表示
一覧
個別

絞り込み:

426件中 46〜50件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 51歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ペンハリガン / エレニシア オードパルファム

ペンハリガン

エレニシア オードパルファム

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:50ml・17,050円 / 100ml・23,650円発売日:-

6購入品

2017/4/28 01:07:03

春から初夏にかけて、女性におすすめの香りを挙げるとしたら、ペンハリガンのエレニシアは外せない。気温がまだ高くなく過ごしやすいこの時期は、女性にとってフローラル系が一番似合うシーズンだと思う。中でもこのエレニシアは、ガーデニアのふくよかな香りをメインにしながら、ジャスミンやローズ、チュベローズを上手く配して、華やかで魅惑的な白いブーケの香りを演出していて女性に人気だ。

エレニシアのトップは、バイオレットリーフの薬っぽいような洋酒のような香りから始まる。同時にわずかな酸味と甘みを感じるオレンジ系シトラスの雰囲気も。

5分もすると、深く暗いバイオレットリーフの香りの奥から、じわじわとホワイトフローラルが広がってくる。ジャスミンにイランイランをわずかに添えたような、コクのある白い花々の香りだ。そこに黄色い花粉と蜜を混ぜたような濃厚な香りも混じってきて、クラクラしそうになる。抑圧的でストイックな香りが多い英国系のペンハリガンにあって、フランスのゲランやシャネルのフローラルにもひけをとらない派手さだ。ふだんからあまり香りを付けない方は、このあたりで軽く頭痛を覚えることもあるかもしれない。それほどアピール力が強い。

このミドルのフローラルの調香は絶妙だ。ガーデニア特有のもったりとした厚い花弁の香りを中心に、それを増幅するようなきれいめのローズ、すずらん香にも似たジャスミン&チュベローズのミックスなどが複雑に絡み合って、しっとりとした白い花々の饗宴となる。しかも、背後から出ている紫色のプラムの香りが、いい感じで花々の香りに濃い陰影をつけている。このフルーティーで甘酸っぱい香りは、ともするとくどくなって飽きがきやすいフローラルブーケに、美味しそうなひと味を添えているように思う。このミドルは、6〜8時間はしっかり香る。淡くて短時間で消失する香りが多いペンハリガンでは、かなりロングラスティングな部類だろう。

ラストは、香りのバランスがとても印象的だ。これでもかと主張していた白いフローラルが淡くなってくると、サンダルウッドのようなウッディがほのかに肌から立ちのぼって、温かい香りに変わってくる。クレジットにはないものの、香ばしい木の香りが感じられてくる。さらに、それはわずかにヴァニラのクリーミーさをまとい、ふわふわと漂うようなチュベローズのセクシーな残り香を連れている。このラストは何ともセンシュアルだ。花弁の奥の深いところにある蜜をそっとなめたように、甘くて苦い秘密の味がする。このラストを女性がほのかに漂わせたら、周囲の男性はどこか心が浮わついて落ち着かないだろう。もっと近くで嗅いでみたい、男性にそう思わせる吸引力のあるラストだ。ペンハリガンは以前からフローラルブーケの調合が上手いと思っているが、このエレニシアのベースの香りにも、ゲランやシャネルの名香に匹敵する官能性がうかがえる。

華があって、可憐で、どこか思わせぶりな小悪魔な部分も併せ持つ蠱惑的なフローラル。同じフローラル系のアルテミシアはもう少し抑制が効いていて控えめだが、エレニシアは自己主張が強めなので、その時々の気分で使い分けたい。この香りをまとえるのは、心と体の調子が上向いているときだろう。オンオフで言えば、確実にオフ向き。好きな洋服を着て、リラックスして楽しい時間を過ごしたいときに似合うと思う。逆に心の調子が下がっているときには、この手の強めのフローラルは、きつく苦しく感じるかも知れない。フレグランスは心の温度によって合う時と合わないときがあるし、逆に言えば、そのときどきの心の温度を測れる体温計にもなる。

エレニシアのネーミングの元になったのは、ケルト神話の物語「マクセンの夢」に登場するウェールズの王女エレン(Ellen)と推察される。少なくとも「妖精」という意味の単語ではない。神話に登場する不思議な存在だから妖精という捉えなのだろう。それは一介のローマ軍人だったマグヌスの物語。彼はある日リンゴの木の下で眠っていた時、夢の中で美しい娘と出会う。その娘の面影を忘れられない彼は、各地で戦い出世していくさ中、彼女を探し続け、遂にイギリス王の宮殿で夢に見た娘と出会う。それが王女エレンだった。彼はエレンをめとり、やがてウェールズ王&イギリス王(ブリタニア王)となり、西ローマ皇帝にまでなったという。

白い花々を集めたエレガントな花束、それは運命的に出会った2人のロイヤルウェディングブーケの香りなのだろう。ホワイト・フローラルの逸品エレニシア、そこに込められたのは、コーンウォールに伝わる誰もが知る出世譚、そして理想の女性をどこまでも探し続けた壮大なラブロマンス。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 51歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
グタール / ラ ヴィオレット オードトワレ

グタール

ラ ヴィオレット オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・28,050円発売日:-

ショッピングサイトへ

6購入品

2017/3/18 01:25:50

悲しいことがあると、革の表紙を開いたりしない。紫の香りをそっと嗅ぐ。それは、しぼんだ風船のような心にそっと寄り添う、美しいシングルフローラル。アニック・グタールのラ・ヴィオレット。

ラ・ヴィオレットは、2001年に、調香師イザベル・ドワイヤンとカミーユ・グタールによって作られた。1999年に世を去った母、アニックが好きだった菫。母と共に過ごしたフランスのアベロンの別荘「ラ・ヴィオレット」。その庭に咲いていた小さな紫の花の香り。それは、カミーユが亡き母を偲び、母にもらったあふれんばかりの愛や思い出に対する感謝をこめた、ノスタルジックなフレグランス。

ラ・ヴィオレットをスプレーすると、淡く透き通ったうす紫のせつない香りが広がる。一瞬、バイオレットフィズの暗く秘めやかな雰囲気、そしてすぐ、わずかにローズの口紅っぽいワックス香が浮かび上がり、ピンクがかった紫に変化する。それでいて、とてもクールでシャープだ。バイオレットリーフのグリーン香が甘くなり過ぎないようエッジを引き締め、濃い紫の陰影を形作っている。

そしてそのまま、スミレの紫、ローズの赤、バイオレットリーフの青っぽさを7対2対1くらいの割合で展開させながら、パープル・グラデーションの落ち着いた香りが漂い続ける。シングルフローラル系統なので、とてもスッキリとしていて香り立ちはシンプルだ。バイオレットの香りを再現しているのは、イオノンや合成イリスなどだろう。大きく変化しないまま、6〜8時間ほど静かにたゆたう。

正直、このシンプルなアロマケミカルのコンボを思えば、価格はもう少し安くてもいいのではとも思う。特に、2013年に韓国資本となってからは、ボトルの簡素化、値上げ、さらに追い打ちをかけるように廃盤の嵐と、アニック・グタールじたいにいいニュースがなさすぎるので、なおさらだ。また、どうやら不定期に販売されているらしく、限定販売なのか通常販売なのかはっきりしない点も残念だ。現在はまた入手が難しくなっている。せめていつでもどこでも入手できるようにしつつ,値段も手頃にしてほしい1本だ。なぜなら、この香りはとても貴重で、時々どうしてもこれでなければならない時があるからだ。

それは、心が思いっきり滅入ってダウンしている時。そんなとき、これほど静かに、ゆっくりと心に沁みてくる香りはなかなかない。自分にとって、本当にかけがえのない香りだ。

人は元気が出ないとき、つらいとき、悲しくてやりきれないとき、顔がうつむき、呼吸が浅くなる。瞼が重くなり、心の窓も曇る。脳と体はリンクしているからイライラして疲れやすくなり、身体がズシリと重くなって何もしたくなくなる。肌はボロボロ、内臓の働きは悪くなり、ホルモンの分泌も異常をきたす。そして、夜に眠れなくなる。

そんなとき、ラ・ヴィオレットは、本当に効く。訳が分からず涙がこぼれるようなぐちゃぐちゃな心の隣で、静かに、静かに、ただそばに一緒にいてくれる。

嘘だ、たかがフレグランスにそんな効果があるわけない。そう思われても仕方ない。そして、ラ・ヴィオレットが、誰にとってもそんな香りであるとは言えない。それもそのとおりだ。けれど自分には薬以上に効いたのだ。この香りがトランキライザー代わりだった時期があった。その事実は自分の中で真実だ。そんな香りを一つでも見つけられた人は、本当に救われる。香りは、ときに人の心を確実に救うことがある。

夕暮れの町に一人。紫色の闇が刻々と色を変えるとき。春の宵は静かに深く、人の心を孤独に染めていく。別れも出会いも、本当はどちらも同じくらい重たくてきついものだ。だから、春はどこまでも心にくる。どうしようもなく心に紫色の影を落とす。

そんなとき、ラ・ヴィオレットは、一本の冬枯れの木のシルエットのように自分の前に立っている。黒く、魔女の手のような枝々を夕闇の空いっぱいに広げ、裸のままたたずんでいる。葉も花も実も、全てを失ってこんな姿になっても、それでもまだ空を引っ掻き続けるのだと、細い枝々を空に伸ばし、新芽の爆弾が破裂して葉が生まれ出づる時を虎視眈々と狙ってふんばっている。どこまでも虚空にその手を広げて。何も言わず、紫の雲の前で。

人ごみに流されて、変わっていく私を
ラ・ヴィオレットは遠くで叱らない。ただそばにいてくれる。ただずっと、心に寄り添っていてくれる。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 56歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
セルジュ・ルタンス / アイリス シルバーミスト

セルジュ・ルタンス

アイリス シルバーミスト

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

6購入品

2022/10/15 13:22:32

「うわ、めんどくせえ…」そう思う瞬間は誰しもあるだろう。自分なんか毎日だ。口にしたら終わりだと思うから言葉にこそ出さないけれど、しょっちゅういろんな「めんどくせー」が心をよぎる。

意図せず振られた仕事、偏屈な上司の果てしない説教、ママ友たちの終わらない愚痴…。「ああもう!そんなんどうでもいいわ、時間のムダ!」ついそう叫びたくなるような面倒くさいことや人が、世間にははびこっている。しかもそのほとんどにこちらは「笑顔で応対」しなければならない。そりゃストレスもたまるわけだ。

そんな「にこにこぷん!」なあなたに超絶おすすめの香水がある。セルジュ・ルタンスのアイリス・シルバーミストだ。この香水は、自称(笑)「香水の帝王」ことルカ・トゥリンが「想像を絶する不吉なアイリス」と珍しくイカしたキャッチコピーを捧げたうえ、最高評価を下していることで一躍話題となった香水。ではなぜこの香水が「めんどくせー」と思ったときにおすすめなのか?そこには3つの理由がある。

1つめ。この香水は「とてつもなく面倒な手間と膨大な時間を費やして、ほんのわずかしかとれない香料アイリス」の香りをどストライクで嗅げる香水であること。これがアイリス香。

2つめ。この香水は「他のアイリス香水がかすむような究極のアイリス香水を創ってくれ」というルタンスの超絶面倒くさい要望で生まれた香水であること。調香師、涙目。

3つめ。このアイリス・シルバーミスト。手に入れたいと思っても、そう簡単に手に入らないこと。なぜならパリのルタンス本店にしかないから。ルタンスの釣り鐘ボトル75ml。個人輸入で購入可能。面倒だけど。

つまり、アイリスシルバーミストこそ「面倒づくし」「面倒三昧」の香水だからだ。

香料を採取できるまで6年以上かかって大変!しかも収量は原料100sからわずか2gしか取れない!なのにそんな高価な香料をかき集めて試作したのにルタンスは「だめだ!まだだ!もっとだ!」と言って調香師に面倒な注文をつけ続け、最後は調香師も半分「あーもうあいつ面倒くせー!」とヤケ気味になってあれもこれもとぶちこんだらOKが出る始末。しかも日本で売ってないだと?「ケッ!また買えない香水の紹介かよ!ヴォケ」という生ぬるい叫びが聞こえてきそう。はいそのとおり。でも全く買えないわけじゃない。現に自分もずっと探して探してタイミングよく30mlボトル2本入りセットをネットで購入できた経験あり。そりゃ確かにこの香水は面倒くさいよ、香りも購入も。

でも面倒くさいからこそ それを乗り越えたときの気分て 格別なんじゃないか?

アイリスシルバーミストを肌にのせる。その瞬間、まず立ち上るのはうす紫のスミレ色の煙と白い粉。土くさくて根菜っぽい匂い。けれど乾いていて小麦粉を盛大に取っ散らかしたような感じも強い。とっつきにくいコナコナ地獄。ところが

2分後にはキリキリホットスパイシーな辛みがブワー広がってくる。これはクローブだ!とすぐわかる香り。クローブを感じる度に自分が思い出すのは、若い頃に吸っていたインドネシアのクローブ入りタバコ「ガラム」。このクローブのスパイシー甘シビレな香りが、もったり小麦粉ライクなアイリス香をグッとひきしめて展開するようになるとミドル。だんだんスパイシーは強くなり、分単位で白いアイリス香とせめぎ合うようになる。

つけて20分。クローブのスパイシーがうすれてくると、極上のパウダリーがなめらかに降り注いでくる。キラキラと明滅する銀のパウダリー。ほんのり甘味とキレのある酸味があってメタリックなアイリスに感じられる。幾重にも重なったアイリスのハーモニーが天上の音楽のように降り注いでくる。この瞬間、心にくぐもっていたスパイシーな怒りやわだかまりが、スッと空へ吸い込まれていく。

めんどくせーな めんどくせーよ あーでも この香りスッとする なんかスッキリする

気付くと、柔らかな白い香りに包まれている。そのほの甘パウダリーがふわふわ空へと舞い上がっていく。ほんのわずかアニマリックも。きっと天使の羽根に匂いがあるなら、こんな白いパウダリーだろうなと思う。

この極上の白い香りは、真っ暗な地中から生まれた。土の匂いと草の根の青臭さとをはらんで、6年以上もの歳月を費やし、ふわりと宙を舞う白い羽になった。ギリシャ神話で、ゼウスに愛されたアイリスは、天と地の間に虹の橋をかけた神の使い。そして彼女に振りかけられた神の酒は地上に落ち、アイリスの花を咲かせたという。

天空から白いミストが降り注ぐ。どこからか天使たちのざわめきが聞こえる。やがてこの霧の彼方に、天地を結ぶ虹の橋がかかるだろう。アイリス・シルバーミストの空の向こうに。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 53歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ゲラン / アンジェリーク ノアール

ゲランゲランからのお知らせがあります

アンジェリーク ノアール

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:75ml・35,200円 (生産終了)発売日:2006/11/15

6購入品

2019/10/19 18:07:33

この香りを嗅いだ瞬間、墜ちた。撃墜された。心が囚われてしばし真っ白になった。視線が虚空をさまよった。どこかで天使が笑っているような気がした。けれどそれは悪魔の嘲笑だったのかもしれない。

ゲランのアンジェリーク・ノアール(黒のアンジェリク)を初めて嗅いだときのことだ。今もはっきりと覚えている。それは黒の衝撃だった。バランスのいいゲルリナーデベースの上に、甘くてクリーミーで、わずかに苦いグリーンな香りがスッキリと広がっていた。そのバランス、その高貴な香り立ちに深く感じいった。

アンジェリークノアールは、ゲランの最高級ライン、ラール・エ・ラ・マティエールの最初の3本のうちの1本だ。2005年、このシリーズ最初の3本を作るために3人の外部調香師が招かれた。フランシス・クルジャン、オリヴィエ・ポルジュ、そしてプラダのキャンディなどを手がけたダニエラ・アンドリエ。彼女が作った香りがこのアンジェリークノアールだ。

価格は75mlで32000円+税。これまでこの価格がネックでもあったが、今後は20mlドロップが伊勢丹新宿店1F「ゲランパフュマー」でいつでも買えるようになる(10月23日以降)。これは嬉しいニュース。

では肝心の香りはどうかというと。

トップ。新鮮で酸味の豊かなベルガモットがまず感じられる。すぐにその下から出てくるのは透明でスッとするアニスの清涼感とスリリングなグリーン系のノート。さらに低音からはアンジェリクルート(根)のスパイシーな爽やかさが広がってくる。甘くて青くて、わずかに苦味が感じられるグリーンなトップ。ベルガモットとアーシーなアンジェリクルートの競演。拮抗。

ほどなくベルガモットの爽やかさは消失し、トップのフルーティーさを洋ナシ様の甘くコクのある香りが引き継いだなと感じると、香りはミドル。そしてアンジェリカの土っぽいスパイシー&ムスキーな香りと好対照を見せるようになる。さながら白と黒の二重唱。明と暗の妙なるコントラスト。

さらに、この甘くフルーティーな香りとベチバーっぽいベースを包みこむように、フローラルムスキーな香りが全体を包みこんでくる。ジャスミンとアンジェリカシード(種子)のムスク香だ。ややクマリン独特のキュンとくるせつないアーモンドノートも混じったような。ここまでくると、さまざまな香料の波状攻撃にあったような気分になり、何ともいえず穏やかな気持ちに包まれる。整理すると次のような感じ。矢印は変化を表す。

高音部:ベルガモットの酸味→ペアーの甘さ
中音部:清涼感のアニス、青いグリーンノート→花の香りのムスク
低音部:スパイシーな根の香り→コクのある苦いクマリン系ムスク

アンジェリクの名が示すように、アンジェリクルート(根)とアンジェリクシード(種子)が使われており、このアロマティックな香気をもつ香料が過剰投与されている印象が強い。アンジェリクの香気の主な特徴は、強いムスク香とハーバルな甘苦さで、根の方はベチバーにも似た土っぽいスパイシーさが感じられる。同時に、桜餅の香り成分である白いクマリンの香り成分ももっている。白を連想させる甘さ&ふんわりパウダリーな種子のムスク、そして大地の黒を思わせる根のスパイシームスク、この両方を使っているということだろう。

このミドルがしばらく続いた後、クリーミーなヴァニラ&トンカビーンのコクが感じられるようになるとラスト。付けてから5〜7時間で柔らかく消えてゆく。なるほど。ゲランの秘伝ベースであるゲルリナーデの構成素材をきちんとおさえた作り。ベルガモット、ジャスミン、ヴァニラ、トンカビーン。この4つのキー素材に、アンジェリカを据えてバランスをとった香水といった風情だ。

全体的に香り立ちはやや強め。ラールエラマティエールの中でもくっきり個性を主張してくるタイプだ。柔らかい香りではあるものの、思ったより周りに主張しているので、付けるならウェスト以下がおすすめだ。ゲランのヴァニラ系がお好きな方、ランスタン系がお好きな方には特におすすめだ。ランスタン系はソーピーでややツンとしたムスクに傾くのに対し、アンジェリクノワールのムスクは甘くしっとりしたパウダリーに広がる。

アンジェリクは、もともとはラテン語で「天使」を意味する言葉だという。だから、アンジェリクノアールは「黒い天使」という暗喩も効かせていることになる。

黒い天使。それは清らかな姿とは裏腹に黒い羽根をもつ堕天使のよう。その神々しい微笑みの裏に、したたかに折りたたまれた黒い翼をもつ者。その禍々しいまでの美しさ。光と闇を統べる善と悪の双眸。

もしもアンジェリークノアールに出会えたら、貴方は墜ちるだろうか?

堕ちた天使の狂おしい香りに。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 51歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ディオール / ディオール オム オードゥ トワレ

ディオールディオールからのお知らせがあります

ディオール オム オードゥ トワレ

[香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

6購入品

2017/3/11 20:14:22

「ココアの香りのフレグランスがある。」人づてにそう聞いたのが、ディオールオム・オードトワレと出会うきっかけだった。

曇天と乾いた空気、冷たい雨や雪が心に灰色の影を落とす冬。そんな季節は、なぜかチョコレートやココアの香りが恋しくなる。心と体を困憊させるようなハードな仕事が続くとき、吐息を漏らす代わりに、ひとかけらのチョコレートをパキッとかじる。不意に口の中に広がるやさしい甘さと香ばしいカカオの風味。その瞬間の安らぎ。上質なココアがカップに注がれるとき、湯気と共に立ちのぼる温かな香り。ほっと一息つくひととき。

「ディオールオムは、ココアの香りがする。」結論から言うと、その噂の真偽は、当たらずとも遠からずといったところだ。ディオールオムは、ココアの香りというよりも、パウダリーな白いアイリスの香りが印象的なフレグランスだ。ただ、その下から甘くてビターな、ココア風と言えばそんな風味の香りがする。それは、カカオ香料の香りだ。そして、このアイリスとカカオの2つが、白と茶色の絶妙なコントラストを見せる美しいフレグランス、それがディオールオムだ。

このトワレは、2005年、オリヴィエ・ポルジュによって作られ、メタルシリンダーボトルで発売された。現在、シャネルの専属調香師である彼の才能をいち早く見い出していたエディ・スリマンのセンスには、今さらながら脱帽する。現在の黒シリンダーボトルは、フランソワ・ドゥマシーによってリファインされたもの。全体に、過剰投与されたアイリスの加減をやや調整した構成に変化したようだ。このレビューも現行品のもの。

そんなディオールオムのトップは、まず暗くて低いアイリスの香りから始まる。くすんだ漆黒の苦み、アイリス特有の内省的な暗さだ。そこにパチュリの墨のような香り、ヴェチバーの土っぽさが主張してくる。ややシダーにも似たウッディのような香りも。それでも、全体的にスッキリしていて心地よいオープニング。

3分後、わずかにシャープなラベンダーのアロマが感じられるようになる。本来のトップの香りはここかも知れない。最初のウッディからは香りが丸くなる。そして引き続き、アイリスの香りが続く。それがやがて、白く粉っぽく変化していくことを感じさせる予兆。

やがてわずかな甘さを伴って、暗かったアイリスが、白いパウダリーな香りに変わってくる。このミドルのアイリス香のコンポジションがとても心地いい。そして、そのドライでまろやかなパウダー香の下から、ほんのりビターな茶色の香りが広がってくることを感じる。それは、コクのあるカカオの香りとパチュリのコンボ。ときに、ビターショコラやココアパウダーの香りを彷彿させるような。

アイリスの熟成パウダー香とカカオ風味の割合は、7:3くらい。メンズの香りにありがちなラベンダーやウッディの重厚感、鼻につくスパイスのような感じがほとんどなく、ミドルは柔らかく上質な白粉系のフローラル香がメイン。ただ、人によりカカオ&パチュリの出方は異なるだろう。それこそ、チョコレート風味に出るか、ココアっぽくなるか、メンズっぽい苦みのあるウッディが出るか。それはやはり、自分の肌にのせて試してみるしかない。

このミドルが好きなら、ディオールオムは買いだ。なぜなら、ディオールオムは、この穏やかなパウダリーアイリスが、8時間以上も続くからだ。ラストとの境界は明瞭ではないものの、気が付くと、香り全体がさらに明るくなっていて、輝きを増した温かなムスキーで消失する。わずかにカカオやアンバーっぽい甘い香りをともないながら。

20代後半以上の男性や、シャープな身のこなし、穏やかながらも心に熱い思いを秘めた方などによく似合うと思う。同時に、女性っぽいフローラルに飽きた方、シャリマーの亜流みたいなオリエンタルに飽きた女性にも、このビターなアイリスの香りは好まれやすいようだ。同ディオールのボア・ダルジャンが好きな方にはかなりおすすめだ。

ディオールオムの前半は、暗い冬を思わせるアイリス&ココア。けれど、後半は、春のまばゆい日差しの中、コートを脱いで、軽やかな足取りで街を歩き始めるような明るいフローラルムスクに変わる。だんだんに明度と温度が増していくこの香りは、新しい季節を迎えて気分を上げていく、今のような時期にふさわしい香りかも知れない。

三寒四温。冬から春へ変わる頃、季節は行きつ戻りつしながら少しずつ進む。人の心もまた、同じように上がり下がりを繰り返して、少しずつ柔らかさとぬくもりを取り戻すのだろう。春の風に吹かれて洗われて。

美しいアイリスの白と、香ばしいカカオのブラウンカラーに彩られたミルクココアのコントラスト。ディオールオムに込められたのは、そんなひとときの安らぎと温かさ。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

426件中 46〜50件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済

doggyhonzawa さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・58歳
  • 肌質・・・乾燥肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・普通
  • 星座・・・山羊座
  • 血液型・・・O型
趣味
  • 読書
  • Twitter
  • 音楽鑑賞
  • 映画鑑賞
  • ブログ

もっとみる

自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

  • メンバーメールを送る