
























[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)]
税込価格:-発売日:-
2021/7/24 03:02:54
オンザビーチ。直訳なら「浜辺で」。ただそれよりは少し情感を持たせて「渚にて」と読みたい香り。
「渚(なぎさ)」は美しい日本語だ。同じ意味で「汀(みぎわ)」という言葉もある。どちらも「水際」という意味合いから生まれた言葉だ。それは陸と海の境目、「狭間」を表している。
オンザビーチは、2021年にリリースされたルイ・ヴィトンのパルファン・ド・コローニュの最新作、5番目の香りだ。100mlで38500円(税別)。
調香を手掛けたジャック・キャヴァリエは、この作品でカリフォルニアのマリブビーチをイメージしたと語っている。だが、今回使われたキー香料は、日本独自の柑橘でおなじみの「ゆず」。さらにラストにはヒノキまで使っている。
なぜアメリカ西海岸の香りを創るのに、日本独特の香料を用いたのだろう?これはどういうことなのか?
その答えを香りから勝手に探ってみる。
オンザビーチをスプレーする。その瞬間、黄色いシトラスの爽やかな香りに包まれる。まず感じられるのは、突き抜けるレモンと甘いマンダリンの香り。数秒後にグレープフルーツのアルベド(白い綿)の苦味とベルガモットのコクのある香りも出てくる。さらに、その下からとてもかぐわしいグリーンなシトラスが広がる。ブランドによると、これがゆずの香りだ。
ゆずは奈良時代から日本にある酸味の強い果実で、独特の香気をもっている。グリーン感が強い酸味と苦みのある黄色い果実といった感じで、最近ではそのゆず独特の香気成分が、ユズノンという微量な油脂による物と確認されている。オンザビーチのトップは、さまざまなシトラスミックスがスプラッシュし、最後にこの黄色いゆずの確かな存在が感じられる。それは朝の黄色い太陽のような香りだ。
朝の渚といえば、自分はスピッツの「渚」の透明感あるメロディーが自然に思い浮かぶ。このトップは太平洋に昇る朝日のような爽やかさに満ちている。
やがて5分ほどすると、下からほんのりフローラル香がしてくる。クレジットにはチュニジア産ネロリとあるが、ローズマリーなどのハーブ香が先に感じられるせいか、あまりネロリという感じがしない。どちらかというとビターオレンジの枝葉の香りであるプチグレンをほんのり効かせたといった印象。このグリーンなゆず香がミドルの核となって香り続ける。それでも印象はとても黄色い。今回のボトルはオレンジグラデだが、香りはかなりイエローシトラスだと思う。
面白いのは、このグリーンで苦みのあるゆずミドルがかなり続くこと。ネロリにもピンからキリまであるが、高音でキンと香るタイプを使用しているかもしれないと思う。
つけて1時間ほどすると、徐々に音階は下がってくる。土っぽい香りとシダーライクなウッディが出てきて、全体が落ち着いた雰囲気になってくる。ゆず香も消えて、わずかなグリーンハーブとネロリのほの甘さを残して、ウッディで終息する。持続時間は自分の肌で2〜3時間。
ラストは、オレンジの夕焼け空を眺めながら歩く濡れた砂浜の雰囲気だ。サンセットタイム。あたりの明度が下がり、海も暗くなり始める。波の音が静かに響き、空はオレンジとピンクのグラデカラーに変わってゆくような風景。そんな風景にシンクロするのは、クリス・レアのど渋い声が印象的な「オンザビーチ」。同じ渚の歌でも、スピッツのそれとはとても対照的なAORの名曲だ。
あ。もしかしたら
トップはスピッツの「渚」のイメージ。朝焼けの赤。日本の東から陽が昇り、ゆず色に輝き始める。そしてミドル〜ラストは、クリス・レアの「オンザビーチ」のイメージ。夕暮れのオレンジの海。アメリカ西海岸に陽が沈む。洋の東西、その間を動く太陽…。
調べたところ、ジャックは「東西のつながり」を意識してこの作品を作ったようだ。なるほど。1日は日付変更線の関係上、日本の太平洋側に陽が昇って始まり、最後はアメリカ西海岸に陽が沈んで終わる。ジャックが住むフランスはその狭間に位置する。東と西の狭間。このオンザビーチは、フランスから見て東にある日本の朝から始まり、西にあるアメリカに日が沈むまでの太陽の動き、その1日のビーチの香りを思い描いたのではないか。
いや単にオリンピックイヤーだから日本の香料を取り合わせたのだろう。そんな意見もあろうとは思う(笑)
日は昇り、日は沈む。陸と海の境目、渚にて。そこはもしかしたら此岸と彼岸の狭間でもあるのかも知れない。
渚という漢字を分解すると、「水」と「土」と「ノ」と「日」に分かれる。「ノ」は流木などの木の枝を表す。つまり渚はその4つの要素でできていて、それら全ての香りがするのだろう。
それは海と砂と流木と、東から西へ旅する太陽の香り。オンザビーチ。
2021/8/7 12:48:30
自分は100%正しい。間違っているのは相手だ。だから攻撃していい。どこまでも論破してやる。奴は駆逐されて当然だ。
こういう考え方の人が苦手だ。振りかざした正義は、悪と同等かそれ以上に手が悪い。だが残念ながらこの世界には、そんな正義厨がごまんとあふれている。自粛警察どころじゃない。自粛軍隊なみに。
セルジュ・ルタンスの香水をつけていると、ついそんなことを考えてしまう。複雑な香りの向こうで、ルタンスが何を考えてこの香りを創ったのか、どんな皮肉を込めて闇の中で笑っているのかと、裏ばかり読もうとしてしまう。だから光と透明感あふれるコレクション・ポリテスが出た時は本当に驚いた。
え?ルタンスが透明ボトル?爽やかな香り!?なにそれ!絶対何か裏メッセージがあるに違いない!彼がそんな普通なことをするはずがないんだ!うわー!!!!←シンジ君!
中でもいったん闇に葬られた明るく爽やかな香り、フルールドシトロニエ様が、ここぞとばかりに光の下へご帰還あそばされたことについては、本当に面食らった。「レモンの木の花」。この香水はその名のごとく、明るく爽やかでフレッシュな香りがする。ルタンスの異世界ダークロマネスクのイメージとはほぼ真逆といっていいくらいに。
透明で波模様が美しいボトルからフルールドシトロニエをプッシュする。つけた瞬間、レモンとネロリの香りが同時に広がる。ほんのり甘くてさっぱりしたレモンフローラル香といった感じ。酸味があまりなく豊かに広がるレモンの香りに、ふんわり甘いオレンジフラワーの香りが寄り添っている。思わず口中に唾液があふれそうになる。知らずにつけたら絶対にルタンスの香水とは思わないほど、シャイニーかつフレッシュネス。
つけて3分すると、その下からスッキリグリーンな香りがほんのり出てくる。オレンジの葉の香り、プチグレンのよう。甘酸っぱいレモンパイの隣にアイスミントグリーンティーを添えたよう。ミントの清涼感はないけれど、次第に葉のグリーンとうす茶色いウッディが感じられるようになる。
このミックスのまま香りは落ち着いてミドルとなる。ソプラノは黄色いレモン、アルトが白いネロリ、テノールはシャープなグリーン、バリトンはうす茶色のウッディ。それぞれの音域を生かした美しいカルテットを聞く。
後半は、ホワイトムスクのアイロンを熱したようなソーピーなタッチが出てくるようになり、付けて3〜4時間ほどでドライダウン。全体的にルタンスの香水にしてはスパイスのスの字もなく、明るくライトなオーデコロン系の香りと言っていいように思う。はいはい、いつもダークでデンジャラスな香りばかりじゃないんですよ、やろうと思えばこんな普通のクリーンな香りだって創れるんですよと言いたげなほど。
あ。そういうことか。
コレクション・ポリテス。この「ポリテス」という仏語は、直訳すると「礼儀」「礼儀正しさ」という意味で、「礼儀のコレクション?なんだそれ」とずっと思っていたけど、何となく察した。この言葉にはやはり裏の意味がある。それは
「行儀よく。同じことをする。お返しをする。」という皮肉めいたニュアンスだ。
「ルタンス暗い香りばかりだって?はいはい。お行儀のいい明るい香水だって作れますよ。他と同じようなフツーのやつね。はいどーぞつまんないけど(冷笑)」という彼なりの仕返しだ。
そう呟いて真っ暗な部屋でニヤニヤ笑っている闇の信奉者の青白い顔が思い浮かんで仕方ない。そうだ。そうに決まってる!うわー!!!!。←シンジ!!
彼が纏う心の闇は、これまでのノワールコレクションや他のコレクションで、もう十分に表現されている。だが世界は光と闇の両方で成り立っている。明と暗、美しさと醜さ、正義と悪。ルタンスはあえて光輝くフレグランスを創ることで、自身の闇をもう一段階引き立たせようとしたのではないか。
世界はまばゆい光にあふれてる。わずかな闇(悪)があるから光(正義)が一層ひき立つという言葉もある。ただルタンスの哲学はきっと真逆だ。
世界はもともと闇だ。わずかな光こそが闇を一層引き立たたせるのだと。そんなアンチテーゼを感じる。
確かにまぶし過ぎて影のない場所は辛いな。逃げ場がない。世間はいつもサーチライトを照らして「仮想敵」を探し続けてる。シトロニエのレモン香を感じながら思う。
「光」の対義語は確かに「闇」だろう。ただ「正義」の反対語は「悪」じゃない。「正義」の反対にあるのは「別の人の正義」だ。だから世界中、戦争と争いがなくならないんだろう。
レモンの木を見上げる。緑の葉と果実の黄色が、青空の前で揺れている。
「きれいだね」「いい香りだね」
世界中の人がそう笑いあえたらいい。
2021/8/15 07:19:19
「〇〇中毒」という言葉を聞くと、真っ先に何を思い浮かべるだろう?食中毒、アルコール中毒、ニコチン中毒。さまざまある。毒物の摂取のみならず、広範囲に捉えるなら「〇〇依存症」という意味もあり、ネット依存や恋愛依存といったことも含まれてくるだろう。キリアンのイントキシケイテッドという香水は、そうしたニュアンスをもつ「中毒性」と名付けられた作品だ。
イントキシケイテッドと言えば、香水中毒の方々には、「コーヒーノートの香り」として認識されていることが多いと思う。ブランドのイメージ説明にも「コーヒーの香りは五官を魅了する」「コーヒーは覚醒効果と中毒性を持ちながら、眠りへと誘う」など、コーヒーノートを主語にした表記が目立つ。ここで語られている魅惑的なコーヒーとは、トルココーヒーのことだ。
トルココーヒーは最も古いコーヒーの淹れ方の1つで、ユネスコの世界無形文化遺産にも登録されているほど有名だ。深擦りにしたコーヒーの微細粉末を水や砂糖と一緒に小さなひしゃく型の手鍋に入れて煮出し、泡と上澄みだけを飲む。こうすることで、コーヒー本来の旨みが泡に凝縮され、豊かな味わいが感じられるという。
イントキシケイテッドは、このトルココーヒーから着想を得て創られた香水だ。では、どんな香りなのか?
キリアンの黒ボトルからプッシュすると、まず鼻を通り抜けるのは、スッキリしたレモン様のスパイシーな香りだ。一発でカルダモンと分かる。その5秒後、かぐわしいコーヒーのロースティーな香りが追いかけてくる。ぐいぐい出てきて黒く焦げた香りが広がってくる。これはカルダモン増し増しのカルダモンコーヒーの香りだ。
カルダモンの香りは、スッキリしていて鼻に抜けていく清涼感ある辛みが特徴で、ここではややグリーンな爽快感がある。同時にハンバーグを作る際に入れるナツメグの独特な香味もミックスされている。これがコーヒーの焦がし風味を上から抑えるほど強く出ていて、とても清冽なスパイシーさを奏でている。割合で言うなら、カルダモン&ナツメグ:コーヒー=7:3くらい。イントキシケイテッドのトップ5分は、カルダモンなどのスパイシーノートがとても強めだ。
やがてカルダモンが和らいでくると香りはミドルになる。クールなスパイス感に、ふんわりカラメリゼした砂糖の甘さが出てくるようになる。その下でじんわりとブラックコーヒーの低音が響いているといった風合い。このミドル以降は、ときに柔らかいフローラル、ビターチョコ風のカカオノート、鼻にキュンとくるドライなシナモンの香りなども感じられることがある。これはさながらスパイスチャイの香りだ。ミルクティーの代わりにコーヒーとカラメルを使ったような。
ミドルはかなりしっかり作りこまれたアコードとなっていて、これ以降はずっと香りが変わらない。クールなスパイス&カラメルな香りが続き、低音でコーヒーベース。そのまま減衰していく。ラストにほんのわずかヴァニラっぽいクリーミーマイルドを残しつつドライダウン。全体で7〜9時間ほど続く。人によってはそれ以上ほんのり香り続ける。
全体の印象としては「清涼感のあるスパイシーな黒い香り」という感じで、コーヒーノートを期待し過ぎると、やや肩透かしを食うところもあるかもしれない。クラフトコーラにコーヒーを混ぜたような香り、というのも近いように思う。同じキリアンのブラックファントムやストレイトトゥヘヴンあたりがお好きな方、トムフォードの暗めの香りが好きな方は試してみるといいと思う。調香師はすでに大御所となったカリス・ベッカー女史。彼女独特の「怜悧なロマンティシズム」とも言うべき感性が、冷たいスパイシーアコードと温かいコーヒーノートの対比に現れているようだ。50mlで37950円。←香水中毒者には普通?
現代の人は、心のどこかに「依存」を抱えている人が増えているという。何かに熱中するヲタ気質もまた「〇〇中毒」や依存の裾野なのかも知れない。自分もかつてはニコチン中毒だったし、カフェイン中毒だった。気温が下がってくる季節には、今も美味しいコーヒーや紅茶が無性に恋しくなる。
トルココーヒーの淹れ方を動画で楽しむ。便利な時代になった。毎日YouTube漬けになってる方が多いのも分かる。銅のひしゃくにコーヒーの粉末と同量の砂糖を入れて、熱した砂の中にいれると、あっという間に泡を吹いて沸騰してくる。その瞬間にひしゃくを砂から取り出してデミタスカップに泡をすくいとる。それを何度か繰り返してたっぷりのコーヒー泡を作り、粉ごとコーヒーを注ぐ。粉を飲まないよう、ゆっくりじっくり泡と上澄みを味わう。それがトルココーヒーの楽しみ方だ。
う。トルココーヒー飲みたい。←中毒
2021/8/28 12:06:14
「これ何の香りか知ってる?」
「ん?どれ?」
娘が左腕を出す。綿あめライクな甘さ。鼻に抜けていく清涼感。ホワイトフローラルだな。そこにパチュリの苦み。そこまではわかった。フェミニンだけどどこかマニッシュ。んー、わからん。どこかで嗅いだ系ではあるものの、全然わからん。
そこで推理した。
大学生の娘が香水をつけて喜んでいる。彼女の交友範囲、行動範囲を考えれば、2万も3万もするニッチ系ではないだろう。となるとおそらくデパコス。しかもカウンターに商品を出している比較的新しめの作品なはず。だとすれば…。
「わかった。ジバンシィのランテルディの新しいやつだろ?」
「ぶっぶー。正解はこれでした!」
そう言って水戸黄門の印籠のようにドヤ顔で俺の眼前に突きつけたのは、
「あー、サンローランのリブレかー。確かそれトップにラベンダー使ってたな。ゲランのモンゲランに対抗して。」
「さあ、それはわかんないけどラベンダーは入ってる。でもこれリブレの新しいやつ。最近出たオードトワレだよ。ほら。」
よく見ると確かにジュース色がオードパルファム(EDP)版と比べてピンク系統だ。おー、YSLもリブレのシリーズ展開はじめたか。
「このEDTはね、ミドルでホワイトティーの香り使ってるんだって。だからEDPとは香りが少し違うんだよ。」
ほうほう。言うようになったな。ついこの間まで500円のボディファンタジーつけて遊んでたJKだったのに。そんな感慨に浸ったのは約1秒、気が付くと娘から奪い、左腕にリブレの新作EDTをプッシュして鼻を近づけていた。同時に基本情報をスマホで洗い出す。自分がふだんあまり使わないタイプの香水だけに興味津々。
リブレEDT。2021年7月リリース。調香師はアン・フリポとカルロス・べナイム。香料イメージ構成は次のとおり。
トップ:ラベンダー タンジェリン ベルガモット
ミドル:オレンジブロッサム ジャスミンアブソリュ ホワイトティ
べース:ムスク ヴァニラ アンバーグリス
なるほど。確かに「ラベンダー&ヴァニラ」コンボのモンゲランに対抗した感はある。もう一度腕にプッシュして香りの変化を確認する。
トップ。つけた瞬間、フルーティーでみずみずしい香りが一瞬だけ流れる。これは洋ナシだ。クレジットにはないけれど、アン・フリポの大ヒット作、ランコムのラヴィエベル、ジバンシィのランテルディのトップで使われているお得意のスイートな開幕。
10秒後、水っぽいミカン香タンジェリンと清涼感のあるクールなアロマティックがスーッと鼻を刺激してくる。あー確かにこれラベンダーだと感じる瞬間。ラベンダー香料は多いが、ここで使用されているのはフレンチラベンダー系のフローラルタイプのよう。とがったところなく、スッキリ鼻の奥に抜けていく柔らかなラベンダーだ。このトップのラベンダーを用いたアコードがとてもいい。
つけて5分ほどするとラベンダーとシトラスは落ち着き、香りはミドルになる。ミドルはやや甘さの強いオレンジフラワーとほんのりジャスミンといった風合い。そこに下からグイグイとドライで透明感ある苦みが出てくる。これがホワイトティの香りだろう。ジュニパーベリーのようにも感じられるスッキリドライな香りが各香料の揮発を押し上げてくるイメージ。このティー&白い花のミドルがゆっくり続く。甘くフェミニン、それでもスッキリ乾いた香りが3〜4時間ほど続く。
ラストはわずかにクリーミーな香りを呈したホワイトムスクと、影となって寄り添うパチュリのスパイシーな苦みが感じられたままドライダウン。人によるが全体で5〜7時間ほど持続する。そうか。こういう香りが好きなんだ…。チラリと娘の横顔を見る。
リブレEDTの香りを漂わせながら、娘は鼻歌交じりでネイルを作り始めている。いつの間にかそんな歳になったんだなと今度は2秒ほど感慨に浸る。でもよかった。今度は娘からもどんどん香水を調達できそうだ。←お前は
考えてみれば
成人式も中止になった。友達ともなかなか会えない。そんな中、家で香水を楽しみ、ド派手なネイルを作って遊んでいる娘。そんな姿を見ていたら、何となく顔がほころんだ。
そうだ。人生はできる範囲で楽しむべきだ。リブレ。自由に。リブレのボトルに施された横向きのYSLが、まるで金色の水引のように見えて、全ての女性の未来を祝福しているかのように思えた。
なかなかいいセレクトじゃないか。そう声をかけようとしたとき、娘がネイルをしながら言った。
「JO1っていう若いイケメングループがあってね、リブレの宣伝してるんだよ!」
は?
それか!!!!
2021/9/11 09:30:58
本当にすごい香りなのに、つけると周りから煙たがられるタイプの香水がある。特に日本では。そのタイプの香水をつけていると、周囲から「お香の匂いがする」「お寺の匂いかな?」「こげくさい」などと言われるシリーズ。もっとひどいときには「くさっ!何燃やした?」とか、「う」と言って鼻をつまんで走ってロングディスタンスを取られたり。←いろんな経験してますね
全く失礼だな。
そんなとき本当は追いかけていって
あのね!君は「くさっ!」って言って逃げたけどね、これ世界最高の香水、アムアージュのジュビレイションXXVなんですよ!!いいですか?今からこの香水がどれだけすごいかその頭にたたきこんであげるから耳かっぽじってよく聞きなさい!
と激しく語ってあげたいところだが、死ぬほどウザがられるだろうから毎回地団駄を踏みつつ自重している。←正しい
ということで「本当はすごい香水なのに付けると結構な確率で周囲からディスられて地団駄踏んでしまう香水コンテスト」で確実に上位に入ると思われるジュビレイションXXV。これがどんな香水かと言うと。←結局語りたいんだな
まず
「世界で最も高価な香水」と言われたオマーンの香水ブランド、アムアージュの作品であること。これはオマーン王直々の命令で、かつて金と同価値とされた特産品の乳香(オリバナム)のすばらしさをアピールすべく作られた国家プロジェクト的香水群。今でこそ中身はたいしたことないのに価格だけ異常に高い香水はあふれているが(←言ってしまったね)アムアージュの香水に関しては「金に糸目はつけん!世界最高の素材をガンガン使って本当に最高の香水を創るんだ!ただし乳香は絶対使え!!」と言ったかどうかは知らないがそんな感じ。だからとにかく使われている香料がものすごい高価で稀少な物ばかり。これがすごい。
そして
そんなアラビアンナイトな豪華香水群にあって、この作品は周年記念作であるということ。2008年、アムアージュ25周年を記念して作られた特別な作品、それがジュビレイション。「歓喜」という名のこの作品はメンズ用に「XXV」、レディース用に「25」の2つが用意された。ここで紹介しているのはメンズ作品のXXV。調香に携わったのはアヴァンギャルド・ロッカー、ベルトラン・ドゥショフール。まさに「ブランド25周年の喜び」にふさわしい人選。
では、その香りとは?
金の王冠キャップを外してジュビレイションXXVをスプレーする。瞬間、まず鼻に抜ける透明でスパイシーな香りがある。コリアンダーだ。その10秒後、ムワッと温かみのあるくぐもったアニマリックな気配、同時にそれを中和しようとするかのようなスッキリした樹脂の酸味が広がる。思いきりアラビアン。頭にターバン、長いあごひげ、湯水のようにお金を使う中東の大富豪の姿が脳裏をよぎる。乳香(オリバナム)とミルラの爽やかな酸味とグリーン、ラブダナムのスモーキー&アニマリック。よくも悪くもこのトップだ。この樹脂&バルサムてんこもりMIXが好きか嫌いか、それがこの香水のあなた評価になる。
3分後、煙たいロースティーな香りがじわじわと下からせりあがってくると香りはミドルになる。ものすごい香料の重層。超ミルフィーユ状態。複雑で多層的な香料のせめぎあいを感じる。それでも主旋律は、爽やかな酸味と香ばしさが特徴の乳香の香り、アムアージュの代名詞ともいうべき「オマーンの乳香」だ。そこにわずかなローズ、大量のインセンスの煙と重厚なウッディがベース音を奏でて共鳴し、荘厳なシンフォニーのように感じられてくるミドル。なんというバランスのよさ。超ドライ、そしてスモーキー。
…ああ、お母さん。砂漠の蜃気楼が見えるよ。のどが乾いたな。何か木が焦げているよ…
は! いかんいかん。思わず香りで変なトリップをするところだった。気を取り直して。
ミドルは本当に複雑で、時間がたつにつれてインセンスの乾いたスパイシーな香りが強くなってくる。その下からミルラの酸味、ウードの黒いウッディ、パチュリの苦味、ベチバーの干し草感などが、これでもかこれでもかとフワフワ片鱗を見せながらドライダウン。つけて3〜5時間程度。海外では「こんなにすごい香りなのにサイレージが短い」という意見も多いようだ。ただ香料は本当多い。どんだけ天然香料を入れたんだと思う展開。確かにこれはそのへんの庶民がカジュアルにつけこなせる香りではない。温かく、包容力があって、複雑なのにシャープでスッキリ。まさにこれは「王の香り」だ。
ジュビレイションXXVをつける。複雑で、パワフルで、スモーキーな薫香に酔う。ぜひ機会があったら肌にのせてみてほしい。これは本当にすごい香りだ。ほら。
なんで逃げる!!
口コミを再開しようかな…と思ったり思わなかったり。 続きをみる