- doggyhonzawaさん 認証済
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- 50歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
2016/7/2 01:18:34
シャリマー、それは女性用香水の至高の逸品。あらゆる年代の女性の魅力を底上げする香り。
女性の美しさ、高貴さ、甘美さをひきだす琥珀色のヴェール。男性の本能を無意識下で揺さぶり続け、心に刻みつける香り。恍惚の媚薬。
この世には、本当に出会った瞬間、衝撃でのけぞるような香りがある。自分にとって、シャリマーはその1つだった。本当にときどきしかないが、初対面で心を奪われる人がいるように、香りにも心をわしづかみにされる物がある。「何を大げさな」と感じる方は、まだ出会っていないだけかも知れない。かけがえのない人にも、心震わせる香りにも。
だが「彼」は出会った。その人生において、何者にも代えられない運命の女性と。
ムガール帝国の第5代皇帝シャー・ジャハーン。彼と彼の愛妃、ムムターズ・マハルの物語。シャーはハーレムにいた他の女性には目もくれず、ただひたすらにタージ(ムムターズの愛称)だけを愛し、その間に13人の子をもうけたという。14人目を身ごもったタージが亡くなったとき、シャーの悲しみは天空を裂き、全ての権力と財を注いで、総大理石造りの彼女の霊廟、タージ・マハルを何十年もかけて建設させた。この愛の逸話はつとに有名だ。
もしもこの逸話に感銘を受けたジャック・ゲランが、「タージ・マハル」という名の香水を作っていたなら、それはおそらく、彼の叔父であるエメ・ゲランが作ったジッキーのように、愛する者との別離や深い喪失の色を呈した、もの哀しげなフレグランスになったことだろう。だが、彼はちがった。
ジャック・ゲランは、一途にタージを求め続けたシャーの偏愛とも言うべき姿を、2人が愛を睦み合った庭園の名である「シャリマー(愛の殿堂)」というイメージに凝集した。それは、愛する者を失った悲しみ以上に、深く強く心に刻まれていたであろう2人の歓喜の日々。そんな美しく官能的な日々を彷彿させるあたたかい香りだ。センシュアルではあれど、エロティックにはあらず。
そんなシャリマーのトップは、強烈なハーブと樹脂の辛みとベルガモットが、噴水のように空気中に霧散して開く。まるで、チェリーコークに花々やハーブを入れて煮詰めたような雰囲気だ。そして、確かにジッキーのオープニングを思わせる。シャリマーは、ジッキーのノートにさらに香料を加え、重層的にリファインしていく中で作られたようなので、なるほどと思う。心をわしづかみにする強烈なベルガモットの拡散と、その下から同じ熱量で鼻を刺激してくる薬草や樟脳っぽいスパイシーなオープニング。好き嫌いはあるにしても、ひとかぎで他の香水と全く違う繊細な複雑さ、高級さが感じ取れると思う。けれど、高慢ではない。絶え間なく鼻と脳を刺激し続け、あっという間にとりこにされる。まるで、シャーとタージの衝撃的な出会いのように。
そしてすぐにミドル。炭酸のように拡散していたベルガモットが落ち着いてくると、シャリマーのミドルは、驚くべきことに温度が上昇する。ここがジッキーとの大きな違いだ。もっと甘くかぐわしく昇りつめていく。暗くパウダリーなアイリスと樹脂の甘み、パチュリの苦みが入り混じり、重奏を奏でる。低い太鼓が鳴り、シタールの調べが聞こえる中、松明のオレンジ色の灯りに照らされて、2人の体温がどんどん上昇してゆくイメージ。それは、燃えさかる愛の調べ。誰にも邪魔されない2人の時間。
やがて気がつくと、穏やかなヴァニラとトンカビーンの香りに変わっていることに驚きを覚える。そんなクリーミーな甘さが感じられたらラスト。パルファムなので拡散力は弱めだが、点でつけたときのかぐわしさ、自分の体温や気温、湿度に応じて、さながらオーロラのようにさまざまに変化する香りの揺らぎは、トワレやオード・パルファムの比ではない。そのわずかな変化を楽しむだけで深い安息を得ることができる。それは、オポポナクスの甘い樹脂香と、白っぽくパウダリーに落ち着いたアイリスと、柔らかなヴァニラ。至福のラスト。恋人たちの体温であたたかみを増したシルクを思わせる香り。このラストに包まれて眠りにいざなわれたなら、どんなにか安らぎ、よい夢が見られるだろう、そう思えるようなドライダウン。シャリマーを特別な夜の寝香水にしている方が多いという話も頷ける。それは、2人の穏やかな寝息。白亜のパレスの蒼い夜。
シャリマー、それはゆるぎない愛と官能の泉。こんこんと湧き出る琥珀色の陶酔。一途な愛を現世にとどめつつ、時空を超え、天上での再会を誓って焚きしめられた聖なるバルサムの香り。思い出の庭園の上に広がるインディゴ・ブルーの夜空。星々のまたたきに吸いこまれ、消えていく白い燻煙のドレープ。とろけるような天使のヴァニリック・ゲルリナーデ。
その香り、別格。
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- chance1992さん 認証済
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- 25歳
- 敏感肌
- クチコミ投稿14件
2018/3/16 11:58:20
この香りは私にとって衝撃でした。
初めて店頭で試した時、渋いベルガモットの香りと、香ばしい樹皮の香り、それと心地良く甘いふわりとしたバニラの香りが、バランス良く調和しながら、滑らかにひとつの香りとなって、胸のずっと奥深くまで染み入り、柔らかく広がりながら心を満たしてくれたようでした。
あの時の感動が忘れられず、まずはPから購入してみました。徐々にラインで買い揃えていますが、不思議なことにこの香りは毎日つけていても飽きません。
シャリマーは鼻先で楽しむものではなくて、心で感じる香り。
流行のフルーティーフローラルやシトラスとは程遠い香調で、極上の柔らかさと奥深さを持つ香り。
この香りは、薔薇やジャスミンなど特定の何かの香りが主張するのではなく、さまざまな香料が絶妙に合わさってひとつの香りを織り成し、情景や心の移ろいを想起させる香り。美しい夕焼けの情景や、しんとした森の景色や、肌の質感のような柔らかい甘さを感じます。
シャリマーの魅力の一つは、美しく完成されたデザインのボトルです。
ゆったり羽を広げた孔雀の立ち姿のような優雅なシルエット。緩やかな曲線のアウトラインと、キュッとしたくびれのギャップも美しくて、足元にはジュエリーのような細かいカッティングが入っています。表面のプリーツは、仕立ての良いブラウスの胸元みたい。金の刻印の入った蓋は、噴水から溢れる水のようなフォルムで、薄いフチには細かいカッティングが施され、綺麗な透明感のある青い色。とても繊細で、蓋だけでも独立した芸術品のようです。
(惜しいのはガラスの質で、ソーダガラスのようなキメの荒いガラスです。シャネルのフラコンはもっと透明度の高いすべらかなガラスを使用しています。)
肌に乗せた瞬間、ずっしりと重くて渋いベルガモットの「皮」の香りが、鮮烈に駆け抜けます。柑橘系でも、弾ける感じや爽やかさはありません。
この香りが飛ぶと、ほんのりと甘い木と樹皮の香りと、それを低音から支えるバニラの柔らかい香りが主張します。
木の香りといっても、香木を燻したようなしっとりとした香り。冷えた身体をほっこりと暖める温度感があります。
次第にゆったりと甘い花々の香りが引き立ってきます。柔らかいアイリスとローズの、ふわっとした軽さのある香り。この花々の香りが本当にふくよかで、豊かで優しくて。
EDPではあまりこの花の香りが立たないんですが、Pのミドルはゆったりしていて、花々の香りを存分に楽しめます。
ラストではベースにいた濃厚なバニラが絡むように上気して、ふわふわと香ります。バニラの香りは、気温によってはパウダーや石鹸のような淡い香りに変化して消えていきます。
ドラッグストアに売っているような安い海外のボディスプレーのようなねっとりしたバニラの香りではありません。バニラビーンズに少しお砂糖を足した、自然な甘い香り。
シャリマーは柔らかく暖かい空気のように身体を包み込み、寄り添って香るので、決してうるさくなりません。つけたのを忘れた頃になって、時折静かに鼻先をかすめる。いつでも大音量で香りつづけるということがありません。
インドのイメージを投影しているのでしょうか、全体的には重厚でしっとりした香りにも関わらず、一貫してカラッとした表情を維持しつづけて、終始ドライな印象の香りです。甘い花やバニラの香りの中にもカラッとした抜け感があるので、ジメッとした重さがありません。あくまで香りの質の重厚さで勝負していて、香りそのものの質量は軽やか。
砂っぽい、インドの熱い気候を感じます。
(ちなみにドゥーブルヴァニーユはかなり湿度を感じる香りです。)
ミツコは香水とEDPが完全に別物ですが、シャリマーはEDPも香水に近い香り方をします。
全体の香りの柔らかさと、ミドルの花々のゆったり花開く様子は香水ならではです。終始香りが肌から浮き立つような立体感も、香水が上です。
EDPは花々よりも終始バニラが強調されています。私自身はどちらも愛用しています。
ボディパウダー、石鹸、ボディミルクと合わせて飾ると、上品で高貴なデザインの品々はさながら王妃の調度品のようです。
市販のボディケアアイテムや化粧品がどんなに進化しても、こんなに高貴で美しいアイテムは他にないでしょう。
綺麗な品々で時間をかけて丹念に身支度を整えたら、とっても優雅。
ボディケアまでラインで使ってから香水をのせると、柔らかい上質な香りが幾重にも身体を包んでくれます。
シャネルやディオール、大好きな香りがたくさんあります。けれどシャリマーに取って代わる香りはありません。同じゲランが生み出した、多くの香りでさえも。シャリマーは別格です。
そして、意外と付ける人を選ばない香りだと思います。是非一度、店頭で香りを試されることをお勧めします。
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2021/7/25 10:39:24
「香り」に関して、情報の波に疲弊してしまう時があります。国内外問わずニッチフレグランスブランドがあちこちで立ち上がる昨今。希少な香料、新しい製法、斬新なキャッチコピー…都度好奇心を半ば強引に刺激されてしまう…
あぁ、静かにしたいな。そう思った時に手に取るのがこのレール デュ タンです。
素直な香り。咲き乱れる花々と柔らかな太陽の光をシンプルに讃える様な、見た目そのままの黄金色の香り。
ひと吹きすると、むせる様な甘い蜜と花粉の香りをのせた暖かい風が吹いてくるみたい。
特に春につけると、格別です。
「自然で本物そっくり花の香り」ならばアロマオイルなどである程度再現できるかもしれませんが、この感じを「香水」として確立させているところが凄いなーと思います。
何というか、リアルを追求しているけれど香水然とした花の香り。とでも言いますか…
(故にアロマティックな雰囲気を求める方にはおすすめできません)
今時の洒落た香りとは全く違いますが、原点回帰?頭をリセットしたい時に。
何だかんだで常にそばにある香りです。
(パルファムが廃盤なのが悲しい!あの濃い蜜感が好きだったので…)
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- ☆Mitchell☆さん
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- 33歳
- 乾燥肌
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2021/3/3 14:03:36
人と被るだろうけれど纏いたい心地良い香り。
時間が経った時の温もりを感じる女性らしい香りが好きです。
ハイブランドは身に付ける人を生かしも殺しもする
私の「私の魅力」を奪わず使えるか
奥村真理子さんの印象的なお言葉です。
シャネルの香りって割合人と被ります。
付けているとシャネルだって分かる人もいると思います。
その時自分の印象をシャネルの香りの印象よりも前に出せるか。
出せてるのか分からないけれど、年齢を重ねた今がよりナチュラルに、気負いせずに纏えるようになった気がします。
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[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
容量・税込価格:50ml・13,200円発売日:2007年
2019/1/27 11:41:24
ムエットのみのため評価はしませんが、自分の覚え用に。
ムエット5種を順に試してしまったせいで、こちらのトップノートの記憶が抜け落ちています。苔清水や織部のトップの印象が強すぎて。
ですのでミドル以降の話になりますが…
ものすごく良い香りです!
公式ではユニセックスでなく男性用となっておりますが、私にもつけさせろと思うくらいに良い香り。
これをつけてる方が近くにいらしたら、ずっとクンクンさせてほしい(笑)
パルファンサトリはトップからミドルに移行するというより、全ての香調が並列して香る、と書いていらっしゃる方がおられますが、今まで試したサトリ作品の中でマザーロード66が最もそれに近いです。
香調の全てがまっすぐに主張して、それでいて絡みあっている。名前の由来はこれかな?
肌に乗せると、おそらくその方によってグラデーションが変わるのでしょう。
重めに香りそうではありますが、爽やかです。
トップのシトラス組、ミドルとラストの柔らかさと華やかさ、締めにスパイシーなペッパー。
若い香りに思いますがおじ様世代でも使えるようなので、サトリマジックはぜひ本人をクンクンして確かめてみたいですね。
ちなみに残念な私の鼻では、ペッパーがアクアやマリンの系統に香ります。
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