doggyhonzawaさんのイッセイ ミヤケ パルファム / ロードゥ イッセイ フローラル オードトワレへのクチコミ |
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- doggyhonzawaさん 認証済
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- 53歳
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2019/5/17 22:44:16
バラは早朝がいい。花が今まさに咲かんとするつぼみの奥、美しく高貴なバラの香りが静かにそのときを待っている。そんな早朝のバラのつぼみをイメージして作られた香水がある。イッセイミヤケパルファムから2011年にリリースされたロードゥイッセイ・フローラルだ。
ロードゥイッセイ・フローラル、名前は凡庸だが調香師は折り紙つきだ。なぜならアクアティックノートを一躍世界に広めた天才ジャック・キャバリエの名作を、どんなクライアントのこ難しい要望でもあっという間に香りにして提案してしまう魔術師、アルベルト・モリヤスがチューンナップした作品だからだ。
オリジナルと同じ「エッフェル塔にかかった満月」ボトルに、淡いフロストピンクのカラーが美しい。いかにもローズの香水を思わせる。
ロードゥイッセイフローラルをプッシュする。その瞬間、透き通った早朝の冷たい空気を胸いっぱい吸い込んだような香りがする。すぐさまその下から、今まさに花開こうとする薔薇の香りが広がってくる。早朝の薔薇園。空気はまだひんやりとしていて、薔薇は緑の葉のいたるところに玉のようなしずくをのせている。凛とした空気。細かい霧のような水の粒が風にそよいで七色の綾を成す。幾重にも重なった薔薇の花弁が、一枚一枚そのヴェールを開き始める。めくるめく陶酔のフルーティー、みずみずしい薔薇の香りがあたりに立ちこめる。
いい香りだ。素直にそう思う。
冷たい朝の空気感。ひとさじのメロン果汁。淡くフルーティーなピンクの薔薇の蜜。この3つの匂いが互いに境界を溶かし合い、白〜ピンクへの美しい香りのグラデーションを見せている。うっとりするような柔らかくフルーティーなローズ、その背後にはロードゥイッセイ独特のアクアティックノートが清らかに流れている。
トップからミドルは大きく変化はない。出力を弱めにしたロードゥイッセイのアクアティックベースに穏やかなピンクのローズ香、そしてやや甘くふくよかな別のフローラルが感じられてくる。
構成をみると、ミドルでバラの香りを支えているのはイエロージンジャーリリーと書いてある。ふんわり甘いエキゾティックな香りが出ているのでこのノートだろう。
もともとオリジナルのロードゥイッセイは穏やかなピオニーのノートにツンとした濃厚なユリの花粉のようなアクセントを効かせているので実はとても強い香り立ちだ。だが、このフローラルの方はそのユリやピオニーの香りをできるだけおさえて、朝の透明感、みずみずしさを際立たせている。そのため、2段階くらいライトな仕上がり。このアクアティックな風合は絶妙だ。瓜系は苦手という方もあまり気にならないのではないかというくらいあっさりとした水系の香り。
付けてから2時間ほどでバラとイエロージンジャーリリーの香りはうすれてくる。あとに残るのはやや高音のホワイトムスクだ。構成にはホワイトウッドと書いてあるけれど、ほぼ間違いない。オリジナルは濃厚なユリの香りがかなり長く続いてその後にアンバー系の甘さと樹脂っぽさが残るけれど、こちらはスッキリとムスクでフェイドアウト。流石にクレオパトラの昔からバラとムスクは相性がいいと知られているだけに、自然な感じでわずかな甘さを伴って消えてゆく。
全体的にオリジナルよりも出力が弱めな分、強い香りや複雑な香りが苦手な方におすすめしたいシンプルなフローラルムスクといった印象。それでもローズ&ジンジャーリリーを支えるアクアティックは、まさにロードゥイッセイ独特の香り。はっきり仲間だと分かる。そういう意味ではとても汎用性が高い香り。使いどころをあれこれ悩まず、気軽につけやすいフェミニンなローズ香に仕上がっていると思う。現在イッセイミヤケパルファムのサイトにはこちらは掲載されておらず、近年出たピュアシリーズしかないところを見ると既に廃盤になっているかも知れない。ネットでは50mlが9000円から12000円前後で入手できる。
5月下旬から6月は各地で薔薇が見頃を迎えるシーズン。有名薔薇園では早朝の薔薇のすばらしさを味わってもらうために、この時期の土日だけ朝6時から庭園の門を開いているところもあるという。
日が昇る前の青い時間、しっとり濡れた庭園の空気。静かに静かに花弁がめくれて花開くとき、妙なる芳香があたり一面にバラ色の霧をたなびかせることだろう。
ロードゥイッセイ・フローラルはそんな薔薇の香り。早朝の薔薇園でイッセイに咲いたピュアなアクアティックローズ。
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