doggyhonzawaさんのELLA K / サガノの詩へのクチコミ |
---|
- doggyhonzawaさん 認証済
-
- 54歳
- 乾燥肌
- クチコミ投稿426件
-
[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)・香水・フレグランス(メンズ)・香水・フレグランス(その他)]
税込価格:-発売日:-
2020/11/21 14:02:00
エラケイの「サガノの詩」は、京都の嵐山にある鬱蒼とした竹林のイメージから創られた香水だ。
見渡す限り、青々とした数万本の竹。それらが天に向かって真っ直ぐにそそり立つ姿はどこか幻想的ですらある。その竹林の間を縫うように整備された遊歩道は「竹林の小径」と名付けられ、京都観光の中でもとりわけ人気のスポットとなっている。
風情ある茶色の小柴垣が両側に並ぶ竹林の小径に入ると、そこだけスッと空気が冷んやりするような、どこか鏡合わせの異空間に迷い込んだような不思議な雰囲気が味わえる。20m以上ある孟宗竹の先端を見上げると、幾重にも連なって空に向かう緑の柱の上空で、笹の葉が重なり合って空を覆い、陽の光を遮る緑の天井となっていて目眩がしそうになる。その巨大な緑の吹き抜け空間に佇んでいると、異世界の入口というのはもしかしたらこんな場所なのかもしれない、と思う。
サガノの詩を創った調香師ソニア・コンスタンもこの小径を歩いたのだろうか?エラケイのサイトにはサガノの詩のイメージボードが次のように紹介されている。
「遠くの地で、優しい緑の葉にうずもれて、目を閉じる。荘厳な竹の息遣いを感じる。竹の葉が空高く、太陽を覆うように茂り、こずえがゆっくりと左右に揺れて、風と共に私の魂を運んでいく。私のうなじに感じるあなたのかすかな息遣い。」
世界最大の香料会社ジボダンのパフューマーであるソニア・コンスタンが展開するエラケイは、「旅」を通して得た世界各地の自然や文化の息遣いを、女性調香師らしい柔らかく透明感ある香水作品に投影することで近年人気を博している。では、日本の京都、嵐山の竹林のイメージから創られたサガノの詩は、どんな香りだろうか?
ゴールドメタリックのキャップを取ってサガノの詩をスプレーする。その瞬間、まず立ち上るのは春の陽光を思わせるキラリとしたレモンの香りだ。ただレモンの香りの奥に独特の快い黄色い苦味がある。これはユズだろうか。グレープフルーツ香料の苦味にも似ている。
このトップのシトラスの一陣の風が吹いた後には、不思議な匂いが浮かび上がってくる。1つはやや生青い感じのグリーンな香りだ。メロンやキューカンバーを思わせる瓜系の匂いにグリーンなエッジが効いたような雰囲気。そして同時に立ち上ってくるのは、ミントやユーカリが呈する冷たくて清涼感あるノート。この2つが二重唱のように出てきて、まさに割いたばかりの青竹の匂いのように広がってくる。
5分ほどすると、ほんのり甘いジャスミン様のフローラルがわずかに出てきて生っぽい青竹の匂いにフェミニンな要素を添える。トップから感じられるユズ独特の黄色い苦味は上の方でまだ輝いていて、竹の青い香りをキリッと引き締めている。してみると確かにユズ香の使い方は納得がいく。日本古来の香りであり、同時に竹林の上空から差す木漏れ日の眩い陽光をも表しているのだろう。日本が好きなソニアならではの好手というべきか。
そしてその後はずっとこの3つの香りが穏やかに続いていく。ユズのビターシトラス、青竹の野菜っぽいみずみずしいアクアティック&グリーン、そして香水らしい華やかさをプラスするジャスミン系香料。これらがしっとり穏やかに、それでいてノーブルな気配を漂わせながら4〜6時間ほど続いてドライダウン。ラストもそれほど変化しないまま消えてゆく。
全体的に見ると、とてもナチュラルで洗練された透明感ある青竹の香り、といったイメージの香水。系統で言えばグリーン&アクアティックな感じで、ユズの小粒な酸味と苦味を添えた緑茶的な雰囲気も味わえる。
竹林を風が渡る。上空の笹の葉が静かに揺れて竹の枝をしならせ、昼なお暗い竹林にサラサラと音が鳴る。遠く近く、鳥の鳴く声がする。そこに緑の葉からこぼれた木漏れ日が、何条もの光線となって天使の梯子のように地面に降り注ぐ。
そのとき、不意に青竹の匂いが濃度を上げて鼻をかすめる。太陽を透かした竹の葉のざわめきと鳥たちの歌が聞こえる。
それはサガノの詩。風にそよぐ竹林の青く秘めやかな囁き。
- 使用した商品
- 現品
- 購入品