TOP > monica◇さんのLikeしたクチコミ(登録日時順)

14件中 1〜5件表示

doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
フラッサイ / ティアンディ

フラッサイ

ティアンディ

[香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

7購入品

2021/9/18 11:57:58

かつて「桃とシプレの名香」と言えば、長らくゲランのミツコだった。ただ、正直現代の女性に往年の名作ミツコは渋いと思う。リスペクトも含めてあえてそう言う。凛としたたたずまいが女性にも求められた時代は遠くなり、今は柔らかく華やかなスタイルの女性が多い時代。そして、そうした女性に似つかわしい最新型の「桃とシプレの名香」を見つけた。それがフラッサイのティアンディだ。

フラッサイは、NYのフレグランス業界でのキャリアを経て、母国アルゼンチンに帰ったナタリア・オウテダ女史が、2013年から展開しているニッチな香水ハウスだ。彼女は自分でも作品を調香できる技術と経験をもちつつも、かつて親交のあった信頼できる調香師に調香を任せ、珠玉の香水のみをリリースし続けている。

そんなナタリア女史が、自身の趣味である太極拳と道教の「不死の桃伝説」からインスピレーションを得て創った香りがティアンディだ。これは中国語で和訳すると「天と地」の意。天と地、とくれば中国の陰陽説が思い浮かぶ。そこに3000年に一度実を付けると言われる「不死の桃」の香り。いったいティアンディはどんな香りなのか?

ティアンディをスプレーすると、まず最初に広がるのはダークな洋酒ライクなプラムの香り、そこにシダーっぽい冷たいウッディが絡んで、セルジュ・ルタンスの名香フェミニテ・ドゥ・ボワの紫色のトップにとてもよく似た開幕。

ところが

そこからふわふわと香料が入れ替わって霧のようにただよい、あたりは深山の幽域といった具合になってくる。

まず温かくスパイシーなジンジャーの香りが広がってくる。かと思うと、冷たくひきこむようなアニスが主張してくる。この温と冷、これこそ陰陽説だ。天と地、善と悪。陰陽説はこれら正反対の事象が、互いになくてはならない関係のままこの世界を構成しているという考え方だ。さらに、ジンジャーは「外に拡散」する香り方をし、アニスは「内に引きこむ」ような香り方をする。この点でも対照的だ。よく考えている。

5分後、香りはさらに複雑に変化する。深山の霧の中に煙の臭いが立ちこめてくる。スモーキーなインセンスの匂いだ。それは炒った茶の香りのようでもあり、焦がしたコーヒーの香りのようでもある。焙煎茶のように香ばしく、どこかほろ苦い煙の香り。これは人がそこにいる気配を感じさせる展開。伝説に登場する崑崙山(こんろんさん)の頂上、美しき仙女、西王母の住まう地にたどり着いたようなイメージ。そんなふうに人が物を燃やす香りが展開してきて、もはや最初のフェミニテライクな気配がなくなったことに気付く。

そこは清涼感ある薬草の匂い、焙煎した茶の香り、そして香木を焚く煙たゆたう天上の園。生と死を司る双性の神、東王父と西王母の住まう地。

温かいジンジャーと冷たいアニス。白いアイリスのパウダリーと茶色いサンダルウッドのウッディ。そのコントラストの妙。なんという二律背反かつ対照的なミドル。これは生と死、陽と陰になぞらえた、天地の香りの四重奏だ。

そして

驚くべきことに、このミドル前半から香りはらさらに変化していく。それはつけて10分ほどして唐突に現われて本当に驚く。

3000年に一度咲く伝説の桃。その木に実る桃の香り。それがこのミドル後半から突如、出現する。

通常、桃の香りはトップで感じられるフルーティーだ。ラクトンの一種である通称ピーチアルデヒドは、女性特有の甘い匂いの成分とも言われるが、なぜこんなスモーキーで複雑な煙の香りの後で突然出てくるのか?全くもって信じられない。調香師はトム・フォードのPBシリーズ人気を一気に押し上げたタバコヴァニラの作者、オリヴィエ・ギロティン。まさかあんな武骨な香りを創る方がこんな繊細な作品を作るとは…。本気でお見それした。

ラストはこの桃の香りにスモーキーなインセンスが絡み合いながら終息するというとても不思議なエンディングを迎える。つけて4〜6時間、ふんわり桃の香が残る平穏なラストだ。

永遠の命、不死の象徴、邪気や災厄を祓う神の食べ物とされてきた、桃。中国原産の原種に近い桃は大福のようにつぶれた形をしていて「幡桃(ばんとう)」と呼ばれ、今なお珍重されている。神の園で西王母がふるまう伝説の桃はこれに近い物であったらしい。食べたことはないが、その形からは想像もできない甘さをもち、味は格別だという。

神の山の入口を示すプラム酒の香り。ジンジャーの温かい吐息。アニスの冷たい大気。桃のまろやかさ、それは生。お香のスパイシー、それは死。

森羅万象の世界を生々流転せし者、神の桃源郷へとたどりつき、遂に不死の桃を食らう。

ティアンディ。天と地の間で。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
シャネル / レ ゼクスクルジフ 31 リュ カンボン オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

シャネル

レ ゼクスクルジフ 31 リュ カンボン オードゥ トワレット(ヴァポリザター)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

容量・税込価格:200ml・36,300円発売日:2009/5/1

6購入品

2021/10/23 06:32:21

シャネルの香水は女性の戦闘服だ。そう思っている。「男は外に出れば7人の敵がいる」という言葉があるが、おそらく女性は鼻で笑うだろう。女性の場合、外にいても家にいても、100の理不尽と戦っている。髪の先からつま先まで常に見られ、有象無象のくだらない批評や差別に晒されている。だからたった1つの大切な自我を守り抜くために、女性は髪を整え、メイクを決め、服と靴でガードを固めて、この生きにくい世界に対峙するのだろう。そしてそこにシャネルの香水があれば鬼に金棒、ドラクエにぱふぱふ娘だ。(←は?)

シャネルの香水は他とは一線を画す。他の香水がファッションの仕上げであったり、リラグゼーションアロマであったりしても、シャネルは見向きもしない。シャネルは孤高の道を往く。シャネルの香水はあらゆる攻撃から身を守ると同時に、自身のパワーを底上げする。ドラクエで言うなら、守備力アップのスクルトと攻撃力アップのバイキルトを同時発動するような伝説の鎧だ。

特に、三代目調香師ジャック・ポルジュが、心血を注いで創り上げた最上級の香水シリーズ、レ・ゼクスクルジフ・ドゥ・シャネルの作品の戦闘力は高い。最高の素材を用いた本物の香水だけがずらりと並ぶ。31リュ・カンボンはその中の1本。2016年リリース。

31リュ・カンボン。言わずと知れたシャネル本店の住所。パリ、カンボン通り31番地。同21番地に開店した帽子専門店での成功をきっかけに、ココ・シャネルがスケールアップを目指して建物ごと買い取り、シャネルブティック第一号店となったはじまりの地。

そんな歴史的な場所を冠にしたシプレ調の31リュ・カンボン・オードトワレ。それはいったいどんな香りなのか?

75mlのスクゥエアボトルからスプレーする。他のゼクスは200mlサイズもあるが、31に関してはこのワンサイズ、価格は27500円だ。リリーズ当時はめちゃくちゃ高いと思ったものだが、今では50mlで4万円近い他社香水もあるからそう高いとも言えないのかもしれない。単に自分の金銭感覚が麻痺している感はあるが。(←香水好きによくある)

スプレーして最初に広がるのは、シャネル独特のツンとしたアルデヒド系の香りだ。ベルガモットの高揚感にガルバナムの苦味、イランイランぽいフローラルが絡んで、N°5とN°19とクリスタルを足して3で割ったようなイントロ。つまり、フローラルアルデヒドで、心地よい苦みがあって、そしてグリーンだ。

3分ほどすると、次第にペッパーの乾いた辛みが出てくる。そしてその下から赤いローズのゴージャス感、ジャスミンのセンシュアルな雰囲気が漂ってくる。ペッパー&フローラルのキリッとした印象。これは確かにシプレの骨格を思わせる雰囲気。だが、オークモスのギリギリした苦みはない。どこか軽やかで、けれどしっかりシャネルの凛としたたたずまいを感じさせるミドル。

このミドルは時間につれてさらに変化してゆく。次第にアイリスのふんわりパウダリーな感じが強く出てくるようになる。ペッパーのドライ&スパイシーな香りが1階、ローズ、イランイラン、ジャスミンを主軸としたアルデハイディック・フローラルが2階、そして3階にコナコナアイリスの白い香り、といった具合に階層に分かれて感じられる。なるほど、まさにシャネル本店の建物構造のよう。

ココ・シャネルが31番地にブティックを開いた時、1階は人の注意を惹く帽子や洋服のブティック、2階は華やかなコレクションやクチュールのためのホール、そして3階は彼女自身が住む、心安らぐアパルトマンだったという。明確に感じられるスパイシー、フローラル、パウダリーの3つのノートは、この本店の構造にも似てとても対比的だ。それでいてしっかり1つ1つが綺麗に主張してくる。それらはどれもシャネルの別々の顔を表しているのだろう。

つけて30分以降はアイリスが増してきて、柔らかくまろやか、ほんのり甘いパウダリーに変化してゆく。つけたときのキリッとしたN°5っぽさは何だったのかと思うほど優しく、心安らぐおしろいの香りに終息してゆく。つけて6〜7時間、母のように優しいパウダリーになってドライダウン。トワレだが出力は強く、周囲への押し出し感も高めだ。そういう意味では確かに戦闘服、けれど最後はしっかり「安らぎのローブ」になる。

「カンボン通りは私の領域」と言い、後に23〜31番地まで全て所有するに至ったココ・シャネル。彼女にとって31番地は、自身のレゾンデートルでもあった大切な場所。この香りは、人生の酸いも甘いも知った、成熟した女性にこそふさわしい。

ギリリと強く、突き抜けて華やか、けれど柔らかくあたたかい。

31リュ・カンボン。ココ・シャネルは今もここに生きている。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
メゾン・ヴィオレ / コンプリマン

メゾン・ヴィオレ

コンプリマン

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2021/7/17 10:30:31

ムンとした夏の夕暮れ。夜のとばりが下りると、インディゴブルーの空の手前に、ビル群のシルエットが巨大な黒い墓標のように浮かび上がる。悼むのはどれほど大きな死なのだろう。

そんな時間にメゾンヴィオレのコンプリマンの香りをまとった女性とすれ違った。高架下の風の中で。誰もが足早にかけ抜ける暗がりで、一瞬、心と足が止まった。「邪魔」の舌打ちと侮蔑の視線と共に人々は過ぎてゆく。あの香りはコンプリマンだ。そう思って振り返った。そこには点滅する信号機と幽霊たちの行列と、強いビル風しか見当たらなかった。

あれは確かにコンプリマンだ

電車の窓の外、薄暮の広大な河川敷が自分の暗いシルエットに重なって流れてゆくのを見つめながら、さっきすれ違った香水のことを考えていた。部屋に帰るなり、香水棚の奥からサンプル箱を探した。

あった。メゾン・ヴィオレ。コンプリマン。

コンプリマンは、“COMPLIMENT”と表記する。「ほめ言葉」。元が英語なので前は「コンプリメント」と呼んでいたが、仏語発音だと「コンプリモン」に近いことから、香水サイトではコンプリマン表記となっている。

すぐさま左手首にプッシュした。その瞬間、濃厚な白い花の香りに包まれ、そのあまりの美しさに意識が遠のきそうになった。すぐにネットを開き、メゾン・ヴィオレについて確認した。クラシカルな香水にめっぽう詳しいサイトに次のようにあった。

「メゾン・ヴィオレは、かの香水帝国ゲランより1年早い1827年に創業し、香水の黄金時代に人気の絶頂を迎えて、戦後、次第に消えていったフランスの香水ブランド。今から68年ほど前に最後の香水をリリースしたのを最後に、香水界の歴史からその名が消えた。」

そうだ。そして調香学校を出たばかりの若いイケメン3人がこのメゾン・ヴィオレを再興したんだった。

経営者の子孫でもなく、ブランドとも何ら関係のなかった20代の若き調香師たち。彼らはメゾン・ヴィオレのクラシックボトルを世界中からかき集め、失われつつあった香水レシピの復元に挑み、そしてアドバイザーの協力も得て、「古くて新しいメゾン・ヴィオレ」をリブランディングしたという。

そうか。一度死んだ者の骨を拾って再生させた、ってことか。

新生メゾン・ヴィオレが始まったのは2017年。代表作であったプープル・ドートンヌをはじめ3作品をリリースして、ヴィオレは再び世界に産声を上げた。さらに過去作品のレシピを基に再調香し、2021年にコンプリマンが上梓された。現在はフランスの公式サイトから世界中にオンラインで販売されていてサンプルも購入することができる。

改めてコンプリマンの香りを嗅いだ。スプレーした瞬間から、濃厚な白い花々の香りに包まれるハイエナジーな作品。スパイシーな暗さももったとろけそうなチュベローズ香水。それが一番の印象。同時に、トップからふくよかでインドールの影をもった力強いジャスミンも寄り添っている。この2つの香りが核となって、ボリューム感のあるホワイトフローラルブーケを彩っている。トップにシトラスも何もない。最初から濃厚チュベローズクライマックス。例えるならそう、泥沼に降り立った白いワンピースの女性。

漆黒の闇に包まれた全ての欲望で淀んだ世界。その中を優雅に歩く貴婦人のような香り。あたりには腐臭さえ漂っているのに、その女性が通り過ぎたところだけは、美しく華やいだ香りの引き波が空気を浄化していくイメージ。コンプリマンにはそんな「ほめ言葉」が似合いすぎる。

この香水は、白い花々の美しくかぐわしいエッセンスと同時に、ユーカリの清涼感、インドールのゴムっぽさや樟脳っぽい匂い、そしてヴァニラの茶色い香りをも併せ持っており、明暗の対比がとても効いている。そう思う。うす汚れた高架下の闇。そこでこんなにも白くて強い光のような香りとすれ違った。彼女は誰だったのだろう?しばし香りの向こうにその女性の姿を思い浮かべた。

あたりはすっかり夜になっていた。手狭な部屋の窓の向こうには、夜の街の灯りが、地上の星々のように散らばってまたたいていた。

街は今日も人の心を殺した。無言の雑踏の中でぼくの心も死んでいた。いつもそうだ。人はあんなにも多いのにとても冷たくて遠い。でもそこに一羽の白い鳥が舞い降りた。闇夜に咲いた真っ白なチュベローズの香りに、ぼくの心は息を吹き返した。

そして夜。弔われた幽霊たちは、日中死んだ自分の骨や残滓を拾って、再び夜の街で何かを求め、さまよい歩くのだろう。

そんな亡者の街を、白いワンピースの貴婦人が優雅に歩いてゆく。
黒い墓標の街に、コンプリマンの美しいシヤージュをたなびかせ。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
ELLA K / ハロン湾の雨

ELLA K

ハロン湾の雨

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2021/7/3 01:21:19

雨が降っている。ハロン湾に雨が降っている。ブルーグレイの霧を撹拌して、深い緑色の海に雨が降っている。3階建ての豪華なクルーザーは、霧の海を静かにすべってゆく。時折、海に突き刺さった巨大な黒い墓標のように、石灰質の巨岩や奇岩が、ぬっと彼方の沖に浮かび上がる。

エラ・ケイの「ハロン湾の雨」は、その名のごとく、雨の情景が似合う香水だ。調香師ソニア・コンスタンが、世界の旅の見聞から自身の感覚のままに創りあげる香水ブランド、エラ・ケイ。このエラ・ケイ作品の特徴は、繊細でフェミニンなワンノートがゆっくり長く香る点だと思う。

2018年に発売されたハロン湾の雨は、ベトナムの広大な海とそこから突き出たような大小1600以上の島々が織りなす壮大な景観をモチーフに作られた香りだ。70mlで28600円(税込)。そんなハロン湾に降る雨とは、いったいどんな香りなのか?

薄くてスクウェアなボトルから金色のキャップを外す。このメタルゴールドキャップの重量感と冷たさがいつも心を浮き立たせる。美しい香りを身につけるという秘めごとのような行為に、期待を抱かせる重さだ。

グレイグリーンのジュースをスプレーする。最初にふんわり香るのは、洋ナシ様の甘くてフルーティーな香りだ。人によっては、青リンゴの香りのように感じる方もいるだろう。みずみずしくてとてもジューシー。しっとりしていて、体から余計な力が抜けるような優しく柔らかいトップだ。海や雨というより、一流ホテルのスイートルームに置かれたフルーツ皿から香ってくるような芳醇な香りだ。どこかライチっぽいウォータリー感も感じられる。そうした酸味のあまりないフルーティーな香りが好きな人にはたまらないトップ。

やがて5分ほどすると、わずかなベリー系の酸味と、ロータスやウォーターリリーといったアクアティックでグリーンな風合いが出てくるようになる。フルーツの向こうに広大な水面を感じるようになる。透明感があってとても穏やかでスッキリしたウォータリー。ほんのりジャスミンの香りが下からふくよかさを出していて、すずしげでフェミニンな美しさが添えられてくるイメージ。香りの変化はあまりないが、トップからフルーティー&ジューシーな感じは続いていて、香料が上手く一つにまとまっている。

このバランスがすばらしいと思う。

フルーツのみずみずしさ、ハスや睡蓮のグリーンでアクアティックな感じ、そしてジャスミンやマグノリアの白い花々のフェミニン、これらが一点で見事に調和し、心までしっとりするような優しい香り立ちのミドルになっている。そんな香りがずっと続く。

ラストは大きく変化せず、ホワイトフローラルが減衰していくようなイメージでドライダウン。付けてから4〜5時間ほどで終息。

まとめると。

洋ナシや青リンゴ、ライチ様のフルーティーノートと、ハスや睡蓮のアクアティックノート、さらにシクラメンやジャスミン、マグノリアのホワイトフローラルノートが、一点で交わってすずしげな香りのアコードを形成している雰囲気。海というより澄みわたった湖面のよう。確かにベトナムのハロン湾は、奇岩や巨岩、多くの島々が複雑に入り組んでいるせいか、波も穏やかで巨大な湖のようにも見え、とても神秘的な世界を呈している。

それもそのはず。

ハロン湾は、ハ(降る)とロン(竜)から付けられた名前だ。つまり「竜の降りた地」の意。かつて、隣の大国、中国から度重なる侵攻を受けていた時代、この地に伝説の竜の親子が舞い降り、口から炎を吐いて敵を打ち破り、さらに吹き出した宝玉が数々の奇岩となって海に突き刺さり、外敵の侵入を防ぐ壁となったという言い伝えから生まれた海、それがハロン湾だ。

そんな伝承も信じられるほどの圧倒的な景観。見渡す限り続く巨岩の絶壁。それは今もこの美しい海を守る海洋神のごとく、雄々しくそびえ立っている。

そのハロン湾に雨が降る。あたりはブルーグレイの霧にかすみ、幾千の島々はその輪郭を灰色の空に溶かす。霧は、天空から竜が舞い降りる予兆のように、世界をミステリアスに彩る。雨は龍の到来そのものだ。世界を覆い、ひた隠し、敵の侵入を拒む。海に降り注ぐ来訪神となって、人々の願いと救いを成就する。

だから

雨の日になると、このフルーティー&アクアティックな香りをふと確かめたくなる。そして異国の遙かな海を思う。今日、ハロン湾にも雨が降っているだろうか?霧の中に佇む水墨画のような黒い島々のシルエットを思う。

外は雨が降っている。灰色の空を眺めながら、ハロン湾の雨を身にまとう。次第に心がしっとりと潤ってゆく。遠くベトナムの海で生まれた、清冽な水の香りが静かに心を満たしてゆく。

今日もハロン湾に雨が降っている。

使用した商品
  • 現品
  • 購入品
doggyhonzawaさん
doggyhonzawaさん 500人以上のメンバーにフォローされています 認証済
  • 55歳
  • 乾燥肌
  • クチコミ投稿426
LIBERTA perfume / SOLTERRA

LIBERTA perfume

SOLTERRA

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

6購入品

2021/6/26 00:12:08

夏休み。青い空。もくもく白い入道雲。少年は虫取り網と、クワガタを捕まえたカゴを勲章のように抱えて森から帰ってくる。ギラギラの太陽。ひまわり畑の横を通ったとき、キャッキャッと笑う少女の声がひまわりの迷路から聞こえた。あ、あの子だ!友達と遊んでる。

青空と緑の森、そしてひまわり畑。それは日本の夏の原風景。そんな夏の自然を感じさせる香水がリベルタ・パフュームのソルテッラ・オードパルファムだ。

オンライン診断でその人に合った香りを提案し、オーダーメイド香水の分野を切り開いてきたリベルタ・パフューム。満を持して発表したプレタポルテ香水第1弾は、春の香りサクラマグナ。そして第2弾となる夏の香りが、実際にはない「ひまわりの香り」をイメージしたというソルテッラだ。

ソルテッラをスプレーする。その瞬間、金色の至福に包まれる。一瞬で、天然香料がオーバードーズされた贅沢なトップと分かるふくよかな香り立ち。どこまでも爽やかなシトラスミックスの香りが広がり、心がリフレッシュする爽快な開幕。

はじめは、レモン様の黄色い酸味あるシトラスが一瞬の陽光のようにはじける。すぐさま、ジューシーで心地よい苦味のあるオレンジ果皮の香りが広がってくる。さらに、ほんのり効かせたグレープフルーツのかん高い苦味が、オレンジ果皮の苦味とシンクロして夏空の積乱雲のように上昇していく印象。この開幕3分ほどのシトラスミックスのバランスが超絶いい。

そして

この黄色とオレンジ色のシトラストップを上手く支えているのは、葉や草の匂いを思わせるシャープでグリーンなガルバナムだ。このガルバナムとシトラスの割合、これも絶妙。

付けて5分ほどすると、ソルテッラはピーチ様のフルーティーさとオレンジフラワーの甘くふくよかなフローラルに変わってくる。先ほどまでの強烈な黄色い香りは何だったのだろうと思うほど、優しいフローラルミドルに変わってゆく。わずかにゴムのファセットをもつネロリやオレンジフラワーの軽やかな甘さ、その軽さを引き締めるように低音で響いている香りは、オスマンサスのようだ。リベルタの山根氏のジャーナルには、シトラスとこのオスマンサスの取り合わせこそが、ソルテッラ調香の妙だと紹介されている。確かにアプリコット様の酸味と甘みをもったオスマンサスは、強くて主役級にもなる香料だが、ここでは高音部のネロリ&オレンジフラワーと対をなすベース音のように、低音で鳴り響く影の役割なのだろう。

考えてみれば

トップは黄色いグレープフルーツとオレンジ色のビガラード。これらは早く揮発しようとする高い香りだ。それをしっかり支えていたのがグリーンなガルバナム。

ミドルでは、柔らかく甘く軽いオレンジの花の香りに、確かな陰影をつけるべく低温部に重ためのオスマンサスを対比させる。

これはとても理にかなった方法で、トップ、ミドルごとにしっかり独立した調香がなされていることが実感できる。

やがて

つけて1時間ほどすると、香りはラストになる。オレンジの残香を伴ったややスパイシーなウッディ、ベチバーの香りが感じられるようになってくる。大地の匂いを思わせる落ち着いたラストという印象だ。色で言えば黒に近い茶色。たっぷりの栄養と水分をはらんだ、シャープで土っぽい香りのベチバーが、静かに横たわるひまわり畑の土を感じさせてドライダウン。ここまで付けて1時間〜2時間ほど。

まとめると

真夏の太陽を思わせる金色シトラスのトップ。力強く優しいひまわりの花の香をイメージさせるネロリ&オスマンサスのフローラル二重唱、そして豊穣な大地の匂いを感じさせる安息のウッディ、ベチバー。このへんの香料がキーとなって変化し、ソルテッラは真夏の太陽と大地の香りを豊かに表現している。

リベルタ・パフュームによると、天然香料80%という驚異の配合率のよう。そのためか、ソルテッラの香料揮発は早めで、体温高めの自分の肌では1時間くらいで消える傾向にある。ただ、こうしたトップのシトラスミックスに重点を置いた香水は、むしろ短時間で消えるから使いやすい、という方も多い。感じ方は人それぞれだろう。とてもリフレッシュ感の高い香水なので、思い立ったときにシュッと気軽につけて楽しむ使い方が似合う夏向きの香りだ。日に何度もタッチアップして。

「はい、タッチ!」突然始まったひまわり畑の鬼ごっこ。勝手に鬼になった少年は、次々に女の子をつかまえてあの子を探す。ザワザワとひまわりの葉が鳴っている。よーし、あっちだ。

「見っけ!」

驚いた少女の顔。得意げな少年の顔。
土の匂い。夏空の入道雲。セミの声。

その瞬間、2人一緒に笑った。


ソルテッラの夏  ひまわり畑でつかまえて

使用した商品
  • 現品
  • 購入品

14件中 1〜5件表示

monica◇さん
monica◇さん 5人以上のメンバーにフォローされています 認証済

monica◇ さんのMyブログへ

プロフィール
  • 年齢・・・30歳
  • 肌質・・・敏感肌
  • 髪質・・・柔らかい
  • 髪量・・・普通
  • 星座・・・獅子座
  • 血液型・・・B型
趣味
  • ファッション

もっとみる

自己紹介

敏感肌だけど美白もしたいアカウント 産後の肌荒れに悩んでおります 続きをみる

  • メンバーメールを送る