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doggyhonzawaさん
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モルトンブラウン / ミルクムスク オードトワレ

モルトンブラウン

ミルクムスク オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・15,400円発売日:2020/4/30

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5購入品

2020/9/26 12:07:05

ミルクムスク。これはやられた。この名前を聞いただけで超絶嗅ぎたくなるすばらしいネーミング。もう名前で勝利確定系。閉塞感と孤立感、不安感が強い今の時代に、ミルクのように安らぎを与える香りだろうか?ミルクムスクは世界を救うだろうか?(←そこまで言うか)

ミルクムスク。この単純にして今まで誰も思いつかなかった魅力的な名前の香水をリリースしたのはモルトンブラウン。英国のブランドで、どちらかというとトータルバスケア製品で有名だ。かのエリザベス女王のロイヤルワラント(英国王室御用達認証)を持ち、世界中の名だたる高級ホテルのアメニティにも採用されており、信頼度は抜群だ。

ミルクムスクは2020年4月に発売されたばかりの香水。やや拡散力が強いオードトワレ(EDT)と、付けた場所で香りが続くオードパルファム(EDP)の2種類を同名で展開している。EDTは50mlで税込11000円、EDPは100mlで税込22000円。EDTとEDPは香料の構成も印象も結構異なるので、単に濃度の違いではないことは留意したい。このレビューはEDTの方だ。

では、そんな名前でつかみOKなミルクムスク、実際の香りはどうなのだろうか?

可愛いたまキャップを取ってスプレーする。ほんの一瞬、アルコールの冷たい香りが抜けていくと同時に、ふんわり現れるクリーミーな柔らかい甘さ。何だろう?わからない。その下からは割合スッキリした石鹸のような香りも出ている。よくある白い石鹸の香りのようだが、ツンとしたソーピーさではない。もっと控えめでパウダリーに傾いた香りだ。

柔らかくてクリーミーで、ほんのり甘くてフルーティーな気配もする白い香り。それがミルクムスクEDTのトップだ。ブランドは構成イメージを次のように示している。

トップ:ペアー、ピーチ
ミドル:ソフトムスク、アンブロキシド、ヴァニラ
ベース:ホワイトシダー、トンカビーン

トップにペアーとピーチとあるけれど、どちらの香りも明確ではない。ただ桃のもつ柔らかな風味、洋ナシのみずみずしさあたりは感じ取ることができる。同時にソフトムスクのマイルドな清潔感&白いパウダリー感もトップから感じ取れる要素だと思う。そこに柔らかなヴァニラの白いヴェールがかかっている感じ。この白くてマイルドクリーミーな香りが、しばらく続くミドルになっていく。

トップ〜ミドルで大きな変化はないものの、次第に見えてくる香料がいくつかある。特にミルクノートの部分。その1つは乾いた粉っぽいクマリン、いわゆる杏仁霜の香りだ。それからほんのわずかナッティーなココナッツ香もかいま見える。ただ、ミルクムスクという名の「ミルク」の部分がEDTでは実はそれほど強くなくて、その白いブレンドの下からかなりエアリーでスッキリした風が流れている点が特徴的だ。これは、アンブロクサン等でウォータリーなベースを作っている感じ。

この作品を創った女性調香師マーヤ・レヌは、今回のミルクノートが特別なオリジナルであることをフィルムで語っている。その秘密はおそらく、ミルクノートの下に流れるこのスッキリした水のような香りとの配合にあるのだろう。

「ミルク」を感じさせる香りはこれまでにも多くあった。例えばディメーターのコンデンスミルクやフエギア1833のキロンボなどは、かなり練乳寄りなミルクノート系。これらは濃く煮詰めた甘さが引き立つ感じ。これに対して、ヴァニララスト系の香水は数多くあって、ほぼ2種類に分かれる。一つはヴァニラアイスクリーム系の甘く白い香り、もう一つはローストしたヴァニラビーンズ系の焦げた茶色い香りの系統だ。だが、ミルクムスクのミルクノートは確かにそれらのどれとも違う。

なぜなら、ミルクムスクのミルクは液体で流れているからだ。

これまで「ミルキー」と称されてきた香りは、割にアイスクリームやミルクキャンディを思わせる個体系の香りが多かった気がする。マーヤ・レヌは、そこにウォータリーノートを交えることで、流れる液体イメージのミルクにしたのではないだろうか。

ミルクムスクの香りは、桃でもなく梨でもない。石鹸でもなく海の香りでもない。練乳でもなく牛乳の香りでもない。それらのどこからも等距離にあって、香りの円環の中心でソフトなムスクの毛布にくるまれているピュアな香り。赤ちゃんを包みこむ柔らかなおくるみの匂い。

赤ちゃんの顔にそっと顔を近づける。干し草のようにあったかくて、ちょっと酸っぱいようなミルクの匂いがする。いつまでも嗅いでいたい不思議な香り。そして自分が遠い昔、どこかで味わって忘れかけている大切なものを思い出させてくれる根源的な匂い。

ミルクムスク。それは大人になった貴方に捧ぐ、聖母の愛の香り。

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フレデリック マル / アウトレイジャス

フレデリック マル

アウトレイジャス

[香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:10ml・5,720円 / 30ml・15,730円 / 100ml・28,600円発売日:- (2018年11月追加発売)

4購入品

2020/2/8 15:46:10

かつて、街をゆくとかなりの頻度で同じ柔軟剤の強烈な匂いに出くわすことがあった。ダウニーのエイプリルフレッシュの香り。ダウニーの大ヒットは、良い悪いは別として「柔軟剤は香りで選ぶ」という流れを作った感がある。あの個性的な香りを作った調香師は、アメリカのIFFという香料会社の調香師だったソフィア・グロスマンだ。

ソフィア・グロスマンといえば、男性ばかりのIFF調香師の中、その卓越した能力で名を挙げ、女性調香師の先駆けとなった人物。エスティー・ローダーのホワイトリネン(1978)でチャンスをつかみ、YSLのパリ(1983)、カルバンクラインのエタニティ(1988)と次々にヒットを飛ばし、ランコムのトレゾア(1990)でその名声を確実にした。こうした活躍によって元シャネルのジャック・ポルジュ、現ルイ・ヴィトンのジャック・キャバリエらと共に「世界三大調香師」と称された。

彼女の調香師としての活動は50年ほどにわたり、クリエイションは2009年頃に幕を閉じているようだ。そんな彼女の晩年のしめくくりとなった作品の1つが、フレデリック・マルからリリースされたアウトレイジャス(2007)だ。

アウトレイジャス。意味はいろいろあるが、フレデリック・マルは「常識はずれ」という和訳を用いている。いったいどんな香りなのだろうか?

アウトレイジャスをプッシュする。最初に広がるのはとてもジューシーなオレンジの皮の香りだ。やがてその下から、より苦みの効いたライムやグレープフルーツのシトラスミックスが感じられてくる。特にライムの苦みが強い。さもありなん。このアウトレイジャスは、ブラジルの伝統的カクテル、ライムを使ったカイピリーニャの香りからインスパイアされたものだ。

カイピリーニャは、サトウキビ原料の蒸留酒カシャッサをベースに、ぶつ切りにしたライムと砂糖を加えてつぶしたロングカクテルだ。サトウキビの蒸留酒といえばラムが有名だが、ブラジルでは別物らしい。度数の高いスピリッツにフレッシュなライムの酸味と苦味、そこに砂糖の甘さが効いて、暑い夏には病みつきになるカクテルだという。

ライムを香水に使うことはよくある。ただ使う際は、独特のグリーンな苦みが強くて他の香料とのバランス調整が難しいようだ。このアウトレイジャスのトップでは、アップルの自然な甘さを砂糖に見立てることで、苦みの強いライム感を上手くジューシーにまとめているイメージだ。

使いなれないうちは、このトップのシトラスミックスで、何だか黒い不穏な香りがするなあと感じていたけれど、何のことはない。ライム、グレープフルーツの苦みに混じって、ある種のアルデハイドがアルコールっぽい香りを演出していたせいだ。それが際立って感じられ、どこかダークな色彩に感じられる。それでもそれはすぐに消えて、快活ではじけんばかりのフルーティーミックスに変わる。

やがてライムの苦みは薄らいで、しっとりとした透明感ある香りに変わってくる。アクアっぽい香りだ。トップからほのかな甘さと苦みを受け継いだウォータリーな雰囲気は、まさにサトウキビから作られる蒸留酒の風合い。スッキリとして透明感あるアルコールのような香りに変わってくる。そこに柔らかいオレンジフラワーの香りが重なってくるミドル。ここからの香りがとても心地良い。

ただラストは思いのほか早い。ムスクでも主張の弱い方だろう。わずかにシダーの温かみをのぞかせながら、甘さと苦さとスピリッツのようなえぐみを連れて減衰していく。全体的にコロンのようにあっさりとした香り立ちなので、持続時間も短め。体温高めの自分の肌では2〜4時間ほど。パッと広がってスッと消えてゆく夏の夜の花火のようにスプラッシュする香りだ。

「とんでもない!常軌を逸してる!」とも訳されるアウトレイジャス。スラングでは”That’s great!!”的に用いる言葉でもあるので、若い人向けに逆説的なネーミングにしたという感じだろう。ソフィアの作品と言えば、フェミニンムンムン系の濃厚な作品が多かったせいか、どこか肩透かしをくったようにも思うシンプルな香り。ただその透明感あるミドル〜ラストの展開は美しく、オレンジフラワーのふんわりした香りに心が和む。

熱帯の夏の浜辺、濃厚なフルーツの匂い、火照った肌を過ぎる風、ライムの苦みが効いた冷たいカクテル。そんな風景を思い浮かべたソフィアの晩年は、こんなにもシンプルで穏やかだったのだろう。まるで何かの呪縛から解放されたかのように。心ときめかせる南国の風に吹かれて。

アウトレイジャス。それは「常軌を逸する」ほどの大ヒット柔軟剤を手がけたソフィア最後の置きみやげ。香水界の女王がそっとパレットを置いて傾けた、心に沁みるライムカクテルの味。

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メゾン フランシス クルジャン / ア ラ ローズ オードパルファム

メゾン フランシス クルジャン

ア ラ ローズ オードパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:35ml・22,440円 / 70ml・36,300円発売日:2014/10/1

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5購入品

2018/5/19 21:16:22

ここに一枚の肖像画がある。夜のとばりが下りた庭園で、一輪の薔薇を手にした貴婦人の姿が描かれている。ダチョウの羽を飾った盛りヘアスタイル。透明感あるレースやリボンが可憐な青のドレス。そして夜目にも白くなまめかしい肌の質感。この女性の名はマリー・アントワネット。これは彼女がフランス革命で処刑される6年前、宮廷画家であったヴィジェ=ルブランによって描かれた有名な肖像画だ。

絵画題は「薔薇を持つマリー・アントワネット(1783)」。原題は「マリー・アントワネット・ア・ラ・ローズ」。彼女が手にしている薔薇はセンティフォリア・ローズで、王妃がこよなく愛した強香種のオールドローズだ。マリー王妃は常に体のどこかに薔薇をあしらっていたほど、薔薇の香りを好んでいたという。

今をときめく調香師フランシス・クルジャンは、この肖像画からインスピレーションを得て、日本の女性のためにア・ラ・ローズを創作した。では、クルジャンはいったいこの絵からどんな香りを思い描いたのだろう?

ア・ラ・ローズをスプレーする。その瞬間、穏やかなシトラスミックスが一瞬感じられ、すぐにその酸味の下から柔らかくスッキリしたローズ香がただよってくる。透明感があるライチ様のフルーティーな甘さも感じられる、デリケートなピンク色の薔薇の香りだ。体温低めの方は最初にグリーンな香りが出るけれど、シャープさはひかえめで青臭くはない。逆に、体温高めのところに付けると、すぐにフルーティーな甘さが出やすい。そんなトップ。

3分後。柑橘は消え、とても上品なピンク色の薔薇の香りに落ち着いてくる。香り立ちは弱め。付けて5分なのに、つけた場所にかなり鼻を近づけないと香らないほどだ。それでもこの薔薇の香りじたいはとてもナチュラルで好ましい。女性の可愛らしさが感じられるフルーティーな薔薇の香りがしてくるミドル。

やがて30分ほどすると、薔薇の香りが変化して、しっとり落ち着いた低音を醸し出してくる。同時にパウダリーな柔らかさが広がってきて、心落ち着く香りになる。クレジットにバイオレットとあるけれど、スミレの香りそのものではなく、スミレ香料のパウダリーなファセットが出てくるイメージ。このミドル後半の香料のバランスがとてもいい。薔薇の香水というより、女性のお風呂上がりの上気した肌から薔薇石鹸とシャンプーの香りがほんのり立ち上るといった感じになってくる。清潔で大人っぽい落ち着きを感じさせるミドル後半。

そして付けて2時間もすると、薔薇の香りはかなりうすらいでラストになる。構成ではシダーとあるけれど、そんな香りはしない。柔らかな合成ムスクがたくさん使われているやや甘めのパウダリーなラストだ。クルジャン独特のまろやかなムスキーとでも言うのか。ラストは穏やかに長く5〜6時間は静かに漂っている。あるいはそれ以上。

香りの特徴をまとめると、まずはとても淡い香り立ちのオードパルファムだということ。このへんは値段との兼ね合いも含めて賛否両論分かれるところだろう。70mlで2.8万という値段を考えたとき、薔薇系の強い主張を求める人は香りに物足りなさを感じるかもしれない。ただ、そこから立ち上る2種類の薔薇の香りは、前半が可愛らしいフルーティーな薔薇、後半がしっとり落ち着いた薔薇といったように違いが明確で面白い。前半がピンクのセンティフォリア、後半がターキッシュローズアブソリュートだろうか。そこからヴァイオレットのパウダリーと相まって、まろやかムスクへとスライドしていくところはとても美しい変化。さながら、少女から女性へと変わっていく成長を2種類の薔薇で表し、その後のパウダリー&マイルドなラストで、母性への進化を表現したように感じられる香り。

それこそが、この肖像画からクルジャンの受け取ったイメージではなかったろうか。この絵には、オーストリアから輿入れして孤独だった少女の頃の可愛らしさ、フェルゼンに恋をして身に付けた華やかさと女性らしさ、そして最愛の子供らに注いだ母としての優しさ、全てがこめられているように思う。たとえそこに為政者の后としての自覚は少なかったにしても。

気高く咲いて美しく散った彼女の人生、それはまさに薔薇そのもの。かつてベルサイユ宮殿に咲いた大輪の花、マリー・アントワネット。

クルジャンのア・ラ・ローズは、そんな彼女に捧げた、フランス版「ベルサイユのばら」の香りなのだろう。

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ディプティック / オードトワレ ロンブル ダン ロー

ディプティック

オードトワレ ロンブル ダン ロー

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2017/9/9 18:45:34

街を離れて広いところに行ってみたい、どこか自然の中へブラリと出かけてみようか。そんなとき、ディプティックのロンブル・ダン・ローのオードトワレを身に纏うといい。スッキリしたリーフグリーンの青い香りとダマスクローズの艶やかな香りが、そっと小さな旅に寄り添ってくれるはず。

ディプティックのフレグランスの中でも特に人気が高いといわれるロンブル・ダン・ロー。展開は、香料濃度が異なる黒ラベルのEDPと、外側が白枠ラベルのEDTの2種類だ。よく聞くのはキャンドルで大人気の「BAIES(べ:ベリーの意)」と同じ香りのトワレとしてこちらを紹介されるという話だが、実際はキャンドルの方がフルーティーで甘く、このトワレとは香り立ちがかなり異なるように思う。トワレはキャンドルに比べると、苦くシャープなグリーンノートがよく主張してくる。

ロンブル・ダン・ローを1プッシュする。するとすぐに感じられるのはグリーンの青い苦み、野の草の葉や茎を手折ったときに立ちのぼるようなシャープな青臭さだ。初めてかいだときにはフィグ系の生っぽさもあるかな?とも思った。さらにこのグリーンノートには、奥に松脂のようなうっすらとした苦みや、キクやシソ系を思わせる独特のスッとする雰囲気もある。一言で言えば、生い茂った草むら。草いきれの鋭い匂い。朝もやの中、人の背丈ほどもある多種多様な植物が繁茂する庭の入り口に立つ。そんなイメージのトップ。一体、このあまり人の手が入っていない野趣あふれる庭園の奥には何があるのだろう?そんな秘密めいた探検に興味をそそられるミステリアスなオープニング。

やがて5分もせずに、グリーンな香りの奥からは、ややボディのあるローズが静かに顔をのぞかせてくる。草ぼうぼうの庭と思いきや、煉瓦の小道の左右に不意にピンク色に開いたオールドローズがあちらこちらに現れた雰囲気。シャープな苦みが続く香りの影から、高音でキリッとしたローズ香がそこはかとなく漂い始める。このハーモニーが絶妙。キレッキレの苦みあるリーフィーな匂いに、ローズの甘さと華やかさがチラッチラッと明滅するようにミドルノートへと誘っていく。一瞬一瞬で香りがすぐに異なっているような気がして、付けた場所に鼻を近づけていつまでもその変化を確かめてみたくなる。

やがてグリーン×ローズの香りに、シロップがけしたような甘さが加わってくる。綿アメのようなスイートな甘さ。グリーンノートはブラックカラントの葉や樹液をイメージしたブレンドのようだが、黒スグリの果実の濃厚な甘苦さも加えたのだろうか。コクのある甘さだが、ローズの香りとは調和しているように感じられる。逆にこの甘さがなければ、グリーンとローズのシャープさばかりが際だってしまって、苦みの強い香り立ちになってしまうかも知れない。

ラストはまたグリーンな風を連れてくる。さっきまでのかぐわしいブルガリアンローズはどこに行ったのだろうとあたりを見回すが、日が高くなった庭には、緑の葉がそよぐ音が聞こえるばかりだ。透明感のあるムスク系の風が、さらに静かに余韻を奏でる。それは少しジャスミンっぽさを感じさせる穏やかなラストノート。庭園の奥、高くなった太陽の光を受けて輝き出した川の水面のように、ただキラキラと明滅して消えていく。そこまで大体3〜5時間。

全体的に、甘苦いフルーティ・グリーンの風とスッキリ清涼感のあるピンクローズのマリアージュといった感のオード・トワレ。その配合バランスがよく、グリーン系にもローズ系にも傾かず、拮抗を保ったポイントで新しい香りを創造している。そのせいか、付ける場所やその日の気温・湿度によって香り立ちがかなり変わってくるフレグランス。ときにグリーンの青臭さが出過ぎたり、フルーティーな甘さが際だっていたり、かと思うと今まで出なかったバラの香りを感じたりと、日々変化が味わえる香りだと思う。

街歩きの時ではなく、どこか広々とした場所でゆったりした気分で付けたい香り。旅行先でもいい、小さな散歩や冒険でもいい、人ごみを離れてリラグゼーションを感じたいときにお勧めのフレグランス。都会の真ん中の小さなバラ園でも、河原の散歩でもいい。広い空と大地のあるところで心に寄り添ってくれそうな香り。

水面を泳ぐ一羽の白鳥。少し冷たくなり始めた川の水は、どこか憂いを帯びた青に変わっている。不意に、秋咲きのダマスクの香りがどこからか漂っている気がした。見渡しても野辺には背の高い草木の緑ばかり。気がつくと先ほどまで優雅に泳いでいた白鳥の姿がない。代わりに水面に映ったのは、自分の後ろに立った黒いシルエット。驚いて振り返ると、そこには摘み取った薔薇の花かごを抱えた君の笑顔。

その瞬間、すず風が草木の葉をさやさやと鳴らした。2人の輝くほとりで。

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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) / フレンチ ライム ブロッサム コロン

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

フレンチ ライム ブロッサム コロン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

5購入品

2017/9/24 11:10:14

「自分から見たら円。横にいる人から見たら長方形。これって何の形?」見る角度によって、円にも長方形にも見えてしまうもの、答えは円柱だ。そしてそれは人の心も同じ。げにおそろしきは固定観念。自分から見える側面だけで物事を知った気になって強く主張するのは、とてもこわいことだ。自分から相手のそばに行って、別の側面から一緒に眺めてみて初めて気付くことは多々あるものだ。(←各国首脳、特におぼえとけよ)

そういう意味で反省させられたのが、ジョー・マローンのフレンチライムブロッサム・コロン。直訳すると「フランスのライムの花のコロン」。ライムの花かあ。きっとスッキリした柑橘系で甘い香りがするんだろうなあと勝手に想像をふくらませていた。

だが、これは大間違い。確かにライムの花は存在するが、ジョー・マローンの「ライムブロッサム」とは、ヨーロッパでは当たり前に「リンデンの花」を指すようだ。リンデンは西洋菩提樹。釈迦でおなじみのインドの菩提樹とは異なる。ヨーロッパでは街路樹としてなじみ深く、花や木はハーブティーほかさまざまな用途に利用されている。リンデンは、ドイツ語でシナノキを意味するライムツリーと呼ばれ、英語でもそのままライムツリーとされている。したがってこのコロンは、「フランスのリンデンフラワー」という意味が正解だ。

初めてこのコロンを試したのは、渋谷ヒカリエだった。ヒカリエのジョー・マローンはサンプルが試しやすいので、次から次と黒リボンのついたサンプルボトルを引き上げては片っ端からかいでいた。そのとき、「あ、シトラスとジャスミンと何か濃厚なホワイトフラワー」という印象を覚えたのが、これ。「これがライムの花の香りかー」と間違ったインプリンティングをしてしまったのもその時だ。

フレンチライムブロッサムをひと吹きすると、一瞬、とても重たくて甘い濃厚な花の香りが鼻をくすぐる。ネロリに金木犀を足したようなしっとりとした低いフローラル。すぐにスッキリしたベルガモットが上からヴェールをかぶせ、花の重たさをカバーして爽やかな雰囲気を演出する。このバランスが良くて、たった3分程度ながらとても心地よい。爽やかさと濃厚な花の蜜を4:6ぐらいでブレンドしている雰囲気。

やがて、エキゾティックなフローラルの奥から、グリーンな酸味とシャープな香りが出てくる。それは甘いフローラルと相まって、どこか「梅ガム」のような香気に感じられてくる。ハーブだろうなあと思って調べたらタラゴンのようだが、シソっぽさを感じるミドル。この甘くしっとりとしたフローラル&タラゴンのアロマティックな協調のまま、香りは安定して4〜5時間ほど続く。ラストというかベースは、わずかなムスクとロウみたいなワックス系の香りで収束。ミドルの後半は、入浴剤系のじわりとしたジャスミンの香りが強く感じられる。

全体的に、ライトフローラルのバリエーションの1つとして作られた香りだが、思いのほかリンデンの濃厚さとジャスミンのふくよかさが強く、コンバイニングよりも単品使いがおすすめのコロン。トップにグレープフルーツを上から合わせたり、アールグレイ&キューカンバーあたりをのせてみずみずしさを出すと春夏向きかと。また、秋冬はインテンス系を少し置いて、その上にこちらをレイヤーするのも趣深い。ベースとなる香料がほぼない感じなので、トップを強くするか、ベースに重たい香料をセレクトすると楽しいと思う。レッドローズや他のフローラルとのコンバイニングは、フローラルが強く出過ぎるのであまりおすすめしない。この一品だけで濃厚さは折り紙付きだ。

リンデンの木といえば、有名なのはシューベルトの「菩提樹」。その歌詞は日本にも広く紹介されていて、その中にこんな一節がある。真夜中に旅立つ者に向かって、菩提樹が語りかけるシーンの歌詞。「来(こ)よい、とし侶(とも)、こゝに幸あり。」「来よい」は「今宵」の掛詞だろう。我が菩提樹の下に来れば安息が得られようと優しく誘う言葉だ。だが、ここにも円柱やライムツリーと同じミスリードがある。

研究者の解釈によると、この歌詞は、オーストリアの貴族がナチスドイツから逃れてアメリカへ渡ろうとしたときの戦火の夜を歌ったものであり、「菩提樹が誘う永遠の安息」とは、そこで自害を促すものだとのこと。樹下での自害となれば詳細は推して知るべしだが、「幸」と訳した言葉の真意が、「逃げ切れぬ死ならいっそ菩提樹の枝で」だったとしたら、名曲の聴こえ方も異なるというものだ。

そう考えると、香りも捉え方ひとつと改めて思う。フレンチライムブロッサムもまた、人によって全然感じ方は違うのだろう。もしかしたら、ライムの花でもリンデンの花でもないのかも知れない。あなたに感じられるこの花の香りは。

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ジギーさん
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プロフィール
  • 年齢・・・46歳
  • 肌質・・・普通肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・普通
  • 星座・・・双子座
  • 血液型・・・未選択
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  • 食べ歩き
  • ブログ
  • ヨガ

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自己紹介

電車に乗っていても人の顔のたるみを見てしまうほどのたるみ恐怖症。ハリ、たるみ対策に命をかけつつ、できるだけ中からのケアと植物の力(特にローズ)を使った… 続きをみる

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