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ゲラン / ドゥーブル ヴァニーユ

ゲランゲランからのお知らせがあります

ドゥーブル ヴァニーユ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:100ml・49,500円 / 200ml・70,290円発売日:- (2021/9/1追加発売)

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6購入品

2021/12/4 13:49:43

女性におすすめしたいヴァニラ香水は?と聞かれたらこう答える。まずはゲランのスピリチューズ・ドゥーブル・ヴァニーユ(以下SDV)を試してみては?と。ただし賛否両論の多い香水ではある。好きな方は「最高のヴァニラ」と評するが、そうでない方はこんな風に言う。「木の香りしかしない」「ヴァニラが薄い」「値段が高い」(←それな)。

ドゥーブル・ヴァニーユ。「2倍のヴァニラ」という名の香り。ゲラン最高峰シリーズの香水で、価格も高いが人気もダントツの香り。ではなぜ評価が分かれるのか?

実は、SDVをつけた瞬間に立ちのぼる香りは2パターンある。ダークラムの洋酒っぽい香りが強く出るときと、鉛筆を削ったときの香りのようなシダーのウッディが主張してくるときだ。その混合比も日によって変わる。これは天然香料がふんだんに使われている証拠。だが、ここでウッディを感じる方には割と評価が低いようだ。

温かく酔わせるようなダークラムの香りと、冷たく内省的なシダーウッドの香りは、対比関係にある。それでもこの2つは、ほぼ同じ高さで香る印象だ。互いに拮抗しながら、絡み合うよう交互に現れる。さながらダブル香料トップといった感じ。

この2つの茶色い香料のせめぎあいは、静かながら顕著だ。日によってどちらが優位に出るかが異なる。その日の気温、体温、湿度、肌の状態等で、シダー優位orラム優位にふわふわ変わる。

まずここで「ヴァニラは?ヴァニラはいつくるの?」と思っている方は、肩すかしをくうだろう。実はこの香水、揮発の遅い天然ヴァニラを使用しているため、つけてしばらくしないと出ないからだ。

30分ほどすると、わずかにローズの片鱗が感じられるようになる。そこからはラムとシダーにとって変わるように、やっとヴァニラ香が立ちのぼってくる。

そしてこのヴァニラの香りは、確かにただものではない。

つけてしばらくして現れるヴァニラ。それはほんのりカラメル香が効いていて、クリーミーで、ラムのコクをまとった最上級のヴァニラだ。ただし、香り立ちは弱め。ふとしたときに鼻をくすぐる程度のまろやかさだ。合成ヴァニラの強さが好きな人は、ここでまたがっかりするかもしれない。だが、柔らかいベンゾインの甘さも伴ったヴァニラは、この作品でしか味わえないのでは?というくらい繊細できれいだ。そしてつける人の肌で香り立ちが変わる。だから、肌にのせたとき初めてその人のヴァニラ香になる。

ラストはラムとシダーの残香を残しながら優しくフェミニンなヴァニラで終息。時間は人にもよるが、6〜8時間ほどでドライダウン。

まとめると

SDVは、ラムとシダーのスパイラルトップから始まり、ゆっくりゆっくりヴァニラ香に変わってゆく熟成された香水だ。そのヴァニラは高級なれど、強くはない。バニリンを加えたとしても、とても2倍に増やした感じではない。一体どういうことなのか?そのヒントはこの作品名に隠されているように思う。

この香水の正式名称は「スピリチューズ・ドゥーブル・ヴァニーユ」だ。これを英訳すると次のようになる。

「Double Vanilla Spirit(ダブル・ヴァニラ・スピリット)」

英語の「スピリット」には、「アルコール(酒)」という意味と「魂・精神」といった複数の意味がある。だとするとこれは、一般的な「ヴァニラ2倍」という意味だけでなく、「ヴァニラの酒」という意味と「ヴァニラの精神」という意味、「2つ」をもたせた掛け言葉、ともとれる。

そうした視点から、ジャン=ポール・ゲラン、最後の作品となったSDVに込めた思いを想像してみる。

1つ。極上の天然ヴァニラには、ラム酒(スピリット)に似たファセットがある。それは合成香料のバニリン等で自然に出せるものではない。ゲランが独自に仕入れた最高級の天然ヴァニラにしか出せないものだというプライド。

1つ。ゲランにとってのヴァニラは、ゲルリナーデの根幹を成す重要な素材。その精神(スピリット)を忘れるな、という後進へのメッセージ。

この2つの「ヴァニラのスピリット」を込めた作品、という意味ではないだろうか。

別にそれが事実でなくてもいい。自分はそう受け取めた。4代にわたって香水帝国を築いてきたゲラン家の最後の調香師ジャン=ポール。彼がブランドの経営から退く際、言葉には言い表せぬ思いが多々あったことは推測に難くない。それらの思いが、この最後の作品の1つに注がれていたことは間違いないだろう。

スピリチューズ・ドゥーブル・ヴァニーユ。それは

あなたの肌にのせたとき、初めて完成する美しいヴァニラのお酒。いつまでもあなたの感性を刺激し続ける、ゲランのヴァニラの魂。

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シャネル / チャンス オー タンドゥル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

シャネル

チャンス オー タンドゥル オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:35ml・10,120円 / 50ml・14,520円 / 100ml・20,350円発売日:2010/2/19 (2018/1/5追加発売)

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6購入品

2016/12/4 12:34:54

心惹かれる人はいない。出会うきっかけも、時間も、気持ちの余裕もない。ちょっといいと思う人はいる。でも自分からは何もできない。待っているわけではないけど、仕事上の都合や今までの関係性がこわれたら困るから、愛想笑いや冗談しか言えない。

心惹かれる物はある。でも自分には縁のない物のようにも思う。使えるお金もそんなにない。大体自分に似合わない。ただただ、仕事や家事、育児などのToDoリストをこなすことに神経と体力をすり減らし、延々とルーティンを繰り返す日々。

今を生きる女性には、あらゆる面でリミッターが働いている。シャネルのチャンス・オー・タンドゥルは、そんな見えない縛りと真摯に向き合っている女性におすすめしたいフレグランスだ。ピンクのチャンスを上手に身にまとって街を歩く。それだけで、昨日までの自分には見えなかった景色や風に出会えるかも知れない。

チャンス。

チャンス・オー・タンドゥルは、2010年にシャネルから発売された、チャンスシリーズ3作目の作品。香調はフルーティ・フローラルで、前2作のシプレ調と比べると、柔らかく優しい印象。淡い桜色の液体は、ピンクのボックスと相まって、特に若い世代に強くアピールする。ただ、若い女性向きのガーリーな雰囲気というわけではない。全ての世代の女性につけてほしい、そんなブランドの願いが感じられるしっとりとした穏やかな香りだ。

シリーズ共通の円形ボトルは、正面から見ると、淡い液体色の向こう側に広がる風景がほんのり色づき、まるで夢や希望というフィルターを透かして見る未来のようにも思えて美しい。斜めから見ると、シルバーメタルのプレートが円形のボトル全体を包み込んでいて、大きな平打ちリングのようだ。半透明のスクウェアキャップは、さながらリングのセンターストーン。とても大きな指輪を思わせる。

そんなピンクのチャンスの香りは。

銀色のボタンをスプレーすると、一瞬、柑橘系の酸味と苦みが、アルコールの揮発と共にふわりと立ちのぼる。クレジットにはグレープフルーツとあるが、フルーツやフローラルと共に感じられるので、明確なエッジではない。

スッキリしたそのトップは、2分とせず落ち着き、とろけるようなフルーツの香りと、穏やかなフローラルが立ち上ってくる。これがミドルとなってしばらく肌の上にたたずむ。ここからがピンクのチャンスの真骨頂。

このフルーツ香はマルメロの香りだ。マルメロは、果肉が生食できないことと、寒冷地向きという特徴をもつため、市場にはあまり流通しない果実。だが、その黄色い洋ナシ様の大きな果実から発せられる香りは、ことのほか心を酔わせる。洋ナシのようなコクのある甘さの上に、リンゴの甘ずっぱさをミックスしたような、とてもスイートな香り。花梨(カリン)の優しい香りに近いと言えば、想像がつく方もいるだろう。

秋の陽によく熟れた鮮やかな黄色の果実、マルメロのしっとりとしたみずみずしい香り。そして、静かでほんのりクールな印象のヒヤシンスのノート。そこに、シャネル特有の可憐なジャスミンがミックスされ、果実と花のやわらかいブレンドが、かなり長く続く。

ラストは、クリーミーなベールがかかったホワイトムスクの香りに変わってゆく。どこにもスパイシーさや、とがった部分が感じられない。最初から最後まで、ボトル同様、ふんわりとまるい香りが続く。持続時間は8〜10時間程度。

ただ、香りは優しげなものの、拡散力は驚くほど強いので、付け方はとても注意が必要。ロールオンアトマイザーに移し替え、点で付けるようにしたり、うなじの髪の生え際につけて髪をかき上げたりすれば、ヘアミスト代わりにも使える。女性の髪からチャンス・オー・タンドゥルの香りがふわりと鼻をかすめてきたら、周囲の男は、心中穏やかではいられないだろう。

チャンス・オー・タンドゥル。それは大きな指輪の形のボトルに入った、淡いピンクのフレグランス。まるで、未来を見る大きなレンズのように、美しい桜色の液体を透かして見る世界は、昨日とは少しだけ違う彩りを日々の暮らしに添えてくれるだろう。

性別とか、年齢とか、見た目とか、そんなもので自分にリミッターをかけるのはナンセンスだ。この香りを知っている人生と、知らずに生きていく人生。それはどちらが幸運なのだろう?いつもシンプルにそれだけだ。自分に課しているあらゆる制限を解除できるのも、やはり自分自身だから。

ピンクのチャンス。それはありふれた日常を淡い桜色に上書きしてくれる魔法の指輪。「チャンスはいつも自分の中にある」いつもそう背中を押してくれるココからのメッセージ。

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ゲラン / ランスタン マジー オーデパルファン

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ランスタン マジー オーデパルファン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・9,350円発売日:2007/10/12

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2020/12/26 09:14:39

女性は、ある日突然天使になる。美しく変貌する。それは緩やかな変化ではない。「キレイになりたい」本気でそう思った瞬間、願いはかなう。美の女神は突然、天空から舞い降りる。

ゲランのランスタンマジーの香りを嗅いでいると、そんな戯れ言も信じたくなる。整形とか吸引とかそういうことだけではない。女性が本気で「美」を目指したとき、その心や体に起こる変化は本当に劇的だ。「これが自分?」と思えるほど美しくなることがある。そして世界が今まで以上に光輝く。ランスタンマジーの香りは、女性にこの上なく優しいパウダリームスクな銀の粉を振りかける。キラキラとまるで魔法のように。

ランスタンマジーは、香水帝国ゲランの転換期に香水開発ディレクターに就任したシルヴェーヌ・ドゥラクルト女史が、シムライズの女性調香師ランダ・ハマミと共に2007年に作ったオーデ・パルファム。香水作りの秘伝秘法が、ゲラン家出身の一人の男性調香師だけに託されてきたかつての伝統を打破し、チーム力と女性の力で作った香水として異色の作品。テーマは「女性の夢がかなう瞬間」。一時廃盤となったが、現在はビーボトルで復活している。30mlで税込9350円。

夢を現実にするともいわれる香水、ランスタンマジー。それはどんな香りなのか?

ランスタンマジーをスプレーする。その瞬間、肌の上に冷たい清涼感あるアニスの香りが広がる。アニスの香りはキッチンスパイスの八角そのもの。クールで知的な女性の印象。ただし冷たくはない。明るい酸味豊かなベルガモットが輝きを添えているからだ。スッと心に沁みこむスッキリ透明感あるトップは、洗練されたフェミニンを感じさせる。

5分後、シトラスとスパイスが消失するにつれ、やや明るいフローラルグリーンな香りがしてくる。クレジットによれば、フリージアの黄色い花の部分だろうか。すぐにミモザやヘリオトロープ系の甘くパウダリーな花粉っぽい香りが重なってくる。とても重層的でロマンティックな雰囲気になる。甘くかぐわしい黄色と白の香り。アニスのスッとする清涼感も残しつつ、華やかさが徐々に増してくる。

10分後、香りはまた変わる。フローラルの核が、温かみあるドライなスパイシーカーネーションになってくる。そこに、キリッと苦いテイストがどんどん主張してくる。これはビターアーモンドの香りだ。温度は上昇し、情熱的に温かみを増してくる。まるで何かに夢中になって、一途にそれを追いかけているようなスパイシーフローラル。それは仕事?恋?それとも自分磨きだろうか。

そして。ランスタンマジーはこのあとがすごい。つけて20分後、はっきり驚く。

黄色いミモザの甘い花粉香、赤いカーネーションのスパイシーフローラル。それらが減衰するにつれ、とんでもなく優しく、ふんわり柔らかい白いパウダリー香が出現する。それはもう、お風呂上がりの赤ちゃんの肌に、ふわふわのパフでぱふぱふしてあげるベビーパウダーの香りそのものかと思うほど。この「ふわふわのパフでぱふぱふ感」が悶絶級。ドラクエのぱふぱふ娘も真っ青。(←は?)これはもう赤ちゃんの香りというよりママの香り。母でもお母さんでもない。どこまでも優しく柔らかな愛に満ちた理想のママの匂い。ママパウダー。

ランスタンマジーは、このミドルのむせ返るパウダリーな香りが真骨頂。そこまでの変化も劇的ですばらしいが、ミドルから訪れる官能的な、苦いアーモンド&甘いパウダリーに撃沈する香り。アーモンド香は通常トップで出てくる苦みなのでラストに出てくるのは面白い。これがこの香水で開発したとされている「ムスキナーデ」のブレンドだろう。アーモンドウッドとパウダリーホワイトムスク。この泣けるパウダリー香が、8〜9時間ほども続く。

これは本当に女性が女性のために創った香りだと思う。ママと赤ちゃん。どんなに偏屈に育った人でさえ、この生まれたばかりの頃のミルキーでシルキーなパウダリー香は原初の匂い記憶として心の奥底に刻みこまれているもの。だから、男性もこの香りには果てしない郷愁を覚えてしまうだろう。これは安心・安全と愛情に包まれていた頃の、まっさらな繭の記憶の香りだ。

どんなにあきらめてきただろう。仕方ないって。どんなに髪で顔を隠してきただろう。人に笑われたくなくて。そんな人はランスタンマジーの香りに包まれるといい。この香りはいつもあなたを抱きしめてくる。誰よりも愛情深く、どこまでも優しく。「あなたはとてもかわいい。大好き。もっともっときれいになれるよ。」ママの笑顔のように。

その瞬間。銀色の濃密なパウダーがあなたを包む。転生の魔法。運命の瞬間が訪れ、空から女神が微笑む。

ランスタンマジー、光の粉に包まれて。女性は美しい天使になる。

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ディオール / ボア ダルジャン

ディオールディオールからのお知らせがあります

ボア ダルジャン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:-

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2015/7/29 16:13:16

「125mlで3万円の香水、あなたはどう思いますか?」そう聞かれたら、どう答えるだろう。「高い」「買えない」「いらない」の3拍子に始まり、「スキンケアみたいに肌に効果のあるものならまだしも」「600mlで800円の高級柔軟剤使ってるから必要ない」などなど、いろんな声が聞こえてきそう。わかる。自分もそう思っていた。ボア・ダルジャンのような香りに出会うまでは。

この香りに出会ったとき、またしても撃沈した。「またそんな高い香りか。購入はないな」って思ってたのに、出会ったとたん、「あ、欲しい・・・」と、ひと嗅ぎ惚れしてしまった。人って不思議な生き物だ。嫌いな香りだと、たとえ100円でも買わないのに、本当に欲しいと思うと、たとえ3万円以上の香水でも、そのお金をどう工面しようかと考えてしまうのだから。頼むから25mlで6000円にしてくれ、ディオール。←切実だな

ボア・ダルジャンは、2004年にディオールから発売された3種類のユニセックス・フレグランスのうちの1つだ。これらは、コロン・ブランシュ(白のコロン)、オー・ノワール(黒の水)、そして、ボア・ダルジャン(銀の木)というラインナップで、3つの色をキーワードにして創造されたオー・デ・パルファン。中でもボア・ダルジャンは、高価なアイリスをふんだんに使った香りとして、発売当時からヨーロッパで一番人気だったという。現在の物は、ラ・コレクシオン・プリヴェに選ばれた際、ウッディを抑えてリファインされたものだ。

そんな高級な香りの展開を詳しく見ると。

トップから土っぽさのあるパチュリが鼻をくすぐる。その下でほの暗いアイリスの香り。だが、これまで味わったアイリスとはどこか違う。ほこりっぽさというか、くすんだ感じというか、通常アイリス(イリス・オリス)の根茎から感じられるそういった雰囲気が少ない。スミレの香気でもなく、白い穏やかな花の印象。そして同時に、高いところで香木を炊いたような香りがじんわりと鳴り響く。これがイエメン産のインセンスだろうか。そんなオリエンタル風も感じられる温かみのあるトップ。ほんのりスパイシー。

5分とせず、ミルラの酸っぱさが感じられてくる。鼻の奥に軽く刺激を残すような、発酵した樹脂のような香り。そして、気がつくと、アイリスの香りが美しいパウダリーなテイストに変わってくるのを感じる。あー、なにこれ。これが噂の「フィレンツェから送られてくるディオール秘蔵のアイリス」の香りだろうか?それは、これまでの「暗いくぐもった香り」というアイリスのイメージを大きくくつがえした。

これは粉だ。美しく柔らかい銀色の粉。白粉ほど石けんぽい香りでなく、小麦粉ほど生っぽくもない。例えるならそれは、月光に照らされた夜の海の波光。静かで,キラキラと明滅するかのような、妙なるパウダーの香り。

やがて、3〜4時間もすると、微細なパウダーのきらめきがフェードアウトし、洋酒っぽい柔らかいレザーテイスト、ほんのり甘いハニー、そして、ムスクのソーピーな雰囲気に落ち着き、ドライダウン。ムスクは苦手という方も、この不思議な透明感あるラストなら、あまり気にならないかもしれない。

全体の印象としては、まろやかなお香とアイリス。そのエッジを際立たせるミルラとパチュリ。しめくくりは、甘くおだやかなハニー&レザー、ムスクで消えていくイメージ。香りのピラミッドでいうと、おだやかな変化だし、終始アイリスのノスタルジックで安らぎに満ちた香りが持続する印象。

1日の時間帯で言うなら、トワイライトからナイトタイムがおすすめ。厳しい季節である夏であっても、気温が落ち着く夕暮れ以降の時間なら、この香りはとても心地よいリラグゼーションを与えてくれると思う。1日の終わり、好きな音楽や美味しいお酒、世界の扉を開いてくれる小説や映画、そうしたものに心を寄せてまどろむひととき。そんなクロージング・タイムに、この香りは似つかわしい。誰にも邪魔されない自分だけの時間を楽しみたいとき、この銀色のパウダー香は、ゆったりくつろぐ心に寄り添いながら、時の澱を静かに積もらせていくだろう。

夏の夜半。開けた窓の外、ぬるびた風が運んでくるのは、木々の葉をあたためた生っぽさ。日中、蒸散した森の水分が、未だムンとした気配を漂わせている。星々のまたたき。宝石箱を散らかしたような遠くの街の灯り。かすかに響いてくる電車の音。汗をかいたグラスの中で、氷がカランと揺れる音。部屋の明かりを少しトーンダウンして、月明かりのベランダに出てみる。

月はレモンの形。煌々と下界を銀色に照らし出している。そのほの明るい水底のような世界に、一人でいる切なさと恍惚。少しべたつく夜気に立ちのぼる、ボワ・ダルジャンの香り。それは天上のアイリス。

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Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) / ウード & ベルガモット コロン インテンス

Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン)

ウード & ベルガモット コロン インテンス

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:50ml・20,350円 / 100ml・28,270円発売日:2013/10/18 (2022/12/26追加発売)

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2014/12/31 22:21:13

「愛の経験は、知らなければなくても済ませられるが、一度知ってしまうと、以後それなしでは生きてゆけない」作家である稲垣足穂は、こんな言葉を遺している。

彼のエッセイ「A感覚とV感覚」などに見られるエロティシズムは、一元的エロス論と評されたが、ジョー・マローンの香りは、「フレッシュ」「ウォーム」という要素から成る二元論のエロス(自己愛)だ。

通常ジョー・マローンの二元論的なエロスは、香りをコンバイニングすることにより、「フレッシュ」か「ウォーム」のどちらかに傾く。しかし、調香師クリスティン・ナジェルとのコラボで生まれたコロン・インテンスシリーズは、1本の中でフレッシュとウォームが相克し合っているように思う。

このウード&ベルガモットに関しては、ウード:ベルガモットの比率は、9:1ぐらいで、明らかにウッディの香りが強く主張しているように思う。ベルガモットやレモン系のフレッシュ・シトラスは、ウッディの香りの周りを皮膜のようにおおっている程度かと。

立ち上がり。
レモンやベルガモット系の爽やかな、けれどとても軽い酸味が広がる下で、すっきりしたハニーのような甘みが感じられる。そして、そのすっきりした感じは、かん高い木の香りを含んでいる様子だ。これがウードの香り?そう思って調べる。そして愕然とする。

ウードとは、あってなきがごとき幻の香り。希少な木から樹脂が染み出し、それが付着したまま朽ちて崩れ落ち、泥土の中で何十年もうずもれたことで、土中のバクテリアによって変質して化石化し、芳香を帯びたものを言うようだ。これにより、本来比重が軽く水に浮くはずの木片は、樹脂の付着と木質の変化により、水中に入れても沈むほどの比重となる。これがウードの日本語である「沈香(じんこう)」、沈水香木だ。

香木といえば、サンダルウッド(白檀)はよく知られている。白檀はそれだけでも芳香を感じられるが、この沈香は、熱を加えることで初めて得も言われぬ芳香が漂うという。香炉を用いて一定の作法のもとに行う香道。そこで扱われる最高の香木が沈香であり、さらにその沈香の中でも、ベトナムのごく一部でしか産出されない最高峰の香木(樹脂)を「伽羅(きゃら)」というのだそうだ。調べたら、たった1gの伽羅の木片で2万円以上もするらしい。まさに純金に勝るとも劣らない価値。おそるべし、伽羅。←単に線香の種類だと思ってたし。

ミドル。
つけて5分もしないうちに、香りはすっかり、ウッディ香一色となる印象。だが、このすっきり感。優しい甘さ、そしてほのかな酸味、墨の香りのようなややスモーキーなコク。これらは気持ちを落ち着け、そしておだやかな集中力を授けてくれるようだ。ジョー・マローンの他のコロン同様、全体に透明感のある淡い香り方ではあるが、こんなに表情豊かで優しいウッディ香は珍しい。

それもそのはず。香道の資料によると、昔の日本人は、この沈香の香りに5つの味、甘さ、辛さ、苦さ、潮はゆさ、酸っぱさがあると見立てたようだ。これを五味という。つまり、この希少なウードを再現した香りは、この五味をバランスよく含ませることで、馥郁たる表情を見せているのだろう。

ラストは早い。ジョー・マローンだから。タイムリミットが1時間前後。そして、このあたりになると、当然シトラスのベールは感じられず、五味あふれるウッディな香りに、シダーっぽい清涼感を少し感じながら減衰する。全体にトップからラストまで大きな変化は感じられず、木の蜜のような優しい甘みと酸味、そして固い木の枝のような香り、墨のような深い落ち着いたベース。これらが混然一体となって静かに展開する印象。

値段は高い。そういう意味でバシャバシャ使える庶民の香りではない。自分はハンカチにプッシュして、スーツのポケットに入れて楽しむことの方が多い。ストレスを感じたとき、ハンカチを口元にもっていくだけで穏やかなウッディ香に癒され、心を落ち着けることができる。ハンカチだと、この淡い香りももちがよく、ずっと長く楽しめていい。

テーマとしては中東のインセンス、ということだが、自分はなぜか、山あいの武家の庵を思い浮かべる。いろり端の木のはじける香り。黒ずんだ天井にしみついた木々の油の香り、そして、焚きしめたお香と書棚の紙の香り。まるで小説「蜩の記」の舞台のような。

心落ち着く「大和」の原風景を思い浮かべると、「香りは、神仏の食べ物」という言葉が心によぎる。そして、稲垣足穂の言葉にそっとつたない思いが重なる。

「美しい香りを身にまとうことは、愛の経験に似ている。それを知らずとも生きていくことはできるが、一度知ってしまうと、以後それなしでは生きていけない」

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プロフィール
  • 年齢・・・58歳
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  • 血液型・・・O型
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自己紹介

いつもご覧いただき、ありがとうございます。香水について細々とレビューしています。 最近はTwitterでも時折つぶやいています。香水好きな方がた… 続きをみる

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