doggyhonzawaさん
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フラッサイ / ティアンディ

フラッサイ

ティアンディ

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2021/9/18 11:57:58

かつて「桃とシプレの名香」と言えば、長らくゲランのミツコだった。ただ、正直現代の女性に往年の名作ミツコは渋いと思う。リスペクトも含めてあえてそう言う。凛としたたたずまいが女性にも求められた時代は遠くなり、今は柔らかく華やかなスタイルの女性が多い時代。そして、そうした女性に似つかわしい最新型の「桃とシプレの名香」を見つけた。それがフラッサイのティアンディだ。

フラッサイは、NYのフレグランス業界でのキャリアを経て、母国アルゼンチンに帰ったナタリア・オウテダ女史が、2013年から展開しているニッチな香水ハウスだ。彼女は自分でも作品を調香できる技術と経験をもちつつも、かつて親交のあった信頼できる調香師に調香を任せ、珠玉の香水のみをリリースし続けている。

そんなナタリア女史が、自身の趣味である太極拳と道教の「不死の桃伝説」からインスピレーションを得て創った香りがティアンディだ。これは中国語で和訳すると「天と地」の意。天と地、とくれば中国の陰陽説が思い浮かぶ。そこに3000年に一度実を付けると言われる「不死の桃」の香り。いったいティアンディはどんな香りなのか?

ティアンディをスプレーすると、まず最初に広がるのはダークな洋酒ライクなプラムの香り、そこにシダーっぽい冷たいウッディが絡んで、セルジュ・ルタンスの名香フェミニテ・ドゥ・ボワの紫色のトップにとてもよく似た開幕。

ところが

そこからふわふわと香料が入れ替わって霧のようにただよい、あたりは深山の幽域といった具合になってくる。

まず温かくスパイシーなジンジャーの香りが広がってくる。かと思うと、冷たくひきこむようなアニスが主張してくる。この温と冷、これこそ陰陽説だ。天と地、善と悪。陰陽説はこれら正反対の事象が、互いになくてはならない関係のままこの世界を構成しているという考え方だ。さらに、ジンジャーは「外に拡散」する香り方をし、アニスは「内に引きこむ」ような香り方をする。この点でも対照的だ。よく考えている。

5分後、香りはさらに複雑に変化する。深山の霧の中に煙の臭いが立ちこめてくる。スモーキーなインセンスの匂いだ。それは炒った茶の香りのようでもあり、焦がしたコーヒーの香りのようでもある。焙煎茶のように香ばしく、どこかほろ苦い煙の香り。これは人がそこにいる気配を感じさせる展開。伝説に登場する崑崙山(こんろんさん)の頂上、美しき仙女、西王母の住まう地にたどり着いたようなイメージ。そんなふうに人が物を燃やす香りが展開してきて、もはや最初のフェミニテライクな気配がなくなったことに気付く。

そこは清涼感ある薬草の匂い、焙煎した茶の香り、そして香木を焚く煙たゆたう天上の園。生と死を司る双性の神、東王父と西王母の住まう地。

温かいジンジャーと冷たいアニス。白いアイリスのパウダリーと茶色いサンダルウッドのウッディ。そのコントラストの妙。なんという二律背反かつ対照的なミドル。これは生と死、陽と陰になぞらえた、天地の香りの四重奏だ。

そして

驚くべきことに、このミドル前半から香りはらさらに変化していく。それはつけて10分ほどして唐突に現われて本当に驚く。

3000年に一度咲く伝説の桃。その木に実る桃の香り。それがこのミドル後半から突如、出現する。

通常、桃の香りはトップで感じられるフルーティーだ。ラクトンの一種である通称ピーチアルデヒドは、女性特有の甘い匂いの成分とも言われるが、なぜこんなスモーキーで複雑な煙の香りの後で突然出てくるのか?全くもって信じられない。調香師はトム・フォードのPBシリーズ人気を一気に押し上げたタバコヴァニラの作者、オリヴィエ・ギロティン。まさかあんな武骨な香りを創る方がこんな繊細な作品を作るとは…。本気でお見それした。

ラストはこの桃の香りにスモーキーなインセンスが絡み合いながら終息するというとても不思議なエンディングを迎える。つけて4〜6時間、ふんわり桃の香が残る平穏なラストだ。

永遠の命、不死の象徴、邪気や災厄を祓う神の食べ物とされてきた、桃。中国原産の原種に近い桃は大福のようにつぶれた形をしていて「幡桃(ばんとう)」と呼ばれ、今なお珍重されている。神の園で西王母がふるまう伝説の桃はこれに近い物であったらしい。食べたことはないが、その形からは想像もできない甘さをもち、味は格別だという。

神の山の入口を示すプラム酒の香り。ジンジャーの温かい吐息。アニスの冷たい大気。桃のまろやかさ、それは生。お香のスパイシー、それは死。

森羅万象の世界を生々流転せし者、神の桃源郷へとたどりつき、遂に不死の桃を食らう。

ティアンディ。天と地の間で。

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ラルチザン パフューム / シャッセ オ パピオン オードトワレ

ラルチザン パフューム

シャッセ オ パピオン オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・22,220円発売日:-

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5購入品

2021/2/13 12:17:55

「ねえママ、リボンにママの香水つけてー。」
「香水?あ、シャッセ・オ・パピヨン?」
「うん。あの匂い、だーい好き。つけてつけてー!」

ちょっと待ってね。そう言ってドレッサーから香水を取り出す。金色キャップのシャッセオパピヨン。そう言えば、最近つけてなかった。そう思いながらソファーに戻る。

座った瞬間、娘がひざの上にドン!と座ってくる。重っ!!いつの間にこんなに重くなったの?こんなんで来月のバレエの発表会、大丈夫かしら?目の前にはポニーテールをまとめたブルーのリボン。そのリボンにシャッセオパピヨンをスプレーする。娘はパッと立ち上がり、ピルエットでクルクル回り始めた。その瞬間、ふわふわとシャッセオパピヨンのフレッシュフローラルの香りが広がる。ああ、やっぱりいい香りね。リビングに春の日射しが差し込んでいる。その明度が一段階上がったような気がした。

シャッセオパピヨン。1999年発売。調香師はアン・フリッポ。香調はフレッシュフローラルブーケ。持続は5〜6時間。表参道の路面店に通いつめていたOL時代に買った香り。

あの頃のラルチザンは、詩的な作品が多くて本当に素敵だった。金メタルのキャップ。色とりどりのラベル。とりわけピンク色のラベルのシャッセオパピヨンは大のお気に入りで、「これぞ自分の香り」とばかりに何本もリピした。夫と初めてデートしたときにもつけていた香り。そして娘が生まれてからもずっとつけてたけど、それでも最近はとんとご無沙汰してた。そりゃま、いろいろご無沙汰な年だし(笑)。40才過ぎて、何となく香りが自分に不釣り合いな気がして。大体いい年して「ちょうちょをつかまえて」って、ちょっと痛い気もする。

それでも。娘はこの香りが大好きだ。シャッセオパピヨンをつけていると「ママのにおい〜」っていつも抱きついてクンクンしてた。そしてときどき、こうやってリボンにスプレーしてあげるようになった。

白いリビングに、シャッセオパピヨンのトップの香りがふわふわ漂っている。それは柔らかくて濃厚なチュベローズと、爽やかなグリーンのガルバナムのミックス。緑の庭。そこに白い花の香りだけがそこはかとなく漂っている。その在りかを探して緑の園をさまようイメージ。蝶のようにひらひらと、美味しい花の蜜を求めて。

蝶は緑の葉と木々の間をふわりふわりと漂っていく。庭の奥からオレンジの花の香りもしている。爽やかで心和むしっとりした白い香り。心が癒される。そして森の入口に立つ、見上げるほどの大きな菩提樹。その梢に咲いた黄色いリンデンの花から、ほんのりマスカットのような甘くて冷たいハーバルな香りがしてくる。これらのロマンティックな花々の香りの奥に、本当に強く惹かれる白い花の香がある。それがチュベローズ。きっと森のどこかで夜を待ってひっそり咲く花。そのややプラスティックなファセットも感じる強い香りが、静かに大胆に、緑の園で舞っている。そう、最初はアダージオ、そしてグランアレグロ…!

そのとき、ゴン!アゴに激痛が走る。痛ッ!!踊り疲れた娘が急に胸に飛び込んできて、小さな頭がアゴを直撃した。ボクサーなら一発で沈むやつ。なんて言ったっけ、アッパー?だからやめてって言ってるでしょそれ!!思わず頭を軽くペチンとしようとして、不意に手を止める。

「…ごめんなさい」と上目遣いに見る我が子のつぶらな瞳。ひとしきり踊って汗ばんだ額の匂い。そっか。また急に抱っこしてほしくなったんだね。その瞬間、頬がゆるむ。

「んー、もう!!」

娘をぎゅっと抱きしめる。その小さな身体を腕全体で受け止める。

大っきくなったね。重くなったね。でも、この重さがうれしいよ。

抱きしめた娘の青いリボンから、シャッセオパピヨンの香りがしている。柔らかくて涼しげで、ふんわりしていて春の花を全部花束にしたように。うん。あげるよ。ママの心の花束、全部あなたにあげる。そして私は、娘の小さな耳元に囁く。

「つかまえた。もう放さない!」

娘がじたばた暴れる。本当に心から嬉しそうに。キャッキャ騒いで。


そこは緑も何もない日だまりの白いリビング。それでも私は今日、可愛らしいちょうちょをつかまえた。

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BYREDO / Black Saffron

BYREDO

Black Saffron

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

4購入品

2021/1/23 11:36:17

お前は誰だ?どこから来た?どこに行くんだ?で、一体、何のために生きてるんだ?

誰かの声が聞こえる。わからない。わからない。わからない。世界はあまりに広大で、残酷で、矛盾に満ちていて、常に混沌とした曖昧な色で自分の前に広がっているだけだ。

はっきり分かること。それは孤独ということ。そしてあんたが満足するような答えなど、まだ何一つ持ちあわせちゃいないってこと。

いらだち。怒り。心拍数UP。笑っている人間を見境なく消したくなる瞬間。鋭利なナイフ。心のとげ。内向きに突き刺さる。眠れない夜。グリグリ動く眼球。ピクピクする顔面。血を吐くような呼吸。

モウイヤダ…

そんなとき、静かにバイレードの香水に手を伸ばす。バイレードの香水は、かつて世界のどこにも自分の居場所を見い出せなかった男が作った、魂の彷徨の香りだ。

ブラックサフラン。黒いサフラン。そんな物はこの世界にない。それは存在しない物の象徴。カナダ人父とインド人母の間に生まれ、どちらの国にも明確に属せなかったベン。北欧ではジプシーのような異邦人、カナダでは色黒の中東系留学生と思われただろう。常に自己のアイデンティティーを異端視され続けたであろう過去。人々の静かな線引きと差別。スルー。そこにいても、いない者。絶対咲いていない花、ブラックサフラン。

だから、気持ちが沈んだときはブラックサフランをスプレーするといい。

ブラックサフランを付けてすぐに立ち上るのは、甘いベリーの香りとドライな干し草様の香り、そして透明感あるレザーの苦みだ。

ドライな干し草様のスパイシーは、インドのカシミール地方が有名なサフランの香り。赤い3本の雌しべだけを手摘みして、染料や料理や香水に使われる手間暇のかかる香料サフラン。スパイスの中で最も高価とされるサフランは、ベンにとって母の故郷インドへの心の旅だ。サフランの高貴な香りは、彼の母方のルーツへ魂を導く。

5分後、ほんのり酸味の効いた乾いたサフランのスパイシーが少しずつ減衰し、ミドルはレザーと甘いベリーのコントラストが明確になってくる。鉛筆の芯の匂いのような冷たいシダーっぽいウッディ香もかいま見える。しっとりしたレザー&ウッディがメイン。それは穏やかな黒い香りだ。暗くほの甘いレザーが思わせるのは、レザージャケット、ブーツなど。または、ヒンドゥー教の聖牛崇拝による牡牛のイメージだろうか。

このミドルがずっと長く続く。乾いた草の匂いは、サフランから温度を下げ、ベチバーの土っぽいドライも混じってくる。ほの甘いレザーの柔らかい香りが、心に穏やかに寄り添う。4〜5時間ほど続いたあと、そのままドライダウン。甘さとレザーと干し草の匂いを連れて。

ベンは心に浮かんだ「思い出の集合体」を香水に落としこむデザイナーだ。バイレードの香水も、特に初期の作品ほど、幼少の頃のインド的生活や思想を巡る旅を着想源にした物が多い。サフランはそんな幼少の頃、母の料理に欠かせなかったスパイス。そしてインドの聖なる象徴としても、彼の魂のルーツをたどるのに欠かせなかった香料だ。では、いったいなぜ「ブラック」を冠したのだろう?

黒い花。黒い香り。黒い服。黒いブーツ。黒い髪。黒い肌。黒い魂。

人が「黒」を選ぶとき、一般的には「自分を見ないでほしい」という暗喩が隠されていることが多い。人目に晒されることを極度に嫌い、周囲の暗さに溶け込みたい心理が無意識にあるとき、人は黒を選ぶという。また、不安や大きな悲しみを抱えているときに選ぶ色でもある。ベンの思いは、その中のどれかにあったのかもしれない。

人は見た目で多くの線引きと差別をしてしまう生き物だ。肌が白い、黒い。身長が高い、低い。痩せている、太っている。そしてそんな他人からの見た目の査定で傷つき、自分の色も味も匂いも自己否定してしまう人は多い。ベンの香水はそんなとき、心を守る。傷ついてズタズタになった心に黒いヴェールをそっとかけて、人目を閉ざしてくれるように。他民族で多文化な世界を渡り歩き、自身もまたプロバスケットボール選手の夢に挫折した男が、絶望の淵から這い上がって創り出したブランド、それがバイレードだ。自身のルーツをたどり、孤独と排他の暗闇から自分を光の中へ救い出した彼が創る作品は、静かで深淵で、そして目には見えない優しさに満ちている。

お前は誰だ?どこから来た?どこに行くんだ?で、一体、何のために生きてるんだ?

今日も誰かが自分を見る。そして目で問いかける。うっせえ、黙れ。てめえの知ったこっちゃねえ。”Not your business!!”

黒革のヴェールに包まれた魂の奥底から、ベンの乾いたサフランの香りがしている。

だから まだ自分 戦える

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フラッサイ / ブロンディーヌ

フラッサイ

ブロンディーヌ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2021/1/9 18:38:01

長い間、香水の旅をしてきた。そしてまた一つすばらしい香水と出会えた。フラッサイのブロンディーヌ。この香水を肌にのせたとき、一筋、迷いの森からの出口が見えたような気がした。

フラッサイは、2013年にアルゼンチンのブエノスアイレスでブランディングされたジュエリー会社だ。しかしながら創業者のナタリア・オウテダ女史は、長年ニューヨークのクエスト、ジボダンで香水マーケティングに携わり、エバリュエイターとして活躍してきた人物。いわば香水業界の裏の裏まで知り尽くしている方。そんな彼女が故郷ブエノスアイレスに戻った際、香水瓶ペンダントを創りたくて起業したそうだが、そこから自然に香水づくりも進んだようだ。

最初に創った3作品は、辛口批評でおなじみの「世界香水ガイド3」でどれも高評価を得ており、世界中の愛香家が注目する契機ともなった。中でもトップセールスを記録したこのブロンディーヌは、ブランドの代表的な作品として人気が高い。これはフランスの古いおとぎ話に登場するブロンディーヌ姫にインスパイアされた香り。リリースは2017年。調香はTFのヴェルベット・オーキッドなどで知られるヤン・ヴァスニエ。

幼い姫が王の後妻によって森に置き去りにされるおとぎ話、ブロンディーヌ。彼女は白猫や白鹿に助けられながらも、父に会いたい一心で悪い動物の甘言にのってしまう。その罪を償うべく幾多の試練に立ち向かう健気な姿が描かれる物語。ナタリア女史はこの物語からどんなインスピレーションを得たのだろう。実際にブロンディーヌの香りを嗅いでみる。

ブロンディーヌをスプレーすると、まず最初に広がるのは、エキゾティックな白く厚い花弁の香りだ。フランジパニやタヒチアンティアレのように、ふんわり華やかなホワイトフローラルが炸裂する。ガーデニア系が好きな方は悶絶必至のトップ。

1分後、このホワイトフローラルの影にサッパリした柑橘オレンジの香りが寄り添っていることに気付く。クレジットにはグリーンマンダリンとあるが、確かに酸味がキリッとした緑色のオレンジだ。このシトラスがフローラルの重たい分子を上げてきているのだろう。明るく、誰からも愛されてきたプリンセスのイメージにふさわしいイントロ。

5分後、南太平洋系のフローラルに感じた香りに少し影が出てくる。かなりソリッド&スパイシーなフローラルになる。これはもうガーデニア系ではなく、ツンとした花粉っぽさが感じられるユリ系の雰囲気だ。ミドルのメイン香料にタイガーリリーとあるので、そのやや強くてエッジの硬いフローラルに変わってくる。だがそれだけではない。香りは刹那的にどんどん変わってくる。香料をバランスよく、しかもかなり豊富に使っていることがわかる。そしてあえてそれらを見せない。全てフローラルの影にひっそりと漂わせている。なるほど。場面は、暗い森に置き去りにされた少女に変わったのだろうか。森の中でうごめく動物の匂いや樹や苔の匂いが、彼女の周囲に漂い始めるイメージ。この影は次第に濃くなってくる。

わずかなカストリウムのアニマリックが効いている。同時に、遠くから漂う甘い花蜜の香りも感じられる。あたりにはさまざまなユリの花が咲き、植物の葉のグリーン、アーシーな湿った土の香りもしている。森をさまようブロンディーヌ姫。不安と畏れと、それでもたくさんの花を摘みたい欲求に駆られる一人の少女。彼女は森で白い動物たちに助けられ、やがて7年の眠りを経て森で大人の女性になる。

このミドルはスパイシーなユリの香りがメインとなる。それは女性として強さと美しさを身に付けた姫の変身ぶりのよう。後半になるにつれ、柔らかなスエード調レザー香や甘いパウダリームスクが出てきて、香りは再び柔らかく甘く変化してゆく。幾多の困難と試練を経て、動物たちの協力を得て森の出口へ向かうブロンディーヌ。ラストは、彼女を見守り続けてくれた白猫と白鹿が蘇り、王との再会を果たし、勇気と忍耐の物語をハッピーエンドにしめくくる。香水ラストの甘い花蜜の香り、パウダリーな白いムスク香は、安心と平和を象徴するかのよう。持続時間は長く、つけてから8〜10時間ほど柔らかく続く。

悲しみに満ちた少女は、森での試練を経て、美しいプリンセンスになる。それはおとぎ話でも何でもなく、女性の人生そのものの道程かもしれない。フラッサイはどの香りも本当に素敵だ。だが、まだ日本では販売されていない。ぜひネットで検索して世界の窓を開き、その美しい香りを手にして心を震わせてほしい。

これは、いまだ暗い森をさまよう女性たちへのメッセージだ。光の出口は必ず訪れる。自分で自分にダメ出しの呪いをかけることなかれ。

自分全肯定。全ての女性に勇気と希望を与える香り。フラッサイ、ブロンディーヌ。

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キリアン / ローリング イン ラブ オード パルファム

キリアン

ローリング イン ラブ オード パルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・30,800円発売日:2019/10/11

5購入品

2021/1/3 01:17:48

キリアンのローリングインラブはとても危険な香りだ。深紅のボトルに秘められたジュース。そこにはどんなに濃厚でセクシーな香りが潜んでいるのかと想像すると、たいてい肩すかしをくう。このセンシュアルなレッドボトルに充填されているのは、意外にも、とても穏やかでしっとりとしたクリーミーな香りだ。

ローリングインラブは、最初から最後まで、とてもマイルドなアーモンドミルクの香りがする。それのどこが危険なの?そう思うかもしれない。確かにそうだ。何年か前から飲み物としてもメジャーになった感のある、あのアーモンドミルク。本当にそんな香りがする。ちょっと嗅いでみただけでは。

ラグジュアリーな金メタルキャップをとってローリングインラブをスプレーする。最初にスッと鼻を通るのは、透明でビターな香りだ。すぐにビターアーモンドの香りだとわかる。ただし、このスッと抜ける苦味を嗅ぎ慣れていなければ「あれ、つけたのに何も匂いがしない?」と思うかもしれない。

5秒もしないうちに、コクのあるロースティーなアーモンドの香りがしてくる。それは塩をまぶしたあのアーモンドの匂いそのものだ。ご丁寧に塩味の雰囲気まできちんと再現されている。こんもりナッティーな雰囲気は、色で言うなら茶色。なぜこんなにもロースティーなアーモンド香を再現したのだろう?と疑問に思うほど。

数分後、ほんのわずかチェリーの甘苦い香りが抜けていく。そしてナッツの塩味がうすれ始めると、次第にミルクの香りがオーバーラップしてくる。あふれるほどのミルク。ナッツの茶色いコクに白いミルクがかかり、あたりはアーモンドミルクの淡いベージュ色の気配に包まれる。それは女性の柔肌の色、と言ってもいいかもしれない。ここからがローリングインラブの真骨頂。しっとりしたアーモンドミルクの香りが、どこまでも柔らかく広がってくる。甘さはあまりない。アイリスのパウダリー、ヴァニラのクリーミーも顔をのぞかせてきて、白一色になってくる。そこにほんのわずか、冷たい感じのフローラルのタッチがある。クレジットによればフリージアだろうか。鼻ででかぎ分けられるほどではないけれど。

このしっとり白いアーモンドミルクノートが、3〜6時間ほど、肌の上10cmあたりで続く。ラストはトンカビーンの甘さとホワイトムスクのフローラル感を保ちつつ、白くミルキーな香りのまま消えてゆく。

よほど鼻を近づけないとかぎ取れないほどの淡い香り立ち。最初につけると「ん?キリアンでこんな淡い香りなワケがない。これは偽物では?」と思うほど、他のキリアンより控えめで繊細な印象。本当に深紅のボトルの印象とはかけ離れて感じられる点。それでも。

ローリングインラブは、やはり危険な香りだと思う。なぜなら。

この香水には、エロティックな肉体の交わりを連想させる裏要素が、多分に込められているからだ。

アーモンドミルクの香り。言葉で聞くと心惹かれるが、アーモンドとはそもそも男性器を意味する言葉でもある。そこにミルクノートを寄り添わせた、ということは何を暗喩しているか推して知るべしということだ。男性のミルク、これは確実に裏メッセージとしてある。

さらにキリアンは、今回この香りをリリースするにあたって、しきりにスキンパフュームを作りたかったと言っている。女性の肌の下の匂い。それはこれまでのキリアン香水の打ち出してきた方向性とは真逆だ。これまでは、どちらかというと「これでもか」とばかりに香料をふんだんに取り入れ、濃厚な主張をする作品が多かったが、この作品は意外なほど内省的で裡にこもっている。もっと言うと「主張」とは真逆の「何かを吸いこむような香り方」をするように感じられる。もしも「女性の肌がアーモンドミルクを吸いこむように香る」としたら、それは愛の交わりそのもののイメージだ。

むろん深読みかもしれない。感じ方はそれぞれ異なるはず。ただ、鼻をよほど近づけないと、この香りが感じられないように作っているのは事実。それも計算づくだとすれば、さらに納得がいく。これはつけた人のプライヴェートゾーン、つまり超至近距離に入れる者にしか嗅げない香りなのだろう。その肌に口づけできる者にしか嗅げない香水。

ローリングインラブは、ミルキー、クリーミー、パウダリー、ムスキー、それら官能の多層構造をもつ白いミルフィーユ香水だ。時間が経つにつれ、特に女性の肌の上で、白く美味しくできあがっていく香り。愛し合う者たちだけが確かめ合える秘密の匂い。

真っ赤な唇から漏れる吐息。汗ばんだ肌は塩ナッツの匂い。狂おしい夜のしじまがふけてゆく。そして切ない獣の咆哮。二人はミルクの匂いに包まれ、一つになる。

恋に抱かれて、肉欲にまみれる。愛の中毒、ローリングインラブ。

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MA・COPPEさん
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プロフィール
  • 年齢・・・40歳
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  • 血液型・・・A型
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自己紹介

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