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doggyhonzawaさん
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ル ラボ / ANOTHER 13

ル ラボ

ANOTHER 13

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

容量・税込価格:15ml・11,770円 / 50ml・26,950円 / 100ml・41,250円発売日:2010年

5購入品

2020/10/10 13:24:34

ルラボのアナザー13は、とても不思議な香りの香水だ。うすいミント水のようだなと思えば、冷たい金属の香りがするときもある。付けてしばらくすると乾いた木の香りもしてくるし、ときに酸味があるフルーティーなタッチが感じられることもある。とらえどころがなくて透明感がある香り、それがアナザー13だ。

アナザー13は作られた経緯も異色だ。2010年、英国のファッション・アート・カルチャー雑誌“AnOther magazine(アナザーマガジン)”から依頼を受けて生まれたコラボ作品。販売はパリの伝説のセレクトショップ「コレット」のみというこだわりようで大きな話題となったが、2017年にコレットが閉店し、その際に製造元のルラボに戻して通常ラインに加えられた経緯を持つ。

一般的にルラボの香水といえば、ローズ31やアンブレット9など、メイン香料名の後にブレンドした香料の数が記載されているが、アナザー13の場合は雑誌名がそのまま残されている点で他と異なる。この経緯は定かではないが、限定品で出したにも関わらずとても人気の高い作品だったことも一因かもしれない。

では、ルラボのアナザー13とは一体どんな香りなのか?

アナザー13をスプレーする。最初に感じられるのは、本当にうっすらとしたミント水のような香りだ。アナザー13はスプレーしてもすぐには香らないタイプで、これは揮発しやすい香料が少ない、もしくは入っていないことを意味する。ルラボにはこういうタイプの香水が割とあって、人気のガイアック10もトップはほぼ香らない点で似ている。

3分後。付けたところで香水が人肌で温められてくると、重たい香料が揮発して少しずつ顔をのぞかせてくる。まず感じられるのはヘディオンのやさしい甘さ。ほんのりジャスミンの香りがする人工香料で、量はごくわずかだろう。とてもとても穏やかで、かなり広範囲にスプレーしても、まるで肌じたいが柔らかく甘く香っているようなスキンセント系の香り方をする。

さらに下から出てくるのは、透明感のある塩水のような香り。トップの薄いミント系ノートと相まって液体系やオゾンノートのような雰囲気になる。これはアンブロックスだろう。これも濃度はとても薄い。アンブロックスをガツンと高濃度で嗅ぎたいならヴィトンのアフタヌーンスイムのミドルで確認するといい。かなり潮風風味な香料だ。アナザー13はこのあたりから、次第に「流れる水の匂い」な面が感じられてくる。

やがて、つけたことすら忘れた頃になって、不意に乾いた木の香りがしてきて驚く。自分の肌では30分ほどだろうか。付けたところに鼻を近づけるとやっと分かるような薄さで、ほんのり木の香りがする。流れる水の香に、香ばしく温かい木の香りがグラデしてくるイメージ。

そしてそこにキンとした酸味も感じられてくるとアナザー13の香りの香料が全て出た感じになる。水系ノートを形成しているミントやアンブロックス。乾いた木の香りを呈するイソEスーパーと少量のウッディ香料、そしてスッキリ系ムスクとほのかなジャスミン香ヘディオン。アナザー13はこれらが集まって絶妙なバランスで香るオードパルファムだ。トップが水のように透明感があって、次第に木の香りが深まってくる不思議な香り。

全体的に見ると、うすいミントやジャスミン香、そこに香ばしい木の香が混じるアナザー13は、確かに日本で人気あるのが頷ける香りだ。香り立ちが低めで、多めにプッシュしても香害になりにくい落ち着いた香り。淡い木の香が7〜8時間ほど続くので、さりげなく周囲にアピールもする。ネックは価格だ。ルラボの香水は日本で買うととても高い。15mlボトルで1万円という価格をどう見るか。そこは個人の価値観次第だろう。

水の雰囲気と木の香り。そこから思いつくのは、本だ。本は水と木から作られた紙でできている。インクのリキッド感。そして木や紙のドライな温かみのミックス。これはアナザーマガジンそのものの匂いをイメージした香りなのかもしれない。

洗練された写真が散りばめられた高価な雑誌の匂いをそっと嗅ぐ。漂白された上質な紙の乾いた匂いがする。ツヤツヤしたインクのほんのり暗い匂いもする。美しい写真に彩られたページをめくるたび、たくさんの夢と、まっさらで穏やかな本の匂いが広がっていく。

その香り、別物。アナザー13。

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FUEGUIA1833 / キロンボ

FUEGUIA1833

キロンボ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2020/6/20 10:01:59

フエギア1833のキロンボは、とてもヘヴィーな名前の香水だ。その名の表すもの。「逃亡奴隷社会」。

かつて植民地時代のブラジルで、何百万人もの黒人たちがアフリカから連れてこられ、サトウキビプランテーションで過酷な労働を強いられた。彼らの多くは20歳になるまでに亡くなったという。そこで彼らは脱走し、北東部のジャングルに逃げ込み、先住民ナティーボらと共に密林の奥でひっそりと生きる道を選んだ。その集落や社会を総称してキロンボという。

とても重たい名前だ。もし香水ボトルに日本語で「逃亡奴隷社会」と書いてあったら、少なくとも二の足を踏む人はいるだろう。「ねえ?いい香りね。それ何の香水?」「えとね、フエギアの『逃亡奴隷社会』だよ!」「そ、そうなんだー。なんかすごいね…(汗)。」という会話が交わされるとしたら、いかがなものか。←ま、それはそれで

ともあれキロンボ。初めてその名の由来を知ったときは若干気持ち的に落ちたが、店舗で実際に香りを嗅いだときはとても驚いた。なんというミルキーで優しい甘さの香り。それもそのはず。キロンボは、ブラジルの密林の奥、逃亡奴隷たちが生き延びるために作っていた液体ミルクキャラメルの香りだ。←大事

キロンボをプッシュする。その瞬間、腰がとろけそうになるような甘くてミルキーな香りがふんわりと広がる。よく女性がつけて「おいしそう!」とつぶやいているが、さもありなん。本当にミルクとバターとそしてスッキリした甘さが渾然一体となって広がってくる。バターにはほんのり塩味が効いていてそれすら鼻で感じ取れるのがすごい。本当に「これ、単に食品の香り付け香料では?」と感じるほどの超グルマン。

ミルクと塩バターと甘い砂糖の香り。以上。←終わるのか

展開は特にない。フエギアの香水にはよくある、付けた香りがずっと持続し続けるタイプの香り方をする。人工香料強めだろう。いつまでも同じ香りがずっと持続する感じだ。ただ本当に唾液が出そうなくらい甘くてミルキー。これは不二家さんが「ミルキー」という名でリリースした方がいいくらいの練乳っぽい香り。実際に不二家さんが出してるミルキーボディミストより「不二家ミルキー」な香り。←本家越え?

持続時間は8〜10時間ほど。長い。特に紙やファブリックにつけると、1日過ぎても柔らかく香りが残っているほど。このへんは本当にフエギアらしい濃厚さ。フエギアの香水は全体的に香料の数は少なめでシンプルな香りを濃度高めで展開する、といった感が強い。一般にグルマン系は気温や湿度が高いと重たくて敬遠しがちだけれど、なぜかこの香りは暑い季節でも苦にならない。それは、ほんのひとさじのフルーティーな酸味があって、実にスッキリとした甘いクリーミーさを呈しているからだろう。それがアマゾンフルーツの1つ、クプアスだ。

クプアスはカカオの仲間で、茶色い実の中に白い果肉を有する南米特産のフルーツだ。果肉はパッションフルーツやヨーグルト様の強い酸味をもつ。また、種子には多量の油脂を含み、クプアスバターとしてチョコレートの原料やコスメの素材にも使われる。このクプアスの果実の酸味、バターのコクが、このキロンボを単に甘いミルク香にせず、豊かな風味を添えているように思う。わずかなパッションフルーツ様の香りがくどい甘さになるのを抑えている印象。

ブラジルや南米では、昔からドゥルセ・デ・レチェという液体キャラメルが作られ、愛飲されている。高脂肪のミルクに砂糖をたっぷり入れて、じっくりアメ色になるまで煮詰める。その液体キャラメルには必ずカカオやチョコレート、アーモンド、ドライフルーツを入れるという。そこまで知ると、ああ、この香りにはラテンアメリカの歴史が語られているんだなと実感する。

暗いジャングルの奥に思いを馳せる。先住民との邂逅をはたした逃亡奴隷の黒人たちは、彼らの自給自足の生活様式を学びながら、同時に自分たちの身体に沁み込んでいるアフリカ文化をミックスして継承し続けた。彼らはヤギの乳に自分たちが作っていた砂糖を加えて煮詰め、そこにクプアスの果実やバターを加えて濃厚な液体キャラメルを作り、飢えをしのいできたのだろう。白人社会の攻撃に備えつつ、何百年も文明社会と隔絶して。

その戦いの旗こそキロンボなのだ。その名の重たさを知ったとき、ジュリアン・べデルがこの甘くミルキーな香りに寄せた思いの深さを慮る。そしてそれが悲劇の名称ではないことに気付く。人種差別と闘い続けた彼らの歴史。そして何よりも、生きるために日々の食料を得る戦いを続けた彼らの強さをこの名は表しているのだろう。

どんなことがあっても生きる強さ。今日の命をつなぎ、明日への希望をもたらす香り。キロンボ。

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アユーラ / スピリットオブアユーラ オードパルファム(ナチュラルスプレー)

アユーラ

スピリットオブアユーラ オードパルファム(ナチュラルスプレー)

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)]

税込価格:- (生産終了)発売日:2001/12/1

5購入品

2018/9/8 13:55:50

汚れちまったな。服も心の中も泥だらけだ。誰かの手垢まみれの自分。こんな自分いやだ。好きになれない。心も体も洗濯して漂白したい。浄化してしまいたい。

なぜだろう。季節の変わり目にはそんな思いにとらわれることがある。ふだんは透明に見える心の水が本当は泥水だったことに気付くような。ただ泥が心の底に沈んでいて透明に見えていただけで、季節が変わって水がターンオーバーし、沈殿していた心の泥を撹拌してしまったような。そして心の中は視界ゼロの泥水状態。

スピリットオブアユーラという香りに出会ったのはそんなときだった。憂鬱、怠惰、慢性的な心の疲れ。人の心は弱い。たやすく落ちる。そして得てして、落ちたら長い。そんな長さを少しだけ短くしてくれたのがこの香りだった。

アユーラはサンスクリット語で「命」を表すコスメブランド。かつては資生堂の子会社だった。西洋科学と東洋叡知の融合をコンセプトとして、独自の商品を開発・展開している。 中でも2001年に発表されたスピリットオブアユーラ・オードパルファムは、発売と共にじわじわと人気になり、ブランド認知の大きなきっかけとなった作品だ。

スピリットオブアユーラ、「アユーラの精神」。まさにブランドの方向性や考え方をこの商品で語るという大役を担った作品。それは香りでどのように表現されているのか?

スピリットオブアユーラは、まずボトルがとてもいい。大きさも色も形も夏の朝に咲くハスの花のつぼみそのものだ。ハスの花は泥水の中から茎を伸ばして水上に突き出て、やがて大きなピンク色の花を開かせる。それゆえに昔から「聖なるもの、清らかさの象徴」とされ、宗教において珍重されてきたアイコンだ。このつぼみの中にはどんな香りが隠れているのだろう?ふだん香水などに縁遠くても無意識に誘われる意匠だ。

ボトルキャップを軽くつまんで外し、スプレーする。その瞬間、ふんわりと心地よい風が吹く。どこか懐かしいような、あたたかさに包まれているような優しい香りだ。たとえるならお風呂上がりの匂いだ。ジャスミンの入浴剤の蒸気、シャンプーしたてのフローラルの残り香、クリーミーなボディーシャンプーの香り。そうしたものが自分の体から湯気とともに立ちのぼってきたような香りがする。

このトップをよく嗅ぐと、まず酸味のあるハーブの香りがしている。クレジットで見れば、ローズマリーやカモミールなどのハーブが引き立っている印象。そしてその背後からグリーンティーのスッキリした香りが広がってくる。トップからお茶の香りが強く出てくるので、ふーっと安心感を与えてくれる。マイルドハーブ&グリーンティーなトップ。

やがてわずかな清涼感を伴ってほんのり甘いフローラルが感じられてくる。みずみずしく、少しだけ酸味と苦みをもったひかえめなフローラルだ。クレジットによると匂いナデシコと沈丁花とある。匂いナデシコの香りを嗅いだことはないが、カーネーション系のクローブ香をもっているようで、実際、甘くてややツンとした感じの香りだ。ジャスミンとミュゲも背後に感じられ、ミドルは穏やかで柔らかい低音のフローラル香になる。

ところが。

このお風呂上がりの入浴剤みたいなリラグゼーション香は、あっという間に消えてしまう。体温高めの自分の場合は、30分程度であとかたもなく。ラストは淡くまろやかなムスクが残っているばかりだ。同時に樟脳のような暗いシャープな香りがずっと続いていたことが最後にわかる。これがアユーラの言うところの墨の香りだろう。アニス香に似たスッとした香りとして最初からベースに感じとれる。

全体的に見ると、これはとてもニッチな香りだ。香水とアロマテラピーの中間。嗜好品と薬の中間。高価と安価の中間。30分間の癒し&気分転換のための気付け薬的な使い方がメインとなるフレグランス。落ち込んだとき、心がもやもやしているとき、イライラしてスッキリしたいとき、ほっと一息つきたいとき。そんなときにこんな穏やかな香りが心を救ってくれる。「心につける香り」というキャッチから見ても、この作品は自分が香気を吸ってくつろぐための香りなのだろう。うつむいてしまった自分を再び立ち上がらせ、凛として背を正してまた前へ進むための。

「蓮(ハス)は泥より出でて泥に染まらず」という中国の古い言葉がある。いつしか積もったストレスの澱は、いわば心の泥だ。だがそんな泥からも育つ植物がある。ハスは泥水が濃ければ濃いほど大輪の花を咲かせるという。たとえ今が苦しくても、そんな時こそ必ず心の中で伸びている茎がある。それはやがて大きなつぼみとなる。

だから、あなたはいつか必ず咲く花だ。

スピリットオブアユーラは、そんなメッセージと共に心に寄り添ってくれる香りだ。

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アールフレグランス / 一期 無常

アールフレグランス

一期 無常

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)]

税込価格:-発売日:2021/11/3

5購入品

2022/12/3 12:21:16

「一期無常(イチゴムジョウ)」は「いちごの香り」がする珍しい香水だ。世にストロベリーフレーバーはあまたあれど、実は「香水」で「いちご風味」というのはほとんどない。そのニッチをうまくついたのが、日本の香水ブランド「アールフレグランス」を興した調香師、村井千尋さん。

村井さんと言えば、個人的にフレーバリストとしての才能が豊かな調香師、というイメージがある。「フレーバリスト」とは、食品をよりおいしくするための香りを作る職人。あらゆる香料に通じ、それらの綿密な組み合わせによってクライアントが望む「美味しそうな本物っぽい香り」を再現するプロだ。ご存じの方も多いだろうが、村井さんが手がけた「ティーブレイク」は、本物の甘いレモンティーのような香りがするし、他の香水の花の香りも再現力が高い。

その村井さんが「いちごの香り」を手がけたということで、この「一期無常」は、2021年の発売以来、話題を振りまいている。ではいったいどんな香りなのか?

一期無常をスプレーする。肌に乗せてまず感じられるのは、甘酸っぱいイチゴの風味、そしてスパイシーな土の香りがするパチュリだ。「おお、本当にイチゴの香りがする」と思わず納得してしまう再現力。ちなみにイチゴの香料やエッセンスは、生の果実から抽出していない。主成分となるカラメル様の甘いフラネオールに、リンゴやパイナップルの香料成分等を100種類ほど混合して再現されている。一期無常のトップは、ハニーの甘さも伴って限りなくスイートなイチゴ香。そしてほんのりクリーミー。

だが一期無常はその名のごとく、少しずつ香りが変化してゆく。

10分ほどするとイチゴの香りが落ち着き、その下からスッキリしたローズが感じられてくる。フルーティーなピンクバラの香りだ。同時に下の方からは土っぽいパチュリに上質な革の香りが混じってくる。とてもなめらかなレザー香だ。これらが混然一体となってフルーティーパチュリ、いわゆるフルーチュリな雰囲気になってくる。イチゴだけでなく、他の香料も主張してくるミドル。

ただ興味深いのは、トップのイチゴ風味がミドル以降もしっかり続いていることだ。

つけて2時間ほどたってもイチゴの香りはメインで感じられる。それをハニー、パチュリ、スエード革の香りが支えているイメージ。トップのイチゴは甘酸っぱいベリー系の香りだが、次第に少し大人びたダークロマンティックな影が差してくる展開。

ラストはかなり黒い香りになってドライダウン。墨の匂いがするパチュリ、そのスパイシーさを和らげるような上質レザーのヴェール。最初が「赤いイチゴ」で始まりラストは「黒いレザー&パチュリ」で終焉。色も対比している。持続時間は自分の肌で約6〜7時間。ときにパチュリのアーシーな香り、ときにレザーのアニマリックな風合いが余韻を見せつつ、消えてゆく。ラストは、甘くて暗い大人の香りでフェードアウト。

確かにこの一期無常は全体的に、あまあま少女ロマンティックな「いちごみるく」の香りではない。サンリオの「いちご新聞」の雰囲気じゃない。むしろスタンダールの「赤と黒」だ。

ブランド紹介文には、赤いイチゴの香りが表す「生」と黒いレザーパチュリ香が表す「死」の対比が記されていて、かなりシニカルだ。また、ボトルに描かれた幾何学模様は「時間」を刻む砂時計を象徴しているという。そこには人としての業(カルマ)も描かれているようだ。「一期」それは死ではなく「人生」。「無常」それは常に変化し続けること。いうなれば「一期無常」に掛けられたダブルミーニングは、

「フレッシュなイチゴの香りは常ならず、それは刻々と変わり続ける」と
「人生とは、常ならぬもの。苦楽あり、幸不幸あり。そして人は日々老い続ける」の2つか。

そこまで考えて2つの「赤と黒」を思い出した。

1つは赤。いちごを表す漢字「苺」。なぜ「くさかんむりに母」なのか。その由来には「乳首のような実のなる草」という解釈がある。もともと「母」という漢字じたい「乳房」を象形しているので、いちごは古来、母の乳首をイメージさせた物であったとみることができる。

もう1つは黒。太宰治の小説「人間失格」のラストのセリフ。読む者の背中からそっと冷たい手を入れて、魂をわしづかみにするようなこの暗黒小説の最後は、こんな言葉でしめくくられている。「自分には幸も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます。」

母の乳房は世界への最初の信頼。人生の始まりは赤ちゃん。土の香りは時過ぎて還る場所。人生の終わりは黒。そう考えると一期無常の意味は深いな。

母より生まれその乳を吸いし者、死に向かってただ生きゆくのみ。か。

まさに

祇園精舎の鐘楼に 一期無常の香りあり

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FUEGUIA1833 / ムスカラ カカオ

FUEGUIA1833

ムスカラ カカオ

[香水・フレグランス(レディース・ウィメンズ)香水・フレグランス(メンズ)香水・フレグランス(その他)]

税込価格:-発売日:-

5購入品

2021/9/4 02:06:22

「チョコレートの匂いがする香水」というカテゴリがある。そんなキーワードで検索すると、まず必ずと言っていいほど出てくるのが、モンタルのチョコレートグリーディー。こちらはミルクチョコウェハースみたいな香りとも言われるが、それ以上にガツンとビターなチョコレートの香りを感じたい場合は、フエギア1833のムスカラカカオがおすすめだ。

フエギア1833は、もともと南米パタゴニアの自然や歴史、文化へのリスペクトから生まれた香水ブランド。瞬く間に100種類を超える香水作品をリリースし、人気を博している。

中でもフェロモンと類似した分子構造をもつ「香りのない分子」を採用したというムスカラシリーズは、一人一人の肌本来の匂い分子を吸着することで揮発を促し、その人の肌の香りを引き立てるというアナウンスで注目されている。ほんのりウッディに香る人もいれば、柔らかなフローラル系の香りを醸し出す方もいるという。ちなみに自分の場合ムスカラはややくすんだウッディになる←昭和枯れすすき

そのムスカラに選りすぐりのカカオ香料をプラスした作品、それがムスカラカカオだ。かつては限定品であり、一部のフエギア沼な方がこぞって購入したレアな一品だったが、現在は通常ラインとして販売されている。人気があると見るやどんどん売り方を変えていくテンポの速さも、このブランドの特徴といっていいだろう。基本、攻めは強めだ。

2019年2月にリリースされた当時は、800sのカカオ豆からわずか1sしか採取できない貴重なカカオ香料を用いたこと、エクアドル産とメキシコ産のカカオにこだわってブレンドしたことなどで話題を呼んだ。

では、巷でビターチョコレートの香りと言われるムスカラカカオ、一体どんな香りなのか?

ムスカラカカオをプッシュする。ジュース色がロットを経るごとに濃くなっているように思うのは気のせいか。肌にのせるとその瞬間、ダークラムの冷たく芳醇な洋酒香が立ち上る。このへんショコアトルを思わせるイントロ。すぐさま、鼻にキュンとくるほどロースティーでドライなカカオの香りが立ち上がってくる。これは思いきり天然のカカオの香りだ。チョコレートというよりビターカカオ。ミルクのまろやかさも砂糖のカラメル香もない。ギリギリ苦い。発酵させ、丁寧にローストし続けたカカオ豆の黒く焦げた香り。

このカカオブレンドの香りには、幾つか特徴がある。まずは苦みの中にもフローラルなふくよかさが感じられる点だ。これは明治製菓の「産地別カカオで作ったチョコレートの風味」分析データによると、エクアドル産のカカオの特徴だ。また、高音部でコーヒーにも似た酸味と強い苦みが出ている。このあたりは、同ブランドの「チョコレート効果cacao 86%」のようなカカオ成分が高いチョコレートの香りに近いものがある。むろん本物のチョコやココアと比べると、ギリギリとビターで、大人向けなカカオ。これは本当にパワフルな苦みと渋みをもった黒いカカオの香水だ。

賦香率は高めで、付けてからゆうに7〜8時間は香りが続く。ムスカラシリーズは厳選した単一香料をムスカラと合わせるので、展開はシングルノートだ。したがって調香じたいはシンプル。だから次々に作品を出せるのだろう。調香技術よりも素材じたいのよさで勝負。フエギアの作品には全体的にそんな印象がある。

ただ

それにしても値段は高すぎないか?

このムスカラカカオ、100mlボトルを買うには68200円必要だ。なぜ50mlをやめたのだろう?むしろ10mlを出してほしいくらいなのに、と庶民はカカオ高配合のチョコをかじりながら思う。さすがに86%は苦い。ムスカラカカオの価格を思うと、つい心も苦みばしる。

口直しとばかりに少し甘いチョコレートも口に放り込んだ。お、エクアドル産のカカオ豆を使ってる明治の「ALMOND 香るカカオ」は酸味の感じがムスカラカカオに近いな。甘いし、アーモンドも香ばしい。対して「チョコレート効果72%」の方は、苦みは強いもののミルクの香りが少しあって、これはムスカラカカオにキロンボをのせた感じだな、などなど…。

いろいろなチョコレートの味と香りを比べながら、紀元前から人々の食を支えてきたカカオ豆に思いをはせる。「テオブロマ(神の食物)」と呼ばれ、珍重されてきたカカオ。その豊かな香りと味は、いつの時代も人々を魅了してきた。

気温が下がってくると、不意に思いっきりチョコレートの香りが恋しくなることがある。そんなときはカロリーを気にしながら我慢するよりも、ムスカラカカオを身体中にプッシュしてみるのも一興かもしれない。

黒くて 苦くて 心地いい。 神のカカオの香りに包まれて。

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tofuchikuwaさん
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プロフィール
  • 年齢・・・54歳
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自己紹介

香りの良いものが好きですが、柔軟剤のような人工的なのは苦手です。 特に好きなのは薔薇、そして針葉樹の香り。 my favorite parfumは… 続きをみる

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