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2017/1/21 19:26:47
ゲランのアプレロンデは、パウダリーな雰囲気をまとった紫色の美しい香りだ。1906年に天才調香師ジャック・ゲランが作ったこの静かな香りは、110年以上の時を経てなお、いまだにファンを増やしている。これまで数えきれないほどの香りがこの世界に生まれ、そして静かに消えていった。ではなぜアプレロンデは残り、今なお愛され続けているのだろうか?
その一番の理由は、人がこのオードトワレに、透明水彩画のような情景と美しい色彩の変化を感じて惹かれるからではないかと考える。
アプレロンデ、「驟雨(しゅうう)のあと」。にわか雨が通り過ぎた雨上がりといった意味だ。この香りは、つけた人自身が思い思いにその情景を感じ取れるような構成で作られている。ムンとする低気圧の気配。突然暗くなった空から降りだす夕立、そして雨が過ぎ去ったあと、次第に光に照らされていく庭園の草木や花々のみずみずしい様子。その姿を香りの移り変わりで表現している。
それは色彩の変化についても同様だ。低く垂れこめた暗灰色の雲。白ぬけした彼方の空。乾いた地面と窓枠をたたき、紫に煙る雨。濡れた草原に咲くスミレの紫、水滴をしたたらせる葉の緑。雨に揺れて花から拡散した黄色い花粉の雫。香りが五官を揺さぶるというのは、このような香りを言うのかも知れない。
そんなアプレロンデの香りは。
ボトルからスプレーすると、わずかな柑橘のあと、暗い甘さが広がり、一瞬、ほこりっぽいような匂いが漂う。これは、漢方薬の甘さを思わせるアニスの香りと、アイリスルートのパウダリーだ。そしてすぐ、その下からほんのりスパイシーな香りが出てくる。それはカーネーションノートを思わせるクローブの香りだ。火をつけるとパチパチとはじけ、甘くしびれる香りをくゆらせるクローブ入りタバコの香り。これらがふわふわと移り変わり、さながら曇り空と、湿度の高まった暗い部屋を思わせるトップ。
やがて10分ほどでクローブの気配は消え、下から顔をのぞかせてくるのは、紫色の花の香りだ。それは控えめでややメランコリックなスミレの香り。そして同じくらいの音量で主張しているのが、澱粉のような粉っぽい香り。埃っぽさはなくなり、次第にドライで温かみのあるパウダリーになってくるので、アイリスからヘリオトロピンにバトンが渡されたことを知る。ヘリオトロピンは、ややツンとしたアーモンドの雰囲気をもったパウダリー香だ。そこに、黄色い花粉のような甘苦しい香りが混じってくる。少し貼布剤風の清涼感(サリチル酸メチルの匂い)を伴っているので、ミモザの香りに似たカッシーの香りのようだ。カッシーの花は、ミモザ、バイオレット、そしてパウダリーな雰囲気を持ち合わせているという。アプレロンデの構成からすると、各香料をつなぐための重要な橋渡しをしているようだ。
ラストは、スミレの香りをほんのり残しつつ、黄色い花粉のような香りとパウダリーなヘリオトロピンのまま、消失していく。ヴァニラやベンゾインもクレジットされているようだが、かぎ分けられるほどではない。
オードトワレではあるが、全体に主張は弱めで、ミドルのバイオレット&アイリスが心地よく感じる時間は1〜2時間と短い。その儚さをどうとらえるかだ。ハンカチなどにスプレーすると、スミレの香りがきれいに出るので、バイオレットファンにはそんな使い方もおすすめだ。同じスミレの香りなら、アニック・グタールのラ・ヴィオレットの方がより強く主張するものの、香りじたいはシングルノートっぽく、変化の面白さは感じにくい。
アプレロンデは、穏やかで少しだけ感傷的な香りだ。四季を問わず、どんよりとした曇りの日、雨が降っているとき、雨上がりの静けさに包まれているときなどに、つい寄り添いたくなるような。思えば人生、そんなグレイな日の方が多いもの。どこかノスタルジーを感じさせるアプレロンデは、そんな日に似つかわしい香りだ。
通り雨が過ぎる。外へ出ると、ミストになった無数の水の粒が、庭の輪郭をぼかすように、そこかしこに漂っている。雲間から斜めに切り込んできたまばゆい日差しが、少しずつ灰色のベールをめくって真実の色彩を取り戻していく。光の玉をのせた緑の葉の間を歩き始める。可憐なスミレの紫。木々の枝からしたたる水滴。ゆるやかに雲が流れ、次第に光が満ちあふれていく。その刹那、輝き始めた空にそれを見つける。
光の屈折で空に浮かんだアルカンシェル。アプレロンデの虹の架け橋。
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2017/4/12 14:09:49
店舗限定香水。
その言葉の響きに地方民としてはとてつもない特別感と憧れを持っています(笑)
アプレロンデもその一つ。
先述の特別感と併せて、その発表年の古さと歴史の長さが、個人的にアプレロンデを特別な存在へと押し上げている気がします。
香りは儚げなスミレの香り。
同じスミレ系ですとアンソレンスを所持していますが、アンソレンスは濃厚で情熱的な香りで、ベリーの香りと相まって小悪魔な大人の女という印象。
一方アプレロンデは、守ってあげたくなるような繊細な香りで、涼しげな白いワンピースが似合う美少女を連想させます。
同じスミレが題材でもこんなに印象が変えることが出来るのだと、改めて調香技術の凄さに驚きます。
名前の通り、専ら雨の日に付けています。
雨のどんよりとした、じめっとした憂鬱な気分を一掃してくれる気がするからです。
繊細な香りなので持続時間は短め。朝付けて夕方には香りが無くなっていることが多いので、アトマイザーに入れて持ち歩いています。
なので容量は多めですが、普通に使い切れるかと。
廃盤になってほしくない香水の一つ。
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2017/1/24 19:41:33
調香師:ティエリー・ワッサー
香調:フルーティフローラル
トップ:ブラックチェリー、ベルガモット
ハート:ブルガリアンローズ、ターキッシュローズアブソリュート
ラスト:パチュリ、ブラックティ、トンカビーン
いろんな種類が登場しておりますが、ボトルのドレスのイラストで分類できます。
本家EDT:ビスチェワンピース/フレッシュフローラル
本家EDP・P:パフスリーブワンピース/フルーティフローラル
オートクチュール(廃盤):ワンショルダーロングドレス(スリットドレス)/ウッディフローラル
インテンス:ホルターネックワンピース(モンロードレス)/グルマンフローラル
オーフレッシュ:キャミソールワンピース(ペタルドレス)/グリーンフローラル
つまりパフスリワンピのイラストが入ったボディローション・シャワージェル・2013年ホリデイコレクションは、こちらのEDPとPの香りです。
EDP・Pは、EDTとはマテリアルも香調も全く異なります。
(厳密に言うとEDPとPも、Pの方がアイリスやバニラも主張してより女っぽい雰囲気なのですが)
ラ プティット ローブ ノワール=リトルブラックドレス。
シンプルな黒いワンピースのことです。
着こなし次第でオフィスもショッピングもデートも、カジュアルもフォーマルもこなせる。
女性なら誰しもクローゼットに1着は持っている、そんな存在。
つけるとまずは甘酸っぱさが広がって、そこにローズとブラックティが混ざってきます。
香りが変遷するというよりは、ワンピースの下にパチュリとブラックティのパニエを重ね着しているような(分かりづらくてすみません)、割と最初から底の方にふわふわとスモーキーさがある感じ。
可愛らしいフルーティフローラルに時折ちらっとスモーキーが見え隠れするので、ついつい追いかけようとしてしまうような香りです。
バニラやキャラメルのようながつんと主張の強い甘さではなく、ブラックチェリーとベルガモットの酸味もある甘さにローズの大人っぽい甘さが混ざってくるのと、絶妙な渋みがあるのとで、甘さの割に男女問わず好感度は高いと思います。
でも敢えてどちらかと言うなら、女性ウケかな。
毎日つけてるとちょっと飽きちゃうんですけど、ある時突然ふっと恋しくなる、そんなところまでブラックドレスっぽい香りです。
低体温でウッディやスパイシーが立ちやすくフルーティが消えがちな私の場合、真冬の寒い時期につけるとパチュリが盛大に主張して、メンズフレグランスのようになってしまいます。
(それも悪くはないのですけど、きつい顔立ちと長身と男性っぽい大雑把な性格がコンプレックスな私は、香りくらいは可愛くしたいので 笑)
かと言って真夏につけるべき香りでもありませんし、春と秋のやや暖かめで湿度は低めの日につけるようにしています。
真冬につけたい時は、よりミルキーで渋み少なめの同ボディローションをベースにつけてからEDPを少量纏い、つけ直しにもEDPではなくボディローションをつけると、渋くなりすぎずにちょうどいいです。
ゲランの熱烈なプロモーションが功を奏してか、街中でこちらの香りを纏った女性とすれ違うことも少なくありませんが、明らかにつけすぎてしまっている女性のなんと多いこと。
発売時は毎日のように愛用していた私でさえ、すれ違っただけで「うっ」となってしまうほどたっぷりとこの香りを浴びている方に遭遇する度、悲しくなってしまいます。
適量を守れば大人の女性と少女の狭間のようなえも言われぬ色っぽさが出ますが、つけすぎると途端に安っぽくなってしまうきらいがありますし、またつける日の気候や気温や湿度もそれなりに選ぶフレグランスだと思います。
リトルブラックドレスは上手く着こなせばこの上なくお洒落で素敵ですが、着こなしなんて何も考えなければただの野暮ったい人ですよね。
それと同じことです。
だからこそ、愛用するのならその魅力を最大限に引き出すつけ方をしてあげてほしいなと残念に思えてなりません。
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2017/3/2 22:36:41
店頭で試してきた感想です。
今流行りの、モダンな香り。
ラヴィエベルとか、モン パリとか(これは名前も似てますが)プワゾン ガールなどの、甘いグルマンよりの香りと、とてもよく似た印象をもちました。ただ、これら似たフレグランスと違うところは、人工的なイガイガ感をあまり感じないところかなと。
それから、カーララベンダーとか食用のラベンダーとか分かりませんが、ラベンダーってもっとスーッとした香りのイメージがあったのですが、このモン ゲランはトップから、フワッとモワッと香ります。だから、稀少なラベンダーが香りますと言われても、よく分からない。
アンジーにインスパイアされた香り、とのことですが、同じラストがバニラなら、シャリマーとかのほうが、大胆で華やか・官能的に香りますよ。
フレグランスお好きな方には少し、物足りない香りかな。。。
女性らしい香りだけど振り返るほどではない、という感じかな。。。
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2017/2/27 14:10:13
発売前で、1日のテスター使用とムエットでの試香のみのため、評価は控えております。
調香師:ティエリー・ワッサー
香調:フレッシュ オリエンタル
実に5年ぶりとなる全くの新作フレグランス(ラ プティット ローブ ノワールやアクア アレゴリアなどは、シリーズものなので別枠のようです)。
EDP(オーデパルファン)です。
アンジーことアンジェリーナ・ジョリーをミューズに迎え、ゲラン 5代目調香師ティエリー・ワッサーが彼女からインスピレーションを受けクリエイトしたとのこと。
ボトルは名香ジッキーなどと同じ“クアドリ ローブ ボトル”。
皆様ご存じのバカラ社のデザインです。
クアドリローブ(四つ葉)という名称はそのキャップに由来しており、キャップを天面から見ると四つ葉のクローバーを模しているのですね。
ヨーロッパでは、女性は四つ葉のクローバーを持っていることで幸運に巡り合えるという言い伝えがあり、それをなぞらえる形で、所持している女性の幸福を願っているのです。
(余談ですが、同じくヨーロッパでは「5月1日にスズランの花を贈られた女性は幸せになる」という言い伝えも有名です。
なのでゲランのミュゲ=スズランの香りは、自分で購入するのではなく愛する男性からプレゼントされることで幸福になってほしいというメッセージも込められているのだと私は思っています。
ゲランのこのような細部に至るまでの女性への敬愛と憧憬がとても好きです)
基調となるマテリアルは4つ。
まずはプロヴァンスのカーラ ラベンダーが優しく香り立ち、徐々にインドのジャスミン サンバックが花開くように香り始めます。
最後はオーストラリアのサンダルウッドとタヒチのバニラが女性らしい余韻を残します。
今までのゲランには、ありそうでなかった香り。
ゲランのHPには“大胆で華やか、そして官能的な香り”と書かれていますが、私はむしろ母性的ですらある包容力を持った優しい香りだと感じました。
圧倒するような迫力のある官能性ではなく、胸に顔をうずめて深く息を吸い、うっとりとしながら微睡みたくなるようなイメージ。
同じ香りでボディローションとシャワージェルも出るので、揃えればバスタイム〜寝る前の時間を心地良く包み込んでくれそうです。
『Mon Guerlain』とは、フランス語で『私のゲラン』・『私だけのゲラン』・『私はゲランを選ぶ』というような意味です。
その名前の通り、つける人によって香り立ち方と印象が驚くほど違うことも特徴なのだとか。
私がつけると、ムエットと印象は大きく変わらないながら、割と最初からジャスミンが華やかに立ち、そこにラベンダーが清楚な色香をほんのりと添えているような印象になりました。
ティエリー・ワッサーのクリエイトしたフレグランスは私の肌の上では思ったように香らないことも割とありますが、こちらは安定してキレイに香っていたように思います。
ただゲランの他のEDPに比べて、香りの持続時間がやや短めに感じました。
またラストが少しありきたりというか、よそのブランドでもありそうな印象だったのも、少し気に掛ります。
ちなみにつけた日は薄曇りで外気温は平均8℃、湿度は52%でした。
私の香り立ちの特徴としては、低体温でフルーティ系統は消えがち。
甘さが欲しい時はフルーティよりもイランイランやチュベローズなど蜜っぽいフローラルを足すとキレイに出ます。
ウッディやスパイス系統が主張しやすいため、真冬になるとメンズフレグランスのように香ってしまうものが少なくありません。
つけていただいたのは手首でした。
ちょうど季節の変わり目ですし、天候や気温によってまた香りの表情も変わってくるかと思います。
まずは購入してじっくりつけてみようかなという気持ちです。
ゲランの香りは実際に肌につけるとムエットとは印象が異なることも多いのですが、そのゲランが
「つける人によって香り立ちが違う」
と宣言しているフレグランスなので、これからカウンターでチェックをなさる方々は、是非ムエットだけではなく実際に肌につけてお試しになってみていただきたいです。
発売後、購入して付き合いを深めてみて、何か新たに見えてくることがあれば、改めて追記致します。
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