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doggyhonzawaさん
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ペンハリガン / オレンジ ブロッサム オードトワレ

ペンハリガン

オレンジ ブロッサム オードトワレ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:30ml・13,530円 / 100ml・25,630円発売日:-

4購入品

2016/6/18 15:10:04

ふと、オレンジの花の香りが鼻をかすめる。誰かオレンジティーを飲んでいるのだろうか?そう思ってあたりを見渡すが、曇り空の下、瀟洒な庭園には、薔薇の葉の青い匂いがするばかりだ。今頃、スペインやイタリアでは、オレンジの実がたわわに実っている頃だろう。そう思いながら、イングリッシュローズの咲き乱れる庭をゆっくりと散歩する。不意に、雲間から強烈な日差しが切れこみ、あたりをまばゆく照らす。その温かい光の中、しばし、異国の風景を思い、目を細めてまどろむ。

イギリスで作られた「オレンジ・ブロッサム」という名の香り。そこから、こんなイメージが思い浮かぶ。

ペンハリガンのオレンジ・ブロッサムは、この「オレンジの花」という、どストライクなネーミングで、1976年に発売された女性用のオードトワレだ。一時廃盤となったものの、近年、巨匠ベルトラン・ドゥショフールが手を加え、かつての作品を復活させる「アンソロジー」シリーズの中の1本として再登場した香りだ。

だが、そのネーミングとは裏腹に、このオーデ・トワレは、あまりオレンジの花の香りがしない。では一体、何の香りがするのか?

このフレグランスの香りの特徴は、ひとえに「抑制」という言葉に集約される。「オレンジの花」と言いながら、その香りはとても曖昧だ。代わりにずっと香り続けるのは、穏やかなローズと、そこにかかるヴェールのようなアルデハイド系の香りだ。

オレンジ・ブロッサムのトップは、ややスパイシーに感じられるオレンジの花の香りで始まる。ネロリはビターオレンジの花の香りだけれど、まさにビター。襟を立ててシャキッとしたくなるようなフローラル香だ。ペッパーやカルダモンが背後で効いている。

そして、5分とせずに、スパイシーな雰囲気は和らぎ、同時にオレンジフラワーのふんわりとした香りも薄らいでくる。透明感のある、けれども何だか特徴のない香りになる。ある種のアルデハイドの香りだろうか。その透明なワックスっぽい香りが全体に広がり、まるで、真空パックした香りといった感じになってくる。そして、その下からひっそりとローズの香りがしてきて、さながらロウのような香り&ローズといった印象。拡散力は弱めだ。この香りがミドルで、ここから1〜2時間、穏やかに香り続ける。とても淡いミドルだ。

ラストはそのまま減衰していくイメージ。ウッディなベースも感じられ、かなりマニッシュ。透明なヴェールがかかった控えめローズが、ややパウダリーなムスク香と相まって静かに消えていく。ほんのりと温かみのあるラストは、時折ヴァニラやクマリンのような甘さが感じられる。

本品に添えられている英語の解説には、「日陰から陽だまりへ一歩踏み出したときの明るさ」といった言葉が見受けられるが、グレイの空が多いイギリスにあって、自分にはむしろ、晴れでも雨でもない「曇り空の曖昧さ」を感じさせるフレグランスのように感じる。突き抜けないシトラス。透明なヴェールがかけられたオレンジフラワーの香りが、すぐに消えてローズに変わり、それすらも、ひっそりと目立たずに消えてゆく。何だかあまりに遠慮や抑制が強く出ているように感じられ、アヴァンギャルドな香りを作り続けてきたベルトランの手による物とは思えないくらいだ。

良い点としては、この香りの曖昧さは、汎用性の高さと言い換えられる点が挙げられる。ビジネスシーンで使えるのはもちろん、用途のTPOでタブーが少ない部類の1本と言えるだろう。また、季節と時間を選ばない点もメリットだ。抑制がきいたフレグランスは、使い方全般に余計な気遣いがいらないものだ。好きな時に好きなだけつけても、周囲に迷惑をかけにくいと思う。これは、きつい香りにうるさい日本では重要なポイントと言っていいだろう。

逆に残念な点としては、ネーミングと香りの落差が大きいという点に尽きるだろう。ネロリの香りを求めてこの作品を手に取った人は、かなりの割合で首をかしげると思う。オレンジの花は一瞬だし、ワックスっぽいし、ミドルはローズだし。全体に香りがあいまいすぎる。この香りに2万円以上払うと考えたとき、「それ相応の価格」と思えるかどうかがポイントだろう。

かぐわしい紅茶、咲き誇るローズ。伝統と格式を重んじる紳士の国、イギリス。暖かい国に思いをはせ、かの地に咲くオレンジのふくよかな花の香を思い描きつつ、されど、どこまでも自分たちの矜持はくずさない紳士と淑女たち。曇り空の庭園。雲間に思い描く南国の日差し。

ペンハリガンのオレンジ・ブラッサムは、そんな彼らの、スクウェアなたたずまいと希望を表した香り。

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