瞬間にやさしげな微笑みで人を惹きつける、そんな引力をもった香りだとしたら、マイケルフォーメンはどこか斥力を感じさせる香り。
ひとりで立つ、ということについて、なんとなく考えさせられる香り。
やはり、特に冬に似つかわしいですね。
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2016/2/23 21:21:34
Head notes : Grape - Dried fruits - Bay of Juniper - Plum
Heart notes : Immortal - Lime - Geranium
Bottom notes : Gaiac wood - Cashmere wood - White Honey - Vanilla
とりたてて作りこまれた感じはないけれど、個人的には愛すべき香りだなぁ、と。
フランスのメーカーだけに(?)、ちょうどセヴラックのピアノ小品みたいな。
香りはまず、何をおいても大変にフルーティ。
瑞々しいフルーツ感ではなく、濃縮されたドライフルーツのそれ。
さらにそこへひとさじの蜂蜜をとろりと垂らした感じ、とでも言えばいいのでしょうか。
ですので甘いのはしっかり甘いのですが、フルーツ以外の要素はすべてごく控えめかつ従属的で、思いのほか重たくはないのですね。
脇にイモーテルを従えた、あまーーくて軽いフルーティ、といった様相。
季節を問わずに楽しめると思います。
輪郭としては、蜂蜜を嘗めた時のぴりっと感+ゼラニウム+軽やかなウッディで気持ちメンズに寄せてみました、みたいな?
結果、著しくユニセックス、っていうか、むしろフェミニン寄り……?
歴史あるコニャックメーカーとして知られるフラパン社の、その創業年を名前として冠した「1270」なる香水にいくぶん似ている、という話も。
ドライフルーツ+蜂蜜のどことなく洋酒煮詰めた系の雰囲気がそうさせるのでしょうか。
もちろん構成を見るかぎりでは、あちらの方がもっと複雑だとは思いますが。
持続性はあまりない気がします。
どちらかというと、ファッションの一部にするより、ふとした時の気分転換におすすめかもしれません。
あるいは、何かしら違う系統のものとコンバインしてみるのも楽しいかも。
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