doggyhonzawaさんのキャロン / サクレへのクチコミ |
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 58歳
- 乾燥肌
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2025/1/10 15:45:41
神秘的なキリストの香りが織りなす永遠の灯。
キャロンのパルファム・サクレEau de Parfumは、1990年に誕生したスパイシーオリエンタルの名作だ。「サクレ」の名が示すのは「神聖な香り」。この香水はフランスの老舗ブランド、キャロンが誇る逸品であり、その誕生には特別なストーリーがある。
キャロンとして初めて外部調香師に委託されたこの作品は、構想に9年もの歳月を費やして完成された。調香師ジャン・ピエール・ベトゥア−ルは、この香りを通じて「神聖さと情熱の融合」を表現しようとしたとされている。
彼の手によって創り出されたこの香水は、伝統的なフレンチパルファムの美学を保ちながらも、スパイシーで官能的なオリエンタル調を取り入れた革新的な作品として、今も高く評価されている。
そんな「神聖な香り」パルファム・サクレとは、いったいどんな香りか?
パルファム・サクレのトップノートは、ブラックペッパーやカルダモン、マンダリンオレンジの鮮烈なスパイスと柑橘が絡み合い、まるで冬の夜空に輝く星々のように煌めく。心を一瞬で掴むこの印象は、まるで新たな冒険への扉を開くかのようだ。
すぐに訪れるミドルノートでは、ローズとジャスミンが優雅に舞い上がり、そこにクローブやシナモンが温かみを添える。そして強烈なほどに酸味を帯びた樹脂の香りが下からローズを包んでくる。ミルラだ。植物から採取した茶色の樹脂の塊にバラの花束を挿したように、強い酸味とスパイシーな芳香をもったミルラがフローラルを包み込んでゆく。かつてミイラの防腐処理に用いられたとされるミルラ。三賢人のキリストへの贈り物の1つとしても名高い没薬、それこそがミルラの神聖な香りだ。
このミドルは、力強い女性らしさを感じさせる。ローズの気高さとミルラの神聖さを両軸としながら、スパイスがその間をつなぎ、各香料が見事なバランスを呈している。
やがてフローラルが静かに消える頃、最後に訪れるベースノートでは、ミルラに乾いた苦みが感じられてきて神秘的な煙感をもたらす。かなりドライなインセンス香になってくる。そこにムスクとウッディノートがじわりと出てきて、長く続く余韻を生み出す。
持続性は体温高めの自分の肌で大体3〜4時間程度。トップからミドルは嵐のように各香料がめまぐるしく入れ替わるが、その後は比較的穏やかに終息してゆく。香り全体は控えめながらも、樹脂の酸味とスパイシーさが長続きするので、キリっとした確かな印象を与える。他のオリエンタル系香水と比べると重すぎず、それでいて樹脂香の十分な深みが味わえるEDPだと思う。
この香水を纏うと、中世ヨーロッパの荘厳な教会やキャンドルライトが揺れる静かな夜の風景が眼前に浮かび上がる。深紅のベルベットカーテンが揺れる部屋。大切な人と語らうひととき。あるいは冬の日没後、青白い雪原に立つ孤高の木々。その黒々とした枝の先に、美しい星々がまたたいている。そんな冷たくて暖かい情景に、どこか「永遠」を感じるサクレEDPの香りが似つかわしい。
この香水を一言で表現するならば、「心に灯る神聖な灯」だ。その神秘的で官能的な香りは、どこまでも自分の心と向き合う真摯さを体験させてくれる。冷え冷えとした教会の奥、暗がりの中にたたずむ神の子の姿を、オレンジ色のキャンドルの灯が照らしている。どこからともなく、焚きしめたお香の香りが漂ってくる。
愛と慈しみ、それと同じだけの後悔と懺悔を心のおもりにして、人はひざまづく。そして
神の御前に神聖な香りの花束を捧ぐ。とこしえに灯をともすパルファムサクレの香りを。
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