




2013/9/4 00:14:13
別商品購入時、タッチアップして頂き備忘録的クチコミです。
トムフォードのアイテムはポイントメイク等々は何かと非常に押し出しの強いイメージですが(て、まあ、当たり前ですね)、本品に関してはみずみずしくて艶あり・薄づき・ナチュラル、きめ細かい繊細な仕上がりの、至ってノーマルかつ割と私の好みに合致するファンデーションで、なかなか好感触でした。
保湿力もとてもあり、肌がずっとしっとりしていて安心感があります。
但し、基礎から様々なアイテムを重ねていましたので、仕上がり感・保湿感ともにどこまでがこのファンデーションの単体の実力なのかは分かりかねる部分はありますけれど。
【参考:タッチアップ時行程】
<基礎> インテンシブ エッセンス→インテンシブ コンセントレイト エクストリーム
<下地> イルミネイティングプライマー
<ここで本品>
<他プラスアイテム> シェイドアンドハイライト/イルミネイティングペン(2色共)
<粉> トランスルーセントフィニッシングパウダー/頬骨の高い位置にはトレースレスコンパクトファンデーション
とまあ記憶をひもといてみたところ(笑)これだけ使用していました。
使用色は多分、14リネンだと思うのですがはっきりとは分かりません(一番明るい色との事でした)。
その次に暗い明度の色と両方フェイスラインに載せて比べた感じでは、一段暗めの方が合っていた気がしたのですが、BAさん曰くその色だと経時でくすんでくると。
確かに、時間経過後は付けていただいた最も明るい色でも丁度だったので、
標準色明度範疇の私でそれだという事は色白の方だと日本展開色の中では合う色がないかもしれないですね。
普段ファンデーションは何処を使っているのか聞かれたので、
とりあえずはリキッドでは最もお気に入りだし系列だから会話としても無難なので、
「エスティローダーです♪」と力強く答えたのですが、
「そうですか〜、じゃあうちのとは一番正反対の感じですね」と仰り、
あー、ダブルウェアと思ってらっしゃるなとすぐ分かったので、
「ダブルウェアじゃないですよ。全然違うタイプのフューチャリスティックです。」と補足しておきました(やはりダブルウェアと思ったとの事でした、笑)。
ヨレムラ毛穴落ちほぼなしで保湿力優秀、色もまあ許容範囲ですし、クレンジング後の肌疲れも一切なくよいのですが、やはり価格が万越えですし(TFの中で他アイテムと相対的に見るとなんだか安めに感じるのが恐ろしい 笑)、現段階で単体の実力が不明な事もあり、今のところ購入予定ではないですが、記憶には留めておきたいファンデーションでした。
BAさんも反射的に仰った通り、ダブルウェアリキッドとは正反対傾向のファンデーションなので、基本的に薄付きナチュラル艶肌が好きな方向けだと思います。
星の印象は5位かな。
私の肌データ:ブルーベース夏だが黄味寄り。オレンジ・赤みの強いファンデは合わない。
明度は標準色範疇のやや明るめ。
2015/9/6 01:43:03
登山の帰りにいつも立ち寄る、中央高速の某SAのソフトクリームは470円!!
怒りすら覚える。。
このソフトを10回我慢すれば、この日焼け止めが買えます。
身体に塗る日焼け止めでこんなに高いのを使うのは初めて!
登山用に買いました。
日照時間の極端に少ない雪国出身なので、半強制的に色白に生まれました。
でも、その雪国に帰国時でも、化粧品屋のお姉さんから
「オキャクサン、イロ、シロイデスネ。(訛)」
と、カタコトの標準語で言われますから、雪国においてもたぶん白い方なのだと思います。
ちなみに、ばっちりメイクしたシャ○ルのすごい綺麗なBAさんでも訛ってて、非常に可愛いです(~~)
陽に焼けると、すぐ赤くなって、それがおさまると元に戻る肌質。(顔)
普段は、雪肌精やDHCのアリスのヤツ(雪肌精よりべたつかなくて好き!)のSPF50ので十分満足しています。
登山用には今まで、金のアネッサと昨年からはニベアサンWPUVミルクSPF50を使っていました。ニベアサンUVミルクは安いのにとても優秀です。(クリームタイプの同UVエッセンスはべたついて最悪でしたが)
で、以下、このSHISEIDOとニベアサンUVミルクとの比較です。
どちらもシャカシャカ振るタイプですが、SHISEIDO・・(名前長いので、以下青)
青の方が、ややゆるめのテクスチャー。エバミルクに似ている。
うっすらピンクがかっていますが、色はつかない。ゆるくて軽い質感なのでとても伸ばしやすい。
被膜感は私は、ゼロ!と感じます。まったくべたつかない。ニベアサンよりもっとべたつかない。
被膜感というより、むしろしっとり感? 2層タイプにありがちなキシキシ感がない。
保湿成分で肌が守られているような心地よさ。
でもって、スーパーヴェールUV360°とやらで、どの角度からでも紫外線から守るんですと。
は〜、今知りました(@@)
登山中、顔には朝、ランコムUVエクスペールにシャネルのルブランパウダーファンデを塗って、
日の出から日没まで、2〜3時間おきにこれを顔、首、腕に塗りたくって、
夜はクレンジングシートで落として、ウエットティッシュでふきふき。
うん、乾燥もしてない。ニベアはふきとるとちょっと乾燥を感じた。
これを3泊4日×2回、この夏にしましたが、焼けませんでした!!
同行した同じ肌質の息子が、1回目で見事に腕がみずぶくれになったほどの紫外線だったのですが。。。
鼻炎持ちのため、いつもなら、鼻水が止まらない(サングラスの押さえつけでなおのこと)鼻の下だけがすぐ焼けて、山にいる間に皮が剥けてくるのですが、
今回は全く焼けなかった。
さあ、やっとここで出てきた!!青の最大の売りである所のウエットフォーステクノロジー。
「汗や水に含まれるミネラルと結合することで防御膜をより強化する」んですと。
は〜、今知りました(@@)
このウエットフォース効果はアリですね。鼻の下で確信しました。
私の鼻水と見事に結合したようです。パチパチ。。
あと、いつも皮がぱりっと一皮剥ける耳や鼻の頭も焼けませんでした。
いつも、どうしても一日の後半戦は疲れてめんどくさくなって、塗り方もテキトーになってしまう為、首の後ろや顎の下辺り、腕(ほとんど気にしない)が少し焼けるのですが、
この青使用時の皮の剥け方は、入浴時に垢みたいにぽろぽろと落ちる感じだったので、
ぱりっとなる程焼けないのだと思います。息子の腕はまさにシャウエッセンでした。。。
日焼け後も、いつものような火照りはあまり感じず、2日間エクシアALホワイトニングとトランシーノの各シートマスクを使っただけで、ほぼ沈静化しました。
顔にはもちろん大量に汗をかいたので、「防御膜が強化」したってことなのかな?
これは登山には最適かもしれません。
逆に言えば、普段使いには向かないとも言える。
「ウエットフォース」という最新テクノロジーも日常生活には、正直、そこまで必要がない。
腕に汗をかくってこともあまりないし。。
結論的には、ランニングや登山とかマリンスポーツとか炎天下の屋外でのスポーツ、またはお仕事をされる方向けの商品かと。
ってことで、私はあくまでも登山用として、ミニストップのソフトクリームを食べながらリピするとします。
まだ半分以上は残っていそうなので、もう5回位は山に使えそうです。
あまりコスパはよくないですが、1シーズンでちょうど使い切れそう。
価格が高過ぎるのと、残量のわからない容器の色で☆1個減らしますが、
私が今まで使った日焼け止めの中では一番優秀だと確信します。
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:- (生産終了)発売日:-
2015/7/29 16:13:16
「125mlで3万円の香水、あなたはどう思いますか?」そう聞かれたら、どう答えるだろう。「高い」「買えない」「いらない」の3拍子に始まり、「スキンケアみたいに肌に効果のあるものならまだしも」「600mlで800円の高級柔軟剤使ってるから必要ない」などなど、いろんな声が聞こえてきそう。わかる。自分もそう思っていた。ボア・ダルジャンのような香りに出会うまでは。
この香りに出会ったとき、またしても撃沈した。「またそんな高い香りか。購入はないな」って思ってたのに、出会ったとたん、「あ、欲しい・・・」と、ひと嗅ぎ惚れしてしまった。人って不思議な生き物だ。嫌いな香りだと、たとえ100円でも買わないのに、本当に欲しいと思うと、たとえ3万円以上の香水でも、そのお金をどう工面しようかと考えてしまうのだから。頼むから25mlで6000円にしてくれ、ディオール。←切実だな
ボア・ダルジャンは、2004年にディオールから発売された3種類のユニセックス・フレグランスのうちの1つだ。これらは、コロン・ブランシュ(白のコロン)、オー・ノワール(黒の水)、そして、ボア・ダルジャン(銀の木)というラインナップで、3つの色をキーワードにして創造されたオー・デ・パルファン。中でもボア・ダルジャンは、高価なアイリスをふんだんに使った香りとして、発売当時からヨーロッパで一番人気だったという。現在の物は、ラ・コレクシオン・プリヴェに選ばれた際、ウッディを抑えてリファインされたものだ。
そんな高級な香りの展開を詳しく見ると。
トップから土っぽさのあるパチュリが鼻をくすぐる。その下でほの暗いアイリスの香り。だが、これまで味わったアイリスとはどこか違う。ほこりっぽさというか、くすんだ感じというか、通常アイリス(イリス・オリス)の根茎から感じられるそういった雰囲気が少ない。スミレの香気でもなく、白い穏やかな花の印象。そして同時に、高いところで香木を炊いたような香りがじんわりと鳴り響く。これがイエメン産のインセンスだろうか。そんなオリエンタル風も感じられる温かみのあるトップ。ほんのりスパイシー。
5分とせず、ミルラの酸っぱさが感じられてくる。鼻の奥に軽く刺激を残すような、発酵した樹脂のような香り。そして、気がつくと、アイリスの香りが美しいパウダリーなテイストに変わってくるのを感じる。あー、なにこれ。これが噂の「フィレンツェから送られてくるディオール秘蔵のアイリス」の香りだろうか?それは、これまでの「暗いくぐもった香り」というアイリスのイメージを大きくくつがえした。
これは粉だ。美しく柔らかい銀色の粉。白粉ほど石けんぽい香りでなく、小麦粉ほど生っぽくもない。例えるならそれは、月光に照らされた夜の海の波光。静かで,キラキラと明滅するかのような、妙なるパウダーの香り。
やがて、3〜4時間もすると、微細なパウダーのきらめきがフェードアウトし、洋酒っぽい柔らかいレザーテイスト、ほんのり甘いハニー、そして、ムスクのソーピーな雰囲気に落ち着き、ドライダウン。ムスクは苦手という方も、この不思議な透明感あるラストなら、あまり気にならないかもしれない。
全体の印象としては、まろやかなお香とアイリス。そのエッジを際立たせるミルラとパチュリ。しめくくりは、甘くおだやかなハニー&レザー、ムスクで消えていくイメージ。香りのピラミッドでいうと、おだやかな変化だし、終始アイリスのノスタルジックで安らぎに満ちた香りが持続する印象。
1日の時間帯で言うなら、トワイライトからナイトタイムがおすすめ。厳しい季節である夏であっても、気温が落ち着く夕暮れ以降の時間なら、この香りはとても心地よいリラグゼーションを与えてくれると思う。1日の終わり、好きな音楽や美味しいお酒、世界の扉を開いてくれる小説や映画、そうしたものに心を寄せてまどろむひととき。そんなクロージング・タイムに、この香りは似つかわしい。誰にも邪魔されない自分だけの時間を楽しみたいとき、この銀色のパウダー香は、ゆったりくつろぐ心に寄り添いながら、時の澱を静かに積もらせていくだろう。
夏の夜半。開けた窓の外、ぬるびた風が運んでくるのは、木々の葉をあたためた生っぽさ。日中、蒸散した森の水分が、未だムンとした気配を漂わせている。星々のまたたき。宝石箱を散らかしたような遠くの街の灯り。かすかに響いてくる電車の音。汗をかいたグラスの中で、氷がカランと揺れる音。部屋の明かりを少しトーンダウンして、月明かりのベランダに出てみる。
月はレモンの形。煌々と下界を銀色に照らし出している。そのほの明るい水底のような世界に、一人でいる切なさと恍惚。少しべたつく夜気に立ちのぼる、ボワ・ダルジャンの香り。それは天上のアイリス。
2015/4/25 11:43:32
春におすすめの女性用香水は?と聞かれたら、まず「ゲランのシャマードがいいな」と答える。シャマードのイメージは、「ヒヤシンスのブルー・パープルの色」、「グリーンぽい冷たいフローラル&パウダリーな香り」といった感じ。そして、パルファンよりもトワレの方が好きだ。
パルファンは豪華で、フローラルも濃くて多層的だ。香りとしてもすばらしいと思う。ただ、ラストのウッディも強いので、もともとクラシカルな印象が強いものをさらにマダムマダムにしてしまう。つけ方が上手な人ならいいけれど、一歩つけ方を間違えると、往年の名香にありがちな「おばあちゃんの箪笥のおしろいの香り」とも取られかねない。俺みたいな香水素人の男や、香水に思い入れのない一般ピーポーには、トワレで十分香水らしさが感じられると思う。
シャマード・トワレをすすめる理由は3つある。1つめは、個人的にシャマードのラストが好きなので、それが早く訪れること。2つめは、十分香水らしさを楽しめて、かつ使用できるシーンに幅があること。そして、ラストが淡く長めで、3〜4時間は続くこと。←で、あえてトワレの方に初投稿
トワレのトップは、一瞬アルデヒドっぽい拡散と独特のグリーンな苦みから開口する。ガルバナムのクレジットがあるので、そのビターなグリーンと、ヒヤシンスの香りのグリーンのミックスっぽい感じ。やがて5分とたたずに、多層のフローラルが顔をのぞかせてくる。ヒヤシンスの冷たく低いフローラルが春らしくていい。そしてその周りをジャスミンとイラン・イランが包んで華やかさと強さを出している印象。
そしてミドル。冷たいヒヤシンスと、ツヤのあるジャスミンと、重いイランイランの和音を、やや甘酸っぱい感じが包み込む。これが、このシャマードで初めて使われたというブラック・カラント(カシス)なのかな。でも実際のところ、このミドルをかいでも、「あ、ブラック・カラントだ!」なんて絶対に思わないし、思えない。よくわからん(笑)。カシスじたいは、葡萄のように濃厚で甘酸っぱくて、少し暗さを感じる紫色の香りだ。そういうイメージはこのシャマードではあまり感じない。グリーンとフローラルのミックスにほんのり色を添えたぐらいの使い方をしているように思える。
そしてラスト。ジッキーのラストもいいけれど、ああ、このシャマードのラストは好きだな。共通しているのは上品なヴァニラだ。華やかで女性的で、ふくよかな多層フローラル。その下からゆったりと広がってくるパウダリーなヴァニラ。ここ大事。クリーミーなヴァニラではなく、パウダリーなヴァニラ。トワレなので白粉っぽさも少ない。サンダルウッドの香ばしさよりは、ベチバーの温かさの上に乗っかってる感じ。ほんのり残るフローラルの余韻に、きれいめヴァニラが五分と五分の「朋輩(ほうばい)」状態で出てくる。(ex.ドラマ「流星ワゴン」)ただ、ヴァニラは苦手という方もいるので、要試香。
全体に、女性らしさ全開だけれど、とても美しく、ツンとした気取りがなく、麗しい印象の香り。カチッとした女性のスーツにも華やかさを添え、ジーンズ等のカジュアルなスタイルにも、すっきり感が出て似合うと思う。
出だしがややグリーンで酸味のある印象なのに、やがて美しいフローラルが広がり、温かいパウダリーな香りで消えていく。言いかえると、これといってきわだった特徴を感じないクラシカルな印象とも言えるけれど、そこにはヒヤシンス、ブラックカラント、ヘディオンの投与など、当時にしては画期的な実験的要素をはらんでいて興味深い。1969年、ゲランの4代目調香師となったジャン=ポール・ゲランが7年の歳月をかけて作った、初めての女性用香水。それだけに、自分の才能を見いだしてくれた偉大なる祖父、ジャック・ゲランの作ったさまざまな名香に対する挑戦であり、彼への恩返しでもあった記念碑的な作品と言ってもいいだろう。
シーツのきぬずれの音。男の腕に頭をのせていた女が、ふと男の上に体を重ねる。
『私のこと、本当はどう思ってる?』
そうたずねる代わりに、人差し指で男ののどぼとけにふれながら言う。
「ねえ、何を考えてるの?」
男の胸の上にあごをのせて、下から表情をうかがいながら。
男はその上目づかいの瞳を見つめ、女の髪を優しくかきあげて言う。
「そのまま胸に耳をあてて聞いてごらん。」
女の、貝の形のような耳が、男の厚い胸にそっと押しつけられる。
そして女は聞いた。海鳴りのように強く、速い、勇壮な太鼓のような鼓動を。
『ぼくはもう、とっくに君に参ってるよ』
確かにそう聞こえた。女は微笑んで、男の胸に顔をうずめる。
それはシャマード。相手に「降伏」を告げる太鼓の音。男が女に告げる、幸福な降伏の音。
2015/5/23 23:33:56
ヴァニラの歴史は、征服の歴史そのものだ。
ヴァニラは、メキシコのトトナコ族によって栽培が始められ、それが、彼らを征服したアステカ族の手に渡り、やがてアステカを征服したスペイン人によって初めてヨーロッパに伝えられたとされる。
最初の征服者、アステカ族の王は、金と同等の価値をもつとされたカカオをすりつぶし、スパイス等を加えたどろりとした黒い飲み物、ショコラトルを大変好んだという。その苦みを緩和するために加えられたのが、トトナコ族から得たヴァニラの香りだった。当時、ショコラトルは、王や特別階級の者しか口にできない大変貴重なものだったという。
二番目の征服者は、スペイン人フェルナンド・コルテス。彼は、今から500年前、少数の部隊を引き連れ、アステカ帝国へ攻め入った。当時の王モンテスマ二世は、戦わずに彼らを迎え入れ、恭順の意を示した。このとき、コルテスに献上されたのがショコラトルだった。
やがてヴァニラは、アステカの数々の宝と共にスペインへ渡り、次第に広まった。だが、ヴァニラの木が各地で栽培されるようになっても、あの甘く柔らかい香りを得ることはかなわず、その後300年以上、メキシコがヴァニラの生産を独占し続けたという。それは一体なぜだったのか?
実は、ヴァニラの香りを発する実、ヴァニラビーンズが全く結実しなかったのである。その秘密はこうだ。1年にたった1日、数時間しか開花しないというヴァニラの花に受粉してくれる奇蹟のハチが、メキシコにしかいなかったという事実。このことに気付き、レユニオン島でヴァニラの人工受粉が成功するまで、実に300年を有したのだ。
長い前置き。だが、このアン・ボワ・ヴァニール(ヴァニラの木)にこめられた「アステカの繁栄と滅亡に寄せる思い」とは、こういうことを指すのだろう。
トップ。いきなり「ホットキャラメルソースがけヴァニラアイス(ナッツ入り)」の香りが主張。唾液が出そうになる。濃厚で焦げた甘さが思いきり押し出してくる。ヴァニラの香りに、リコリスの甘苦さがかぶさって暗い。クレーム・ブリュレの焦げたカラメルの香りにも似ている。いくぶんココナッツの青臭さも添えて。おもしろいのは、カカオを使わず、あえて外して、漢方薬リコリスの煮詰めた苦みで開口したこと。まんまショコラトルを狙っていない。エンジェルやロリータ・レンピカの影響かも。
すぐにミドル。リコリスが淡くなり、焦げたバター風味のふくよかさが増してくる。香ばしいアーモンド系の香りも。感じるのは、ヴァニラと焦がしバターの脂っぽさ。甘苦さが消えた分、ややドライで温かみが増してきた印象。たぶんサンダルウッドの香りもじわりと。ややウッディな印象が出てくる。
そしてラスト。このラストが好きだ。←最近、これ多いな。
高い方のサンダルウッド、中音のガヤック・ウッドに支えられ、焦げたヴァニラが余韻を残して温かく消えていくイメージ。ウッディ・ヴァニラだなあと実感するのはこのラストだ。淡いながら、ヴァニラとウッディのミックス。トップほど焦げた甘さといった印象はなく、穏やかで、凛としていて、けれど柔らかなイメージで減衰。
総じて、出だしのリコリスが全体に暗いオブラートをかけているけれど、中身は、バターとナッツ類をふんだんに使ったキャラメルヴァニラデザートだった、という印象。稀少なメキシカン・ブラック・ヴァニラの香りをメインにすえたかったというノートスケッチだろう。
ヴァニラの香りの素であるヴァニリンには、怒り、哀しみ、ストレスなどを軽減する抗うつ作用があるという。最近では、母乳にもヴァニリンが含まれていて、赤ん坊を香りの面からもリラックスさせていることが研究から明らかだ。イライラしてるなと思ったとき、悲しくて誰かに優しくされたいと思ったとき、そしてそんな弱音を誰にも吐けずにうつむいているときに、この香りが誰よりも優しく感じられる人はいるだろう。好きか嫌いかという振幅は大きいと思うけれど。
自分は、夏に向かう爽やかな時期にこの香りをよく使う。ヴァニラやチョコレートは秋冬のイメージが強いが、その頃はむしろ町中にそんな香りがあふれていて、かえってオーバードーズ気味だ。気温も湿度もあっさりめの時期こそ、こういうこってりした香りは合うだろう。
つけるなら、男女とも、下半身がいいと思う。特に女性のひざ裏や内ももからこの香りが立ちのぼれば、上半身に抜ける頃には、ほどよく淡い香りになって衣服の間を揮発していくことだろう。ヴァニラは、つけ方次第でとてつもなくセクシャルな感じになるときがある。そう、男が放っておけなくなるほどに。
アン・ボワ・ヴァニール。それは、今なお男たちの征服欲をかきたて続けるアステカの秘宝。
自己紹介はまだ設定されていません