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doggyhonzawaさん
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ルイ・ヴィトン / クールバタン

ルイ・ヴィトン

クールバタン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2020/11/28 13:34:43

世界って、たった一人の人と出会うだけでこんなにもキレイに見えるんだ。

西に傾いた太陽がキラキラと輝いている。予約してたホテルのシングルはキャンセルして、どこか今宵の宿を探そう。昨日までは自分一人だった。でもどうやら今夜は、そうならない。

旅先で出会った二人。どちらも一人旅だった。出会った瞬間びっくりした。見つめ合ったまま、目が離せなくなった。「え?」「え?」と言いながら。まるで小学校の頃好きだった子と何十年ぶりに会ったかのように。二人同時に。

キョトンとした。それから笑いが止まらなくなった。言葉なんてなくても、同じ思いだってことが、はっきり分かった。一瞬で惹かれ合い、お互い目だけを見つめてた。瞳に心が映っていた。

この人かもしれない。この人を探してたのかもしれない。

涙が出そうなほど笑った。信じらんない。なんで今まであたし、あんなに悩んだり泣いたりしてきたんだろう。大丈夫、ぼくもそうだったよ。ほんとそう。そんな言葉が一瞬のうちに目と表情でわかったから。笑ってるのに涙がぽろぽろこぼれて仕方なかった。この年でそんな人に出会えるなんて思いもしなかった。

世界は本当に美しく見えるようになる。たった一人の素敵な人との出会いで。

2019年にリリースされたルイ・ヴィトンのクール・バタンは、そんな出会いの「高鳴る感情」にフォーカスして創られた香水だ。「旅・レザー・女性」という3つのキーワードを大事に作られてきたヴィトンの香水も、この作品で10作目。これらをウィメンズコレクションと呼ぶなら、クールバタンはその最後を飾る集大成的作品という位置づけだ。では、いったいどんな香りなのか?

クールバタンをスプレーする。その瞬間、最初に感じられるのは、意外にも茶色いレザーの香りだ。どのサイトやレビューを見ても「トップは洋ナシ」と書いてあるが、ステレオタイプを真に受けてはいけない。香りはいつだって、自分の肌と自分の感覚で確かめるべきだ。

3分すると、レザーの上にふんわりとフルーティーさが出てくる。ほんのり甘くみずみずしい。クレジットによると洋ナシの香りのようだ。だが嗅いだ瞬間、洋ナシだと分かるほどではない。もしそう分かるなら、よほど鼻が利いて香料を知っているか、調香じたいがチグハグかのどちらかだろう。レザーっぽいノートとフルーティーノートはシームレスに混じり合っていて、自分には洋ナシとは判別しにくい。それだけ調香バランスがよい。本当に腕のいい調香師は、各香料が判別できないようなめらかにブレンドするものだ。

女は革の旅行カバンをそっと置いた。出会ったばかりの男性から、子どもの頃好きだったフルーツタルトのような、どこか懐かしく甘い匂いがしていた。

付けてから15分もすると、クールバタンは、マニッシュなウッディに変わってくる。暗い森、スパイシーな木の香りや土の香りを思わせるパチュリとモス系の香りが主張を増してくる。それはシプレの骨格ではあるけれど、トップにベルガモットがない分、じんわり暗く落ち着いたベース香に感じられてくる。

これまでの旅の思い出をゆっくりテーブルで語り合う男と女。女のフルーティーフローラルの香りに、男のスパイシーウッディが時折重なる。意気投合した二人は、再びカバンを持って共に歩き始める。知らず知らず2人の影が寄り添い、香りの引き波が重なり合う。

付けてから30分。クールバタンのミドルはとても深い安らぎに満ちた香りになる。しっとり柔らかなフルーティフローラルに、乾いたスパイシーパチュリとモスが調和して、甘くムスキーな香りに変わる。いつしか二人の距離は縮まり、手と手が自然に重なり合う。

やがてクールバタンは静かにドライダウンを迎える。出会ってから5〜6時間。きらめくフルーティーさとほの暗いパチュリが混じり合ったまま、光と闇の狭間に。一つの旅の終わりに。

長い旅の果てに見るもの。それは美しい夕暮れ。女は思う。不思議だ。隣で一緒に見つめている人がいる。きっとこれが旅の終わり。そして、新たな旅は始まるのだろうか?

2人で歩くことの楽しさ、けれど同時に味わうであろう煩わしさ。それを今から受け入れるには、歳を取りすぎたようにも思う。けれど。

女は沈む夕日に見る。二人で歩きたかったわけじゃない。けれど、二人で旅するのもいいかもしれない。そう思える相手に出会えたこと。それが旅のエピローグ。

冷静に構えているはずなのに、どこかはやる心。美しいペアーゴールドの夕日が沈むとき。そっと見上げると、優しく見つめ返す瞳がそこにあった。高鳴る鼓動。

新たな人生の始まりに。あなたと出会えた喜び。クールバタン。

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